【空気の読めない】高木順一朗part1【高木社長】at GAMECHARA
【空気の読めない】高木順一朗part1【高木社長】 - 暇つぶし2ch256:SS
08/01/20 11:03:24 6KQj4N4d0
 765プロダクションの社長の高木だ。皆、風邪などひいてはおらんかな?
 我が社のアイドル候補生オーディションの二次選考も、ようやく後半戦に突入した。
 今日も、面接の予定が一件入っている―のだが、困ったことに肝心の応募者が来とらんのだよ。
「社長!」
「おお、音無君。連絡は取れたかね?」
「えぇ、さっき携帯電話とつながったんですが、何でも道に迷ったので少し遅れる……と」
「…………」
「もう既に予定の時刻から三十分は遅れていることは伝えましたけど……」
「けど、どうしたのかね?」
「三浦さんって、随分とおっとりした方のようで、こちらの意図がちゃんと伝わっているのかどうか、
あまり自信が……」
「ふむ……。まぁ、しばらく待ってみるか。今日は、特に予定もなかったな」
「そうですね」
 と頷いてから、音無君は自分の席に戻り、事務仕事の続きを始める。
 私は、一次選考通過者の書類をチェックしつつ、今後のプロジェクト展開について練ることにした。

 そうして一時間半が過ぎた頃、事務所のドアが開いて一人の女性が入ってきた。
「遅くなって、すみませんー。三浦と申しますー」
 なるほど。おっとりした物腰なのは確からしい。
「音無君」
「はい。三浦さん、こちらへどうぞ」
 音無君が三浦君を会議室に案内している間に、私は書類をまとめる。
「社長。三浦さんを会議室にお通ししました」
「ありがとう。それでは、行ってくるよ」

 軽くノックをしてから、会議室のドアを開ける。
「どうも、765プロダクションの社長の高木です。今日はよろしく」
「はじめまして。三浦あずさと申しますー。よろしくお願いします」
 うーむ。このやけにのんびりした口調で話しかけられると、何だか調子が狂うな。
「では、さっそく面接を始めようか」
「はい」
「ところで、君はよく道に迷うほうなのかね?」
「そうなんです。初めて行く場所だと、必ず道に迷ってしまうんです。よく行く場所でも、なかなか
道を覚えられなくて、変なところへ辿りついてしまったり。方向音痴なのはわかっているんですけど、
どうやって治したらいいのか。こういうのって、普通のお医者さんでいいんでしょうか?」
「……いや、どうなんだろうね」
 いかん。軽い前振りのつもりだったが、このままでは世間話で面接時間を潰しかねんぞ。
 早々に本題へ移るとしよう。
「オホン。……それでは、アイドル候補生に応募した動機を聞かせてもらえるかな」
「その、短大を何とか卒業できたので、アイドルを目指してみようかなと思ったんです。新しいことに
チャレンジしてみたいなと思って」
「ふむ……」
 それも確かに動機のひとつなのかもしれない。だが、目の前のおっとりしたお嬢さんがアイドルという
派手な職業を目指すからには、何かもっと大きな理由があるに違いない。そう思われた。
「それだけが理由かね?」
「それだけ、ではないのですけれど……」
「三浦君」
「はい」
「初対面の私には、言いにくいこともあるかとは思う。だが、君が重大な決心をしてオーディションに
応募したように、私もまた並々ならぬ決意でもってアイドル候補生を選考しているつもりだ。その結果が
応募者の運命を左右することも自覚している。だからこそ、数多ある職業の中から、敢えてアイドルを
志した理由。アイドルでなければならない理由。それを教えてもらうことはできないものだろうか?」
 私の問いに、三浦君は唇をきゅっと結んで首を振った。
「確かに、別の動機はあります。でも、今は言えません」
「何か、問題でもあるのかね?」
 私は重ねて問うたが、やはり三浦君は首を振るばかりだった。
「今は、社長さんにきちんと説明する自信がないんです。けど、決して遊び半分でアイドルを目指して
いるわけではないんです」
 そう言って、三浦君は口を噤んだ。


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