07/07/09 19:28:14 UXHk6ypB
>>470
その頃、あやめは真宮寺家から少し離れた桜の樹の下に居た。
座しているあやめの、その手にあったのは神剣白羽鳥・・ではなかった。
手にあるのは小刀であり、神剣白羽鳥は目の前に置かれている。
あやめは一人で割腹をする気だった。
今までの自分に区切りをつけていたのだ。
そうして、決心すると黒銀に煌めく刃を自らの胸に向け突き刺さんとした・・・
『・・バシッ!』
刹那。風を切る音と共に小石が飛んできて刀を弾かれた。
それを投げたのは言うまでもなく、米田一基その人だ。
「米田・・中将?」
闇の中に光る双眼を見つめてあやめは呟いた。
「あやめ君・・」
米田は近づいて、あやめの前に立った。
そして、あやめの肩を掴んで問い掛けた。
「・・死ぬつもり、だったのか?」
その声は凛としている。スッと筋が通っていた。
「・・・・私は・・自分だけ生き残ってしまった・・それが・・」
米田の声に促され、ポツリポツリとあやめは話し出す。
「・・それが悲しくて・・私は・・」
あやめの声は震えていた。
その言葉を米田はしっかりと聞いている。
あやめが言葉を云い終え・・そして静寂が流れた。