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１０数年前、ばあちゃんがヨボヨボの体と弱々しい手で握ってくれたおにぎり。
もう殆ど光を失った目のせいか、形はボロボロで海苔も上手く巻けておらず
お世辞にも旨そうとは思えなかった。当時、ばあちゃんと同居してるってのを
何故かカッコ悪く思ってた俺は、それもあってか「そんな汚いの食えないよ」
と冷たく言い放ってしまった。耳が遠いハズだったばあちゃんだが、聞こえなくても
俺の態度で分かったのだろう、凄く悲しい目をしながら「そうだよね・・・○○ちゃん
キレイ好きだものね・・・」と言い、手に付いた米粒をかっぽう着で拭きながら
台所に戻って行った。
それから暫くして、ばあちゃんは亡くなった。俺は自分のした事の残酷さを悔いながら
葬式でボロ泣きした。
多分、あのおにぎりを食べていたら、今の俺はニートなんかじゃ無かったのではないか？
だってあれは、「まずそうなおにぎり」なんかでは無く、ばあちゃんの優しさ溢れる
「特製おにぎり」だったのだから。