07/05/27 23:11:11 ucnqz6Xo
コンコンと扉を叩く音がした。
あたしは、嫌々ながら立ち上がって扉を開ける。
なんて言っても、数時間前まで戦場にいたんだから少しは休ませてくれても……
「あ、イルイ！」
扉の向こう側にあった可愛らしい顔を見た途端、そんな気分は吹き飛んだ。
軽くカーブした金髪に、リスみたいに丸い碧眼、小さめの口。
どこを取っても愛らしい。この子を可愛くないっていう奴がいたら、飛んで行って血だるまにしてやる。
「ちょ、ちょっとアイビス」
あたしの腕の中でイルイが抗議の声を上げた。知らない間に抱きしめてたみたいだ。
肘ぐらいの部分にちょうどイルイの腕が当たる。すべすべの肌はとても気持ちが良い。
「ごめん、それで何？」
名残惜しいけどイルイが嫌なら仕方ない。しぶしぶ手を放しながら、あたしは聞いた。
「え、えっと……」
良く見るとイルイは後ろ手に何か持ってる。でも、覗き込もうとすると反対の方向へと回って見せてくれない。
そんなやりとりを数回していると突然声がした。
「いい加減じれったい！今日が何の日なのか、それくらいわからないのか、お前は！」
そう言いながらスレイはいつも通り、髪をかきあげながらこっちへ歩いてくる。
どうやら、あたし達のやりとりをずっと見てたみたいだ。柱の影に隠れて。
それにしても……今日って何の日だっけ。
あたしが考え込んでいるとスレイは「どうしようもない」と言った風に頭を振った。
そんな事されても、覚えてないものは仕方ないじゃない。
「アイビス、最低限自分の誕生日ぐらいは覚えておいても良いと思うの、私は」
今度はツグミまで。やっと納得がいったあたしは、バツが悪くなった。
「べ、別にちょっと忘れてただけだよ。ほら……ほら、最近は連戦の毎日だし、スレイが帰って来たりで色々あったし……」
あわてて手を振りながらこう言うけど、どう見ても信じてもらえてない。
他はともかくとして、イルイまでジト目であたしの方を見てくる。
「……ごめん、完全に忘れてた」
３人の視線に耐えられなくなったあたしは、結局白旗を上げる事になった。
「ところで、イルイが持ってる物って何？」
そう言った途端にまた３人はジトっと見てくる。お願いだからそんな目で見ないで。