07/07/31 21:49:54
「いたっ…!」
瓦礫に躓き身体を支えようとした彼の手を割れたガラスが切り裂いた。
血が伝うのも構わず手探りで瓦礫をよじ登り、また段差に躓く。
テレパシーを飛ばしてみたが、反応は返ってこなかった。
「返してくれないだけかな。ごめんね、ごめんね…」
薄く開いた目から、涙が流れた。
少し離れた所でもう一匹の彼が朽ちた橋を渡ろうとしていた。
ピシ、と軋んだ悲鳴が足元から響いている。
彼は何かを振り切るように踏み出し…一気に橋が崩れ落ちる。
瓦礫から這い出し、使い物にならなくなった補聴器を握りしめ、彼は歯噛みした。