08/02/12 00:23:54 szRAdUt60
まだ少し時間が余っていたので、私は病院内を散策することにした。
勿論他の患者さんに迷惑をかけぬようにやっている。
病院というのもやはり様々な人がいる場所だ。
ひょっとしたらこの中に私が探している
我が社のアイドル候補生をトップアイドルへと導いてくれるプロデューサーや
次代のトップアイドル候補がいるかもしれないな。
しかし病院にいるような人物では体力的に少々不安だが…いやアイドルは儚げな感じプラスに働くかも知れん。
そんなことを考えて病院内を散策していると、病院には似つかわしくない大きな足音がまた聞こえた。
その音はやはり私のほうへと近づいてきて、当然のように私は腰から下に後ろからの軽い衝撃を感じた。
「あいたたた…ぶつかっちゃったよ」
案の定私に走っていたらぶつかってしまったらしい。
思ったとおり子供、と言って差し支えないだろう容姿。
勿論、頭の左側の上に向かって結っていた髪が特徴的な娘だった。ん?左??
「ごめんねーおじさん。ちょっと急いでるんだー」
「待ちたまえ」
私は彼女の腕をがっちりと掴んでいた。先ほどと全く同じ光景だ。
「おじさん何すんのさー!?離してよー!」
全く同じ言葉を彼女は発した。
「先ほど注意したばかりだろう。病院内で走るのは感心しないな」
「さっきって何ー!?真美そんなのされてないよー!!」
「いやいや、ついさっきロビーで会ったばかりではないかね」
いくらなんでもこんな直ぐに忘れるはずは無いだろう。今度こそしっかりと注意して止めさせなくては。
しかし彼女は私の言葉を聞いた途端、またしてもにやけた顔で
「なーにー?おじさんもしかしてナンパ~?んっふっふ~亜美の魅力にメロメロって感じ~?」
先ほどと同じ言葉。どこか違ってる気もするが、それよりももう私は忘れられてしまったのか?
正直少し悲しかった。
「でもさーちょ~っと手が古いんじゃなーい?今時そんなんじゃ誰も引っかからないって」
既聴感に満ちた台詞が続く
「それに真美としてはもっとイケメンで『はーとふる』な感じじゃないとねーおじさん真っ黒だしー」
ここは微妙に違う気がする。こっちの方が傷が深い。
また一度話を切って、今度こそしっかり注意しなければと思ったとき
「あー真美見っけー!!」
彼女とは別の方向から彼女の声がした。そちらを向いてみるとそちらにも彼女がいる。
「あーもう見つかっちゃったよー!おじさんが離してくれないから見つかっちゃったじゃんかー」
彼女が私を非難するが、私は現状がイマイチ把握できない。
同じ顔で同じ声の人間が2人いるということはつまり…
「君達はその…双子…なのかね?」
「「うんそうだよー」」
双子らしく見事なシンクロだった。なるほど見間違えるわけだ。
違和感を感じた髪の毛の結びの位置以外はほとんど同じといっていい。
「これで一勝一敗だね真美」
「見つからなければ真美の勝ちだったのにー。じゃあ次は何して遊ぼっか?」
「んっふっふ~実はもう考えてあるのだよ真美君。じゃじゃ~ん!」
「あーそれ松葉杖だね亜美!」
「そう次は『松葉杖レース』っていうのはどう真美?」
「面白そうー!どこからどこまでにする?」
「そうだね~じゃあ向こうの階段の入り口から…」
「亜美!真美!何してるの!!」
二人のあまりの勢いに注意することすら忘れていると、二人を注意する声が耳に飛び込んできた。