08/03/06 19:55:22 sUCcbCGM0
■休日イベント2(ランクA)
「マジですみません小鳥さん。仕事帰りにむさい男二人で押しかけて」
「あらー♪いいんですよう。美味しい手土産二つも貰っちゃいましたしー」
場所代と授業料、そして口止め料を合わせた、高級な佃煮と和菓子の包み。
今日も今日とて、千早のためのクッキー作り、練習編というわけだ。
粉の配合と手順は分かったが、生地の大きさ、厚さによって焼く時間も変わるから、ベストの物を作るには
もう少し試作が必要だ。かといって天海春香の家に何度もお邪魔できるわけじゃない。第一遠いし。
……そこで、小鳥さんの家なら事務所にそこそこ近くてオーブンがあるので、後輩のあずささんのPと共に
お邪魔してるというわけだ。千早には申し訳無いが、ここまで来た以上、作り手としての意地でもっと凄いものにしたいのさ。
「……で、例のもの、作ってくれましたか?」
「ああ、でも金属加工って面積が大きくなると大変なんだぞ……素材だってタダじゃないんだ。
後から気付いたのは間抜けな話だが、すでに高級な菓子折りよりも高くついてる。
でも、ここまで来たら完全に後へは引けん。無駄にしないためにもいい物を作るさ。ほら、こんなの」
「うわぁ!!可愛いー♪」
「……なんか、焼きゴテっていう朴訥な物体にアイドルの可愛い似顔絵が描いてあると、引きますね……」
「描いたのはお前だろうが!!俺だって金属加工所の人たちに見られまいと必死だったんだぞ!!」
そう、俺がわざわざこいつを巻き込んだのは、彼もあずささんへのホワイトデーについて悩んでいた事と、
あと、こいつは絵が描ける。しかもめちゃくちゃ上手く。有明で5000部を完売させた実力は、俺が見込んだとおりだ。
……どうしてそんな奴が社長に声をかけられて、言われるがままにプロデュース業をはじめたのかは不明だが。
そんなわけで、どうせなら手作り感を演出するために各アイドルを模ったクッキーにしようと、
シルエットラインを描いてもらい、俺がその形通りに型を作る。
そして、その上から焼きゴテで顔を転写する。秋葉原でメイドさんの顔がプリントされたクッキーがあるだろ?
あれと大体同じ要領なワケだ。美術系と機械系のタッグで生み出した共同グッズだな。
………これ、やりようによっちゃファンに売れないか?………いやいやいや!!今はそんな商業的な事は置いておこう。
「さて、そろそろシルエットラインの形に抜いたクッキーが焼きあがりますね。出しますよー♪」
小鳥さんがミトンを手にはめて、オーブンから試作品を取り出す。出来上がった千早、あずさ、小鳥の
シルエットを模ったクッキーは、こんがりと美味しそうなきつね色に焼けていた。一つを除いて。
「あら……あずささんのクッキーだけ生焼けね、一部が」
「お前……………何やってんだよ。こんな事したら焼きゴテ押せないだろうが!?」
「あ……そうか、すみません……でも、あの……ここだけは譲れないというか」
クッキーってのは普通、平たく作るもんだぞ。しかしよくもまぁ、さすがは美術系というべきか、
あずささんの最大の武器である、豊かな胸とアホ毛に立体感をつけてくれたもんだ。
「お前なぁ、フィギュアとはワケが違うんだぞ。生地に厚みが出たら焼くときにムラが出るだろうが。
大体、これ焼きゴテ押す事考えてないだろ!!金属加工をやり直せってのか!?」
「す、すみませんっ!!つい、クオリティと造形のことばっかり考えてて……」