07/08/06 19:09:11 hElKzkua
>>502
《幕前舞台》
後日、三隅中佐らは米田一基の下に出頭した。
蕎麦屋の飲んだくれが米田一基だったと知った若い男達は驚きどころではなく、絶望していた。
『ま、座れ。』
木造の椅子の冷たさは絶望感を更に奮い立たせる。
『先日の件だがよ…』
米田が重く口を開いた。
その言葉に、降格か除名かと若い男達は震える。
その時、三隅中佐が手を挙げた。
『米田中将閣下!全ては私に責があります、彼等のことはどうか…!』
三隅中佐が米田に申し出たのは部下達の免罪。
しかし、軍人勅諭では上官の言う事は絶対である。直訴すれば重い懲罰が与えられるのだ。
米田は伏せていた顔を上げた。
『瀧川小佐以下五名に対し、先日蕎麦屋夕蛍庵での素行についての懲罰を与える。
嶺諷會からの脱退及び蕎麦屋夕蛍庵への謝罪を命じる。』
三隅の部下達は胸を撫で下ろした。言わば無罪放免である。青い御守りはその場で外し、米田に敬礼した。
次に米田は三隅に対して…
『次に三隅直之中佐、貴殿へ先日の件の監督不行届及び今の直訴についての懲罰を与える。
…一週間俺の酒につき合う事。』
『は!了解致しま…え?』
三隅は米田の言葉を理解できず戸惑った。
酒につき合え、そんな懲罰が下ったということは聞いたことがない。