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昔、あるところに一人の青年がいました。
青年は手先がとても器用で、人形を作っては町に出て、
その売ったお金で生活を立てていました。
ある夜のこと、青年は夢を見ました。
なんと、青年の作った人形が語りかけてきたのです。
「私を作ってくれてありがとう。あなたの妻にしてください。」
―私のもどる場所は、無い、ってことですね……
―どうして、私に何もくれないんですか……?
―ドライブ、連れていってください……
―そう……アンタの顔なんか、二度と見たくないわ!
―やはり、翼など幻……羽ばたける、はずもないっ!
―お姫様……“ごっこ”だって!?……そんな……
―運命……それでも私は、信じたかった……
―せっかくのチャンスを……失望したわ……
―絶対止めない!だって、ハニーは、ハニーなの!
―ヤダヤダヤダーっ!ずっと、ずっと一緒だもん!!
やがて青年は町の娘と結ばれ、いつまでも幸せに暮らしました。
童話集「音の無い空」より「人形売りの青年」