アグリアス様に萌えるスレ Part42at FF
アグリアス様に萌えるスレ Part42 - 暇つぶし2ch2:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/14 21:01:45 2IExYYoQ0
今だ2げtズザーーーーー!!

3:(^ω^)お?
08/02/14 21:16:05 pfUnMWbU0
2ゲット也!

4:(^ω^)お?
08/02/14 21:16:48 pfUnMWbU0
>>2
何をする貴様ぁ~!

5:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/14 22:08:39 /7JK5lyg0
>>1
聖光爆裂乙

6:バレンタインの罠 1/5 ◆AfmW.MY95A
08/02/14 22:57:45 y34O+oBC0
バレンタインなので罠を仕掛けてみた。
やり方は簡単。
隊の男連中の荷物にチョコレートと手紙を入れておき、反応を観察するだけ。
ちなみに手紙にはこう書いてある。

『今宵、日付の変わる時間、宿屋の裏の木の下で待つ。
 アグリアス・オークスより愛を込めて』

ラッドの場合。
荷物の整理中、鞄の中のチョコレートと手紙に気づくと、静かに周囲を見回した。
私が潜伏で隠れている事など知る由もなく、彼はしっかりと手紙を読み、
チョコレートを鞄の中にしまい直した。
今宵が楽しみである。

ムスタディオの場合。
宿屋の部屋の机の上に置かれている箱に気づきうろたえるムスタディオ。
箱に飛びつき、手紙に気づき、即座に読み始め、読み終える。そして叫んだ。
「我が世の春が来たぁぁぁ!! ユニバァァァス!! チョコレートである!!
 童貞的な意味で―アバヨ ダチ公!!」
うん、こいつ馬鹿だ。今宵が楽しみである。

マラークの場合。
「と、と、と、年上最高ォォォオオオッ!!」
手紙を読んだ途端、鼻血を噴出して倒れた。意外とウブな奴。

7:バレンタインの罠 2/5 ◆AfmW.MY95A
08/02/14 22:59:06 y34O+oBC0
オルランドゥ伯の場合。
チョコレートと手紙を発見しました。手紙を読んでいます。
あ、食べた! 手紙食べた! チョコじゃなく手紙を食べおったあのジジイ! ヤギか!
続いてチョコレートを……食べ……食べ……食べなぁぁぁいッ!
エクスカリバーの前にお供えして手を合わせて何か祈ってる! 祈ってるよ!

ベイオウーフの場合。
さてアグリアス様の誘惑に負け浮気に走るかデコ男?
あ、手紙と包装紙を焼却処分した。チョコレートは即効で食った。
それから花屋に薔薇を買いに行った。証拠隠滅しつつ浮気する気満々です!

アリシアの場合。
葛藤している。手紙を読んで葛藤している!
「まさかアグリアス様が……でも、私はノーマル。かといって断るのも忍びない……。
 傷つけずに断るにはどうしたら……どうすれば……ううっ」
誘いに乗る気は無いみたいだけど反応面白ッ。

ラファの場合。
「ふ、不潔だわ! 女同士でだなんて!!」
チョコレートを窓からぶん投げて、泣きながら部屋を飛び出してった。悪い事したなぁ。

メリアの場合。
終始無言でした。でも手紙どころか包装紙まで丁寧にたたんでしまいました。
チョコレートは舐めて溶かして食べる派らしく、時間をかけて楽しんでおられました。

レーゼの場合。
「女同士というのも………………有りねッ!!」
何かに覚醒したようです。くわばらくわばら。

大本命、ラムザさんの場合。
「……ふふっ、可愛い事をする」
よっしゃぁ! ガッツリとはまってくれました、色々楽しみです。

8:バレンタインの罠 3/5 ◆AfmW.MY95A
08/02/14 23:00:06 y34O+oBC0
夜、日付が変わるちょっと前の時間。私は木陰に隠れて見物を開始。
最初にやって来たのはベイオウーフ。赤い薔薇を持っています。
続いてムスタディオがやって来て、ベイオとなにやら口論しています。
さらにマラークが何を血迷ったのかタキシード姿で登場。
その次はメリアとレーゼが睨み合いながらやってきて、
先に到着していた男達に気づき乱闘に発展。
レーゼのパンチがベイオのテンプルに直撃しました。
ラッド、アリシア、オルランドゥ伯、そしてラムザさんはまだ来ません。
はてさてこの死闘、いったいどうなるやら。
お、誰か来た。あの長い金の髪はアリシアね!
……って、あら? アグリアス様だ。
集まった全員がアグリアス様に詰め寄っています。
そしたらアグリアス様が何かをお話になられて、
ショックを受けた皆様は慌てふためきました。
そしていっせいに叫びます。
『ラヴィアンはどこだーッ!!』
やばい、バレた。
私が逃げ出そうとした瞬間、鬼の形相のメリアに気づかれてしまう。
そして、いっせいに襲い掛かってくる騙され連中。
私は全力で逃げた。逃げ出した。しかし捕まるのは時間の問題。
「おい、こっちだ」
と、突然現れたラッドが私を男子トイレの個室へと連れ込んだ。
やばい、貞操の危機。
「ここなら見つからないだろ。ほとぼりが冷めるまでおとなしくしてろ」
あれ? 何この展開。もしかして私の罠バレてました?
「まぁな。筆跡がどう見てもお前のだ。
 騙そうとしたにしろ、チョコをくれた礼に助けてやる。
 朝までここに隠れてるんだな、アバヨ」
こうして私は難を逃れたのだけれど、明日が怖い。

9:バレンタインの罠 4/5 ◆AfmW.MY95A
08/02/14 23:01:07 y34O+oBC0
「アリシアが置手紙を残して失踪した?」
ラムザは目を丸くして驚き、アグリアスから受け取った置手紙を読んだ。
『アグリアス様の想いには応えられません。しばらく旅に出ます。アリシア』
「……これは……あの悪戯が原因と考えていいんでしょうか」
「だろうな。ラヴィアンの阿呆が見つかったら、すぐアリシア捜索に出てもらおう」
「それにしても、思いつめて失踪とは……アリシアはつくづく真面目ですね」
「メリアやレーゼのように誘いに乗ってこられても困るがな……」
と、アグリアスは昨夜の出来事を思い出して身を震わせた。
まさか同じ女性から迫られるなど、夢にも思っていなかったからだ。
「ラファは誤解を解くのに一時間もかかったが……そっちの方がまだマシだ。
 私はこれからメリアとレーゼにどう接すればいいのだ?」
頭を抱えるアグリアスを、ラムザはそっと抱き寄せる。
「まあ、恋に失恋はつきものですよ」
さてここで種明かし。ラムザが罠にかからず、アグリアスがやって来た理由。
それはアグリアスがすでにラムザへチョコレートを渡していたからだ。
なのに宿屋に帰ってみれば、再びアグリアスからのチョコレートが。
ラムザはすぐこれが誰かの悪戯だと気づき、アグリアスに相談した。
憤慨したアグリアスは、手紙の主を突き止めるため指定の場所に向かったのだ。
そうしたら騙された阿呆達の大乱闘に遭遇、という訳である。
「騙されなかったラッドとオルランドゥ伯はさすがですね」
「ラッドにはすでにアリシア捜索に出てもらったが、見つけてきてくれるだろうか」
「儲け話組同士、行動パターンは読めるから大丈夫……だそうです」
「……しかし……その……あれだな。昨夜はあの手紙のせいで……」
ラムザの腕の中でアグリアスは身をよじり、
頬を紅潮させながら上目遣いで見つめてきた。
あまりの愛おしさに、ラムザは彼女の額へと口付けする。

10:バレンタインの罠 5/5 ◆AfmW.MY95A
08/02/14 23:02:37 y34O+oBC0
こうしてラムザとアグリアスが甘い一時をすごす頃、
ラヴィアンは男子トイレから出る所を目撃され痴女として通報され、
アリシアは教会の懺悔室に入ろうか迷っているところをラッドに発見され、
ベイオはレーゼの手により血の海に沈み、
オルランドゥは街の子供達と聖闘士星矢ごっこをして、
ムスタディオとマラークは女性不信に陥り自ら売れ残りのバレンタインチョコを購入し、
ラファはアグリアスに誤解の謝罪をすべくチョコレートを買って、
メリアも昨日の騒ぎのお詫びにとチョコレートを買ってきて、
ラファとメリアは部屋の中から聞こえる声に反応し耳をすます。

「ん……アグリアスさんの……すごくふわふわして、気持ちいいです」
「ば、馬鹿者。そういうお前の……こそ、こんな元気よく勃ちおって……」
「アグリアスさんって、意外と…………ですね」
「わ、私とて、女だから……その…………くらいは…………だ」

ラファとメリアは、脅威のアイコンタクト会話を開始した。
―ななななな、ナニしてるんですかラムザさんとアグリアスさんは!?
―うろたえるな小娘ー! これはアレよ髪の毛の話よ、よくあるパターンよお約束よ!
―で、でしたら別にチョコレートを渡しに入っても大丈夫ですよね?
―いやでも万が一……万が一という場合も! もし××××真っ最中だったら!?
―××××!? そんなストレートな言い方って、破廉恥です!
―いやしかしだとするとアグリアスの恥ずかしい姿を見るチャンス!?
―め、メリアドールさん!? まさか、そんな趣味が……!
―愛故に! 愛故にー!! アグリアス、あなたの観音様をいざー!!

ガチャッ、鍵がかかっていて、バキャッ、鍵を破壊して、ズガオン、扉を蹴破る。
そしてラファとメリアドールは見た。
ラムザとアグリアスが互いの本能をさらけ出しにして、
ユサc鮴マメ・、bヌ鴿Wユ弦ィ臈ロ・aワワKkヒ・シ9ュ・Tijマ
ヒハ騙リオg4ユCロ韵ウメV狠mY9-ナa・ル>ヘウラヌ}kスoユC・|6・cU・;#meホk&Y舟{スセ
ミゥV#0「ト呂#Y\隈;「€Aィ4K・GケK巳卲OJコ ・韆諱jc7THE-END

11:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 00:04:34 ECjEVSBH0
文字化けしてて肝心なところが読めませんよ?(^^;

12:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 00:05:07 icimChxwO
こっ…ここで文字化け…だと…っ!?

俺の携帯が壊れてるんじゃないと信じたい

13:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 00:06:29 WS3xT3FU0
おおお、行く人さん連日SS投下乙!
しかし、最後の方は文字化けしてるのかと思いきやワザとなのかー!?

14:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 00:12:12 icimChxwO
俺だけじゃなくて安心した半面、ちょっとウワーンな気分だヽ(`д´)ノ

15:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 00:13:29 xvOEK5hK0
行く人氏だぜ…

ワザとに決まっておろう!

ワザとのはずだ。

多分、ワザとじゃないかな…

16:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 00:20:08 k9gvAswg0
俺はちゃんと一行目読めるぜ?
ユサ(揺れてる擬音だな)
マメ(女性のある器官の隠語ですね)
ワワ(アホ毛が攻められて悲鳴を上げてるかと)

2行目からが難しいな。

17:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 01:12:29 HUqY2vSb0
これからはレーゼ×アグリアス!これよ!
ちなみに暗号を解読するとエロスな展開がわかるんだぜ、嘘だけどな

わっふるわっふる

18:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 02:14:00 UTNl3Lh20
>>1
新スレの初っ端から行く人氏乙

19:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 21:15:11 tBFm8gP10

クソ・・・文字化けめ・・・

20:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 21:53:16 ECjEVSBH0
しかし最後のジエンドだけは普通に表示されてる罠

21:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 23:10:38 O+Pua20i0
「ラ、ラムザさま不潔!もう父上のとこに帰るわ」
「あたしも、こんな感じで初体験したかったな」

22:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/15 23:38:12 1xWcSBcG0
だれかキバヤシを呼んで解読してくれ!

23:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 00:13:00 2tNswNXF0
きっと行く人氏は我々の反応を見てニタニタしてたに違いない

まあ、あれだ。
後は皆さんの想像にお任せします、という風に捉えようではないか…。

24:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 00:33:32 Znc6YE4e0
                    ワ
                   ナ

つまり!このSSは我々に対する『バレンタインの罠』だったのだ!!

25:モトベ ◆AYF418a.SQ
08/02/16 02:39:16 1nPAq5cl0
お久しぶりです。SSを投下させて頂きます。
なお、このSSには残酷な描写が少なからず
存在します。
そういったものが苦手な方は、スルーして下さい。
よろしくお願いいたします。

26:ある日常の攻防 1/57
08/02/16 02:40:22 1nPAq5cl0
ランベリー城城門前にひしめく、100を越える殺気の群れ。
その殺意は、ラムザを始めとして、彼の4人の仲間にも
わけへだてなく平等に降り注がれている。
多勢に無勢という言葉にふさわしいこの状況で、
平静に佇む、たった5人の侵入者の様子は明らかに異常であった。
城を護る剣士達の殺意、罵倒、嘲笑。
そのいずれにもまるで応じず、沈黙を貫く5人―
それはどこか、闇夜に巣食う亡者たち…
人の手に負えぬ死霊の集まりを思わせる、不吉な存在だった。

「―そろそろいってもいいでしょうか?
 どうせこの手の輩は説得になど応じはしません。
 今までだってずっとそうだったでしょう」

気だるげなレーゼの問いかけに、ラムザは迷う事無く答えた。

「お願いします」

レーゼの言う通りであったし、本物の戦場とは、口喧嘩の場などではない。
どちらかの流血をもってしか、場を収めることは叶わない。
対価とは、犠牲を支払ってはじめて手にできるもの。
ラムザ達は、平和という対価を求めて、その手を赤黒い血で
染め続け、その道程に数多の屍の山を築きながらここまで進んできた。
今更後戻りなどできるはずもない。
ラムザの許可に薄く笑ったレーゼは、わずかに腰を落として
前傾姿勢をとる。
数を頼みにして、自軍の優位を疑わない警備兵達は、
彼女のそんな変化に気づくはずもない。
気づいたとしても、細身の女が何をどうしようと、何ら脅威として
認識しないだろう。

27:ある日常の攻防 2/57
08/02/16 02:41:04 1nPAq5cl0
レーゼの足元の石版が踏み砕かれ、人型の弾丸が
城門前を駆け抜ける。
目にも留まらぬ速度で疾駆するレーゼは、言うなれば一陣の竜巻。
脆弱な人間にはどうすることもできない圧倒的な
暴力の塊となった彼女は、脇を通り過ぎる不運な人間を、
無慈悲に巻き込んで、一瞬のうちに叩き壊す。
断じてその動きは、人間のものではなかった。
人域を超えて余りある速度を殺すために
足止めとして踏まれた石版に、深々と線状の軌跡が
刻み込まれ、そうしてようやくレーゼは止まった。
敵陣の中央に突如移動したレーゼの動きを
視認できた人間が、ラムザ達を除いて一体何人
この場にいただろうか。
瞬間移動ともいうべき芸当の種明かしが、
彼女がただ走ってそこに移動しただけというのは、
普段のレーゼを知らない者にとってはにわかに
信じがたいことである。
しかし、彼女の行動が曲芸でも冗談でもない、
まぎれも無い開戦ののろしであったことは、すぐに周知の事実となった。
レーゼが一直線に通った道…その端に居合わせた
ほとんどの人間達の首が、不自然な方向に捻じ曲がっている。
それはまるで、静かに佇む出来損ないの人の模型を思わせた。
通りすがりにレーゼに頭を軽く撫でられた剣士達。
首の骨を破壊された彼らは、糸が切れた人形のように
次々と地面に倒れ付した。
一瞬のうちに首をへし折られた人間以外の者は、
わき腹が鎧ごとごっそりとえぐられていたり、体に大穴が開いている。
いずれも致命傷を負った彼らは、断末魔の悲鳴を上げながら、
自分達が何をされたのかも分からずに血の海に沈んでいく。

28:ある日常の攻防 3/57
08/02/16 02:41:44 1nPAq5cl0
数秒前の喧騒は霧散し、水を打ったような静寂が辺りを包む。
数十人の視線をその一身に受けるレーゼは、
両手を鮮血に染め、赤い飛沫をドレスに散らせて、
静かにそこに佇んでいた。
物憂げなそのかんばせは、まぎれもない人間の女のそれである。
体躯も何ら変哲が無い。
――ならばコイツは一体何なのか―?

「この…化け物があッ!!」

皆の頭を支配する疑問の答えを叫びながら、
怒りに身を震わせて一人の男が大剣を振るった。
レーゼは両腕をだらりと下げたまま、何もしない。
ただぼんやりと、退屈そうに男を眺めているだけ。
うなる白刃が、レーゼの細い首を斬り飛ばしたと
男が確信した刹那、何かに刃の動きが止められた。

「……!?」

唖然とした男が手元の剣に見入る。
刃はレーゼの首の寸前で止められていた。
刃の動きを抑えているのは、人差し指と中指。
白く、細いしなやかな指は、美しいが故に魔的な雰囲気を
かもし出して、白刃を呪縛から決して解こうとしない。
何かの冗談としか思えない悪夢じみた状況だが、
剣は万力にでも挟まれたようにびくとも動かない。
刃を二本指でつまんだまま、さもつまらなそうにレーゼが手首を軽くひねると、
それだけで長剣の刃身がいとも簡単にへし折れた。
真の恐怖に襲われたとき、人の思考は真っ白になり、
行動が何もとれなくなる。
それは、この剣士も例外ではなかった。

29:ある日常の攻防 4/57
08/02/16 02:42:29 1nPAq5cl0
もっともレーゼにとっては、相手が動こうが動けまいが
まるで関係のない話であった。
並みの人間など、竜の化身である彼女にとっては
ちっぽけな蟻(アリ)のように無力でしかないのだから。
消したいのであれば、圧倒的な力に任せて叩き潰すだけ。
死の恐怖に凍える男の後頭部に、レーゼの手が
そっと添えられる。
男が更なる絶望に身を沈める前に、
レーゼは男の顔面を力任せに地面に叩き付ける。
頭が地面と接触するまで、1/5秒とかからない。
激突の衝撃で十数個の石版が同時に粉砕し、
爆弾の炸裂音にも似た轟音と共に、地面に亀裂が入る。
小児の背丈ほども地面が陥没し、もうもうと粉塵が舞い上がった。
もはや悪夢と呼ぶにも生ぬるい眼前の光景に、
剣士達は心底震え上がり、言葉も出なかった。

「逃げたい人は逃げていただいて構いません。
 追いはしませんので」

涼やかなレーゼの声が、煙幕の向こう側から送られる。
何の気負いも無い軽やかな彼女の声は、
人の命に対する女の価値観の片鱗をうかがわせて、
男達をより一層恐怖させた。

「私も無駄に人を殺したくはありません。
 血は臭くて、汚らわしい」

煙幕が薄くなっていき、次第にレーゼの姿があらわになる。
その様子を男達は固唾を呑んで見つめ続けた。
そのうちに、レーゼが何かを手にしているのに男達は気づいた。

30:ある日常の攻防 5/57
08/02/16 02:57:33 1nPAq5cl0
「それでもまだ私と戦いたいというのなら…
 このように、苦しませずに殺して差し上げます」

彼女が高々と掲げるソレは、頭が消し飛んだ男の屍骸。
返り血に頬を赤く染めて、不満げな面持ちのレーゼが
死体の首を握って、何の苦も無くそれを宙吊りにしていた。
手品や小手先技といった決め付けでは説明のつかない、
人間離れしたレーゼの圧倒的な実力。
それが今、これ以上ない形で残酷に証明された。
今度こそ、悲鳴が至る所で沸きあがった。
ある者は腰を抜かしてその場にへたり込み、
またある者はわき目も振らず遁走する。
恐怖が伝染病のように蔓延し、恐慌に呑まれるただなかにおいても、
何割かの人間はその場に踏みとどまった。
意地か矜持か、それとも仲間を殺されたことによる復讐か…
時として人は、打算を越えた感情で動くこともある。
数十を越える抜き身の白刃に囲まれてもなお、
レーゼは泰然とした様子を少しも乱さない。

「さっさと逃げれば命は助かるのになあ…。
 わざわざ殺されに物好きなことですね」

それは悪意ある挑発でも皮肉でもなんでもなく、
レーゼの率直な本心による言葉であったのだが、
怒りに思考が煮えたぎっている彼らにとっては、
自身の愚を揶揄する罵倒にしか聞こえなかった。
殺気と怒気が臨界点に達し、数多の刀身が
同時に叩きつけられると思われた刹那、
突如レーゼを取り囲んでいた剣士達のうち三人が
絶叫を上げた。

31:ある日常の攻防 6/57
08/02/16 02:58:29 1nPAq5cl0
「いつも言っているだろう?レーゼ。
 君は目立ちすぎるんだ。
 だからいつも敵方にそうやって囲まれてしまう」

「ベイオウーフ」

悲鳴を上げながら足元から石化していく
三人には目もくれず、ベイオウーフは
剣にまとう魔力の残滓を血振りでもするかのように振り払う。

「戦い方というものがあるだろう?
 そんなに派手に立ち回っていると、敵に取り囲まれて
 危険だし、すぐに君の身体が汚れてしまうよ」

「細やかな戦術は私の性に合いませんわ。
 ベイオウーフ。
 人間相手では、力の加減が難しいのですよ」

恐怖に顔を彩られた、世にも精巧な人間の彫刻が
三体出来上がった。常軌を逸した事態に、
先ほどまで場を支配していた熱気は消失し、
再び異様な沈黙がその場に広がった。
場違いな男女の談笑のみが、静寂の中に奇妙に響く。
ベイオウーフは軽い足取りで石像の一体の隣に立ち、
おもむろにそれの頭に手を当てた。
血を一切流す事無く、標的を静かに、確実に葬り去る。
それは綺麗な、人の殺し方だった。

「貴方は器用ですね。ベイオウーフ」

自虐ともとれる、僅かな微笑がレーゼの顔を彩った。

32:ある日常の攻防 7/57
08/02/16 03:02:26 1nPAq5cl0
「そうでもないさ」

そう言って、ベイオウーフは石像を手で押し倒した。
人型の彫像は地面に倒れ、見るも無残に砕け散る。
血も臓物も目に映らない、無機質な人の死。
しかしそれは、形を変えただけの、まぎれも無い人の最後の瞬間だった。

「君に合わせるよ」

「…ありがとう。ベイオウーフ」

微笑みを携えて、レーゼはやわらかく瞼を下ろす。
胸の内に広がる温かみを、今ここで確かめるかのように。

「さあ。続きといこうか。
 それとも降参かい?」

ベイオウーフはゆるゆると長剣を正眼に構え、
レーゼは彼の言葉に呼応するように、従容と臨戦態勢をとった。
ベイオウーフの力を目の当たりにして、さらに何人かが逃走したものの、
どこからともなく怒号が上がり、それは次第にうねりとなって
再び先ほどまでの殺意と敵意の集合体をつむぎ上げる。
決死の覚悟で次々に踊りかかる剣士達の剣戟を、
レーゼは人外の動体視力をもって紙一重で避わしつつ、
殺傷力過剰の拳撃で一人また一人と血の海に沈めていく。
ベイオウーフは持ち前の魔法剣で敵の弱体化を
請け負いながらレーゼのサポートに回る。
サポートのみならず、剣の鍔迫り合いに持ち込まれてもなお、
彼の剣は的確に相手の急所を切り裂いていく。

「…ふむ。そろそろ私の出番のようだな」

33:ある日常の攻防 8/57
08/02/16 03:05:00 1nPAq5cl0
オルランドゥは鞘から聖剣エクスカリバーを抜き払う。
冷たい鞘鳴りを立てて、世にも美しい剣の刃があらわになった。
刀身に鮮やかな紋様を刻まれた、至高の芸術品にして
至高の騎士剣。騎士の頂点に立つ、剣聖の得物である。
これから戦に臨もうというにはあまりに静かな様子で、
オルランドゥはエクスカリバーを携えて佇立する。
ラムザが気づくよりも前に、彼は場の異変を察知していた。

「少し先で邪な者達がうごめく気配がする。
 大方、エルムドアめが異界から召喚した悪魔の類だろう。
 彼奴らの足止めは私が引き受けよう」

返事も聞かずに、オルランドゥは二人に背を向けて
そのまま先に進んでいく。

「伯、ご無事で」

ラムザの低く、強い意志のこもった呼びかけに、
オルランドゥは振り返って、ニイッと笑った。

「ラムザ。アグリアス。
 死ぬなよ」

彼の靴が踏み鳴らす石版の音は凛とした響きをもって、
戦場の喧騒にまぎれる事無く、二人の耳にいつまでも残響していた。
ラムザが戦況を見やれば、敵の数は残り少なくなっている。
レーゼとベイオウーフの快進撃により、あれだけいた
警備兵たちも、もはや数えるまでになっていた。
彼らの役目は、特攻。

34:ある日常の攻防 9/57
08/02/16 03:08:26 1nPAq5cl0
戦場では、彼らは常に先陣を切って、敵の戦力を大まかに削る役を担う。
主力級かつ隊の長であるラムザを無事に守り通し、
出来うる限り無傷のまま…つまり彼の戦力を万全の状態に
保たせたままで、敵の大将格を削ぐためにぶつけるまでの護衛である。
人域を超える速力の貫き手で剣士の胸板を鎧ごと刺し貫きながら、
半身を返り血で赤黒く染めて、レーゼが二人に声を掛ける。

「ラムザ。雑魚は私達が始末します。
 どうぞ奥へ。
 妹さんを救出して下さい」

剣士達と間合いを計りながら、背中越しにベイオウーフも
声を上げる。

「後続はオレ達が責任をもって食い止める。
 君達は先に進んでくれ」

「二人とも、よろしくお願いします。
 どうか、ご無事で」

先に進むラムザに付き従うアグリアスに、レーゼは
すれ違いざまに檄を飛ばした。

「アグリアス…ラムザを…隊長を
 頼みますよ」

普段どおりの仏頂面をまるで崩さずに、澄ました顔で、
アグリアスは応えた。

「分かっている。
 お前達も死ぬなよ」

35:ある日常の攻防 10/57
08/02/16 03:11:50 1nPAq5cl0
ラムザとアグリアスの二人は、城内に潜む刺客に
注意を払いながら、慎重に奥に進んでいく。
城内にも兵が控えている可能性は考えられたが、
それはないと、敢えてラムザ達は断じた。
彼らの経験ゆえの判断である。
城門前に控えていた警備兵達は目算で100人以上である。
いかな城主といえども、命を賭した兵をあれ以上
雇うだけの資金を持っているとは考えにくいし、
命惜しさに逃げ出した者以外の剣士達は、
背水の陣といった鬼気迫る雰囲気だった。
城内に兵が控えているのならば、形勢が
不利になった時点で城内に逃げ込むことで仲間と合流し、
勝算を増すことが可能になる。
にも関わらず、彼らは一向にそうしようとしなかった。
あれはすなわち、後がないこと。
つまりここを突破されてはもう兵が残されていない
証であると考えられる。
オルランドゥが出現を察知した新手の魔物というのも、
ラムザ達を城門前で始末しておきたいから
呼び出したのであって、いわゆる“切り札”とも
いうべき駒を早々に動かしたのは、城内に兵力が備わっていない
という推理の裏づけになる。
二人は足音を殺しながら、慎重に、できる限り素早く先に進む。
当然の事ながら、二人は無言であり、
会話も必要最小限しか行わない。
無味乾燥とした雰囲気を保っていた。
ラムザはアグリアスに気遣って顔色を伺うこともないし、
アグリアスもそんなことなどする理由が無い。
二人は同じ隊の仲間であって、それ以上でもそれ以下でもない。

36:ある日常の攻防 11/57
08/02/16 03:15:41 1nPAq5cl0
ラムザは敵の首領たるエルムドアを狩るために
こうして万全の状態で城に潜入し、アグリアスの役目は
彼の役目を阻止しようとする外敵を排除することである。
その目的を遂行する上で感情は無用であり、
男と女という性別さえも無意味なものとなる。
必要なのは、各々の役目を果たすための実力のみ。
そして互いの実力の程は、長い付き合いの中で
十分に認識しあっている。
不要な気遣いは相手の実力を過小評価した
無粋極まりないものでしかないのである。
言葉はかけずとも、二人は無言の信頼関係で繋がっていた。
ラムザとアグリアスは敵陣において、感情を排した
論理的かつ合理的な思考を組み立てつつも、
背中を預けられる頼もしい仲間の存在と、
以心伝心のこの現状を、互いにどこか心地よく感じていた。


ラムザ達の予想は見事に的中し、雑兵どころか
ついに一人の刺客とも遭遇しないまま、二人は広間へと到着した。
燃え盛る二つの燭台に照らされて、薄暗い部屋に
5つの影が浮かび上がる。
ラムザとアグリアスの眼前に立つのは、銀髪鬼エルムドア。
その脇には、右と左に一人ずつ悪名高い女の殺し屋を
はべらせている。
まんまとここまでラムザの侵入を許したにも関わらず、
エルムドアはあくまで泰然として、優雅な立ち振る舞いを決して崩さない。
二人の殺し屋は、人でありながらまるで闇の中に
わだかまる影のような存在である。
存在感がおぼろで、実体をもった幽霊であるかのような
不気味な印象を二人に与えた。
見るからに、人気の無い場所では会いたくない類の人間である。

37:ある日常の攻防 12/57
08/02/16 03:19:16 1nPAq5cl0
「ようこそ我がランベリー城へ。
 手荒な歓迎になってしまったが、許して欲しい。
 彼らは所詮、品格をもたない下衆でね。
 主人の言いつけも守れず、
 ろくに賓客の持て成しもできない駄犬なのだよ。
 おかげで私自らがこうして君のお相手をしなくてはならない」

鷹揚に喋るエルムドアは白々しいほどの笑みを浮かべ、
親しげにラムザに語りかける。
貴族然とした態度は、彼が"かつて"本物の貴族であった
頃の名残だろう。しかし今となっては、銀髪鬼エルムドアは
心身共に聖石の魔力に蝕まれた、人外の存在でしかない。

「妹はどこにいる?
 アルマを返してもらおうか」

「ふふっ…。気が早いな。
 単刀直入で事務的。
 貴族同士の社交というものは、
 もっと会話と雰囲気を愉しむものだよ。
 それでこそ上流階級の嗜みではないのかね?
 ラムザ・ベルオブ」

「…僕はあなたとお喋りをしに
 ここまで乗り込んできたわけではない。
 おとなしく妹を返してもらえれば良し、
 さもなくば…死んでもらおう」

「つれないものだな。ここまで勝ち進んできた
 君達の武勇伝でも聞かせてはくれないのかね?」

38:ある日常の攻防 13/57
08/02/16 03:23:40 1nPAq5cl0
無言で剣を構えるラムザを目にして、エルムドアは
大きなため息をつき、肩をすくめた。

「まあ何にせよ、戦いは避けられない。
 君にこの場を愉しむような気持ちはないようだ。
 私としても、見過ごすことの出来ない
 痛手を君達から受けているものでね。
 どの道君達を生かして帰すつもりはない。
 君達を殺してしまう前に、ほんの少しだけ
 お話に興じたいとも思ったが…残念だ」

そういってエルムドアが手を頭上にかざすと、
何も無い空間から突如異様な剣が出現した。
片刃の剣である。
いや、それ自体は二人も初見ではない。
ラムザ達が常用する両刃の剣とは異なる
片刃の剣は、遠く異国の地から貿易によって
国内に輸入される外来の剣であり、
硬度、切れ味ともに優秀な性能を備えている。
エルムドアが手にしている剣の異常性は、
その刀身の長さにある。
所有者の身長を優に倍する程の長さの刀身を備えた剣。
これほど常軌を逸した長物など、今日この日まで
この世と地獄が交錯する修羅場と死線をくぐり抜けてきた
二人でも、見たことも聞いたことも無いような代物である。
剣の刀身は、基本的に長ければ長いほど良い。
刀身が長くなるだけ、使用者の攻撃の間合いが広くなるからだ。
しかし長すぎる刀身は、逆に使用者の負担となり、身軽さを奪う
足かせとなってしまう。剣とは、その構造上鉄の塊であり、
刀身が長ければ長いだけ剣の重量は増すのが道理である。

39:ある日常の攻防 14/57
08/02/16 03:27:36 1nPAq5cl0
重い剣は使えない。実戦では、身軽さが何よりも要求される。
武器の威力や種類など二の次だ。
相手よりも先に得物を敵方に叩き込めば、ほぼ勝負は決する。
即死させることが叶わなくとも、重傷を受けて動きが鈍った敵を
追撃によって仕留めるのはたやすい。
したがって、使用者の負担が少ない軽い剣が好ましい。
小回りが利き、素早く振り回せる剣が望ましいのだ。
現に、暗殺と諜報を生業とする忍者は、
派手な長剣など決して使おうとしない。
彼らが好んで使用するのは、忍刀。
軽さと携帯性を重視して設計され、忍者達が頼みとする
高い機動性を損なわず、逆にそれを存分に生かすための
必要最小限の刀身を備えた短刀である。
もしも力と技量に自信があるのなら、自らの腕力と相談して
相応の長剣を使えば良い。
そんな剣士の常識から明らかに逸脱した刀を手にするエルムドア。
もしも彼があの"超"長物を自在に扱えるのだとしたら…
剣の重みや空気の抵抗など意にも介さないほどの
力で剣を振るえるのだとしたら…あの長物を使うことによって
得られる剣の間合いと威力の利は脅威である。
異常な長剣を軽々と片手で掲げながら、
エルムドアは悠々と二人の様子をうかがい見る。
ラムザの隣に控える女…整ったかんばせに備わった双眸は、
秋の澄んだ空を思わせる、鮮やかな蒼を携えている。
美しいばかりでなく、確かな信念に支えられた、揺ぎ無い
強い意志を宿した瞳は、彼女の凛とした佇まいを
より一層強く印象付けるようである。
折れず、曲がらず、硬さと強さと美しさを兼ね備えた、
鍛え抜かれた異国の刀。そんな形容が、彼女にはぴったりだった。
見たことも無いであろう、異様な凶器を目の前に突きつけられてもなお、
おびえた様子を見せない彼女にエルムドアは思わず苦笑した。

40:ある日常の攻防 15/57
08/02/16 03:31:09 1nPAq5cl0
「困ったな…。女性と斬り結ぶのは
 やったこともないし趣味でもない。
 ………。
 セリア。レディ」

生きた人形のように、直立不動のままエルムドアの
左右に控えていた二人が、揃って顔を上げる。

「あちらのお嬢さんのお相手は、
 セリア。レディ。
 お前達が務めて差し上げろ」

「わかりました」

「仰せのままに」

無機質にそう応えて、セリアとレディと呼ばれた殺し屋は
揃って佩剣を抜き払う。
セリアと呼ばれた女は侍が得物とする片刃の刀を両手に携え、
レディと呼ばれた女は忍者が用いる忍刀を両手に掲げ持つ。
それぞれが二刀流。四本の白刃が、薄暗い部屋の中で
ちらちらと白く、妖しく輝いた。

「丁重に、誠意を込めて殺せ。
 ただし首から上は傷つけるな。
 色々と“遊び甲斐”がありそうだからな」

先ほどまでの弛緩した空気が急速に氷結し、
殺意と敵意がみなぎる、一触即発の緊迫した雰囲気に急変する。

41:ある日常の攻防 16/57
08/02/16 03:34:25 1nPAq5cl0
「アグリアスさん」

視線の先を正面のエルムドアに据えたまま、
ラムザは隣のアグリアスにそっと声を掛ける。

「あの2人…僕達の仲間を以前、3人も殺しています。
 強敵ですが…抑えておいてくれますか?」

「…一々確認するな。お前の背中を
 守るのが私の仕事だ。
 お前はあの銀髪を片付けることだけを考えろ」

ラムザの戦いの邪魔にならないように、
アグリアスはラムザと距離をとっていく。
2人の暗殺者も、指し合わせたように
アグリアスと同じ方向へ移動していく。

「アグリアスさん。死なないで下さいよ」

「お前もな。生きろよ、ラムザ」

2人の間で交わされる、色気も何も無い無骨なやり取り。
視線も交わさず、互いが互いの力になることさえできない。
それでも、言葉を交わすことはできる。
死んで欲しくない。生きていて欲しいという願いを
互いに伝えることはできる。
その僅かなぬくもりは、儚い力しか持たない。
現実的には、何の助力にもならない気休めでしかないとも言える。
しかし、ラムザとアグリアスは、何度と無くこのやり取りを
繰り返して、今日この日まで戦い続けている。
このちっぽけな、生還のための祈りを繰り返して。

42:ある日常の攻防 17/57
08/02/16 03:37:44 1nPAq5cl0
アグリアスは剣を構えたまま、微塵の隙も見せずに
眼前の2人を見据える。
気圧されないように自身を鼓舞し、相手を威嚇するためにも
鋭い視線を叩きつける…が…。
そんなにらみを全く意に介した様子も見せずに、
セリアとレディは静かに佇立し、アグリアスの様子を観察する。
実に嫌な目だった。
およそ人間らしい感情のほとんどを排した、人形じみた目。
敵意も、示威も、怒りも何も感じられない。
そこに在るのは、透明で純粋な殺意のみ。
それになにより、これから刃を交える相手を人間として
見なしていないかのような奇妙な視線。
アグリアスを、これから解体される牛か豚のように、
暗い目で無感情に見据えている。
アグリアスがこの人形じみた2人の思考の内容を知る由も無いが、
事実、2人の暗殺者の頭の中で今構築されている考えは、
目の前の標的をいかにして殺(バラ)すかという一点のみ。
過去に殺してきた膨大な数の人間の記憶と
眼前の標的の特徴を照合し、最短で死に至らしめる方法を検索する。
そこに感情など介する必要はなく、相手の苦痛や恐怖など
思いやる必要も何も無い。
迅速かつ確実に標的を亡き者にすること。
それだけが、2人を暗殺者たらしめる必要十分条件。
目の前に佇む2人の女がいかに危険な存在であるのか、
アグリアスは直感的に理解していた。
幾多の死線を乗り越え、アグリアスは色々な意味で
狂った人間を目の当たりにしてきた。
快楽殺人者を始めとした、殺しに喜びや生きがいを見出すアウトサイダー。
人の苦しみと悲しみ、怒りと絶望、それに命を
至高の糧として生きるような、社会の闇に巣食う破綻者達である。

43:ある日常の攻防 18/57
08/02/16 03:41:36 1nPAq5cl0
そんな頭の螺子が緩んだ狂人達と、アグリアスはうんざりするほど
刃を交わしてきたが、心のあり方は違えど、彼らは"人間"だった。
人の不幸を喜ぶ心情も、嗜虐の感情も、人の心には
元から備わっている。戦場という常軌を逸した環境に放り込まれると、
そういった負の感情が増長し、たがが外れて心が歪んでしまうだけの話である。
異様な熱を帯びた殺人鬼、冷酷無比な拷問嗜好者。
心には温度があり、熱い心を持った者か、冷たい心をもった者かの
いずれに属するのかは、目つきや雰囲気から容易に判断がつく。
その経験則から鑑みるに、眼前の2人の存在は異常というほかない。
彼女達には、「熱気」も「冷気」も感じられない。
温度をもたない、0度の世界で心が静止した存在。
殺人に喜びも悲しみも見出さない、快楽殺人者とは
明らかに異なる暗殺のプロフェッショナルである。
今までアグリアスが出逢ってきたどんな狂気とも違う、
死を生み出す闇が冷たく結晶し、人型をとったような人間。
殺しを日常化した作業として、淡々と遂行する、
感情と自我を削がれた完全なる狩猟犬。
自らは何も望まず、何も欲さず、主の命に従うまま
ただ死人を増やしていくだけの存在である。
生きながらにして、2人の心は既に虚無、死人のそれと同じ。
歩く死人である。言わば生者を本能的に冥府へと
引きずり込む、悪霊の類と大差ない。
何の光も映さない、暗くよどんだ瞳には、人間らしさなどもはや
感じられない。
2人の瞳に宿る闇に吸い込まれるかのような錯覚を覚え、
アグリアスの全身に悪寒が走る。
戦士としての本能が、思考を介さずに適切な行動を選ばせていた。
ふとアグリアスが気づけば、自身の左手が腰に佩びた剣の柄に掛かっている。
剣士は、戦地に赴く際に、剣を二本持っていく。
剣とは折れるものである。折れずとも、斬り合いの際に

44:ある日常の攻防 19/57
08/02/16 03:45:14 1nPAq5cl0
弾き飛ばされて、剣を失うという事態は珍しくない。
そういった場合を想定し、予備の剣を持っていくのである。
華やかな装飾に彩られた騎士剣は、彼女が普段から愛用して
いる業物であり、予備の剣は、それに較べて何の変哲も無い
みすぼらしい剣である。
この剣は、彼女が幼少の頃より使い続けてきた第二の命。
雨の日も、風の日も、この剣を振るって技をその身に刻み込んできた。
アグリアスと共に道を歩んできた、彼女の誓いと魂が宿った剣。
それを肌身離さず、こうして彼女はいつも戦場に持参していた。
初志を忘れないために。今までも、これからも、共に道を歩んでゆくために。
左手が、この剣を求めている。相対したこの死線において、
誓いの剣を使えと無言で訴えている。
体は自然にそれに応え、佩剣を左手で抜き払う。
右手には剣匠が魂を込めて鍛え上げた唯一無二の騎士剣を。
左手にはこれまでの道を共に歩んだ唯一無二の剣を。
二刀流は、専門外といえども修めている。
セリアとレディは共に二本の刀を手にしている。
四本の刀から繰り出される、驟雨の如き斬撃をしのぐためには、
一振りの剣だけではとても追いつかない。
絶対に、左手の剣の力が要る。
守りに頼みを置いていては出遅れる。
全ての力を攻めに回さなくては、この修羅場を乗り切れない。

「せいぜい苦しんで死んでもらおうか。
 君の悲鳴と絶望こそ、我が溜飲を下げるための
 極上の美酒となる」

異様な長物を苦も無く構え、白く、冷たく光輝く
白刃に殺意をたぎらせながら、エルムドアが邪にせせら笑う。

「貴様が死ね。エルムドア」

45:ある日常の攻防 20/57
08/02/16 03:48:50 1nPAq5cl0
そう冷徹にはき捨てて、ラムザはエルムドアに踊りかかった。
信念を込めた騎士剣と、呪われた妖刀が刹那の間に交錯する。
白刃と白刃がぶつかり合う鋭い音が、同時にアグリアスと2人の
殺し屋の開戦を告げるのろしとなる。
セリアとレディが双方の間の距離を一瞬のうちに詰めて、
むき出しの殺意を込めた刀を振りかざし、アグリアスに斬りかかる。
素早さと正確さを兼ね備えた斬撃を二振りの剣で
打ち払いながら、刹那の隙を突いて反撃を試みるも、
申し合わせたように防がれてしまう。

「(…速いくせに重い剣…!)」

動きは軽捷にして、振るう太刀は鉛のように重い。
きゃしゃな外見には不釣合いな力は、攻撃を防ぐ
アグリアスの体力を、確実にじわじわと削っていく。
いみじくも先ほどまでの読みは的中し、セリアとレディの
振るう四本の刀による攻撃は、間断なく雨のように降り注がれ、
アグリアスは一方的に防戦を強いられている。
多対一など、今まで何度も経験してきた戦いだが、
この2人はこれまでの敵とは別物である。
連携がほぼ完全にとれており、容赦の無い
正確な攻撃を次々と仕掛けてくる。
集団戦になろうと、しっかりとした連携をとって
一人に襲いかかれるような者は稀であり、
その隙が、多勢の難を崩すための突破口になるのだが…。
動きも素早く、目で追えないほどではないが、
連撃に次ぐ連撃は、アグリアスに息つく暇さえ与えてはくれない。
いかにせん、手数が多すぎる。
こうしてアグリアスと、2人の殺し屋が刃を交えるのは今が初めてだが、
以前に、エルムドアが率いるセリアとレディの2人と、
ラムザの部隊はリオファネス城屋上でぶつかったことがある。

46:ある日常の攻防 21/57
08/02/16 03:52:48 1nPAq5cl0
ラムザの話によれば、その際に、鍛えられた手錬の仲間が
この暗殺者たちに3人も殺されたという。
その言葉が事実であることを、アグリアスは今こうして
身をもって思い知っていた。
圧倒的優位を保っているにも関わらず、セリアとレディの顔には
余裕の笑みどころか表情も何も浮かんでいない。
油断や驕慢…いや、そんな人間らしい感情など一片も見せず、
付け入る隙を与えずに標的を迅速に仕留める狩人。
3人の仲間はまぎれもなく、正気の埒外の世界で暗躍する、
この闇の住人達の餌食となったのだ。
相変わらず、能面のような顔で、矢次早に刺突と斬撃を
見舞うセリアとレディは、絶え間なく動いているというのに、息一つ上がっていない。
最初の印象に違わず、彼女らは本物の殺人機械であった。
それも飛びっきりの、“人殺し”という名の道具。
道具は自我など持たず、生まれ持った性能をもってして
求められるところの役目を全うする。
セリアとレディは息もつかせぬ斬撃の嵐を繰り出して、
アグリアスは鍛えぬいた技をもってしてそれに応戦する。
一見すると、どちらも決め手を持たない、こう着状態のように
思えるが、攻撃を受け続けるだけで体力が削られていく
アグリアスの方が、明らかに分が悪い。
このまま持久戦に持ち込まれれば、いずれ疲れ果てたところで
セリアの侍刀か、レディの忍刀のどちらかに斬り刻まれることになる。

「(せめて聖剣技を使う隙があれば…)」

アグリアスの切り札ともいえる聖剣技は、確かに強力な
決め技であるが、技を繰り出すまでに数秒の硬直が生じるという
欠点があった。硬直が一番短い小技であっても、
2秒間の動作の停止を余儀なくされる。

47:ある日常の攻防 22/57
08/02/16 03:56:27 1nPAq5cl0
この2人を前にして2秒の硬直…刈れと言わんばかりに
自ら首を差し出すがごとき愚行である。
敵方に傷を負わせて動きが鈍った場合や、
ある程度力量の差がある格下が相手の場合には
聖剣技は有効かつ頼もしい攻撃手段であるが、
今のような激しい剣の応酬下では、聖剣技を繰り出すための
わずかな硬直が、即、死につながる。
セリアとレディが、そんな隙を見逃すはずが無い。
使おうとした瞬間に、間違いなく殺される。
結局の所、現時点において、聖剣技の使用は不可能なのである。
かといって、このまま消耗戦を強いられていれば
いずれアグリアスが敗北することは明らかである。
じわじわと焦燥感が心を侵食し、歯噛みする
アグリアスに対して、依然として2人の殺し屋は
付け入る隙を与えずに怒涛の剣戟を降り注ぐ。
そんなこう着状態の中で、ラムザとエルムドアの打ち合いが、
アグリアスの視界をちらりと横切った。
エルムドアのもつ、片刃の超長剣は伊達ではないようで、
異様に広い剣の間合いを存分に生かし、ラムザの進撃を許さない。
ラムザも執拗に食い下がり、懐にもぐりこんで
致命打を浴びせようと懸命に粘っているようであるが、
エルムドアの剣の腕も確かである。
そうはさせまいと、常人には手に持つことすら不可能であろう
重量の剣を軽々と、器用に振り回し、まるで球形の結界でも
紡いでいるかのようにラムザを寄せ付けないでいる。
さっさとこの2人を片付けてラムザに加勢したいのだが、
加勢どころか、このままでは自分の命がまず危ない。

「(何か手を…!)」

48:ある日常の攻防 23/57
08/02/16 03:59:49 1nPAq5cl0
斬り結びながら策を必死で模索するアグリアスの目に、
奇妙な光景が映った。
レディが突如、後ろに大きく跳躍した。
しかも、跳躍中になぜか右手の忍刀を腰に佩びた鞘に
納めつつ、である。
着地と同時にどこからか取り出したのは、針状の手裏剣。
灰色に仄光るそれが、一瞬だけアグリアスの目に留まった。

「な…!?」

刹那の間に、アグリアスの左胸を狙って正確に投擲された手裏剣は、
全く想定外の攻撃手段であった。
だがしかし、戦場においては戦況が予想外の事態に展開する
のが常であり、百戦錬磨のアグリアスはそれに慣れていた。
思考を介さない、戦士の直感が彼女の体を動かし、
手裏剣は心臓を射抜くことは叶わず、肩を覆う装甲に突き刺さる。
手裏剣は肩の寸前で止まり、流血には至らなかったものの、
アグリアスは再び驚愕に襲われることになる。
ビシビシと音を立てて、手裏剣が命中した装甲が石化を
始めたのである。
物質転換。ある物を石に変えてしまうような魔術は
確かに存在するが、そういった対象の大掛かりな変態を伴なう
魔術の行使には、永い詠唱と大量の魔力が必要であるのが
常であり、ノータイムで標的を石化させるような手段など、
通常は考えられない。
ベイオウーフの魔法剣に、それを可能にする技があるが、
アグリアスの知りうる限りそれぐらいのものである。
どんな呪術か魔法を施したのか知らないが、
あの手裏剣は危険すぎる。
もしも生身に直撃すれば、脚や腕ならば戦闘の続行は
不可能になり、そのまま殺される。
胸の近くに食らえば心臓や肺が石化して即死だろう。

49:ある日常の攻防 24/57
08/02/16 04:03:20 1nPAq5cl0
装甲の石化は左肩から始まり、右胸の領域にまで広がって、
石化した鎧の部分がひずみで砕け散った時点で止まった。
アグリアスの上半身を覆う鎧の大部分は破損し、
急所である胸の周囲が外に露出する形になってしまった。
石化の手裏剣の直撃は免れたものの、鎧の損失は
大きな痛手である。
レディは手裏剣の投擲と同時に、一度鞘に納めた忍刀を抜刀し、
再びセリアと共にアグリアスに襲い掛かる。
依然として2人の電光石火の連撃は衰えを見せず、
アグリアスに聖剣技を使う隙を作らせない。
アグリアスの剣の技量は、2人のどちらよりも勝っている。
もしも1対1の決闘方をとれたのなら、
アグリアスの勝利は堅いだろう。
しかしこの2人が結束した時の勢いは、脅威である。
手数と速度で相手を圧倒する、言わば物量攻撃である。
それに加えて正確さまで備えているのだから手に負えない。
4本の刃は、まるでそれぞれが意思をもった魔物であるかのように
巧みに宙を舞い、アグリアスの防御を突破し、急所を刺し貫こうと
間断なく次々と押し寄せる。
表情の欠け落ちた2人の顔からは、2人が何を考えているのか
まるで判断できない。
まるで、巨大な昆虫のようである。
何も考えず、何も思わず、何も感じず、ただ本能に依って
機械的に他の虫を捕食する。
虫にとってそれは、悪でも正義でもないのだろう。
そうしないと生きていけないからそうするというだけの話である。
セリアとレディにとっては、今ここでアグリアスを確実に殺すこと。
それだけが意味のある行為であり、その他全ては無意味であると
断じているかのような、無機質で機械的な表情。
アグリアスはまるで、同じ人間と刃を交えている気がしなかった。

50:ある日常の攻防 25/57
08/02/16 04:06:45 1nPAq5cl0
再びレディが後方に跳び、先ほどと同様に灰色の手裏剣を投擲する。
狙いは再び心臓。鎧の加護を失った胸を、今度こそ
石化の手裏剣で射抜き、決着をつける腹積もりでいる。

「(まずいっ…!アレか!)」

石化の威力と脅威がアグリアスの脳裏によみがえり、
一瞬恐怖と焦りが全身を走った。
剣で手裏剣を打ち払うことはできない。
さっき、手裏剣は金属製の鎧を石化し、破壊した。
本来は人体に直接突き立て、標的の体を石化させる
武器であると考えられるにも関わらず、
あの灰色の手裏剣は人体、金属を問わずに石化させる。
手裏剣の尖端に当たり判定があるのなら、
剣と接触した瞬間、剣が石化する恐れがある。
2振りの剣でどうにかセリアとレディの猛撃に応じている現状で、
剣を片方失うということは、死に直結はしなくとも、
ただでさえ不利なこの状況を、より一層悪い方向に進め、
敗色を濃厚にしてしまう悪手である。
剣はどちらも、手放せない。
鎧をこれ以上削らせる余裕もない。
鎧で受け損なったら、体のどこかに手裏剣が命中する。
そうなったら最後だ。
結局、どうにかして避けるしかない。

「ぐっ…!」

食い下がるセリアの侍刀を大きく打ち払い、刹那に間合いを
とったアグリアスは、横に跳躍し、寸での所で手裏剣の投擲を
回避した。
セリアに斬り掛かるために足を踏み込み、アグリアスは前傾姿勢をとる。

51:ある日常の攻防 26/57
08/02/16 06:51:02 1nPAq5cl0
ドスッ…。

アグリアスの足元で、不吉な音が響いた。

「うっ!?」

異変は、すぐにアグリアスの知るところとなった。

「(馬鹿な…!身体が…身体が動かない!?)」

アグリアスの全身は、前傾姿勢を保ったまま硬直していた。
脚も、腕も、まるで彼女のいうことを聞かず、
氷漬けにでもなったかのように固まって、ピクリとも動かない。
石化の手裏剣を投げたレディには細心の注意を払っていたし、
投擲された手裏剣についても完全に避けたはずである。
それでも身体が動かないというこの事態…原因があるとすれば…セリア。
レディに注意を傾けたほんの一瞬に、セリアに何かをされたとしか
考えられない。
事実、アグリアスの刹那の間に展開された推理は当たっていた。
全ては、周到に用意された罠。
石化の手裏剣は、現在の絶対的勝機を作り出すための布石。
手裏剣の威力と脅威を標的に存分に認識させた上で、
恐怖と焦りを心に染み込ませる。
手裏剣の回避に注意を仕向けさせた上で、
アグリアスのマークがザルになったセリアが、刹那のうちに決定打を仕掛ける。
アグリアスが足元をとっさに見れば、自身の影の胸の位置に、
黒い手裏剣が突き刺さっているのが見て取れた。
影が、地面に縫い付けられている。
アグリアスがレディの投げた石化の手裏剣を回避しようと跳び、
セリアへの注意がおろそかになった一瞬に、セリアがアグリアスの
影に向けて、密かに別の手裏剣を投げつけたのである。

52:ある日常の攻防 27/57
08/02/16 06:55:08 1nPAq5cl0
石化の手裏剣同様、対象の動きを一瞬で停止させる
呪術や魔術など、通常はありえない。
にも関わらず、アグリアスの影に突き立てられた黒い手裏剣は
彼女の知る理とは別の、正体不明の機構をもってして、
アグリアスの全身を呪縛し、頑として身動きを取らせない。
一秒以下の隙を奪い合う、達人同士の技の応酬下において、
身動きを封じられるというのは…即ち死。
無防備の身体は、敵の刃を避けられるはずも無い。
果たしてセリアとレディは、笑いもしなければ喜びもしなかった。
依然としてその顔には、何の色も浮かばない。
虚無を宿した、生きながらにして既に死んでいる心は、何も映さない。
彼女らが勝利を手にしたも同然の現況は、偶然によるもの
でもなければ僥倖でも何でもない。
2人の実力と、敵を欺く周到な陽動作戦による必然。
今こそ標的を斬り刻み、血の海に沈めんと、
セリアとレディはそれぞれの得物を構えなおして
冷徹にアグリアスに走り寄る。
そこに油断や慢心は、欠片も無かった。
その様子はちょうど、見えざる糸に絡め取られ、
身動きが出来なくなった無力な羽虫を、蜘蛛が捕食するために
機械的に近づいていくのに似ている。
絶体絶命と呼ぶにふさわしい窮地に追い込まれ、
アグリアスは硬直したまま剣に力を込める。
最後の手段をとるしかなかった。
非常に危険であり、自滅する可能性も高いが、
このまま黙って殺されるのを待つよりは、いくらか生存の確率は
高まるだろう。

「(影に刺さった手裏剣をどかすことができれば…
 動けるようになるはずだ…!)」

53:ある日常の攻防 28/57
08/02/16 06:59:10 1nPAq5cl0
うつむいた状態のまま身動きが封じられているため、
今2人の殺し屋が何をどうしているのかを見ることは叶わない。
2人の床を蹴る音から察するに、4本の刀で無防備のアグリアスを
なますに斬り刻むつもりだろう。
たが恐怖は、今必要な感情ではない。
努めて冷静になり、右手に持つ騎士剣に内力を集中させる。
聖剣技は、標的を選択的に攻撃するための指向性をもたせるために、
術者の技術によりエネルギーを精製し、力の奔流を
特定の形態に形作らなければならない。
この工程こそが、聖剣技を強力な遠距離攻撃手段たらしめると
同時に、技を繰り出すために生まれる硬直の原因にもなってしまう。
銃弾を火薬の爆発による圧力で、一定の方向に撃ち出すには、
弾丸の飛ぶ方向を規定するバレル(銃身)が必要であるのと同じである。
聖剣技の使い手は、自らをバレルとして、指向性のエネルギーによる
砲撃を、標的に叩き込むのである。
彼女が今やろうとしていることは、無方向なエネルギーを方向付けるための
精製過程を省いた、単純なエネルギーの放出。
危険であるし、無意味であるので今まで一度もやったことがないが、
何の方向性も持たないエネルギーの奔流は、恐らく
爆発を伴なって術者もろとも周囲を破壊するだろう。
いわば、むき出しの銃弾を数十個、無造作に焚き火の中に
放り込むようなものである。
火薬に引火し、暴発した銃弾は、周囲の人間を無差別に殺傷する。
精製の過程を含めると、最短でも2秒の硬直を要する聖剣技であるが、
精製を省けば、一瞬で力を放出することは可能であると考えられる。
術者の無事は全く保障されない、危険極まりない荒業ではあるが…。
暴発による怪我は、確かに恐ろしい。
しかし、アグリアスにとって最も恐るべき、由々しき事態は、
2人の殺し屋を止められず、ここで無駄死にすること。

54:ある日常の攻防 29/57
08/02/16 07:02:51 1nPAq5cl0
ここで自分が無抵抗に殺されれば、現在エルムドアと交戦中のラムザは、
あの凶悪なセリアとレディをも同時に相手にしなくてはならなくなる。
いかにラムザでも、あの手錬3人を同時に相手しては、
勝てるわけがない。成す術なく殺されるだけである。
隊の長であり、皆の希望であるラムザが殺されれば、全てが終わる。
それだけは、何としても防がなくてはならない。
今ここで、自分の身がどうなろうと。
2人の殺し屋の足音がアグリアスのすぐ傍まで近寄り、
今まさに、アグリアスの首に刀が振り下ろされようとしたときに、
アグリアスはすっと目を閉じ、祈るような思いで、剣から力を解き放った。
制御を失った無秩序な力の流れは、爆発を伴なって
アグリアスの影を縛っていた手裏剣を吹き飛ばす。
爆音と爆煙が吹き上がり、爆風が吹き荒れる中、
セリアとレディの2人はとっさに後方に回避し、
即座に状況の把握に移る。
不可解な攻撃を受けた場合は一度距離をとり、
相手の出方をうかがうのが戦場における鉄則である。
剣しか扱えないはずのアグリアスが、放出系の攻撃手段…
それもノータイムで発動するようなタイプを突如使用したのは、警戒に値した。
術者であるアグリアスは、当然のことながら
爆発による衝撃を、無防備のまま全身に受けたことになる。
辛うじて立っているものの、爆心地より最も近い位置にあった右手、
エネルギーの射出口となった剣を握っていた右手の感覚がほとんどない。
今の爆発の威力から察するに、指が何本か消し飛んでいたとしても
不思議なことではない。
足元の感覚が消えかかり、絶望的な浮遊感が全身を襲う。
何度も経験した、気絶直前の症状である。
この場で気を失うということは、己の命をむざむざセリアとレディの
2人にただでくれてやるのと同じである。
断じて、ここで気絶する訳にはいかなかった。

55:ある日常の攻防 30/57
08/02/16 07:06:27 1nPAq5cl0
「(ただでは死ぬな―。
 死ぬなら…1人でも多くの敵を
 道連れにしろ―!!)」

下唇を犬歯で思い切り噛み、鮮烈な痛みと鮮血の味が、
おぼろだったアグリアスの意識の輪郭を確かなものにする。
ふらつく脚を内心で叱咤し、アグリアスは疾駆する。
敵を殺すために。仲間を生かすために。
煙幕の中からレディの眼前に突如飛び出したのは、
鬼神のごとき形相で双剣を振るうアグリアス。

「!」

人間らしい驚きの表情が、はじめてレディの顔を彩った。
自爆したようにしか見えない標的が、
これほど早く、再び刃向かってくるとは、さしもの
レディも想定外だったのである。
アグリアスがくぐり抜けてきた死線の数と執念の強さ。
これが、殺しの練達者たるレディにも予測不可能な行動を、
アグリアスが可能にした理由だった。
レディの判断違いで、アグリアスの振るう剣への対応が一瞬遅れる。
アグリアスの壊れかかった右手に収まった、騎士剣による
斬撃はレディに打ち払われ、剣はアグリアスの手を離れて
彼方に弾き飛ばされた。しかし、アグリアスの左手の剣による
追撃には、レディの反応が間に合わなかった。
鋭い刺突は、刹那の内に、容赦なくレディの右胸を串刺しにする。
人を刺し貫く嫌な感覚が、アグリアスの手に伝わった。

「…あ…」

かすかな声が、レディの口をついて出た。

56:ある日常の攻防 31/57
08/02/16 07:22:44 1nPAq5cl0
レディの両手から、忍刀が離れ落ち、澄んだ金属音が鳴り響く。
口元から血を流しながら、死相もあらわな顔を後ろにのけぞらせ、
崩れ落ちる…そうなる寸前で、レディは踏みとどまった。
即死で当然のはずの致命傷を受けてもなお、レディは倒れない。
いかなる執念によるものか、死の恐怖と絶望をも凌駕する、
本能にまで刻み込まれた殺し屋としての習性がそうさせるのか。
必勝必殺を信じて疑わなかったアグリアスの顔が、驚異に凍る。
明らかに死に体においてもなお、レディは左手を、流れるような
動作でアグリアスの首に添えた。
レディの細く、白い指が、白骨化した死神の手を思わせて、
アグリアスに"死"を彷彿とさせる。

「!?」

親指と中指で、首の左右を走る太い血管を押さえつける。
必要最小限の力、それでも人の意識を奪うには十分な
圧力をもってして血流を封じ、標的を瞬間的に気絶に追いやる。
つまり、レディは格闘技における絞め技を、ごく簡易的に
即席で再現したことになる。
死人も同然のレディに、突然首を撫でられたかと思えば、
急激にアグリアスの視界は暗転する。
意表を突かれたアグリアスは成す術なくレディの術中にはまり、
一瞬ではあるが、意識を消失した。
レディは淀みのない流れのまま、左手の人差し指を
もってして、標的の気道と喉笛を同時に圧迫する。
これにより、アグリアスは呼吸をすることも声を上げることも
出来なくなったわけだが、意識が暗転している彼女には
知る由もない。
そのまま、右手をアグリアスの左胸に当てる。
石化の手裏剣が命中したことにより、上半身を覆う鎧の

57:ある日常の攻防 32/57
08/02/16 07:26:15 1nPAq5cl0
大部分が破損しているため、今現在、アグリアスの左胸は
外に露出している形を取っていた。
レディの右手は、アグリアスの左胸…心臓のすぐ上に添えられていた。
狙いは無論、急所の中の急所である心臓。
レディの手のひらから即座に放たれた衝撃波は、
ほぼ無音を保ったまま、手と心臓の間にあるアグリアスの服も、
皮膚も一切傷つけることなく、的確に、心臓を直撃した。
意識を奪われているアグリアスの全身が、反射的に
びくんと大きくけいれんを起こす。
標的の意識と悲鳴を奪い、完全に無力化した上で、
心臓のみを選択的に破裂させる。
極限まで音を殺すように技術立てられた衝撃波は、
誰に聞きとがめられる恐れもないし、素手による殺しは
証拠すら残らない。
加えて、この技を食らった者の衣服や皮膚には、一切の
痕跡が残らない。
衝撃波は、手のひらから放たれた少し先…つまり服や皮膚を
通り越した心臓のある位置で炸裂するように組み立てられた、
特殊技術によるものだからである。
傍目には、原因不明の変死にしか映らない。
死因を特定できたとしても、それは検死のための解剖を
行った後である。
いつでも、どこでも、証拠の残らない迅速で確実な暗殺を。
それを可能にするこの絶技…息根止は、
暗殺の集大成にして、殺し技の一つの到達点。


「さよなら」



58:ある日常の攻防 33/57
08/02/16 07:29:58 1nPAq5cl0
口元に血を滲ませながら、虚ろな眼差しでレディは呟いた。
余命幾ばくもない彼女の顔を彩る色は…悲しみ…とでも
表現すべきものであろうか。
今生最後の息根止。何十人もの命を奪ってきた、
その至高の暗殺技の手順に、断じて間違いは無かった。
問題があるとすれば、ただ一つ、彼女が致命傷を負っていた
一点のみである。
渾身の力を込めたその一撃でさえも、目前の標的を
絶命しうるには至らなかった。
それは、手応えからレディ自身がはっきりと自覚できていた。
アグリアスの首を押さえていた左手にも力が入らなくなり、
レディの意識が混濁を始める。
死が、もう目前にまで迫ってきていた。
首から手を離され、意識を取り戻したアグリアスは、
正体不明の胸の激痛に意識を割く余裕もない。
背後からは、セリアが走り寄る足音が聞こえる。
アグリアスを今、仕留めるつもりでいるのは間違いない。

「くっ!!」

壊れかけた右手の掌底を、左手に持つ剣の柄に添えて、
レディの胸を刺し貫く剣を、力任せに上に押し上げる。
生きたまま胸から肩の上まで剣で引き裂かれる、地獄の苦痛に
襲われているのにも関わらず、レディは悲鳴一つ上げなかった。
瞼を静かに下ろして、従容と最後の時を迎えていた。
胸から肩にかけて切り裂かれたレディはそのまま絶命し、
アグリアスは即座に背後を振り向き、セリアの剣戟を打ち払う。
アグリアスはとっさに後方に跳躍し、セリアと距離をとった。
アグリアスの全身を、原因不明の脱力感が覆う。
レディに首を絞められた時に何をされたのか、アグリアスが知る由もない。

59:ある日常の攻防 34/57
08/02/16 07:33:32 1nPAq5cl0
爆発の直撃を受けたときも酷い有様だったが、
アグリアスの今の状態は、それにも増してさらに酷い。
全身に力が入らず、腕は剣を満足に支えることが
できないほどに震えている。腕の震えにつられて、膝まで笑い出していた。
もはや、自身の体重を支えられないほど体がボロボロに
なっている証である。
めまいと吐き気に襲われる中で、少し気を抜けば即座に気絶…
場合によってはそのまま死ぬかも知れないことは、本能的に察しがついた。
揺らぐ視界の中央に立つセリアは、足元に転がる、
血だまりの中に沈むレディの骸を見つめていた。
相変わらず、人形じみたその顔には表情も何も浮かばずに、
彼女の目には、夜の砂漠のように冷たく乾ききった色しか宿っていない。
右手は壊れて使い物にならず、あまつさえ死にかかっている
アグリアスが、目の前の万全の状態のセリアに勝つ見込みは、
どう考えても少なすぎる。
両者共に万全の状態で戦えたのなら、剣の地力が上である
アグリアスが勝つであろうが、現実は常に非情で過酷だ。
アグリアスが生還できる可能性は、ほぼゼロに近かった。
ならば刺し違えてでも、セリアはここで倒さなくてはならない。
ここでセリアを止められなければ、ラムザが殺される。
自分など、ただの戦闘要員の一人にすぎない。
代わりはいくらでもいるが、隊のリーダーたるラムザは唯一無二の人間。
断じて、失うわけにはいかない。

「(死なば諸共…)」

アグリアスは、左手の剣柄をゆるゆると大きく引き絞り、
切っ先を正眼の高さに構えてセリアをにらみ据える。
アグリアスの採った剣の型は、防御を捨てた、捨て身のカウンター型。
己の死を前提にした、死してもなお敵を殺さんとする執念の剣である。

60:ある日常の攻防 35/57
08/02/16 07:37:02 1nPAq5cl0
これから死のうという時にも、アグリアスの心は乱れなかった。
命を捨てる覚悟など、とうの昔に済ませてあるからだ。
ここで死んでも、本望であるとアグリアスは思っていた。
命とは、目的を果たすために使うべきものであり、
ただ生き永らえたところで、目的も目指す場所ももたずに、
死なないために生きているような人生に、意味などない。
セリアを殺して、ラムザを生かす。
その代償が自身の命であるのなら、そう悪い条件ではない。
永く身を投じてきたこの戦いの結末を、この目で見届けられないのは
残念であるが、こればかりは仕方の無いことだった。
セリアも両手の侍刀を構え、アグリアスを殺すべく前傾姿勢をとる。
次の一撃で、決着がつく。
セリアの手に納まった2振りの刀が、薄暗い部屋の中で
かがり火の光を映して、妙に白く、眩しく輝いていた。
冷たく光る刀身を、美しいと、なぜかアグリアスはぼんやりと
思っていた。
刀を振りかざし、セリアがアグリアスに迫る。
アグリアスは、生き残ろうとは最初から思っていない。
ここで、セリアを殺せるのなら、死んでも構わなかった。
セリアの繰り出した、風斬りでうなる白刃が、アグリアスを刃圏に捉える。
はなから命を賭した、カウンター狙いのアグリアスは、後手に回って、
セリアを絶命しうる剣戟を見舞う。
ところが、セリアの剣の軌道と、狙った場所は、
アグリアスが予想だにしないものだった。
刹那の驚愕がアグリアスの胸中を駆け抜けたが、
体は自然にセリアの動きに応じ、当初の目的を遂行するために動いた。
生まれた日から背負ってきた全てをのせた刃と刃が交わり、
互いの道程が刹那の間に交錯し、一方のそれが、儚くついえる。
アグリアスとセリア。
2人の血が、床に広がった。

61:ある日常の攻防 36/57
08/02/16 07:41:12 1nPAq5cl0
アグリアスの頬に、一筋の斬り傷が刻まれていた。
傷から溢れ出る鮮血が、ぱたぱたと床に零れ落ちる。
女の貌に刀傷など、魂を直接斬り刻まれたようなものであるが、
それでも致命傷には程遠い、軽傷でしかないものであった。
油断無く左手の剣の切っ先をセリアに向け、
残心するアグリアスの頭を一つの疑問が支配していた。

「(何故…こんな真似をした…?
 殺そうと思えば、簡単にできたはず……)」

傷を負いながらも生きているアグリアスに対して、
セリアは致命傷となる斬撃を、その身に刻まれていた。
斬られた首からは、とめどなく赤黒い血が噴出している。
あの出血量では、もはや助かる見込みもなかった。
そんな自明の理が、理解できないはずはないのに、
セリアは、まるで全てを悟ったかのように、そこに静かに佇んでいた。
最後の時がもう間近だというのに、セリアの無機質な
表情には、少しの変化もなかった。
暗い目で、アグリアスの顔を…顔の斬り傷をじっと眺めている。
そして、視線を両手の侍刀に移し、少しだけそれを
見つめた後に、すっ…と、2振りの刀を床に落とした。
戦いを、殺し合いを放棄した証だった。
刀は床に落ち、澄んだ音を立てて、動かなくなった。
強い眠気に襲われているかのように、セリアの瞼は勝手にとじて、
その度に、セリアは瞼を上げる。失血死寸前の状態だった。
そしてセリアは、斬り口から吹き出す血に、そっと、右手を添えた。
そこから流れ出す、命の温かみを確かめるかのように。
やわらかく瞼を下ろし、かすかに笑ったような表情をした。
漆黒の夜空に瞬いては儚く消える、流れ星のような微笑みだった。
セリアは最後に、ぽつりと呟く。

「わたしも、ここで君と降りることにする」

62:ある日常の攻防 37/57
08/02/16 07:44:34 1nPAq5cl0
そう言い遺して、セリアは両膝を折り、血だまりの中に倒れ付した。
しばらく剣を構えたまま、セリアが本当に死んだことを確認すると、
アグリアスは片膝を床について、荒い呼吸に肩を上下させる。
本当に、死ぬ寸前だった。今こうして生きていられるのは、
奇跡以外の何物でもない。
アグリアスは安堵の息を思わず漏らし、気を抜いた途端、

「………ッッ!!」

おびただしい量の血が、アグリアスの喉をついて吐き出された。
つんのめって吐血を繰り返すアグリアスの傍に、新たな血だまりが
次々と作り出される。
レディに何をされたのか、アグリアスが知ることはもうできないが、
左胸が灼けるように激しく痛む。
無防備な体の内側に、強力な酸をぶちまけられたような感覚である。

「…う…ぐっ…くっ…」

激痛に喘ぐアグリアスは、上半身を支えられなくなり、
床に倒れ付しそうになって、思わず右手で体を支えてしまい、
更なる痛みに全身を蝕まれた。
右手の指のうち、親指、人差し指および中指の骨が砕け、
本来ありえない方向に指が捻じ折れている。
薬指と小指も無事では済まず、傷だらけの上に爪がはがれかかっていた。
指は、人が生きていく上でなくてはならない大切で繊細なものである。
そのため、指は痛みにかなり敏感であるように出来ている。
その性質を利用して、指と爪の間に針を刺し込んだり、
生爪をはいだり、指の骨を折るといった拷問方法が一般に採られる
ほどである。
痛み以外の感覚が無い右手の損壊は、影を縫う手裏剣の呪縛から

63:ある日常の攻防 38/57
08/02/16 08:01:47 1nPAq5cl0
脱出するために支払った代償である。
高い買い物ではあったが、指が消し飛ばなかったのは僥倖だった。
あの爆発の威力からすれば、そうなってもおかしくなかったが、
指は何とか、5本とも手のひらについている。
骨は折れても、時間をかければ元に戻る。
指自体を失っていれば、もう右手で剣を握ることさえ不可能だった
のだから、不幸中の幸いである。
しかし、そんな幸運をも帳消しにするほどの胸の激痛が、
絶え間なくアグリアスを責めさいなむ。
いつ終わるとも知れない吐血を繰り返し、アグリアスの口の中は
血の鉄さびの味で満たされて、それだけで吐き気を催させた。
怪我をするのは、珍しいことではない。
重量級の攻撃を受け流せずに、肋骨が何本か砕けたこともあるし、
腕や脚も何回か折れている。
打撲、擦過傷は日常茶飯事であったし、痛みには慣れている
つもりではあったが、今回のように、繊細な手先がグシャグシャに壊れ、
その上内臓系に深刻なダメージを負うというのは、
共に初めての体験であり、両方ともかつてないほどの
苦痛をアグリアスにもたらした。
アグリアスが知る由も無いが、レディが死にぎわに放った息根止は、
アグリアスの心臓を破裂させることこそ叶わなかったものの、
大きな損傷を心臓に与えたのは確かだった。
即死させることはできなくとも、レディが遺した死の刻印は、
じわじわとアグリアスの心臓と命を蝕み続け、このまま放っておけば、
アグリアスはいずれ確実に、心不全で死亡する。
理解を超えた直感が、アグリアスの脳裏を去来し、
まもなく死ぬであろう己の運命を本能的に察知しつつも、
アグリアスは、壊れかかった己の体も顧みず、
左手に持った剣を支えに、震えながらよろよろと立ち上がる。
未だエルムドアと戦っている、ラムザの加勢に向かうために。

64:ある日常の攻防 39/57
08/02/16 08:05:41 1nPAq5cl0
エルムドアの異常な膂力によって繰り出される長物の斬撃を、
ラムザはその手の騎士剣で受けるも、威力を殺しきることは叶わず、
後方に体ごと弾き飛ばされ、靴底と床を摩擦させることで体を止める。

「セリア。レディ。
 死んだか」

長物を構えながら、エルムドアは何の感慨ももたない様子で呟いた。
ラムザがはっと見やれば、血の海に沈む2人の殺し屋の死体と、
所々が血に汚れたアグリアスが、ふらふらとラムザ達に近寄ってくるのが
見て取れた。

「2人がかりで1人の女も仕留められないとは…
 不甲斐ない。
 死んで当然だな」

冷徹にそう吐き捨て、懸命に歩み寄るアグリアスを一瞥し、
その美貌に刻まれた傷跡に、エルムドアは憎々しげに歯噛みした。

「女を殺し損ねるのみならず、あまつさえ
 命令違反…度し難い醜態だ。
 消えろ。
 恥晒し者どもめ」

そう言ってエルムドアの剣が仄かな光をまとい、長物を一閃させると、
刀身から放たれた剣気はセリアとレディの屍骸に直撃し、
2人の死体は音も無く崩壊し、砂のようになって、いずこへと消え去った。

「やれやれ。無能な部下をもつと苦労する。
 君の仲間は優秀なようだ。羨ましい」

65:ある日常の攻防 40/57
08/02/16 08:09:53 1nPAq5cl0
この期に及んで、エルムドアは笑顔を浮かべてラムザと
アグリアスの2人に話しかける。

「仕切りなおしが必要なようだ。
 私も手駒を2つ失い、彼女もどうやら命が危ないらしい」

アグリアスは努めて平静を装い、健気に剣を構えているが、
見る者が見れば、彼女が著しく消耗しているのは明らかだった。

「彼女の健闘に敬意を表し、ここは私が引くとしよう。
 君の仲間を、まとめて連れてきたまえ。
 私も全力をもって、それを叩き潰す。
 地下で待っている。そこで、決着をつけよう」

エルムドアの手の長物がふっと消え、その直後に、
エルムドア自身もまた、幽霊のように実体がおぼろとなり、
その場から消え去った。
部屋の中からエルムドアの気配が消えたのを確認すると、
アグリアスは糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
心身ともに、もう限界を超えて酷使していたのである。
そもそも、不完全版とはいえ、レディの息根止の直撃を受けて、
その後に立って歩けるアグリアスの体力と精神力が、
常軌を逸していたのである。
ラムザは即座に剣を鞘に納め、アグリアスに駆け寄った。

「アグリアスさん!大丈夫ですか!?」

うつ伏せのまま動かないアグリアスは、上半身がゆるく上下
していることから息はまだあることは伺えるが、危篤状態で
あることは、医学の心得がない素人目にもはっきりと見て取れる。

66:ある日常の攻防 41/57
08/02/16 08:13:21 1nPAq5cl0
ラムザは細心の注意を払って、うつむけのアグリアスを、
そっとあおむけに起こす。

「…う…あ…ら、ラムザ…?」

薄く目を開けたアグリアスは、喋ることさえも億劫そうにしていた。
口元に血を滲ませ、顔色は蒼白になりつつある。

「アグリアスさん!大丈夫ですか!?」

「…ば、…馬鹿かお前…。み、見て…分からんのか。
 死にかけ…なんだ…よ」

そんな皮肉めいた言葉を吐いて、アグリアスが咳き込む。
鮮血の飛沫は、ラムザの衣服にも黒々とした染みを形作った。
アグリアスの顔には痛ましい斬撃の跡が刻まれ、
右手の指は見るも無残に半壊していたものの、
それ以外は目立った外傷もない。
しかし、アグリアスの疲弊具合は尋常ではない。
とにかく、応急処置を施さなくては彼女が死ぬ。

「少しの辛抱です。我慢して下さいよ」

ラムザはそう言って、返事を待たずにアグリアスの肩と
膝の下に両手を差し入れ、そのまま抱き上げた。
意識もおぼろであるはずなのに、アグリアスはこの時だけ
なぜか急速に覚醒し、大声を上げた。

「ば…!馬鹿!この馬鹿!な、何をするんだ!
 あ、歩ける!歩く!自分で歩く!離せっ!」

67:ある日常の攻防 42/57
08/02/16 08:16:47 1nPAq5cl0
「何言ってるんですか!死にかけだって、さっき自分で
 言ったくせに!」

蒼白だった顔をほんのり紅く染めて、のろのろもたもたと
腕の中で暴れるアグリアスをよそに、ラムザは安全な場所を探す。
エルムドアは地下で決着をつけるなどと言っていたが、
それは嘘で、不意打ちを仕掛けてくる可能性も考えられる。
部屋が一望でき、さらに部屋の入り口をも監視できる
位置が治療場所として望ましい。
その条件に合った場所を見つけ、ラムザはアグリアスを
抱きかかえたままそこに走り、アグリアスをそっと降ろして
背中を壁にもたれかけさせた。

「…ひ、人が、動けないのを…いいことに…
 や、やりたい放題やって…!ひどい奴…!
 い、いいかっ!? 誰にも…言うなよ! 誰にも!」

「はいはい。誰にも言いませんよ。
 …アグリアスさん、やたら元気ですけれど、
 本当に死にそうなんですか…?」

「あ…あ…当たり前だっ…!重症だ…!」

怒りと恥辱で顔を赤くしながらそう言って、
アグリアスは再び咳き込み、わずかに吐血する。
元気なように見えても、重傷を負っているのは間違いない。

「どこを怪我したんですか?右手が酷いのは分かりますが、
 それ以外は特にそれらしい怪我は見当たりませんが…」

68:ある日常の攻防 43/57
08/02/16 08:20:23 1nPAq5cl0
「…胸…だ。あの殺し屋の片割れに…何かを…された。
 左胸が…焼けるように…痛む…」

「アグリアスさんの服には何かの攻撃を受けたような
 痕跡が見られませんが…打撲か何かでしょうか?」

「分からない…。首を掴まれて…一瞬…気絶したと思う。
 そ、その間に何か…された。打撲かも知れないし…
 そうで…ないのかも…」

「分かりました。とりあえず、患部を見てみないことには
 治療方法が分かりません。
 痛む箇所をじかに見せてください」

ラムザはナイフを取り出して、アグリアスの眼前に近寄った。

「……? お、お前…ソレで…何する…つもり…だ…?」

「何って…ナイフでアグリアスさんの服を裂いて、
 痛む箇所を見せてもらうつもりですけれど」

「…!!! ば、馬鹿! 何…考えてるんだ!!
 ふざけるな…! この…変態…!! 犯罪者!」

「ちょっ…お、落ち着いて下さい!暴れると傷が広がります!」

「み、見損なった…!見損なったぞ、ラムザっ…!
 動けない女…を…もてあそぶなど…悪趣味にも…程がある!
 は、恥を知れっ!恥を!」

69:ある日常の攻防 44/57
08/02/16 08:24:03 1nPAq5cl0
ボロボロになった右手を振り回し、血を吐きながら
じたばたと足掻くアグリアスを見て、「強い人だなぁ」と、
ラムザは半ば呆れながら思っていた。
アグリアスの被害妄想…というよりも思い込みが強いことは
いつもの事だったので、ラムザは特にうろたえる様子も見せず、
淡々と応対する。

「誤解ですよ。アグリアスさん。決して変な気持ちで
 服を切るわけではありません。
 患部を見なければ、対処方法が分からないから
 やむを得なくさせてもらうのです。
 おかしな真似は一切しないと誓います。
 ラムザ・ベルオブの名と誇りにかけて、誓いましょう」

ラムザの真摯な態度と眼差し、アグリアスはようやく平静を取り戻す。
すっかり紅く染まった顔をちらりちらりとラムザに向けて、ぽつぽつと
アグリアスは応える。

「……ほ、本当…だな…? 変な事をしたら…刺す…ぞ…?
 お前の…護衛役…辞めるぞ…?」

「本当ですよ。約束は、絶対に守ります」

「……信じてやる…さっさと…済ませろ」

観念したように、アグリアスはすっと目を閉じ、抵抗をやめた。
アグリアスがまた暴れださないように、できる限り素早く、
的確に服を裂き、アグリアスが最も痛むと訴える箇所をさらけ出す。
服を裂くといっても、本当にごく一部分を裂くだけであり、

70:ある日常の攻防 45/57
08/02/16 08:28:23 1nPAq5cl0
最も異性に見せたくないであろう、女性の胸は
まるで見えないのだから、ラムザが散々変態変態と
アグリアスに罵られるいわれなど、本来ないはずなのだが、
そのあたりの理屈をラムザが懸命に説明しても、アグリアスは
聞く耳を持たなかった。
どうにか彼女を説得して、こうして患部を観察したはいいものの、
異常は何も見当たらない。わずかな斬り傷、かすり傷はおろか、
あざすら見つからない。
異常を見つけようとするときに、一番困るのが、何も異常が
見つからなかった時である。
外傷がないのに痛むということは、原因は体内の傷…という事になるが…。

「アグリアスさん。ちょっと触りますよ」

「えっ…!? お、お前!やっぱり…!!
 この嘘つき! この痴漢!」

「触診ですってば…。軽く押しますから、痛かったら
 痛いとはっきり言ってください」

ごく軽く、心臓のある位置をラムザが指で押すと、途端に
苦悶の表情を浮かべて、アグリアスが悲鳴を上げた。

「い、痛い!痛い!やめろ、離せラムザ…!」

再び怒り狂うアグリアスを放っておいて、ラムザは考える。
蒼白な顔(もっとも今は怒りで赤くなっているが)と全身を
襲う脱力感は、血液が満足に体を巡っていない証拠である。
痛みが最も酷い箇所が心臓の真上であり、そこを押すと激しく
痛むことからも、心臓に何らかの異変が起こっているのは間違いない。

71:ある日常の攻防 46/57
08/02/16 08:31:37 1nPAq5cl0
「おい…!? 聞いて…いるのか! ラムザ…!
 重傷を負った…仲間を…! お、女を…押さえつけて!
 お前は…ど、どこまで…卑劣な男なんだっ…!」

「ちょっと失礼」

そう言って、ラムザはアグリアスの首筋に指を添えて
脈を計る。予想していた通り、アグリアスの脈は弱々しく、
不安定な間隔で打っていた。やはり、原因は心臓の異常にある。

「アグリアスさん。原因が分かりました」

「…は…?」

体の色は雪のように白くなっているのに、顔だけは鮮やかな
桃色に染めるという、器用な芸当を図らずも披露中の
アグリアスは、きょとんとした様子でラムザの顔を見た。

「心臓に、重大な損傷があるようです。
 今すぐに治療を始めます」

「し、心臓…!?」

気丈で有名なアグリアスだが、止まれば即座に死に至る、
心臓に異常があると聞き、ほんのわずかに怯えた表情を見せる。
ラムザは右手をそっと、内傷を刺激しないようにアグリアスの左胸に添えた。

「あっ…! お、お前また…! 勝手、に…私の体に触るな!」

「文句は後でいくらでも承ります。今は治療に集中させて下さい」

72:ある日常の攻防 47/57
08/02/16 08:36:34 1nPAq5cl0
じたばたと弱々しく暴れるアグリアスを、半ば力ずくで押さえて、
ラムザは右手から白魔法を放射し始める。

「少し痛いかも知れません。我慢して下さいね」

「ひ、人の話を…聞けっ!私を無視、するなっ!」

熟練した白魔法の使い手は、高位の回復魔法を
傷口に集中して施すことにより、かなり短時間で修復することができる。
一介の白魔導師では、傷を負った者の体力を応急的に回復させる、
下位の白魔法しか使うことができないが、重傷を負うことが
日常茶飯事であるラムザの隊においては、戦闘の場に出る者は、
ほぼ全員高位の白魔法を義務的に修めていた。

「アグリアスさん。大丈夫ですか?」

「い…痛くない!痛く…ないから…構わず続けろ…」

強引に胸の治療を始められ、小声で恨み言を呟きつつも、
アグリアスは観念して、従容とラムザの白魔法をその身に受けていた。
口では痛くないと訴えていても、顔には苦悶の
表情がありありと浮かんでおり、額には汗が滲んでいる。
無理な荒治療は、それ相応の負担を患者の体にかける。
ラムザの白魔法によって、アグリアスの心臓の痛んだ箇所や
壊れた組織は着々と修復されているはずだが、
鍛えようのない体内で起きる、急激な臓器の復元は、
大きな苦痛を伴なってアグリアスを責めさいなんでいるはずである。
本来ならば、麻酔が必要なほどの規模の治療を、
アグリアスは持ち前の精神力をもってして、歯を食いしばって耐え抜く。
ラムザは、右手でアグリアスの心臓を治療しつつ、同時に左手で

73:ある日常の攻防 48/57
08/02/16 09:01:38 1nPAq5cl0
別の回復魔術をアグリアスに施す。
暗殺者たちとの戦闘や出血で、極度に疲弊し、
衰弱している彼女の体力を回復させるためである。
全身を包む暖かな光に、アグリアスの表情がほんの少しだが
和らいだ。
治療に伴なう痛みの峠も越したようで、少しずつアグリアスの
表情は安らかなものとなり、体調も快方に向かいつつあった。

「アグリアスさんをここまで追い詰めるなんて、
 あの2人も大したものですね」

「ああ…強かったな。何度も…死ぬかと思ったよ…」

虚ろな眼差しで彼方を遠望するアグリアスの脳裏に、
先ほどまで身を投じていた死闘の記憶が蘇る。
手に残る、暗殺者たちを殺した嫌な感覚。
慣れたものだが、人を殺した後の、形容しがたい
不快な感情が、かすかにアグリアスの心を煙っていた。

『わたしも、ここで君と降りることにする』

セリアは、死ぬ前に、確かにそう言った。
妙に澄んだ、無垢で、少女のような声だった。
全てを受け入れて、死を、在るべきものとして迎えていた。
恐らくあれは、自分の隣に、常に自身の死を置いて生きてきた人間。
自分の命を失うことも、他人の命を奪うことも等価とし、
自分の死と、多くの死に埋もれて生きていたのだろう。
そんな、血と闇にまみれた拷問のような人生を、自分から降りた。
先に逝った、仲間と一緒に。
アグリアスが、終わらせた。

74:ある日常の攻防 49/57
08/02/16 09:05:40 1nPAq5cl0
「…なあラムザ。…お前、この戦いの中で…
 死にたいって…思ったことってあるか…?」

「何ですか。やぶからぼうに…」

「…別に…。何となく、聞いてみただけだ」

「昔はしょっちゅう思ってましたよ。
 今でも、たまに死にたくなります」

「…酷いリーダーもいたものだな。
 皆の前で言うなよ。引っぱたかれるぞ」

「あはは。他言はしないようにお願いしますよ。
 僕達の旅は、死に呪われた旅です。
 歩いてきた道にも、これから進んでいく道にも、
 仲間と敵の屍がたくさんたくさん転がっているような…
 そんな旅なんです。
 そんな呪いの旅を長く続けているんだから、
 そりゃ死にたくもなりますよ」

「…そうだな。辛い旅と、戦いの毎日だ」

「人の命を奪って、仲間の命を使って、先に進んでいく。
 自分は正義なのか、それとも悪なのか、分からなくなって
 何度も悩みました。今でも、はっきりとした答えは出ていません」

子どものような幼さを残した童顔のラムザは、
無邪気に笑って淡々と話した。
アグリアスは、ラムザとは目を合わさずに、ぼうと、遠くを見ていた。

75:ある日常の攻防 50/57
08/02/16 09:09:48 1nPAq5cl0
「怪物の攻撃をもろに食らって、もう動けないくらいに
 ボロボロにされた時も、地面に這いつくばりながら
 よく思いましたよ。
 もういい。ここで死のう。
 ここで降りてしまおう、って」

「………」

「でもね、そんな時に必ずみんなの顔が頭に
 浮かぶんですよ。
 僕の隣を一緒に歩いてくれる、みんなの顔が。
 そして思うんです。
 もう少しだけ、頑張ってみようって。
 だから、僕がこうして生きて、ここまで
 やってこれたのは、本当にみんなのおかげなんです」

「そうか」

アグリアスは、すっと瞼を下ろした。
目を閉じれば、瞼の裏の暗闇に、これまでの道程が鮮やかに蘇る。
多くの敵をその手で屠り、命を奪い、返り血に染まる日々。
そんな中で、突然、永遠に去っていく仲間達。
血塗られた、呪いの旅だ。人々と世界を救うためとはいえ、
降りてしまいたくなるような、過酷で非情な旅路。
だがそこには、信じられるものがあった。
己の命を賭しても惜しくない、情熱があった。
信じて身を預けられる、仲間の姿があった。

「…私も…もう少しだけ、頑張ってみようかな」

ほんのりと紅い顔で、照れくさそうにアグリアスは呟いた。

76:ある日常の攻防 51/57
08/02/16 09:13:12 1nPAq5cl0
「殺し屋2人を抑えておいてくれなければ、僕はたちまち
 死んでいるところでした。
 頼りにしてるんですからね。アグリアスさん」

子どものように朗らかに笑うラムザに、アグリアスは
不覚にも漏らしてしまった己の台詞にいたたまれなくなり、
恥ずかしさが急にこみ上げた。

「そ…そういうお前は頼りないな…!隊の長だっていうのに…!
 私が死に掛かってまで取り巻きの2人を仕留めたのに、
 お前ときたら、銀髪一人も倒せずに!」

ラムザの正視に耐えられず、頬を紅く染めたアグリアスは、
目を閉じて、プイとあさっての方向に顔を向ける。

「あははー…。それを言われると面目次第もありません」

ラムザは笑いながら困ったような顔をして、ポリポリと頭を掻く。
ラムザは決して弱いわけではない。戦闘能力は、
隊の中でもトップクラスに位置する。
レーゼの、聖竜の血族故に常軌を逸した身体能力や、オルランドゥの、
何人の追随も許さない至高の剣技のような、目立った派手さは持たないものの、
剣の腕は一流で、魔法も黒白問わずにかなりの高位まで扱える、
近距離・遠距離の戦闘をそつなくこなす万能型の戦士である。
そんなラムザが苦戦し、ついに打倒に至らなかったのは、
敵のエルムドアが、ラムザに勝るとも劣らない凄腕の剣客だったからである。
超重量級の長物を自在に駆使し、巨大な刃圏で
ラムザを追い詰めたエルムドアは、付け入る隙をほとんど見せない
かなりの手錬であった。異常な膂力によって振るわれる長物の
威力は、剣で完全にガードしたラムザを体ごと後方に弾き飛ばすほどである。

77:ある日常の攻防 52/57
08/02/16 09:16:30 1nPAq5cl0
それに加えて、エルムドアが、厄介な難敵だった理由は、
ラムザと交戦中の只中に、次々と何も無い空間から刀を
召喚しては武器として扱っていたことにあった。
そのような刀は、侍が一般に扱う片刃の刀と変わらないもので、
エルムドアが最初に手にした異様な長物とは較べるべくもない
変哲のないものであったが、エルムドアはそのような侍刀を
宙空から取り出して左手に納めては、刀に宿る魂を引き出し、
ラムザを剣の間合いの遥か外から攻め立てた。
標的の肉体を直接破壊する、衝撃波に似たものや、
動きを呪縛する、死者の怨念を刀から放出し、
ラムザの間合いの遥か外から、次々と射出する。
刀に宿る魂が尽きて、刀身が崩壊すれば、
新たな刀を宙空から召喚し、即座にそれに持ち替える。
財に飽かせた刀の物量攻撃に加えて、
エルムドアが右手に携えた超長物は、常識では考えられない
剣の間合いを実現し、ラムザの攻撃を寄せ付けない。
エルムドアの懐に飛び込み、ラムザが決定打を叩き込めなかったのは
それ相応の理由があった。

「アグリアスさん。胸の治療が終わりましたよ。
 応急処置的なものですけれど、
 とりあえずはこれで安心です」

「ああ。すまないな。おかげでずいぶん楽になった」

死人同然だった、雪のように白い肌は鮮やかな血色を
取り戻し、顔色は健康な人のそれと遜色がないほど、
ほのかな桜色を取り戻す。
ラムザの施した集中治療が功を奏し、壊れかけだった
アグリアスの心臓が修復され、力強く脈を打っている証だった。
ラムザはそのまま、優しく右手をアグリアスの頬に添える。

78:ある日常の攻防 53/57
08/02/16 09:19:52 1nPAq5cl0
「わっ! な、なんだ? 何をするつもりだ…!?」

「頬の斬り傷の治療ですよ。早目に治癒させないと
 傷痕が残ります」

「あ、ああ…。そういえば顔も斬られたんだったな…」

胸の激痛や、半壊した右手の激痛にまぎれて忘れていたが、
アグリアスの頬には痛々しい斬り傷が刻まれていた。
やすやすと斬り殺せるはずのアグリアスを、あえて生かして、
こんな傷を残して死んだセリアの真意は、よく分からない。
もともとあの2人に関しては、不明な点が多すぎる。
闇に喰われた心は、今際のきわにほんの少しだけ、
人間らしい温かみを取り戻したようではあるが、
何を思ってこんなことをして逝ったのかは、今となっては知る術もない。
ラムザの手から、春の日差しのような、心地よい暖かさを伴なって、
白魔法が施される。
アグリアスは、頬に添えられた手から伝わるぬくもりを
感じながら、従容としてラムザの治療を受けていた。

「知っているとは思いますが、白魔法で傷口を
 治療しても、ほんのわずかですが、跡が残ります。
 完全に元通りとはいきません。
 残念なことですが、受け入れてください」

「…お前が気にすることじゃない。
 元々命を張って、この戦いに臨んでいるんだ。
 どこに、どんな傷が残ろうと、大した問題じゃない」

「はあ。さすがです。アグリアスさん」

79:ある日常の攻防 54/57
08/02/16 09:23:41 1nPAq5cl0
「…何だ。さすがって。私は、これでもれっきとした女だぞ…」

「じょ、冗談ですよ!本気にとらないで下さいよー」

どこまでも澄んだ碧眼に、静かな怒りを灯すアグリアスの
眼光に、ラムザはたじろいで困り顔の笑みを浮かべる。
心臓の損傷に較べて遥かに浅い頬の傷は、
ほんのわずかな時間で治療が終わった。
アグリアスの頬には、よくよく目を凝らさなければ気づかない
程度のかすかな傷痕が残っている。
このかすかな傷痕が、アグリアスが今日身を投じた
死闘の名残であり、儚く散っていった2人の殺し屋が、
確かにこの世に生きていたという証となる。
脳裏に焼きついた、セリアの最後の優しい笑顔を
思い出しながら、甘んじてこの傷を受け入れようと、
アグリアスは思っていた。

「右手の治療に移りますが、指が三本、完全に折れています。
 治療しても、しばらくは剣を握れないでしょう。
 胸の傷の本格的な手当もありますから、
 アグリアスさんには傷が完治するまで、静養してもらいます。
 それまで、しばらくの間戦いはお休みですよ」

「…仕方ないだろうな。皆の足は引っ張りたくない。
 そうさせてもらうよ」

「傷の本格的な手当は…ルナにやってもらいましょう…。
 …ルナは…まぁ…その…ちょっとアレな感じですが、
 腕は確かですよ」

「……あいつの世話になるのか…」

80:ある日常の攻防 55/57
08/02/16 09:27:33 1nPAq5cl0
医学と白魔法の知識の探求を至上の喜びとし、
人の不幸は蜜の味を地で行く少女、ルナ。
煌びやかな銀髪と、冷たい色の碧眼を備え、
純白の法衣を身にまとう、外見だけは天使のような白魔法使い。
ただしその心は、限りなくどす黒い。
陰で残虐非道な人体実験を嬉々として行っている、といった
黒い噂の絶えない、ラムザの隊筆頭の問題児である。
ただし、医者としての腕前は超一流。
"白い悪魔"の通り名で恐れられるルナの治療を
受けるというのは、アグリアスをして恐怖に陥れるほどである。
ラムザはアグリアスの右手にそっと手を添えた。
刺激しないように、極力優しく触れたつもりであっても、
アグリアリスは苦痛の表情を浮かべる。
本来の、しなやかな女性らしい指を備えた
アグリアスの右手は、見るも無残な有様になっていた。

「ふふ…。酷いものだ。ボロボロだな。醜いだろう」

自嘲の笑みを薄く浮かべ、ぼうとした様子で右手を見やる
アグリアス。事実、指はあらぬ方向に折れて、爪ははがれかかり、
血に塗れた酷い怪我であり、気の弱い者が見れば卒倒する
かもしれないような右手であった。
白く、可憐なアグリアスの左手と較べれば、なるほど
今の右手は彼女の言うとおり、醜いのかもしれない。

「いいえ。勇敢に強敵と戦った、勇者の勲章ですよ」

ラムザは微笑みを浮かべながら、回復魔法を施す。
暖かな光に包まれて、アグリアスの右手は少しずつ修復されていく。
心臓を治療した時と同じように、右手の治療は大きな痛みを伴なった。

81:ある日常の攻防 56/57
08/02/16 09:31:10 1nPAq5cl0
そんな激痛の程をまるでうかがわせずに、アグリアスは
静かに瞼を下ろし、従容としてでラムザの治療を受けていた。
ラムザの言葉が、アグリアスの心を優しく満たしていた。
温かなラムザの台詞が、アグリアスが今日、歯を食いしばって
命を賭けたことの報いとなる。
部屋の中には、つい先ほどまで繰り広げられていた
死闘激闘の爪痕が刻み込まれ、床や壁には至る場所に
斬撃や爆撃の跡が残されている。
人々の常識の埒外にある、いわば異界の部屋に残されたのは、
一組の男女。2人はただ静かに、そこに居た。
声一つ無い、静寂に包まれた空間。
壁に背を預け、女騎士は緩やかに傷ついた手を差し出して、
男の騎士はそれを恭しく手にとり、無言で慈しみ、そして静かに癒す。
それはまるで、何物にも屈しない、凛とした王女と、その御前にかしずき、
主の手をとって、忠誠を誓う騎士の姿を表しているかのよう。
命と身を捧げたはずの主ラムザに、逆に仕えられているかのような
この格好は滑稽であり、アグリアスは可笑しくなって内心で苦笑する。
やわらかく瞼を下ろし、その身を眼前の主に委ねるアグリアスは、
陽だまりの中に静かに座り、陽の光とその暖かさを、
その身にゆったりと受けているような、穏やかで、満たされた顔をしていた。

「アグリアスさん。手の治療が済みましたよ」

「うん。ご苦労だったな。中々心地よい時間だったぞ」

いかめしい顔をして、おごそかにそうラムザを労ったアグリアスは、
かんばせこそ麗しい女性のそれでありながらも、持ち前の凛とした
雰囲気も相まって、案外貫禄のある気配をかもし出す。
偉そうな様子のアグリアスに、ラムザは思わず吹き出して、
ことさら恭しく礼をする。

82:ある日常の攻防 57/57
08/02/16 09:35:42 1nPAq5cl0
「お気に召して頂けたのなら、光栄でございます。
 我が姫君、アグリアス様」

アグリアスは笑う。
高嶺にひっそりと咲き誇る、凛とした花のような印象を
他人に抱かせる、常に毅然としたその顔を、今この瞬間にだけ
ほころばせ、無垢な少女のように、ころころと笑った。
彼女の顔を彩る、爛漫とした笑顔。
白銀の季節、冬の寒気のくさびから解き放たれ、
命の息吹を唄い、春の野に咲き乱れる、一面の花々。
そんな情景を思い起こさせるような、華やかな笑顔だった。
2人が微笑む合う中、部屋の入り口からようやく、
オルランドゥ、レーゼ、ベイオウーフの3人が駆けつける。
3人とも、目立った外傷もなく、無事なようだった。

「…おい」

「…はい?」

「いつまで私の手を握っているつもりだ。
 馴れ馴れしいぞ」

そう言ってアグリアスは、ラムザと結んだ手をすげなく
振りほどき、まだ痛みが残る右手を強引に左手の二の腕に乗せ、
胸の前で腕を組み、プイとあさっての方向に顔を向ける。
当人にもよく分からない気恥ずかしさで、アグリアスの頬は
ほんのりと桜色に染まっていた。
走り寄る3人の仲間を、アグリアスは静かに見つめて、
やわらかく微笑んだ。

                                 fin

83:モトベ ◆AYF418a.SQ
08/02/16 10:01:52 1nPAq5cl0
どいつもこいつもおっかねぇ~~(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
ラムザ達って本当に正義の味方ですよね…?

読んで下さった方、どうもありがとうございました。

84:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 10:02:41 DjUGWn/s0
ラムザたちは正義の味方というわけじゃないさ

ともあれ乙。読んでて面白かった
一番怖かったのはレーゼさんでs、おやこんな朝に誰か来た

85:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 11:52:27 M0lyAVD20
モトベさんおひさ&長編乙です

86:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 15:37:24 9QUtQyR50
モトベさん、長編乙です!
アグたんとセリア&レディの戦いが痛々しくてつらかったなぁ。
でもアグたん死んじゃうかと思ったけど、死なないで希望のある終わり方でよかったよ。

87:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 17:04:19 9ZGEdm6U0
長すぎる……修正が必要だ
乙なんだけどこれはtxtとかでうpしたほうがよかったのでは

88:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 17:24:22 VyH9NA1l0
>>87
そう?
SSとしては長編だけど
小説だったら中篇くらいの分量だとおもうけど
一気に読めたし

89:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 17:33:10 DjUGWn/s0
長さ的には短編じゃね
しかし一気に容量を食ったな、もう90kbw

90:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 18:12:11 Hz/ttJWt0
バトルモノってなると尺長くしないとすぐ終わっちゃうからなあw

おつおつ、最後まで緊張感が伝わってよかったです

91:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/16 23:53:52 ahLTQEVz0
>>87-88
俺は「長編物語」ならドンと来いなんだけど、
書きたい表現を全て何でも詰め込みたいというモトベさんの登場したころの悪癖が再発したって感じかな。
確かに今回の話そのものの大筋を考えれば、推敲してしまえばかなり減らせる。
でも文章そのものの読みやすさは昔とダン違いなので、そこの違いで最後まで面白く読めた。

92:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 02:02:17 BUpaTtXM0
>>86
アグリアスが戦闘不能になったら真っ先にラムザの拳術蘇生をかけることにしていたが、
ラムザの誕生日を幾度か変えつつ何週かしてると、こんなときに星座相性の差を実感するな。
蘇生の確率も蘇生時のHP回復量も結構違ってくる。

アグ「アグリアス・オークス復活ッ!アグリアス・オークス復活ッ!!(ry以下繰り返し」
ラム「ご自分で言うネタじゃないです」

93:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 10:51:36 vW4FnBcr0
このスレを見て懐かしくなり、実に10年ぶりぐらいにプレイ中。

オヴェ様が草笛をうまく吹けないシーンで、
ラムザがしゃしゃり出て来て「こうするんですよ」と教えてる時、
アグ様が( くッ 馴れ馴れしいぞラムザッ! 私も草笛を覚えておけば良かったッ )

と、激しく嫉妬してる様に見えて仕方が無かった。10年前は微塵もそんな見方はしてなかったんだが。
どうもこのスレのせいで脳みそが変色してしまった様だ。

94:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 12:16:45 wgyPe+CQ0
>>93
俺はその文からさらに
ラムザより、うまくなって次から私が教えればいいと思い立ち
ラムザから草笛を教わるシーンを思い浮かべた
勿論、その時はアグリアスにその気はなし
その後は勝手にお前等で想像すれば?

95:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 18:08:27 8Uy2dY/+0
>>93
いや、むしろそれで頑張って練習して
唇切ったりプヒョーとかマヌケなスカ音しか出ないうちに
見かねたオヴェリア様に教えてもらえてラッキー!と考えるんだ

96:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 18:48:04 aUYYOuN00
オヴェリア様がラムザから教わりながら一生懸命に練習してる姿を、
目を細めたりなんかしてじっと見守ってるお姉さんのようなアグたんも捨て難い。

97:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 19:02:26 XB6pm9oi0
草笛練習中に傷つけてしまったAの唇を舐めて癒しすB。
A=アグ、B=オヴェで想像して悶絶した。
クールなオネェサマアグが好きだったはずなのにw

98:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 19:09:27 8Uy2dY/+0
行く人氏の(゜∀゜)CHU-! 思い出した

99:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 20:24:00 HlPiXcKN0
>>1000すばらしい締めだ
ぐっジョブ

100:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 20:31:26 hUsz5j8X0
100ならアグたんが鎧を脱いだ時にむわぁっと立ち込める体臭をクンカクンカする

101:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 20:31:31 BUpaTtXM0
>>99
お前がヌケヌケと言っていい事ではないな。

102:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 20:37:28 HlPiXcKN0
ギャップというものを知らんのか低能め

103:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 21:27:28 7U4+D1d2O
あと二時間半だが、いいか?
男なら黙ってNG登録。

お兄さんとの約束だ!

104:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 21:36:52 SF/pDbbS0
どちらのお兄さんでしょうか
マラークお兄さん?
ラムザお兄さん?

105:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 21:52:30 2YLy/n6Z0
クラウド兄さんに一票

106:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 21:52:57 HkTH9uZI0
ベイオウーフ「そうです、私が変なお兄さんです」

107:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 22:05:30 mSFYHWfM0
ダイスダーグ「何故私の名前が出てこない…?
         黙っていたのでは分からん、説明しろといっている…」(例の重々しいBGM)

108:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/17 23:38:01 DITDXUt20
>>93
そういえばなんであの時ラムザ隠れてたんだろうな
裸でも覗いてたわけでもないのに

109:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 00:08:24 W3N/IjuQO
アグ「私もスマ〇ラXに参戦したかったのに…
   なぜ私のところには招待状が来なかったのだ…」
ラム「スクエニは無理ですよ」

110:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 00:12:59 Oly0mV2i0
ニンテンドーハードに出たことがあればだいじょーぶ。
だからチョコボとかギルガメッシュはいけるかもしれないけど
Tキャラはアドバンスのじゃないと無理だな

111:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 00:13:34 I5O10c0U0
>>108
オヴェラムが良い雰囲気で邪魔しちゃいかんとおもったんでないのかな

112:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 00:28:33 cFEDMHms0
じゃアルテマはおーけーだな。

113:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 17:02:36 /uoZdVPX0
>>109
そしてアグリアス様を差し置いてなぜか参戦するラムザ

114:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 17:41:33 fj5pGi450
フュージョンしてラムリアスとして出ればいい

115:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 19:58:59 Oly0mV2i0
ラムアグだけあればいいや

116:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 20:23:16 BbDZbae+O
>>114
男と女でフュージョンするとどうなるんだ
アグリアス様からアホ毛が生えて、一人称が僕になるのか?

117:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 20:25:50 yLPDuzCy0
後ろのオサゲがそのまま前へグリンと倒れこんで、それがアホ毛代わりとなる。

118:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 20:27:23 KLP1ZvYa0
多分あぐあぐがパニックになっちゃってなにかするどころじゃなくなるなw

119:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 21:06:16 cau8Q5kk0
アムリアス「これならば、除名できまい!!」

120:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 21:35:42 H+eJgUwH0
>>116
股間次第だね

121:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 22:20:25 1qi7Z+zS0
まさかふたなr(ry

122:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 22:34:17 ceIL4gSi0
そういや、ファミ通のFF特集でFFTの名場面に
「今更疑うものか!私はお前を信じる!!」
が入ってたな。
良く分かってるじゃないか。

123:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/18 23:40:19 ZgY/xoca0
ファミ通らしからぬ空気の読み方だな

124:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 00:48:24 bzmK0CFe0
>>123
ファミ通は本来空気を読む子
しかし、教会の指示があると・・・

125:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 01:20:39 iCgUUtZC0
しかも、うろ覚えだがシーンの解説が
「裏切りばかりの世界だからこそアグリアスの言葉が心に響く」
って感じだったはず。
ホント、ここまでラムザとことん裏切られ続けるもんな…

126:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 01:31:26 GdH3Jpnf0
あの台詞、それだけでも結構インパクトあるのにラムザの境遇見るとダメージが倍増するよね

127:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 01:36:57 b7FFpseV0
言われた当時のラムザの顔を見てみたいw

128:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 03:10:21 lx2rsKsrO
傷つき疲れそれでも戦わなくてはならない中、あほ毛会心の笑み
それはもうアグたんがこの身を預けると言っちゃうくらい

129:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 07:58:54 SjOKBBKBO
そらフラグ立つわな

130:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 09:45:57 2f7TNl0j0
「確かに僕はベオルブの(ry」

 ∧ ∧/⌒ヽ
(´・ω・`)

「今更疑うものか!! 私はおまえを信じる!!」

      )
     ノ   ビンッ!!
 ∧ ∧/
( ゚∀゚ )

131:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 11:54:44 b7FFpseV0
URLリンク(www.nicovideo.jp)

132:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 11:55:17 b7FFpseV0
FFT 三国志Ⅸタクティクス -獅子戦争編 Chapter7-

誤爆

133:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 14:53:44 +M60egQ60
案外

アグ「今更疑うものか! 私はお前を信じる!」
ラム(ふふん、篭絡完了♪)

てな黒ラムザ

134:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 15:15:05 pbxa5ZaG0
バルバネス「ちょwww 

135:名前が無い@ただの名無しのようだ
08/02/19 15:54:54 5Iz4HUBV0
ラムザ隊、またの名を側室部隊


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