08/02/01 02:20:36 Y2UDB3a90
>>192
>全員プロデュースというか…複数プロデュース?
ということであれば、こんな感じでもいいのかな…と思って書いてみたけど、難しいね
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「プロデューサーさん! クッキー焼いてきたんです。お茶にしませんか?」
「お。気が利くねぇ、春香。それじゃ、休k―」
と、プロデューサーが言い終える前に、携帯電話の着信音が鳴った。
PiPiPiPiPi……
「はい―」
『ぷ、プロデューサー、助けてください~!』
「どうした、雪歩?」
『犬がいて、事務所へ戻れないんです……』
「何だって? 今、どこにいるんだ?」
『角のコンビニのところなんですけど……』
「それじゃ、近くまでは来てるんだな。すぐに行くから、待ってろ。くれぐれも穴掘って埋まったり
しないようにな」
『はい、お待ちしてます。早く来てくださいね』
「わかった。それじゃ、切るぞ。―春香!」
「何ですか、プロデューサーさん?」
「ちょっと雪歩を迎えにいってくる。すぐに戻るから、休憩室にお茶の用意をしておいてくれないか?」
「わかりました。任せておいてください」
「じゃ、行ってくる」
と、そのまま飛び出そうとするプロデューサーを呼び止める。
「ちょっと待ってください、プロデューサー!」
「どうした、千早?」
「すぐ近くとはいえ、外は寒いです。ちゃんと上着を着ていってください」
コートハンガーからプロデューサーのコートを取って、彼に手渡す。
「プロデューサーの体は、プロデューサーひとりのものではないのですから、もっとご自愛していただか
ないと困ります」
「ありがとうな、千早」
コートに袖を通してから、プロデューサーが私の頭をそっと撫でてくれた。
「あ……」
思わず頬が熱くなり、慌てて手で押さえる。
「それじゃ、行ってくるよ」
ドアを開けて出て行くプロデューサーの姿を見送って、私は溜息をつく。
ここ最近、プロデューサーに優しくされるたびに、彼のことを独り占めしたいという気持ちが湧いてくる。
だけど、プロデューサーは私一人のプロデューサーではない。
私の他に、春香や萩原さん、高槻さんなど、複数のアイドルを抱えて、毎日を忙しく過ごしている。
今度は、事務所の新人アイドルである星井美希のプロデュースも手掛けるらしい。
そうなると、私がプロデューサーと過ごす時間は、ますます短くなるだろう。
もし、プロデューサーが私一人を担当しているのだったら、もっと多くの時間をレッスンに費やすことが
でき、高みを目指す上で大きな力を得ることができるのに。そう思ったことは、一度や二度ではない。
けれど、その望みがどれほど浅ましく、自己中心的であるかということも、わかっているつもりだ。
私がプロデューサーを独占すれば、当然のことながら他のアイドルのプロデュースは滞り、ひいては
765プロダクションの経営にも影響を及ぼすだろう。それでは、本末転倒だ。
それにしても、ほんの数ヶ月ほど前まで、他人のことをここまで気に掛ける日が来るなんて、予想だに
しなかったこと。
それだけ、プロデューサーの存在が、私にとって大きなものであるということなんだろうと思う。
でも、私だけがそう思っているのではない。春香にとっても、萩原さんにとっても、プロデューサーは
掛け替えのない存在なのだ。
だから、独り占めなんてできるわけがなくて。
私のプロデューサーへの思いは言葉にできず、ただ募っていくだけで。
これから先も、ずっとこんな気持ちを抱えていかなくてはいけないのだろうか?
そんなことを思って、また溜息をついてしまう私だった。