【花咲く卯月】如月千早29【私は歌う】at GAMECHARA
【花咲く卯月】如月千早29【私は歌う】 - 暇つぶし2ch162:SS
08/04/07 22:17:29 PzTYHLLM0
「あれ、千早ちゃんも事務所に来ていたんだ」
「春香も来ていたのね」
「うん、私の方は打ち合わせだけだから、本当はメールでも良かったんだけどね」
そう言ってから「でも、会いに来ちゃった」と可愛く舌を出す春香に千早は苦笑する。
そして、羨ましくも思う。彼女みたいに素直に気持ちを表すことが出来れば、と。
「千早ちゃんのプロデューサーさんはお出かけしているみたいだよ」
「ええ、私の方は新曲の資料を取りに来ただけだから」
春香にそう答えつつ千早は小さくため息を付く。
会えるかも、と思ってきたのだが、予定通りに外出が長引いているようだ。
机の上に彼の手書きのメモと共に置かれた資料に目を通す。
「あれ、これって」
「春香、勝手に人の物を見るのは駄目よ」
「でも、これって、興味沸かない?」
春香が千早に見せたのは『プロデュースノート 如月千早 部外秘』と書かれたノート。
「春香、そう言ったのは私達が見るのは良くないわ」
「でも千早ちゃんは気にならない? 自分のプロデューサーさんにどう評価されているかって?」
「それは・・・・・・」
確かに彼は千早のことを誉めてくれている。
しかし、それはお世辞かもしれないし、誉めて伸ばすために本心とは別のことを言っているかもしれない。
「と言うわけでちょっとだけ見てみない?」
「・・・・・・ちょっとだけよ、春香」
そう言って千早も春香の横からノートを覗く。
「うわぁ、本当に指導要綱の箇条書きだぁ」
「そうね、ちょっと意外だったわね」
何度も消しゴムを使い書き直されたノートにあるのは、無機質な言葉の羅列。
「本当に千早ちゃんのプロデュース記録だね」
「そうね。さ、これくらいにしましょう」
「そうだね。じゃあ、そろそろ私は帰るからね」
そう言って事務所を出る春香を見送り、千早は少し考える。
(本当に出会った時から今まで淡々と記録されている・・・・・・)
自分の中で彼の名前が持つ重みと意味は大きく変わってきている。
彼にとってもそうだと思っていたが・・・・・・このノートを見て、その想いが揺らぐ。
(私は彼にとって、単なる商品でしかないのかも・・・・・・)
そんな考えが頭に過ぎり、千早は軽く頭を振る。
(こんな時は大好きな曲でも聴いてから帰ろう)
レッスン室が空いていることを確認し、千早は彼の机を離れた。

(あ、もう、こんな時間)
時計を見ると九時過ぎ。随分と集中して聞いていたようだ。
(鍵を返して、私も帰ろう。あ、プロデューサー)
部屋に入ると彼も戻ってきたばかりなのか机で何かを書いていた。
「え~と、先日撮影したポスターが仕上がった。千早は表現力に加え・・・・・・」
(あのノートを書いているのね)
書類や手紙を言葉に出しながら書く彼の癖から、千早は何をしているのか察した。
「今後も今の方針で大丈夫だろう」
(本当に事務的。私は・・・・・・やっぱり商品でしかないのね)
これ以上聞いていると明日から彼と会うのに支障が出る。
千早は彼に見つからないように鍵を返し、そのまま事務所を出ようとした。
「それにしても千早の可愛さは相変わらず反則的である。
 声と容姿に一目惚れし、妥協のない性格に惚れ込んでいるのに、このままでは千早に萌え殺される」
(はい?)
急に変わった内容に千早は思わず足を止める。
「千早を嫁に出来る男が羨ましい・・・・・・って、うがぁぁ、また余計なことを書いてしまった」
彼は慌ててノートに消しゴムをこすりつける。
(もしかして、あの消しゴムで消した痕跡は・・・・・・)
そう考え千早は思わず笑みがこぼれる。ああ、やっぱりプロデューサーもそうなんだ、と。
そして、赤く染まった顔を見られたくないので、彼に気付かれないようにそっと事務所を出る。
私の夫が羨ましいと思うなら、プロデューサーがなって下さい、と囁いて。

>>71をコンビニで受信したので書いてみたが・・・・・・Pスパイラルがまだ抜けきっていないようだ


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