07/08/06 23:55:27 QUgB86F6
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2:なまえをいれてください
07/08/07 00:09:24 Ah3/65PD
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3:なまえをいれてください
07/08/07 09:42:36 B105gL9I
その年のクリスマス。目覚めた僕の枕元には、Wiiリモコンが置いてあった。
貧しさゆえ本体はおろかテレビも無いような家に、なぜかWiiリモコンだけがぽつんと置いてあった。
不思議に思ってパートに出掛けようとしていた母をつかまえて「これなに？」と訊くと、母は笑みを浮かべて「なんだろね？」と答えた。
つかのま見つめ合い、しばしの沈黙が流れたあと、母は自信満々といった面持ちで「ウイィ！」と叫んだ。
僕は、開いた口が塞がらなかった。
この人は……この可哀想な人は、付属品の一つであるリモコンの事をWiiそのものと信じきっているのだ。
それどころか、その無知ゆえにWiiがテレビゲームをするための機械である事すら認識できていないようなのだ。
分かってる。母は、悪くない。僕を育てるために一生懸命パートで働いてくれている母に、何の罪もないことは分かってる。
あらゆるメディアと切り離されたところで生きている彼女の無知は、誰にも責められるものじゃない。
それでも僕は、途方に暮れた。Wiiコン片手に、途方に暮れた。
4:なまえをいれてください
07/08/07 09:43:30 B105gL9I
母は相変わらず笑みを浮かべたまま、まばたきもせずに僕の反応を待っている。
喜ばなきゃいけない。喜んでみせなきゃいけない。ここで彼女を悲しませてはいけない。
だけども、これはWiiじゃない……、Wiiを操作するためのリモコンであって、Wiiそのものじゃない。
どうしよう？ どうすればいいんだろう？
混乱極まって、涙が溢れた。涙ごしにも母の表情が、不安や動揺や心配に染め上げられていくのが見てとれる。
いけない！ いけない！ 母に、こんな顔をさせちゃいけない！
追い詰められた僕は、もうどうにでもなれと思ってWiiコンをブンブン振り回しながら「ウィー！」と叫んだ。
母の顔を見るのが怖かったから両目をギュッとつむって、頭の中を空っぽにして、ただひたすらに「ウィー！ ウィー！」と叫び続けた。
しばらくして「ウィー！」と叫んでいるのが自分だけじゃないって事に気付いて目を開けた。
そこには、くたびれたハンドバッグを振り回しながら「ウイィー！ ウイィー！」と嬉しそうに叫ぶ母の姿があった。