08/06/19 22:27:29 kMTuqKVV0
「ふう」
がちゃりと扉が開き、疲れた顔のプロデューサーが入ってくる。
「どうでしたか、プロデューサー?」
「やっぱり駄目だったよ」
千早の問いに彼は頭を振る。
「ごめんなさい、プロデューサーさん、千早ちゃん。私がドジなばっかりに・・・・・・」
「いや、春香の責任じゃないよ。うちの事務所はユニットの活動を一年間と決めているから」
俯いている春香の頭を撫で、彼はため息をつく。
千早と春香の組み合わせで芸能界に挑戦したのが一年前。
「やはり駄目でしたか・・・・・・残念です」
千早は今までを思い浮かべるように目を閉じる。
辛い時、悲しい時、嬉しい時、楽しい時。
喜怒哀楽を春香やプロデューサーと共にした一年間。
自分の人生でこれほどまでに輝いた時間があっただろうか?
色々なコンテストで優勝しても・・・・・・
有意義なレッスンを受けた時も・・・・・・
これほどまでの充実感を感じたことはなかった。
「プロデューサー、なんとかなりませんか?
ユニット名は変わっても構いません。
私、春香やプロデューサーともっと一緒に活動したい。
トップアイドルや数々の賞を受賞したことより、
三人で活動出来たことが一番の宝物なんです。
他の人では・・・・・・駄目なんです」
「千早ちゃん・・・・・・プロデューサーさん、私からもお願いします。
私もプロデューサーさんや千早ちゃんと一緒にいたいです」
千早も春香も彼に両手を合わせ、懇願する。
「・・・・・・分かった。新しいユニットとして、今までと異なるプロデュースをしてみたいと社長に掛け合ってみる。
上手くいかなくても恨まないでくれよ」
「もちろんです、プロデューサー」
「ありがとうございます、プロデューサーさん」
彼の言葉に二人は笑顔で手を取り合って喜んでいたが、春香は急に千早の手を離した。
「千早ちゃん、ごめんね」
「春香、どうしたの?」
彼女の言葉に千早は首を傾げる。何も謝られることはないはずだ。
「私ね、ずっと千早ちゃんの足手まといだと思っていた。
きっとユニット解散を喜ぶだろう、と。でも、千早ちゃん、本気で悲しんでたのに今、気付いたの。
私、千早ちゃんのパートナーなのに千早ちゃんのことを信じてなかった。
本当にごめんなさい」
「春香・・・・・・いいのよ、分かってくれれば。
私、春香とプロデューサーにはいくら感謝してもしたりないと思ってる。
春香とプロデューサーは私に足りていなかった物を教えてくれたから。
もし、二人と別れたら、私は・・・・・・」
「千早」「千早ちゃん」
「私は・・・・・・誰にツッコミをいれれば、いいの!?」
「「はい!?」」
「今まで私は一人だった。一人ボケツッコミすることしかなかった。
そんな私に会話の相方がどれだけ重要か・・・・・・ツッコミにはボケが必要なのか、教えてくれたのがお二人です。
心から感謝しています」
「千早ちゃん、感謝されてもあんまり嬉しくないんだけど・・・・・・」
「確かに思い出すと心当たりばかりだが」
「駄目ですね、これは」「勘弁して下さい」と言いつつも千早の表情が輝いていたことを彼と春香は思い出す。
「私、確信しました。この三人でなら、トップを目指せる、と。だから、これからも頑張りましょう」
拳を握り締め、千早は頷く。この二人こそが自分の方翼だと確信して。
「春香・・・・・・次はアイドルお笑いユニットとして、アイマスグランプリとお笑いグランプリの二冠を目指そうか」
「絶対に嫌です、プロデューサーさん」
そう言いつつも春香は確信した。
ああ、来年の今度の年始年末はとても忙しいだろうな、と。
すまない、コンビニでツッコミ千早が降臨してきた。
あずささんよりも春香の方がベストパートナーだと思う