07/09/02 06:39:22 hqpNvE7P
>>532
女性への憧れ。
琴音達にもあるその感情を、この少年も持っていた。
琴音はそれを感じて声を掛けたのかもしれない。
『あなたもこの私と同じ、これからも仲良~くしましょうね
あら…菊之丞、可愛いんだからこんな時に泣いちゃ駄目じゃない、女は涙をいざという時の武器にとっとくものよ』
今まで否定されてきたその感情を初めて認めてくれた人の手が、菊之丞少年の頬に伝う雫を拭う。
『…失敗や欠点…それをひっくるめて自分を認めてやれるようになりゃあ1人前だな。』
菊之丞の頭を撫で言葉を掛けた米田、その時の目はとても穏やかな…父親のような瞳だった。
『米田隊長~!』
ふと背後から聞きなれた女性の声がした。
どうやらあやめらしい、一馬や山崎も共に行動していたらしい。
『おうおめえらか…どした?』
『いや、米田隊長がこの方の子供と一緒に居るのを見たっていう人がいまして』
対降魔迎撃部隊の面々は菊之丞の母親と出会い、子供を探していたというのだ。
背後から姿を表した女性は菊之丞に駆け寄り抱き締めた。
「菊之丞!」
「…お母さん」
暫し抱きあった後、母親が菊之丞の髪に留められた髪留めに気付いた。
途端、母親は声をあげる。静かな怒りを含んだ声だった。
「菊之丞…これは何かしら」
母親の声に戸惑いを見せた菊之丞はとっさに後ろへ退いた。
丁度琴音に寄りかかるような体制になったのだ。
「貴方ですか?これを菊之丞に与えたのは」
この母親はどうやら菊之丞の感情に気づいていたのだろう、しかし世間体を気にしてかそれを否定してきたらしい。
それを掘り返されたのだから母親にしてみればたまったものじゃない。
その怒りの矛先を向けられた琴音は菊之丞を両手で包みこみながら、凛として立っていた。