08/05/30 20:03:58 RF6uHG7t0
UFOアイドルたるもの出張活動用の衣裳だって1着や2着は必要ですよね
大宇宙デビューした俺の嫁の嫁のかずちゃんを騙して旧体育倉庫に連れこみたい
―2ヶ月前
「……友達にも言われたんです。
いつもの私と、ちょっと雰囲気が変わったねって」
「そうか。萩原君に何も問題がなかったのなら別に良いんだ。
ただ音無君も気にかけていた様だったから、私は少し気がかりだったんだよ」
「特別調子が悪かったとか、そういうわけではないんですけど……」
「もしも何かあったときは、いつでも私たちに相談しに来なさい。
君のプロデューサーだって、きっと相談に乗ってくれるはずだよ」
「はい。ありがとうございます」
「呼び止めてしまって悪かったね。さ、皆のところに行っておいで。
ひとりでも欠けてしまっては、折角のマーチングバンドが台無しだ」
***
―1ヶ月前
「ねーねー兄ちゃん。ゆきぴょんなんかあったの?」
「急にどうした亜美。また雪歩が埋まってたか」
「うん。…あっ、もしかしたらゆきぴょんも影武者とかいんのかな?
亜美たちみたいに実は双子だったり?」
「いや雪歩は一人っ子だから影武者はいないぞ」
「やっぱそーだよね……。でも、亜美さっき聞いちゃったんだ。
穴の中でゆきぴょんがゆきぴょんじゃないって言って凹んでたの」
「さっきまでは別に普通だったぞ?
たしか真美と一緒に、衣装の採寸に行くって言ってたけど」
***
「ねぇねぇゆきぴょん。もう出てこよーよ。
ウエディングドレス汚しちゃったら、ピヨちゃんに大目玉だよ?」
「……ねぇ真美ちゃん。私、やっぱりいつもと違うかな……?」
「えっ。どして!?」
「いつもとちょっと違うねって、みんなが言ってたの。
お父さんも、かずちゃんも、社長も、小鳥さんも。
いつもの私の声じゃなかったみたいだって……」
「真美はよくわかんないけど。ゆきぴょんはゆきぴょんなんじゃないの?」
「う、うん…。でも、いつもと違うっていうのは良くないことだよね……?
ちゃんと歌えなくなっちゃったら、もうアイドル失格だよね……」
「なーんだ。ゆきぴょんはそれがずっと心配だったの?
だったら大丈夫だよ。だって、真美たちいっつも変な声ばっかりだしてるよ。
ゆきぴょんはゆきぴょんだから大丈夫。だから行こっ☆」
「真美ちゃん……」
「ねぇゆきぴょん。今日は真美と一緒の花嫁さんなんだから笑って?」
雪歩は頷きました。けれど胸の奥の不安は消えませんでした
ぐるぐると渦巻く不安は、いつしか深くて暗い穴になりつつありました
嬉しいことも楽しいことも、ブラックホールのように全部飲み込まれてしまうのです
いつも埋まって安心できる穴とは違い、その穴はたくさんの不安で溢れていました
1度穴に落ちてしまったら、2度と出ることは叶わないかもしれません
暗くて底の見えない大きな穴が、ちっぽけな雪歩に向かって囁きます
“ダメダメな歌声しか出せないダメダメなアイドルなんて、もう誰からも必要とされていないよ”と―