08/06/22 12:34:33 W8qA4gc30
■アフター5(ランクA)
パパの許可を貰って、マンションでのひとり暮らしをはじめて、二週間……
新堂や他の使用人がいない、という環境に、いろんな意味で慣れてきた。
そして、その環境下で必ずやってみたいと思っていた事がある。
幸い今日は、アイツも新堂も来る日じゃない。見られる心配はゼロなのだから。
「……ふぅ。狭いお風呂だけど、一仕事終えた後はやっぱり気持ちいいものね」
今は、髪のお手入れをしてくれる使用人もいないし、身の回りのことは自分でやるしかない。
でも、それは裏を返せばいつ、何をしてもいいと言う事。
だから……わたしは今、ずうっと前から夢見ていた計画を実行しようとしていた。
「うわ……こんなに気持ちいいものなんだ」
夏場のお風呂上りというのは、すぐに汗をかいてしまうのがちょっと気持ち悪いのよね。
だから、髪をざっと乾かしたら、バスタオルをまとったままの格好で、はじめて脱衣所の外に出てみた。
勿論、こんな事するのは生まれてはじめてよ!
実家や765プロの浴室では、スーパーアイドル水瀬伊織として、はしたない真似は出来ないから。
……でも、やよいや真が小さい頃、お風呂上りにハダカで動き回ってたのが気持ちよかったなんて言うから、
一回くらい試してみたくなったのよ!こんなの、人に見せられやしないし、今回だけなんだから!
勿論ここは高層マンションで、カーテンもしっかり閉めてるから、誰かに見られるとかの心配は無いけど……
なんていうか、普通の室内で下着すら着けていない、という非日常感に、ちょっとした心地よさを感じながらもドキドキする。
クーラーの風が直接肌に当たる感じは、おそらく健康には悪いんだろうけど、とても気持ちがいい。
存分に一時の快楽を堪能したわたしは、かねてからの夢、第二弾を実行するために冷凍庫の扉を開けた。
取り出したのはお徳用カップアイス【明治エ●セルスーパーカップ】のバニラ味……普段、絶対にうちでは買わないようなアイス。
この量で、定価が100円……やよいの言うディスカウントショップへ行けば、78円という低価格で買えるカップアイス。
勿論、【ラクトアイス】扱いで、乳脂肪分も少なく、味も安い一品。
それでも、やよいが美味しそうに食べているのを見て……一人暮らしをするようになったら絶対に買おうと思ってた。
『うっう~伊織ちゃん……みっともないって思うかもだけど、ここに貼りついたのが、すごくおいしいんだよ!
だからね、だれも見てないときにちょっとだけ舐めちゃうの』
やよいが恥ずかしそうに言いながら、紙の蓋の裏側に貼り付いたアイスを美味しそうに舐める姿は、今でもよく覚えてる。
確かに品性に欠ける行為だとは思うけど、勿体無いというやよいの意見も一理あるし。
何より、わたしの生活上、一生味わえないかもしれないような味を、わたしも経験したかった。
注意深く蓋を剥がすと、手に残る心地よい抵抗感と共に……わずかばかりのアイスが蓋にくっついてる。
冷静に考えると、やっぱり品性にかけるし、はしたない行為だと知りつつも……舌で直接、蓋を舐めてみた。
「…………!!?」
何だろう?この感覚……この安いアイスにも、普段わたしが食べる、ブランドもののアイスにも無い、はじめての舌触り。
蓋に付いた脂と、ほんのちょっとだけの薄いアイスの膜が重なって……不思議な気持ちにさせてくれる。
亜美真美が『あずさお姉ちゃんのおっぱい枕みたいな柔らかい舌触りだYO!』とか、ワケ分かんない表現してたけど……
多分、その表現は間違ってない。べ、別にあずさの胸を……とか、やった事無いわよ!なんとなくそんな気がするだけ。
アイスの膜に、舌を押さえつけられながらも……アイスが溶けて窮屈な感じから開放される感覚は、
今までのどんなシェフが作った食事にも無かった驚きだった。
気が付くと、蓋のアイスは綺麗に舐め取られて真っ白になっていた。うぅ……やっぱりはしたない事をしちゃったかも。
やよいは『お金持ちになったら、カップアイスの蓋に付いたのを、舐めずに捨てちゃう贅沢が出来ます!』とか言ってたけど、
それってちょっと勿体無いような……って、この伊織ちゃんが、何を貧乏臭い事言ってるのよ!?