07/08/06 17:17:43 hElKzkua
>>501
今まで不服そうだった男達の背に鋭いものが走った。
幾多の戦線を戦い抜いてきた米田一基の言葉が心に深く染み入ったらしい。
『もう良いぜ、ほらとっとと帰ってくれ。
そんな軍服ちらつかされたんじゃ落ち着いて蕎麦が食えねぇや』
ボーっとしていた男達は、米田の言葉にハッと我にかえり、素直にのれんをくぐり出た。
三隅中佐は最後に敬礼して出ていった。
その頃にはもう野次馬もいなくなり、店内は静かになっていた。
『お見事です、米田隊長』
『戦わずして勝利する…、か。
見事でした。』
あやめと山崎が米田に近づき、褒め称えるような言葉を贈った。
一馬もニッコリと笑っている。
『へへっ…バカヤロ、照れるじゃねぇか』
座敷に戻った米田達は、店主の好意でいくらか乾いてしまっていた蕎麦を作り直してもらい、それをしっかり腹におさめた。
そして、浅草の活動写真館へ向かったのだった。
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