06/12/01 15:33:05 PnpqztLP
一日目PM20.30分
「はあ、まいったなあ」
前原圭一はそうぼやきながら自転車の横にしゃがみこみ、タイヤを改めだした。
「あちゃあ、完全にやられちゃってんじゃん・・・」
タイヤをつまむとぼすぅ、ぼすぅとおかしなおとをたてる。つまるところ、
パンクである。
「まいったなぁ、車もとおんないし・・・」
車といえばずいぶん前に黒塗りの車が通ったくらいだ。運転席にはスーツ姿の
男と、後部座席には女の子が座っていたのを覚えている。
圭一はしばらく思案した後たちあがり
「まあ村まではそう遠くないはずだ。歩こう」
そこには都会人にありがちな「田舎なんだし誰か泊めてくれんだろ」
というなんともありきたりな考えがあった。自転車を路肩に放置し、
リュックから懐中電灯を取り出し歩き始める
・・・彼はまだ戻れた、戻ることが、できた。
そのことを彼は後に身をもって知り、ほんの少しだけ、後悔した。
自ら日常をふみはずしたことを・・・