07/06/22 11:55:01 WJf7WF29
写真。
家に帰ると、写真があった。
いつだったか、アイツに騒がれて取った写真。
額に飾られて、テーブルの上で小さく自己主張をしている。
恐らく、姫君様が持って帰って来たのだろう。
全く、余計な事をしてくれる。
舌打ちをして、写真を倒そうと手を伸ばす。
額に手が触れたところで、もう一枚の写真の存在に気付いた。
写真に写った、青いドレスの少女と、タキシードの青年。
青いドレスはその少女の年で着るには少し早い感じの物で、しかし少女に背伸びしたような感じも無く、良く似合っている。
一方青年の方はあまり着慣れていないのか、若干着させられているような気もするが、それなりに似合っている。
青年はともかく、少女の方は本当に幸せそうで、普段はあまり見せない綺麗な笑顔で写っていた。
額に伸ばした手で中の写真を取り出し、代わりにその二人の写真を入れてテーブルに戻す。
しばらくその写真を眺めながら酒を飲む。
複雑な気分だ。
まだ何年か先の話だし、世話をしているだけの娘だが。
恐らく、娘を嫁に出す親の気持ちと言うのは、こういう物なんだろう。
不快感は無い。
どこの馬の骨とも知れない奴に持っていかれるよりは全然マシだ。
とにかく、本当にまだまだ先の話だが、その時は写真に撮ってやろう。
額に入れて、この写真と並べて飾ろう。
俺達が出来なかった、そんな普通の事を、この綺麗に笑う少女にさせてやろう。
なぁ。
アンタも、そう思うだろう?