07/08/06 16:26:48 hElKzkua
>>499
「この方は帝国陸軍三隅直之中佐殿だ!」
男達のひとりが自信に満ちた声で三隅中佐を紹介する。
当の本人は顔面蒼白だというのに。
『おう、こいつはご丁寧にどうも。』
米田が立ち上がり、三隅中佐の脇に並んだ。
そして、こう耳打ちした…
『…ここは騒ぎを大きくしたくねぇンでな、このまま連れて帰ってくれ。』
これを聞いた三隅中佐の肩がビクリと跳ね上がった。
そしてすぐさま敬礼した。
『ハッ!了解致しました!
全員帰還後、陸軍省へ出頭せよ!』
「は…?…しかし!」
『質問は無しだ!』男達は不服らしく、反論をしようとしていたが舌打ちしてのれんに手を掛けた。
『おおっと、ちょっと待て!』
渋々帰る男達と震えている三隅中佐を米田は呼び止めた。
『ハッ!何でしょうか!』
『蕎麦代貸してくれねぇか?占めて参圓五拾銭なんだがよ。』
『えっ…は、はい。』
三隅中佐が参圓五拾銭を米田に渡し、敬礼した。
『ついでに、…おめぇら。』
まだ不服そうな顔をしている男達の方を向いて米田が言った。
『軍人が偉いんじゃねぇ。
自分の大切なもののために、命を張って戦える覚悟…それのある奴が偉ぇんだ。
ま、死んじまったら元も子もねぇけどな…』