07/07/09 18:50:13 UXHk6ypB
>>469
ストン、と襖が開かれる。
「どうしました!」
米田は肩で息をする権爺に問いかける。
「藤枝あやめ様が・・あやめ様がいらっしゃらないのですじゃ!」
その言葉に米田は驚愕した。
権爺に深く話を聞いてみると、振る舞われた食事のあと散歩に出ると云ってから戻ってないという。
あやめが借り受けていた部屋を覗くと荷物が整えられていた。
その荷に挟まるように、書き置きが一枚残されていた。
「・・これは!」
米田はそれを見た瞬間・・
『死ぬ気だ』
そう直感した。
これで昨夜の胸騒ぎの合点が行く。あやめから生気を、生きる希望を感じられなかったのだ。
それを感じ取れなかった自分の甘さに苦い思いを噛み締める。
・・・チリン・・チリン・・・
一馬の鈴の音が一瞬強く聞こえた気がした。
米田は目を覚ましたかのように、苦々しい邪念を振り切った。
「すみませんが後を頼みます!」
権爺の制止も聞かず、米田はバネのように駆け出した。
それを後押しするかのように鈴の音が静かに響いていた