07/09/11 13:19:07 sp3Q5cyr0
[ 文化祭ネタ、別ルートSS(?) ]
「なぁ、雪歩」
クラスメートを眩しそうに…いや、寧ろ憧れる様な目で見つめ続ける雪歩に、背後からPの声
無言のまま雪歩は彼らを見つめ続けている
次に来るその問い掛けが、彼女にとってどんな結末を見せる事になるか十分覚悟しながら
「…参加したいのか?」
暫しの沈黙。次に、ユックリと雪歩の頭が縦に動く。
「腹は決まってる…って事か。強く…なったんだな」
少し苦笑い気味に言葉を掛ける
「……そんなんじゃ無いです」
やりとりで、初めて雪歩がPに向き直る
「私の選んだ道が間違っていない事を確める為にも、それが現実なら…
それが私の現実なら、私は受け止めなきゃいけないんです。前に進む為に。私の……『もう一つの私の現実』を…
それに、私だってクラスメートの一人なんですよ?」
少し寂しそうに微笑いながら言う
「…そっか。 じゃあ、行っておいで。喩えどんな『現実』が待っていたとしても」
コクリと頷くと踵を返して、雪歩がクラスメート達の元に向かっていく
( それを、「強さ」…って言うんだよ )
後姿を、Pの瞳が優しそうな色を浮かべて見つめていた
―――――――――――――――
予想はしていたが、傍から見ても明らかな落胆の色を見せ雪歩が戻って来る
「…目は…逸らさなかったんだな」
無言で頷く
「…良く頑張ったよ」
「はい…」
返事に続き、雪歩の口から言葉が紡がれていく
「やっぱり…厳しい物ですね。
…でも、仕方ない事なのかもしれません。私達は『ステージ』が舞台で、皆は『学校』が舞台だから…」
耐えているとは言え、流石に堪えたのだろう。徐々に伏目がちになる
「私が着る服は『舞台衣装』。皆が着る服は『制服』
私が学ぶものは『歌』。皆が学ぶものは『勉強』
私が…」
「雪歩、もういい…、もう…止すんだ」
何時の間にか雨が降っていた
が、その雨にまるで気が付かないかの様に喋り続ける
「そうですよね。私と皆じゃ、全てが違うんです…だって……だって…………だって…」
「雪歩!」
制止するPの鋭い声。ビクッと震え、雪歩の言葉が止まる
スッと顔を上げる雪歩
澄んだ瞳から幾すじもの涙が頬を伝っていた
その泣き顔を、忽ち雨が覆っていく
「私…わた…し…、…ふっ…う……うぁ、うぅぁ…ぁ…」
覚悟していたのに…、泣かないと誓ったのに…なのに、涙が溢れて止まらない
その姿を、何も言わずにPがギュッと抱きしめ、天を仰ぎ見る
雪歩の辛さが…その悲しみが、少しでもこの雨で洗われてくれたら…
今は、そう思うしか彼には術が無かった
腕の中に、ただただ、止む事の無い雨と肩を震わせ続ける儚い少女の姿だけが有った…