08/06/14 13:53:06 RbExdY090
駆け出しアイドル・水瀬伊織にあこがれる同年代の少年になりたい。
クラブ帰りの通学路の途中、近所で紫陽花寺と呼ばれている寺のそばで
伊織と出くわしたい。
あれ伊織ちゃん、どうしたの？と聞くとテレビ番組のレポーターでこの寺を
訪問するという。スタッフが先に行って交渉中なのだと説明され、「そういえば
あんたの学校近所よね、ここのなんかいい話とか知らない？」と大雑把に
訊ねられたい。
俺も大したこと知らないんだけど、と前置きして、学校の歴史の時間に
担任が話してくれた雑談を思いだしながら説明したい。その内容は大昔、
悪い家臣に裏切られて城を追われた美しい姫がこの寺に匿われ、いいなずけの
若君の助けを待つも逃れる際の怪我が元で亡くなってしまうが数日後、
悪臣をやっつけて姫を探しに来た若君が寺の前を通るとそれはそれは美しい
紫陽花が彼を迎えるように咲き乱れていた、という悲しくも美しい話であって欲しい。
話し終えて伊織を見るとなんとボロボロ泣いているので慌ててえっどうしたの、
どこか痛いの？とベタな心遣いをして、「うるさいわねあんたってデリカシーの
かけらもないのっ？」と半分八つ当たりで怒られるのを耐え忍び、幸いほとんど
使ってなかったきれいなハンカチで涙をぬぐってあげたい。
そんなタイミングで戻ってきたプロデューサーは泣いてる彼女を見て俺が
なにかやったんじゃないかと誤解し、大人特有の冷たい理詰めで俺を追い詰めたり
して欲しい。そしてまだ涙目の伊織に事情を説明してもらい誤解を解いてもらいたい。
「もー、あんたと会うとなんかカッコ悪いとこばっか見られちゃうわね、やんなっちゃうわ」
などと照れくさそうに言う伊織にもう何回目だか判らないけどハートを
打ち抜かれ、あ、じゃ、じゃあ俺帰るんで、テレビ頑張ってね、としどろもどろに言い、
「ん、ありがとねー」と屈託なく笑う涙の跡の残る頬に止めを刺されて走って帰りたい。
案の定彼女がその姫君の話をした、その放送の翌週の歴史の授業で、
くだんの教師に「紫陽花寺の伝説、俺が少し前に話したのとよく似た話が
先日テレビで放送されたそうだな？口からでまかせだったんだけどホント
だったんだな、あははは」などと言われてひそかに教師に殺意を抱きたい。
でも掲示板とか見てみたら寺は寺で口裏合わせたみたいでまんまと
既成事実になり、しまいには『紫陽花姫のお札』とかキャラクターグッズとか
売りはじめる住職の商才に舌を巻きつつも伊織を傷つけずに済んで
よかったとほっと胸をなでおろしたい。