07/12/30 03:02:49 CwEZS9ur0
■ある日の風景(ランクA)
業務日誌をまとめるためにざっとチェックをしてたわたし、音無小鳥は、隅っこに見慣れない文字を見つけた。
『今夜……お伺いしますね』
この、かきかたのお手本みたいな字はきっと千早ちゃん。
わたしに何か、相談事でもあるんだろうか?しかもわざわざ人目を避けて、
こんな所に書き込むあたり、プロデューサーには出来ない話……だと思う。
その日のわたしは、手早く残った業務を片付けて、早めに仕事を上がった。
さすがに年下の女の子には、だらしない様は見せられない。
……といっても、独身の男(例えばプロデューサーさん)みたいに部屋の中がエントロピーの法則に
従いまくってカオス状態と言うわけじゃない。
でも、ここは頼られているんだからいっちょ頼もしいお姉さんでいようじゃないの!
そんなわけで、わたしは押入れの中まで気合を入れての大掃除。
その後、買い込んできた食材を調理して、千早ちゃんが軽く食べられそうなものを用意。
加湿器もきかせて、準備万端いつでも来い!!の臨戦モードにお部屋をクラスチェンジさせた。
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それなのに、一向に千早ちゃんは表れない。携帯電話を見てもメールの一つも無し。
もう夜の10時を回っているし、未成年はTVに出てはいけない時間。
ひょっとしたらこっちへ来てる途中かもしれないけど、万一千早ちゃんが事故にでも巻き込まれていたら大変だ。
わたしは、安否の確認の意味も込めて、千早ちゃんに電話をかけてみた。
『……はい、もしもし』
「千早ちゃん!今どこ?無事でいる」
『え、あ、はい……無事、ですけど……音無さん、何の御用なのでしょう?』
わたしからの電話に、本気で驚いている千早ちゃん。演技の可能性は……多分無い。彼女に限って。
「御用も何も!今日わたしの業務日誌に『今夜伺います』って書き残したでしょ?』
『あ!?』
声のトーンが『しまった!?』と言ってるのが分かる。
でも、その根拠は約束を忘れてたとか、すっぽかしたという類のものじゃないのは直感で分かった。
だって、電話の後ろの方で『え?小鳥さん?』という、聴き慣れた声がきこえるから。
『あ、あのっ、すみません!本当にすみませんっ!!あの日誌……てっきり……その、
プロデューサーの机の上にあったものですから、くっ……』