08/01/30 02:27:34 qWj+zs020
■寄り道(ランクC)
午前中の、まだまだお昼には遠い時間。765プロ近くの神社に、トレーニングウェアを着た二人の姿があった。
ロードワークの仕上げに石段を登り、鳥居をくぐった場所がゴール。
鍛えているとはいえ、10キロものロードをこなせるような存在といえば765プロには二人しかいない。
「はぁっ、はぁっ……やっぱり……長距離では………千早に、勝てない、か……」
「ふぅ、ふぅ……でも、短距離走ではとても真にはかなわないわ」
一人より二人のほうが、トレーニングの効率はいい。お互いを意識するから頑張りやすいしペースも掴める。
そして、何か事故でもあったときは対応力が違う。
千早と真はトレーニングのメニューが同じくらいのレベルなこともあり、時間の合うときは一緒に走っていた。
そしていつのまにかコースが出来、仕上げはこの石段を登り、神社にお参りしてからダウンを行って終了。
手水屋の綺麗な井戸水で水分を補給し、事務所に戻るというのが、いつの間にか二人で作ったコースとなっていた。
「……ねぇ、千早は毎日何を熱心にお願いしてるの?」
「え?わたし……その……」
「あ、こんな時はまず自分から言うのが筋だよね。ボクは父さんが今日のレースで無事完走できますように、って」
「わたしは……いつも同じよ。765プロのみんなやプロデューサーが、事故とか病気にあわずに無事過ごせますように、って」
「自分の願いとか、しないの?ボクが言うのもなんだけど……胸とか、胸とか……あと、胸とか」
「そういうのは、神様に頼むことじゃないと思うから。真もそうでしょ?」
胸のことでからかわれると真っ赤になって否定するかと思えば、かなり冷静に答える千早。
対する真も千早をいじろうとする気持ちは欠片も見当たらない。
「うん……父さんが言ってたんだ。顔とか身体とか、あれがいいこれがいいとか言ってたらきりが無いって。
大事なのは自分に与えられた材料で精一杯戦うことで、材料に不足を言って人任せとか何もしないとか、
そんな人間には絶対なるな!って。だから、自分の力でどうにもならない事だけを神様にお願いしたいんだ」
「……そうね。自分に落ち度が無くても不幸な事故はあるものだから」
真からは見えない位置で、千早の表情が一瞬、曇る。
「父さん、レーサーなんて仕事してるし。サーキット内はできるだけ事故を防ぐように出来てるけど、
やっぱりマシンの限界ギリギリの何百キロってスピードで走るんだ……ボク、カートに乗ってたこともあるけど、
制御を失って壁に当たるときって……死ぬかと思うくらい怖いんだ。いくらその壁はタイヤで出来てて、
当たっても命の危険は無いとしても。だから、今日だけは父さんの無事をお願いしちゃった。
千早はその分、みんなをお願い」
「ふふっ……わかったわ。真のお父さんも、無事は勿論だけど優勝できるといいわね」
「そこは父さん自身の実力さ。神様に無事を祈る分、ボク達は頑張って結果を出そう!」
「ええ。あなたのそういう考え方、好きだわ」
「へっへー……何だか照れちゃうな。あ、でも勿論胸だって大きくなりたいよ。女の子だし」
「じゃあ、わたしが実践してる秘密のメニュー……やってみる?食事から変える本格的なのだけど」
「……やってるんだ。『興味ありません』なんて言うキャラだと思ったのに」
「女の子、ですから」
「あっははは……」
「くす……ふふっ」
クールな外見に、熱き情熱を持つ二人の間には、清涼感漂う風が流れていた。
そしてその隅に、録音機材を持ってうなだれる人影が一つ。
「うぅ……まぶしい、眩しすぎるわ……神社でこっそり『胸を大きくしてください』ってお祈りする
二人の姿を隠し撮りして萌え萌え~・計画がこんな……ふたりとも眩しいくらいに綺麗で真っ直ぐな心……
ああ、そう!汚れていたのはこのわたしだけ!!はぁ………帰ってお風呂、沸かしておいてあげよう」
※真の出番が少ないと思ったので、ためしに投下。胸の薄さをさんざんネタにする俺達紳士だが、
千早の本気の優先順位は 1:Pを筆頭に大切な人たち 2:歌 3,4が無くて5に自分。
そんな事を分かっているからこその妄想と千早いじり。それが俺たちのジャスティス……だと思う。