08/02/03 07:18:17 NeSOFbA20
「プロデューサー」
「ん?」
「私……私たちって、とても幸せ者ですね」
「そうだな」
飛行機の中で、私はそのことを強く実感していた。
―本当に幸せ者だと。
「千早ちゃん、海外に行っても頑張ってくださいね」
「ファイトだよ、千早」
ユニットを組ませてもらったこともあるあずささんと真。
「千早お姉ちゃん。亜美のこと忘れないでね」
「真美のことも忘れちゃやだよ」
いろいろと振り回されたけど、いつも元気を分けてくれた亜美と真美。
「健康には気を付けるのよ。歌手は体が資本なんだから」
「向こうでもトップになりなさいよね。……アンタならできるわ」
挫けそうになった時、叱咤激励してくれた律子と水瀬さん。
「千早ちゃん。これ、持っていって。私の好きなお茶の葉なの」
「ミキからはこれ。このおにぎり、美味しいよ」
独特の空気でいつも和ませてくれた萩原さんと美希。
「千早さん、外国でもいーっぱい大活躍してくださいね」
一緒にラジオをやらせてもらった高槻さん。
「千早ちゃん。落ち着いたら連絡先を教えてね。お姉さん、絶対に手紙書くから」
実の姉のような存在だった音無さん。
「力いっぱい歌ってきたまえ。期待しているよ」
常に見守ってくれていた社長。
「……千早、ちゃん。……っく。……ぢはやぢゃーん」
そして、親友の春香。
忙しい中、わざわざ空港にまで見送りに来てくれた優しい人たち。
今になって改めて思う。私はこんなにも素敵な仲間たちに囲まれていたんだと。
「あ、ありが……と。わ、私……」
泣かないと決めていた。さようならは笑顔で、そう決めていた。
なのに、涙が溢れて止まらない。
「ありがとうございました」
喋れなくなってしまった私に代わってプロデューサーが礼を述べる。
「765プロの代表として、海の向こうでも大暴れしてきます!」
力強い宣言。それが私たちからの別れの言葉だった。
「頑張りましょうね、プロデューサー」
「ああ。みんなの期待を裏切るわけにはいかないしな。でも、茨の道だぞ。覚悟はいいか?」
「大丈夫です。例えどんなに辛くても負けたりしません。
私にはプロデューサーが、そして765プロの皆がついていてくれますから」
「その意気だ。
―千早、海外のステージでもトップを目指すぞ。その為にも、今まで以上にビシビシとレッスンするからな」
「はい。望むところです」
こうして私の、『765プロ所属アイドル如月千早』の新しい挑戦が始まった。
大切な仲間たちから貰ったあたたかさを胸に抱いて。