08/03/28 20:22:05 tSjBvVA50
「…っと言う訳で、いやもう、焦っちゃいましたよ。俺」
音無さんとあの人が、この前の私の指の怪我の話をしている
…よ、良かった。アレは…話してない見たいね…。
彼の胸中がどんな物か判らないが、あの『治療』に付いては触れていない様だ
若し触れているなら…音無さんが、あの人の話を黙って聞いている訳が無い。ただ、既に聞いていて何か企んでいるって可能性も無いわけじゃないんだけど
「へぇ…。 だけど、やったじゃない、千早ちゃん!」
「?」
「愛しの旦那様に、そこまで大事にされてて」
「だっ!? ちょ、ちょっと音無さん! い、いきなり何を言うんですかっ!?」
「あら、だって通い妻から、若妻に昇格じゃない? そんなに愛されてるなら」
「や、やめて下さいっ! わ、私は唯、不健康な、ぷ、プロデューサーの食生活を改善してあげようとしてですね(ry」
「まっ!? ちょっと、ちょっと奥さん、聞きました?今の。 愛しの旦那様を一途に想う、幼な妻の健気な献身。 いや~ん、もう。私を萌え殺す気なの、千早ちゃんったら」
あ、ちょっと。 プロデューサーさん、何処行くんですか? ねぇ、プロデューサーさんってば」
頭痛を覚えた様なしかめっ面をすると、あの人が席に戻って疲れた顔で机仕事を始める
「ちぇっ、これからなのにぃ…。ま、いっか、又ネタ貰えちゃったし。 どうもご馳走様、千早ちゃん♪」
と、その時
「いてっ!」
あの人の、声が上がる
彼の指を押さえる姿を見て、慌てて私は駆け寄った
「ど、どうしたんですか? ………あ…」
あの時の私と同じ怪我。だけど、当然思い出すのは怪我だけじゃ無い
や、やだ……………
鼓動が急速に早くなって行く
「いや、紙捲ってたら切っちゃってさ」
結構血が滲んで来てる。机の上には既に赤い斑点が
ハンカチを差し出そうとする私を、手振りでそれを彼が止めた
「あ、いや、大丈夫だよ。 それに、そんな綺麗なハンカチ汚しちゃったら、大変だ。血は直ぐ綺麗に落としておかないと取り切れないから」
「でも…」
「あー、それより、やっぱ絆創膏いるな。押さえても止まりきらんし」
もう、鼓動も顔の赤味も収まらない
抑えても止まらないのは私も一緒です。今度は、私の……
「音無さん、プロデューサーが指を怪我しました。申し訳有りませんが、絆創膏を取ってください」
「あら、それは大変! でも良いの、絆創膏だけで?」
「ええ、止血は私が」
私の言葉はそこで終わりを告げた。すぅっと彼の指先に顔を寄せると、私の唇が彼の指を包んだから
「!?」「えっ!?」
彼と音無さんの驚く声が響く
私は指を含みながら、上目遣いで彼の表情を見つめた
あ…ビックリして固まってる…。ふふ……、でも…これでこの前とお相子なんですから。ね…?
眼だけで、ニコッと私は彼に微笑んだ
「…………ち、ち、、ち、ち、ちは…ぐはっ!」
彼の指が、私の口からスッと抜けて行く
「きゃーっ!? ぷ、プロデューサーさぁんっ! ちょっと、誰か手を貸して! 又、プロデューサーさん、ひっくり返っちゃったわっ!?」
「おーい、生きてるかー。 …あー、ダメっぽいな、コイツ。 すっげぇ鼻血だもん」
「そりゃそうだろ。 あんな決め技、彼女に使われたら。なぁ…?」
周囲の喧騒を頭の片隅に聞きながら、私は思っていた
やっぱり、今度からは2人っきりの時だけにしましょう?
この『治療』は…って