08/02/16 00:07:24 n/u8f/qY0
「千早、お~い」
出勤途中で千早を拾うべく、彼女の部屋に来たわけだが反応無し。
携帯の呼び出し音が微かに聞こえることから部屋にいるのは間違いない。
一人暮らしを始めたとは言え、早寝早起きの習慣は維持しているのは知っている。
つまり、現時点で彼女は携帯電話に出られない状況にある。
千早、入るぞ、と声をかけ、使用機会はないと思っていた合い鍵を使う。
「千早、大丈夫か?」
玄関に靴が置いたままなので彼女は部屋にいるはず。
暗いままの部屋の電気を付け、ベッドを見ると千早は反対向いて眠っている。
「お疲れだったんだな。とは言うものの起こさないと駄目か。おい、千早!?」
そう言って彼女の肩を揺すった瞬間に気付く。
「なんじゃこりゃぁ!?」
「で、それが千早ちゃんなわけですね、プロデューサーさん」
「ええ、そうです」
自分の手を嬉しそう握っている千早に目をやりつつ彼はため息を付く。
「でも、どうしてこんな事になったのでしょう?」
「それが問題なんですよ、あずささん。せめて原因と傾向が分かれば・・・・・・」
もう一つため息を付き、彼は天井を見上げる。
ベッドの子供が千早の幼少期なのはすぐに分かった。
とりあえずパニックになるのは後回しにして、現実に対処すべく、
子供がいる友人の家に行き、服をもらってきた。
「聞き分けがいいと言うか、素直に俺の言うことを聞いてくれたのが救いか」
「小さくなってもプロデューサーさんの事は覚えていたのかもしれませんね」
不安げに自分を見る千早を見ながら、小鳥もため息を付く。
さすがの彼女もこう言った事態は初めてだ。
「千早ちゃん、お腹空いてない」
「ううん、空いていないよ」
「・・・・・・なんてかわいいんでしょう。千早ちゃん、あずさお姉ちゃんと呼んでね」
「あずささん、千早が苦しんでいます。抱きしめすぎです」
あずさの胸で呼吸困難に陥っている千早を救い出し、彼は背中を撫でてやる。
「大丈夫、千早ちゃん?」
「うう、おおきいおっぱいこわい・・・・・・」
「こうして、千早ちゃんは巨乳恐怖症になっていくのね」
「小鳥さんも無駄な分析しないで下さい」
あずさと小鳥のテンションに流されないように彼は気合いを入れ直す。
「ともかく仕事は当分キャンセルします。幸いにも向こう三日間はレッスンだから大丈夫。
それ以降の予定は・・・・・・明日になったら、考えましょう」
「寝たから治ると言う現象ではないと思いますよ、プロデューサーさん」
前向きなように見え、現実逃避をしつつある彼に小鳥はツッコミを入れておく。
「でも、こうしていると私とプロデューサーさんの子供みたいですね♪」
「あずささん、既にこの事態に慣れきりましたね」
腕に抱きついた彼女の意外な才能を知り、彼はさらにため息。
今朝から何度ため息を付いたか。
くいくい、と腕をひく感覚に千早の方を彼は見る。
「ん? どうした千早」
「ぷろでゅーさーはちはやのだんなさまなの。
ゆびわだって、もらったんだから。うわきしたら、だめ」
そう言うと千早は胸元からネックレスに通された指輪を見せる。
おそらくは普段からそうやって肌身離さず身に付けているのだろう。
「プロデューサーさん、少しお話があります」
「だめ、ぷろでゅーさーとおはなししてもいいのはちはやだけなの」
そう言って、千早は果敢に彼とあずさの間に割ってはいる。
「千早、あのプレッシャーのあずささんの前に立ち塞がるとは・・・・・・」
「プロデューサーさんのことが本当に好きなんですね、千早ちゃん」
彼と小鳥の視線の先で千早は仁王立ちで彼あずさと小鳥を見ながら口を開いた。
「おばちゃんたちにぷろでゅーさーはわたさないからね」
後にプロデューサーは語る。女の修羅場に年齢は関係なし、と。
コンビニ無しで仕上げた。これが精一杯