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『ファイアーエムブレム 荒野(あれの)の聖女』
設定/プロローグ:
『龍の腹(たつのはら)』と呼ばれる、
茫漠たる陸地と、本当にはてなく続いているのかと感じられる、広い広い海をたたえた、ある世界。
この『龍の腹』世界は、人々から『龍王』とも『神』とも呼ばれる
絶対の力をそなえた唯一の存在によって、つねに管理され、
人々は、罪の重みとも、その肩に数知れぬ他者の命運を背負う重責とも無縁に、
幸福な無知をむさぼっていられると信じられてきた。
また実際にそうであったのだ。
しかし、ながらく打ち破られる事の無かった、この『龍の腹』世界の幸福の因果律に
ついに破綻のくさびが打ち込まれる時が来た。
フォスター皇紀・2600年6月(『龍の腹』世界の人類は6進法をおもに使用している)、
『龍の腹』世界において大半の人間が生活の基盤をその上に置いている、『世界の中心』と呼ばれる巨大な一枚岩の大陸から
海をへだて、はるか東方に位置する辺境の小国・『フォスター神皇国』にたいして
太陽神・アッサラムを信奉する大陸東方の強国・『ヒジュラ王国』が
「世界のすべての陸地は、天にいます、至高なるアッサラムに捧げられるべきものである。
フォスター島とて例外でない」と称して、果敢とも無謀ともいえる侵攻を開始したのである。
『龍王』の力と理知に護られ、およそいかなる国も
他国との大規模な戦(いくさ)など経験した事の無い『龍の腹』世界の国民(くにたみ)にとって、
戦と無縁でいられた幸福な歴史は、裏を返せば、
戦を乗り越えて祖国と我が身をたもてるだけの経験を積む事が出来ぬ
丸裸の弱者があふれる脆弱な国、脆弱な体制を温存する宿痾(しゅくあ)でもあった。
まして孤絶した島国であり、平時から異国との交流が殆ど無いフォスターの国民にとっては
なおさらの事であった。
黒い髪に浅黒い肌、フォスター人をゆうにふた回りは上回る頑強な体躯、
そして「地上のすべてをアッサラムにささぐ!」 「アッサラムこそ世界を統べる至高の光、『龍王』の権現なり!」
と叫び、いざ戦が始まると言葉を忘れたかのように寡黙な殺戮者と化し、うめき声ひとつ漏らさず倒れ死んでいく
ヒジュラ王国の兵達のあまりの不気味、狂信のもたらす圧倒的な力と威容に
フォスターの民はふるえ上がり、抵抗らしき抵抗も出来ず
ただ打ち倒されていったのである。