08/02/09 23:36:26 gTQBcYe40
カチャンとライターの地に落ちる音が、辺りに響く
煙草に火を点けようと、振り返った状態で固まっているP
それを、少し顔を赤らめた表情で見つめる千早
「な、何です、固まったりして…」
「…あ、い、いや…す、すまん。 つい…」
その先の言葉を、気恥ずかしさからPが飲み込む
そもそも事の発端は、先達て運良く、千早の行きたがっていたクラッシックコンサートのチケットを入手した事から始まる
当然の如く千早は、二つ返事で行きたいとの意思表示をした
チャンスが有れば是非にと思っていた演奏団の物だったからだ
と言うのも、このチケット、千早で無くともクラッシックファンに言わせればかなり入手困難な物
このチャンスを逃せば、次は何時になるか皆目見当も付かない、謂わば千載一遇のチャンスにも等しい物なのだ
それだけに、千早の熱意はかなり強いものだった
と言う事で、そのコンサートに出かける件の様子となった訳だが…
こればかりは、Pを責めるのは些か酷と言う物
目の前に現れたのは、見事なまでの正装姿をした千早なのだ
もし、その姿に見惚れぬ男が居ると言うなら、是非この場に連れて来い…と言いたくなる、其れほどまでに美しい姿だったからだ
元々彼女は、人並みを遥かに超えている容姿の所謂美人系
胸部の発育を、巷ではチラホラと面白可笑しく言う輩も多いが、この正装姿は逆にそれが彼女の美しさを際立たせて居た
一見すると、線の細い少女のイメージが打ち出されている印象を受けるが、そのスラッとした肢体に流れる様にドレスがフィットしており、端正な大人びた顔立ちがしっかりとした淑女を連想させる
又、イメージカラーを基色とした深藍の中から顔を覗かせる色白の肌が、見事なコントラストとなって見る者を魅了もしていた
さて今宵の姫君、どう扱えばいい物か…
予想外の『美しき歌姫』が出現した事実を前に、Pが軽い溜息を付き天を仰ぐ
不意にPの傍らで青い影が揺れる。と同時に、腕に感じる柔らかな感触
千早が彼の腕に寄り添っていた
「お、おい…」
「どうかされたのですか?」
まだ若干赤めの顔をしながら、少し悪戯っぽくPに微笑む
「あ…、いや…その……だな」
「私をエスコート出来る男性は、目の前の人しか居ないハズですが…?」
少し、ツンと澄まして千早がPに告げる
「はぁ…」
彼が、今度は先程より少し深い溜息を付いた
心の中で、『ファンに見つかったらブン殴られる』と『今宵の歌姫、独り占め』が乗った天秤が、後者に傾く音を聞きながら