08/01/21 22:38:46 FQF+0rSk0
その時間だけは、ゆっくりと時が流れていく
歌う事で、忘れられると思っていた
歌い続ける事で、忘れたい過去は記憶の底に積めるのだと思っていた
だけど、違った
それは現実から逃げる事と一緒だった
辛くても、悲しくても、苦しくても…それは、私にとっては確かな現実なんだ
受け止めなきゃいけない、大切な事実なんだって
そして、あの人は気が付かせてくれた
歌は、そんな悲しい事の為に使う物じゃ無い事を
新しい居場所を見つける為の ――― 本当の私を見付ける為の『大切な、もう一つの私』だって事を
それを、あの人に気付かせて貰って
もう一つ、私は、或る事に気が付く
何時からだろう？
一人でいる事が、辛くなったのは
如何してだろう？
あの人が傍に居ないと、寂しくなってしまったのは
自分が弱くなったからだ、と人は言うかもしれない
でも、それは違う
私は、始めから強くなど無いのだから
弱さから心の扉を閉ざしていただけの、単なる臆病な子だったのだから
あの人が、少しづつ扉を開いて私を連れ出してくれたから
こんなにも光の溢れる世界だと言う事を、思い出させてくれたから
その手と、その瞳と ――― そして、その心で
きっと、あの人の優しさに触れたからなんだと思う
今となっては望むべくも無い、心の何処かで渇望しているその暖かさを再び与えてくれた、あの人の
だから、私の心が、あの人を求めているからなんだと思う
今日も、少しづつ ――― 少しづつ、私はあの人を好きになっていく