07/12/15 07:53:40 77k2GiSn0
「あの……お待たせしました」
「ただいまー♪ファンの男の子、泣きながら千早ちゃんに握手を求めてたわ。可愛いのー♪」
千早に話を聞くと、まさか国民的アイドルがいちファンの家へ来るなんて思ってなかったらしく、
しどろもどろになりながらも滅茶苦茶喜んでいたらしい。サイン入りCDに生アイドルの握手、
さらには10分ほどのトークもありの最高のクリスマスプレゼントになったようだ。
(プロデューサーさん……さっき探した最短ルートで事務所へ戻ってください)
(へ?どうして……CDはまだあるし、次のファンの家へ向かった方が……)
(千早ちゃんのためよ。何も言わずにわたしを信じて……)
千早に聞こえないように言うって事は、何かあるんだろうな。ふだんはやり込められてばかりだが、
こういうときの小鳥さんは頼りになる。俺は彼女の指示に従って765プロへ急いだ。
15分ほどして事務所に着くと、化粧を直すから、と二人は自社ビルへ入っていった。
心なしか急ぎ足で、もじもじしながら歩く千早を見送り……俺はやっと彼女の気遣いを知った。
そうだ!千早の人気と知名度だと、うかつに適当なトイレに入れないんだ!!
ファンの家で借りるというのはさすがにマズいし……何が仕掛けられてるか分かったもんじゃないし、
コアな男性ファンから見ると、アイドルが化粧室に行くってのを見るだけでイメージが崩れるらしい。
さらには、最近TV局内に盗撮カメラが仕掛けられてたりする世の中だからなぁ。
それに、ファンのお宅に上がりこむ以上、お茶の一杯も出されないわけが無い。
千早のことだから、『お構いなく』と言いつつも、淹れてくれた人のために一杯くらいは飲むはずだ。
それを見越して、さらに俺に直接悟らせないように話を振ったというわけか……まったく敵わないな。
いくら俺が千早と親しくなっても、女の子特有の悩みを相談できる上で、やはり小鳥さんは
千早にとって……いや、765プロのアイドル全員にとって、無くてはならない『お姉さん』なんだ。
「お待たせしました、さあ行きましょうプロデューサー」
「欲しいよ♪欲しいよ♪プレゼント~絶対あげると決めちゃった~♪」
さっきまでの苦しそうな表情が消え、ハイテンション+晴れやかな顔の千早と、
相変わらず伝説のアニメにおける3悪人の替え歌で盛り上がる小鳥さんに安心しながら、
俺は次のファンのお宅へと、765プロのオンボロ車をアラホラサッサとばかりに発進させた。
※>>90氏及びスレの皆様、先日は文章量の限界を読めずレスを消費してしまい、申し訳ありませんでした。
今後も微妙に変なネタに走るSSですが、キャラの魅力は外さぬ様気をつけますので、
どうかまたよろしくお願いします。