07/05/19 01:38:41 FiqmRL5S
俺、子供の頃いつもパンの耳残してたんだ。
朝ご飯はいつも食パンでさ。
バターとかジャムとか、塗るものは日によって違うけど
パンの耳は固いし味しないから、って最初に剥がして残してた。
ある日おばあちゃんと一緒に住むことになった。
おばあちゃんは、パンの耳も残さず食べなさいと言ったが、俺は聞かなかった。
それでいつもパンの耳を残してるのを見かねてか、
俺が残したパンの耳を、揚げて砂糖と何かを塗してオヤツを作ってくれたんだ。
最初は美味しいって言ってバクバク食べた。
けど毎日食べてると飽きてきて、それも残すようになった。
それでもおばあちゃんは毎日そのオヤツを作ってた。
学校から帰るとテーブルの上にいつも置いてあった。
俺は殆ど食べなくなってたから、その後どうしてたのかはわからないけど。
けどある日、学校から帰るとそれは無かった。
今日は作らなかったのかな、と思って気にも留めなかった。
電話が鳴った。母だった。
すぐ近くの病院に来てくれとのことだった。
行って母から話を聞いた。おばあちゃんが急に体調を崩し、容態は良くならずそのまま・・・。
その時になって初めて後悔した。
せっかく作ってくれた揚げたパンの耳、残さず食べておけばよかったと。
後日、自分で作ってみようとチャレンジした。
最初は食べれるものじゃなかったけど、漸く食べれるものが出来た。
甘くてカリっとしてる。
でも何か足りなかった。
おばあちゃんが作ってくれたのは、もう一つ味があった。
母に聞いても知らないらしく、もう10年近くなる今でも色々試してるけど見つからない。
もう食べられない味。
後悔の念と、せめてもの贖罪の意を込めて、
今ではパンの耳も食べてる。
空にいるおばあちゃんが許してくれたらきっと、
またあの味に出会えると信じて。