08/06/14 14:30:15 gTN+FrU0
霧たなびける戦場を、二人して駆け行く父子あり。
子、はるかに敵軍の姿を見つ。
子「父よ、あれに敵の影が」
父「わが子よ、あれはただの霧ぞ」
敵、喊声を上げつつ、戦場を進めり。
子「父よ、あなたより鬨の声が」
父「息子よ、あれは秋風の音なり」
敵、さらに父子に迫り、父子の姿を認めたり。
子「父よ、あれに敵の槍が」
父「ただ古き柳が枝の光りたるのみ」
暫くの後、敵の矢、子の胸を貫けり。
子「父よ、助けたまえ。敵、我を殺さんとす。」
父、恐れ震えつつ子を抱き馬を駆れども、
追いすがれる敵に討たれ、
子もまたそこで息絶えぬ。