08/03/06 03:53:14 sUCcbCGM0
■休日イベント（ランクＡ）
「……そうです、そんな感じでやさしく……うん、包み込むようにして……上手ですよ、プロデューサーさん」
「こ、こんな感じか……難しいなぁ。ただ強すぎちゃ駄目なんだな」
一つ言っておくが、変な事をしてるわけじゃないぞ。トップランクのアイドルを担当するＰってのは、
コレでも何かと忙しくてだな、地方のコンサート会場へ出向いた後、彼女に頼み込んで寄ったんだ。
とりあえず、彼女……天海春香の担当Ｐには許可を取ったし、問題は無いはずだ。
千早に今日は一緒にいてやれないと言ったとき『どこへ行くのですか？』とはげしく聞かれたが、
さすがに正直な話をするわけにはいかない。それをしたら、俺の計画が台無しになってしまうから。
「そうです。棒を上手く転がして生地をこねてくださいね。出来上がったら型で抜いて、オーブンに入れますから」
世間は来週ホワイトデーとやらで、当然俺も千早に何かしてやりたいと思っている。
が、恥ずかしながらあまり金が無いのと、ただ出来合いのお菓子を買うだけというのもイヤなので、
765プロ一番のパティシエであるアイドル、天海春香にクッキー作りをご教授願ったというわけだ。
昔、彼女が765プロのオーブンでクッキーを焼いて失敗したときがあってな……担当Ｐのために作ったクッキーが、
黒焦げになってしまったんだ。偶然そばを通りかかった俺が事情を聞いて、妙案を出した。
俺が金属を加工して、社長の金型を作ってあげたんだ。これなら黒くても納得だし、ほろ苦い味もまぁ何とかフォローできる。
案の定、ちょっと苦い社長クッキーは社内で評判となり、天海春香は彼女の担当Ｐを通して俺に礼を言ってくれた。
彼女はうちの千早とも仲良しだし、俺が先週『ガラじゃないけど、千早のために自分でクッキーを焼きたいから教えてくれ』
と頼んだところ、快く引き受けてくれた。
………ただし、765プロの調理場で事を運ぶと100％見つかってしまうため、わざわざ彼女のオフにご自宅に招待され、
天海家の台所を借りて講義を受けているわけだ。ファンに知られたら刺されるかも知れんな、俺……
「はい♪生地は完成です。ところでプロデューサーさん、頼んでいたもの、持ってきてくれました？」
「ああ、漢字の型はちょっと複雑だったけど……何とか完成したよ。……でも、直接的過ぎないか？
『天海春香より愛を込めて！！』なんて型は」
「……うちのプロデューサーさんを舐めちゃいけませんよ……これくらいやっても『親愛』の意味にしか
捉えてくれないんです…………本当はもっとスゴい文字を発注したかったんですけど、恥ずかしいから止めました……」
「そ、そうか…………大変だね」
彼女の担当Ｐは、レッスン指導から営業まで、俺達が目標とする凄腕なんだが……担当アイドルからの気持ちには、
社内でいちばん鈍感な事で有名だ。彼女も苦労してるんだろうなぁ………ん？携帯にメールが２件、来たみたいだぞ。