08/08/25 19:44:30 U5uOSw0W0
言葉とは不思議なものである。口にする個性によっても、場の空気によっても、言葉は微妙に形を変え、しかも受け手側にも様々な解釈のちがいがある。言葉は意味ではなく、もっとも近い 言 葉 で表現すれば「ニュアンスを伝えるもの」と捉えた方が適切なのかも知れない。
ラヴィアンは「あなた」は多くの女性が他意なく使用している一般的な言葉であると一応主張してみたが、アグリアスにとっての「あなた」は特別な意味をもっているようで、首を縦にふることはなかった。
その後いくつかの提案も、ことごとくアグリアスのお気に召さない。
「そんなのはイヤだ! もっと他のを考えてくれ!」
わがままな隊長である。
アリシアはぐったりと疲れ果て、
「あーもー、わっかんない。もういっそ、はっちゃけて『おう、ラム公』とか『てめーよう』とかでいいんじゃないですか?」
などと無茶苦茶なことを言う。
「ふん。検討にもあたいせんな。わたしは山賊の親分ではないのだぞ」
いきなりアリシアが立ち上がった。
酔っているとはいえあんまりな横暴に、ついに怒りだしたのかとラヴィアンは慌てたが、そういうわけではなかった。
「それですよ、山賊の親分ですよ!」
「なにを言ってる?」
興奮気味のアリシアは席に戻ることも忘れて熱弁する。
「わたしたち、ずっと前に山賊退治に参加したことがあったじゃないですか。他愛ない犯罪者の集団だったわけですけど、わたしひとつだけ感心したことがあったんです。あの人達って団結力がすごく強いんですよね」
「ああ、確かにああいう人たちって仲間との絆を大切にするみたいね。杯を交わして義兄弟、とか言ったりして」
「そうそう。隊長もあの人たちに倣うんです。ラム公ぐらいは当たり前。てめー、とか、おめーはよー、などもいいですね。小振りのひょうたんを腰に引っさげて昼間から酒をかっくらってください」
「ください、と言われてもな。品のない言葉は使いたくない」
「ラムザだってそんなの嫌がるわよ」
アリシアは、ちっちっち、と指を振る。