07/07/10 07:37:20 WaoWxA5E0
自分の部屋に戻った俺は、夜中になっても、なかなか寝付けなかった。
やたらと固い石造りのベッドに横になって、あれこれと考えるでもなく思考を弄んでいると、ギィと蝶番の軋る音が耳に届く。
俺は、ビクリと身を起こした。
背後から差し込む通路の薄明かりが、無言の人影を影絵のように切り取っている。
つか、ノックするか、せめて声くらいかけろよ。ビビるっての。
「あ、閉めるのちょっと待ってくれ」
人影が扉を閉じる前に、慌てて室内のランプに火を灯す。照明無しじゃ、顔も分かんねぇくらい真っ暗になっちまうからな。
ゆらめくランプの灯りが、沈んだマグナの顔を照らし出した。
後ろ手に扉を閉じたマグナは、旅装のまま着替えていなかった。
黙したまま、扉の側を離れようとしない。
凝っとその場に立ち尽くす。
「え~……っと、どうだ?少しは落ち着いたか?」
マグナは、何も答えなかった。
こいつの顔を見りゃ、気持ちの整理がついてない事くらいは丸分かりだ。我ながら、間抜けな質問をしちまったもんだ。
俯き加減のマグナに向かって、再び声をかける。
「そんなトコ立ってないで、こっち来て座れよ」
だが、やはりマグナは動かなかった。
後から思えば、マグナは迷っていたんだろう。この先、実際に口にされた言葉を、言うべきか言わざるべきか。
そこまで分かってなかったが、ともあれ俺はベッドから下りてマグナに近寄った。
「マグ―」
正面に歩み寄った俺が、何かをするよりも先に、マグナは体をあずけてきた。
俺の胸に額を当てて、脇の辺りの服を掴む。
「ねぇ……ヴァイス……」
「ん?」
また、しばらく間があった。
「どうした?」
水を向けても、マグナはまだ迷っていた。
喋り易いように何か言ってやるべきだと思ったが、かける言葉を見出せずにいる間に、やがてマグナが口を開いた。
「……一緒に―逃げよう?」
か細く震える声。
俺は、咄嗟に返事が出来なかった。
何故なら―
562:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 07:39:58 A5i/qQRIO
デレ化マグナ到来記念支援
563:CC 26(2)-24/26 ◆GxR634B49A
07/07/10 07:42:12 WaoWxA5E0
「もう……ヤダよ……」
予想外だったからだ。
全くの。
マグナらしくない―そう思っちまった。
こいつが、ここまではっきりとした弱音を吐くなんて。
そのことに、違和感を覚えていた。
馬鹿だな―まだ、こいつは強いってイメージに囚われている。
そうじゃない、そればっかりじゃないって、分かってた筈じゃねぇか。
「……もう、ここに居たくない」
きっと―マグナが言う『ここ』ってのは、ダーマの事だけじゃなくて。
こいつを取り囲んで、こいつをこいつでなくそうとする全て―マグナが勇者であることを知る世界の全てだ。
「ああ。そうしよう」
俺は、頷いていた。
考え無しだとは思わない。
こいつに、勇者なんかとは無縁の、普通の生活を送らせてやるって誓ったんだ。
ちょうど、リィナも連れ出そうと思ってたしな。シェラのことは、朝にでもあの野郎の部屋に押しかけて聞き出せばいいだろう。
「そうだな……早速、明日にでも―」
「違うの」
胸に押し付けられた額から、マグナの震えが伝わる。
「え?」
「もう―イヤなの。一秒だって、ここに居たくないの……」
それって―
「今すぐ逃げようってことか?」
マグナは、無言で頷いた。
「いや、そりゃ―ああ、分かった」
マグナの追い詰められた声を聞いて、俺は首を横に振れなかった。
シェラの事は、後で俺だけあの野郎に会いに行って、話を聞くって手もあるしな。
「けど、シェラの部屋はすぐそこだけど、リィナはどこで寝てるんだか―」
「違うの」
俺の台詞は、再び途中で遮られた。
瞬間的に意図を把握出来ずに、少し返事が遅れた。
564:CC 26(2)-25/26 ◆GxR634B49A
07/07/10 07:47:05 WaoWxA5E0
「……二人で、ってことか?」
ようやく聞き返す。
「俺と、お前の」
何も言わずに、ただ頷くマグナ。
「……やっぱり、許してやれねぇのか、リィナのこと」
「違うの。そうじゃない―」
マグナは顔を上げて、部屋に入ってからはじめて俺を見た。
「リィナを嫌いになんて、なってない。今でも好きよ。でも―これ以上、一緒に行っても、余計にあのコを苦しめるだけじゃない……」
「そう……かもな」
リィナの素性が判明した今となっては、あいつを連れて逃げることは、ダーマを裏切れ、これまでの自分を捨てろと強いるに等しい。それが出来なかったから、あいつはあんなに悩んでたんだ。
「シェラも―あのね、さっきヴァイスが来る前に、声をかけてくれたの。自分の事は、ここでなんとかしてもらえるかも知れないから、気に病まないでくれって」
リィナが提案した、意識を体に合わせるとかいう例のアレか。
そりゃ、嘘じゃねぇけど―マグナを少しでも安心させる為に、たとえその気が無くても、あいつならそう言うかもな。
「だから、今すぐあのコを連れてく訳にはいかないでしょ?」
縋りつくようなマグナの瞳。
「でも……あたしはもう、ここに居たくないの……」
俺は、何も言えなくなった。
自分では分からなかったが、ずいぶん無言でいたらしい。
気が付くと、マグナはまた顔を伏せていた。
「ごめん……あたし、どうかしてるね」
自嘲するような、自棄になっているような口振り。
肺の内側を、冷たい何かが撫で下ろす。
「そんな訳にいかないよね……分かった。もういい」
俯いたまま身を離し、踵を返して扉に手をかけようとする。
こいつ―独りでも、逃げ出す気だ。
「待てよ」
後ろから抱き止めた。
「分かった―逃げよう、一緒に。今すぐ」
「……いいの?」
即答しようと思ったのに、どうしても一瞬の間が空いた。
565:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 07:55:01 A5i/qQRIO
最後の支援
566:CC 26(2)-26/26 ◆GxR634B49A
07/07/10 08:00:09 WaoWxA5E0
「―ああ。もちろんだ」
「……ありがと」
がらんどうの世界のど真ん中でたった独り、ぽつんと立ち尽くしてるみたいな、頼りないマグナの様子。
駄目だ。悪ぃ。やっぱり俺、こいつを放っておけねぇよ。
都合のいい思い込みなんだろうが。
脳裏に浮かんだリィナとシェラは、分かってると言うみたいに小さく頷いてくれたように思えた。
手早く旅支度を整えて、薄暗い通路に滑り出る。
神殿を抜け出すと、外は雨が降っていた。
月も星も雨雲に隠れて、辺りは恐ろしく暗い。仕方なく、手持ちランプに火を灯す。
ランプをマントで隠して、なるべく周りに気付かれないように、前方だけに光を逃がしながら、預けた馬が引かれていった方へと、ぬかるみを歩く。
土砂降りとまではいかないが、かなり強い雨足も、ランプの灯りを遮るのを助けてくれている筈だ。見咎められる可能性は低いだろう。
少し迷いつつ、なんとか馬屋に辿り着く。
道すがらと同様に、馬屋にも人は見当たらなかった。
ここは、文字通り閉じた世界だからな。住人は皆知り合いばっかで、泥棒に対する備えなんざ、考える必要すら無いんだろう。俺の実家もド田舎だったので、そういう感覚はよく分かる。
馬屋の端に置かれていた鞍を、二人で黙々と取り付ける。
マグナも俺も、部屋を出てからずっと、ひと言も口を利いていなかった。
ザーザーと地面を叩く雨音に掻き消されがちな、ブルルという馬の低いいななきだけが、命ある音の全てだった。
馬具の取り付けを終えた俺達は、目で頷き合う。
手綱を握り、ゆっくりと馬を引く。ダーマから出るまでは、馬は引いていった方がいいだろう。
一層激しくなった雨音が、俺達が残す全ての音と足跡を掻き消した。
567:CC ◆GxR634B49A
07/07/10 08:08:54 WaoWxA5E0
支援、おつかれさまでした~ノシ
投下してて淋しくなかったので、大感謝ですw
ということで、マグナとヴァイスの駆け落ちで終わった第26話をお届けしました。
さんざんお待たせして、ホントに申し訳ないです(^^ゞ
少しでも楽しんでいただけたらいいんですが。。。
え~とですね、バラモスについての言い訳をさせてください(^^ゞ
一般的にはゾーマ様の人気が高いみたいですが、私が3をプレイした
印象では、アリアハンっておまけみたいな感じなんですよね。
それでバラモスに対しては、個人的にかなりラスボス感を強く持ってまして。
加えて、こういうお話の場合、なんで主人公以外の誰かが魔王を倒せないのか、
という見方は逆で、魔王を倒した人間のお話なんだ、っていう書き方が普通だと
思うんですが、前者の書き方をしてみたいな~、とか不遜にも思ってしまいまして。
それで、主人公以外にはバラモスを倒せない理由を考えなくちゃ
いけなくなってしまい、そんなこんなで本作におけるバラモスは、
かなり強力に設定されることと相成りました。
マグナにしか倒せない理由自体の説明は、まだ先になると思いますが、
納得とまではいかなくても、そういうお話なんだと広いお心で
ご笑覧いただければ幸いです<(_ _)>
他にも、なんか言い訳しなくちゃいけないことがあった気がするけど、忘れちゃったw
次のどなたか投下する前に、次スレ立てないといけない容量になっちゃいましたね。
私の次回はいつになるか分かりませんが(なるべく早くとは思ってます)、
投下の数日前には予告するようにします。
もし私の前に投下される方がいらっしゃいましたら、
同じように数日前に予告していただければと思います。
誰かが、スレ立てしてくれるでしょー。。。してくれるよね?w
568:CC ◆GxR634B49A
07/07/10 09:36:00 WaoWxA5E0
>>567
アリアハンじゃねー。
おまけみたいに感じてるのは、アレフガルドのことです。
すげー間違いだw
569:CC ◆GxR634B49A
07/07/10 10:26:44 WaoWxA5E0
あ、万が一新スレが立つ前にこのスレが埋まっちゃったら、ウチのまとめサイトで
新スレをお知らせするようにしますので、そちらから移動していただければと。
まだ20KBは余裕あると思うんですが、念のため。。。
570:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 10:26:48 g/1nxYcT0
CC氏乙でした!!!
すげえ、リアルタイムで投下に立ち会えたよ!!!
投下中のカキコはよくないのかなと思い、カキコは
控えたんだけど、これからはバンバン支援するよ!
嫁が昨日から、スーファミを引っ張り出してきて、Ⅲ
を始めてたwwwww
571:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 11:08:48 25C26qGAO
GJ!!!!
こっからどうなるかwktk
572:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 16:28:17 h4f52Pab0
GJで乙でしたー
ヴァイエルに萌えてる俺は、もう駄目かもわからないw
573:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 16:29:40 /F2XTUWI0
ヴァイエルもある意味ツンデレですか?w
ともかくCC氏乙です
574:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 19:12:17 wF7ZY61G0
CC氏乙です!!
また1人ツンデレをキャラを出すなんてwww
ヴァイエル先生が好きになってきたよw
575:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 19:31:45 MhR+FqEFO
なんというGJ…
このツンデレ魔法使いは間違いなく人気がのびる(^o^)
576:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/10 20:18:27 JrGmpzRW0
嫌味キャラだったはずのヴァイエルの人気に嫉妬
577:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/12 01:35:09 CqOJz8+Y0
乙です!!
ヴァイエルってツンデレすぎないかw
578:CC ◆GxR634B49A
07/07/12 01:45:21 eUc27g6L0
レスありがとうございました~ノシ
ヴァイエルが案外好意的に受け入れられてて、
なんとか最低限の書き方はしてやれたのかなぁ、とほっとしました(^^ゞ
名前の元ネタは忘れちゃいましたが、確かアグリッパの弟子かなんかからとったんじゃなかったかと。
駆け落ちで終了したのに、なんか今回の話は、
すっかりヴァイエルに喰われちゃったっぽいですねw
ある意味狙い通りですがw
私も作者じゃなければ、「こいつもツンデレ」ゆってたと思いますw
そうそう、いつもは誤字を発見したら直す、くらいしかしてないんですが、
今回はまとめの方で、少しだけ表現を変えたりしています。
合計しても数十文字で、話自体は全く変わってないので、
再読とかは全く必要ありませんが、後で引用する部分が含まれるかも
知れませんので、いちおうお断りしておきます。
さー、この先どうなるでしょうか。
次の話までしか考えてないので、作者にも分かりませんw
まーぼんやりとは考えてなくもないんですが。。。
また用事でバタバタしちゃいそうですけど、なるべく暇を見つけて
先を書くようにしますので、今後ともよろしくお付き合いいただければと思います<(_ _)>
579:名前が無い@ただの名無しのようだ
07/07/12 07:52:20 Xj4Kr4J4O
そろそろ次スレの季節か?
580:CC ◆GxR634B49A
07/07/13 10:50:11 yPnCDbdv0
そですね、用意しといてもいいかもですね~ほす
581:CC ◆GxR634B49A
07/07/13 16:05:26 yPnCDbdv0
次スレテンプレ案。簡単にこんなんでどうでしょ。
スレタイも単純に『ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level 9』とか。
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DQツンデレスレへようこそ。
ここは職人方が書いてくれるDQ関連のツンデレなSSに萌えるスレです。
新しい職人さん大歓迎です。SS題材はDQであれば3以外でもおKです。
DQ3の攻略等に関する質問は専用スレでどうぞ。
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ドラクエ3~そしてツンデレへ~
スレリンク(ff板)
ドラクエ3~そしてツンデレへ~ Part2
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ドラクエ3~そしてツンデレへ~ Level3
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ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level4
スレリンク(ff板)
ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level5
スレリンク(ff板)
ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level 6
スレリンク(ff板)
ドラクエ3 ~そしてツンデレへ~ Level 7
スレリンク(ff板)
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