AC Character Battle Royal 7that ARC
AC Character Battle Royal 7th - 暇つぶし2ch2:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:28:57 arB/fBbG
てすてす。スレ汚しゴメンよ

3:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:35:57 arB/fBbG
☆基本ルール★
・参加者全員で残り一人になるまで殺し合いを行う。
・参加者全員には以下の物が平等に支給される。
 布袋
 会場内の地図
 方位磁針
 食料、水
 着火器具、携帯ランタン
 その他にランダムで選ばれた武器に準ずる『支給品』が各自の袋に最低一つ入っている。
 これはACゲームにある物を基本とするが、実在する銃火器類に関してはその限りではない。
 各キャラの最初の作者が支給品の説明を書くのが望ましい。
・午前午後の1日2回、主催者が会場内に『放送』を行う。
 この間に死亡した参加者は放送中に名前が発表される。
・生存者が一名になった時点で、その人物は主催者側の本部へ連れて行かれる。

☆首輪関連★
・参加者には『首輪』が付けられる。
 この首輪には生死判別用のセンサーと小型爆弾が内蔵されている。
 参加者が禁止された行動を取る、首輪を無理に外そうと力を加える事で自動的に爆発する。
 ただし、デフォルトの状態では外部からの力を無効化する結界が張られている。
 また運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押した場合も爆発する。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・いかなる状況下においても誘爆は絶対に起こらない?(結界解除後は?)
・もし何らかの理由で首輪が外れた場合も会場からは脱出は不可能?

☆会場について★
・会場の周囲には脱走者を監視する役割の、主催者側の兵士が配置されている。
・兵士は殺害可能だが、殺害に成功しても会場外に逃亡は不可能。ボンドサの可能性高し。
・建造物には鍵さえ掛かっていなければ基本的に自由に出入り出来る。
 建物内の設備の使用も制限は無し。
・電気、ガス、水道等が通っている場所、及び集音マイクつき監視カメラは会場内にランダムで点在。


4:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:37:36 arB/fBbG
☆必殺技及び特殊能力★
・必殺技を一定量使うと『疲労』が発生するが、休息により回復可能。
・超能力、魔法、召喚系は発現する効果自体に制限が掛かる。
 程度は作者の判断に一任するが、異論が出た場合は雑談スレにて審議。
・パワーアップ系は原作の設定に関係なく時間制限を設ける。
・回復系は原作の設定より効果半減。
・ネクロマンサー系の技を使用する際、死体に意志を与えるのは禁止。
 武器としての死体はあくまで『物体』扱い。
・キャラが原作で武器を所持している場合、ACBRでは基本的に没収される。
 但し支給品として他参加者の手に渡っている場合は回収可能。
 また主催者が武器と判断出来なかった物等は没収の例外となる。

☆禁止事項★
・一度死亡が確定したキャラの復活
・新規キャラの途中参加・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
・中途半端な書きかけ状態の作品投下
 但し、長編を期間を置いてに分割して投下するのはこの限りではない。

5:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:39:13 arB/fBbG
☆書き手の注意点★
・トリップ推奨。
・無理して体を壊さない。
・リレー小説である事を念頭に置き、皆で一つの物語を創っていると常に自覚する。
・ご都合主義な展開に走らないように注意。
・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
 但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
・各作品の末尾には以下の情報を必ず表示する。
 行動目的
 所持品
 現在位置
 作品内で死亡者が出た場合は死亡キャラの確認表示も忘れずに。
・完結に向けて決してあきらめない

☆読み手の注意点★
・煽り、必要以上の叩きは厳禁。
・寝る前に歯を磨く。
・各キャラ信者はスレの雰囲気を読み、言動には常々留意する事。キャラの運命と死は平等。
 不本意な展開になったからと言って関連スレで暴れるのは論外。
・朝ご飯はしっかり食べる。夜食はなるべく控える。寒くなってきたので防寒もしっかり。
・書き手にも生活があるので、新作を急かすのも程々に。
 書き手が書きやすい雰囲気を作るのも読み手の役割。
・完結に向けて決してあきらめない


6:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:45:18 arB/fBbG
☆第1回ACBRについて★
主催者:ルガール・バーンシュタイン
会場:サウスタウン
参加者:男50人女36人 総計86人

【龍虎の拳】
ジョン・クローリー、リョウ・サカザキ、藤堂竜白

【餓狼伝説】
アルフレッド、テリー・ボガード、ビリー・カーン、タン・フー・ルー
ロック・ハワード、山崎竜二、ブルー・マリー
双葉ほたる、不知火舞

【THE KING OF FIGHTERS】
アッシュ・クリムゾン、K'、草薙京、八神庵、矢吹真吾、七枷社、クリス
二階堂紅丸、椎拳崇、霧島翔
神楽ちづる、シェルミー、ウィップ、クーラ、マチュア、バイス、レオナ

【月華の剣士第二幕】
楓、御名方守矢、鷲塚慶一郎
一条あかり、真田小次郎(香織)、高嶺響

【サムライスピリッツ】
緋雨閑丸、牙神幻十郎、ガルフォード、六角泰山、風間蒼月、風間火月
橘右京、タムタム、
ナコルル、リムルル


7:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:46:12 arB/fBbG
【GUILTY GEAR XX】
ブリジット
蔵土縁紗夢、ミリア

【THE RUMBLE FISH】
譲刃漸、アラン・アルジェント、ヴィレン
ガーネット

【STREET FIGHTERシリーズ】
リュウ、火引弾、ガイル
春日野さくら、神月かりん、春麗

【ヴァンパイアセイヴァー】
バレッタ、リリス

【MARVEL VS CAPCOM2】
ケーブル

【燃えろ!ジャスティス学園】
鑑恭介、山田栄二
水無月響子

【VIRTUR FIGHTER】
日守剛、結城晶、ジャッキー・ブライアント、リオン・ラファール
梅小路葵、サラ・ブライアント

【DEAD OR ALIVE】
かすみ、エレナ、あやね

【豪血寺一族 闘婚】
花小路クララ


8:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:47:14 arB/fBbG
【ソウルキャリバー 】
ソフィーティア

【サイキックフォース】
エミリオ・ミハイロフ

【ファイターズヒストリーダイナマイト】
カルノフ、溝口誠

【ワールドヒーローズ】
ジャンヌ

【式神の城2】
ニーギ・ゴージャスブルー

【METAL SLUG】
フィオリーナ・ジェルミ、エリ・カサモト

【ぷよぷよ通】
アルル・ナジャ

【ファイナルファイト】
ハガー

【わくわく7】
ライ

【悪魔城ドラキュラ】
シモン・ベルモンド

【クイズ迷探偵NEO&GEO】
ネオ

9:ゲームセンター名無し
06/11/11 00:49:03 arB/fBbG
【武力 ~BURIKI ONE~】
西園寺貴人




現在生存者は17名
ニーギ・ゴージャスブルー、結城晶、梅小路葵、アラン・アルジェント
ヴィレン、ケーブル、エッジ(山田栄二)、かすみ、アルル・ナジャ、楓
二階堂紅丸、シェルミー、リュウ、リョウ・サカザキ、水邪(風間蒼月)、日守剛、ネオ

その他の人々
【サイキックフォース】リチャード・ウォン
【KOF】イグニス
【ストリートファイターⅢ3rd】トゥエルヴ

アイテム扱いのキャラ
【すくすく犬福】犬福
【メタルスラッグ】ヒャクタロウ

10:1
06/11/11 00:49:56 arB/fBbG
関連スレだけなぜか貼れませんでした
誰か代わりにお願いします。

11:代理
06/11/11 01:04:46 gV7/0e0z
■関連スレ
いままでの経緯はこちらへ。データベースまであるバトロワまとめサイト
URLリンク(roku2.hp.infoseek.co.jp)

没ネタ、議論などはこちらに。ACバトロワ避難所
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

これは便利、キャラ現在位置、死亡者一覧、その他フラグが沢山乗っている凄い漢フラッシュ
URLリンク(roku2.hp.infoseek.co.jp)

死者達の集いを昔から見つめているまとめサイト
か さ ぶ た が は が れ ま し た 保 管 庫
URLリンク(f57.aaa.livedoor.jp)

絵師大歓迎。というか急募。お絵かきBBS
URLリンク(w6.oekakies.com)

旧まとめサイト
URLリンク(www.geocities.jp)

ちなみに画像うpロダはか さ ぶ た が は が れ ま し た 保 管 庫へ。

12:ゲームセンター名無し
06/11/11 13:26:27 vXaxk5SB
>>1
乙です。

13:ゲームセンター名無し
06/11/11 17:09:26 5K8uWbFM
>>1-11
乙がどうしたッ!
残り17人か…

14:ゲームセンター名無し
06/11/11 20:47:54 qlaqXLxN
かさぶたが剥がれて痛い
スレリンク(gsaloon板)l50

ちょっと前から仕込んで見たんだ…どうかな?

15:ゲームセンター名無し
06/11/11 21:40:22 uNKP7iJW
>>14
早速使ってきた><

16:ゲームセンター名無し
06/11/12 03:54:42 yDY3jd+C
>>14
いっそかさぶた&感想スレとして共用してみてはどうかと思った。
…しかし板が違うと規制食らったときの解除支援カキコができないか

17:ゲームセンター名無し
06/11/13 11:37:22 23MvLHi8
即死回避

18:ゲームセンター名無し
06/11/14 01:23:51 wtaZS9ip
新作本投下まで保守!

19:ゲームセンター名無し
06/11/15 16:24:54 o/hyx97K
今日本投下か

20: ◆qBzruAYf1g
06/11/16 01:03:38 zlXlqXCO
大変長らくお待たせ致しました。
それではこれより開始します。
途中規制に引っかかる可能性もありますので
その時は間を置いて再開しますのでご承知おき下さい。
念のためこの文は携帯から、本文はPCからです。

21:Double Cross 1/9 ◆qBzruAYf1g
06/11/16 01:05:34 Em/PQHP/
「結局、果たせなかったな…約束」
昨晩は共に過ごした拳崇の変わり果てた姿と、薄暗い路地裏で無言の再会を果たしたアランは、やり切れない気持ちで呟いた。

 ──もしどうにもならない窮地に立たされた時、俺が近くにいるなら、一度だけ、お前に力を貸してやろう
 ──男と男の約束か。よし、じゃあオレもあんたがピンチになったら、一回だけ駆け付けたるで
別段、互いの約束が履行されるのを期待していた訳ではない。
ただ、掛け替えのないものに対する熱い想いを内に秘め、孤独な闘いを続ける姿が己自身と重なり、
他人事には思えなかったから、つい陰ながら応援してやりたくなったのである。
束の間のひと時に築き上げた友情は、儚くも砕け散っていった。
遺体の周りに散らばる金属の破片と同様、二度と元には戻らないのだ。
剛と共に赴いた7区での任務の後、この5区に至るまで拳崇に一体何があったのか。
確実に言えるのは、路地裏の更に奥で死んでいる男も交えて、この場所で新たな戦闘があった、
そして参加者の枷となっている、主催者側の切り札とも言うべき首輪が何らかの理由で爆発した、これだけである。

彼女の無念を晴らすまで、まだ死ぬわけにはいかない
こう叫んだ彼はいまわの際に、果たして何を思ったのだろう。
唯一の救いが、想い人と同じ死に方だったというのは、皮肉と言うべきか。
志半ばにして散った同胞のために、アランはそっと十字を切った。

アランは知らない。

主催以外で首輪の爆破爆破方法を、参加者の一部が既に体得している事を、
そしてここにあるもう一つの遺体が、今は亡きフィオリーナと昨晩合流するはずだった、日本人の男であるという事を、

知ろうとしなければ、おそらくこの先も知らないままであろう。

22:Double Cross 2/9
06/11/16 01:07:01 Em/PQHP/
豪華絢爛な女と衝撃的な出会いを果たしてから、それまでゆっくりと動いていた彼等の周囲は急展開を見せる。
脱出の手掛かりを得ながらも、主催者側から抹殺対象としてマークされた葵と晶、
2人を本来仕留めるはずだった剛の代わりに監視しつつ、ゲームを内部から崩壊させる機会を密かに窺っていたアラン、
その殺し合いゲームに敢然と立ち向かうニーギ・ゴージャスブルーとの邂逅により、
今ここにそれぞれの思惑が見事に一致したのである。

限られた時間の中、互いの胸の内を一通り明かした後、アランは3人と別行動を取ることにした。
主催側から始末せよと催促がきている以上、このまま共にいれば裏切りと見なされるだろう。
さしずめ焼け跡でジョーカーである事が判明、戦闘状態になるも1対3では分が悪く
殺害に失敗したアランは取りあえず彼等が持っていた首輪の一つを奪って逃亡、
残った3人は騙されたという気持ちで命からがら焼け跡から抜け出す、
こんな状況を想定し、演技をしつつ間を置いて別れれば主催側もさほど疑いは持たないはず、とこれは葵の提案であった。
何かあったら互いの所有する携帯に、と言いたいところだが、元々は主催側から貸与された物である以上
傍受される可能性は恐らく限りなく高いだろう。
使えるのは何も連絡に限ったことじゃない、というニーギの言う活用方法が未だ解らなかったが、
その時は間違いなく彼女からコンタクトが来るだろうから、今は気にしないことにする。
念の為、比較的安全に合流できる場所も決めておいた、この焼け跡と7区北部にあるという病院である。

再び落ち合うことを約束して彼は3人と別れた。
それは命が命を食いつぶす狂気の街で、余りにもあてにならない約束だというのに―

そして、アランの携帯に主催側から連絡が入ってきたのは、再び一人になったのとほぼ同時であった。

23:Double Cross 3/9
06/11/16 01:08:26 Em/PQHP/
数時間後、彼はサウスタウン中心部に到着した。
東西に地下鉄が走っている地区でもあり、街の大動脈とも言えよう。
今までは行動範囲が3区より北側に限られており、ここまで遠出したのは初めてかもなと思いつつ、
アランは指定された白いビルに入り、地下のフロアへと降りていく。
そこには視聴覚ホールと思われる一室があり、観覧席と大画面が設置されていた。
彼がその中の椅子に腰掛けたのを待ち構えていたかのように、大画面に突如として電源が入る。
重厚な音楽と共に禍々しい『R』のロゴマークがしばらく流れた後、切り替わった画面に現れたのは
あの見慣れた男ではなく、東洋系と思しき若い女だった。

「初めまして、Mr.アルジェント。ルガール様の秘書を務めております、アヤと申します。以後、お見知りおきを…」
「やあ、君の様な素敵な女性に出会えるなんて、嬉しいよ。あのおっさんも気の利いたことするんだな、
もっと早くに会えれば良かったんだけど」
女性に対して半ば条件反射的に軽口がついて出てくるアランの素振りに、アヤは僅かに口元を緩めたが
すぐに事務的な表情に戻りこう続ける。
「それでは現在のサウスタウンの状況について、詳しく説明したいと思います。
貴方には是非知っておいて頂きたい情報ばかりですが、今までお伝えする機会が中々なかったものですから」
そう言うや否や、サウスタウン全体マップへと画面は切り替わる。

マップの上に顔写真と名前とともに、幾つかの光点が現れた。
「最新の生存者及びその位置情報です…参加者の居場所は数分間隔で更新しております」
アランはその光点の数をざっと目計算で数えてみたが、ルガールが先程の放送で公表した19人より
減っていることを把握した。顔見知りの中である者は存在し、またある者はもうこの中にはいない、
光点の真上の顔写真が否応なしにその事実を裏付けている。

24:ゲームセンター名無し
06/11/16 01:13:22 Em/PQHP/
「…成る程、ちなみに青く光ってるのがこの俺って訳ね」
色々と問いただしたくなるのをこらえて、アランは漫然と呟く。
「はい。それでは生存者の動向を、もう少し詳しく見ていくことにしましょう」
と、アヤは何色かに分かれた光点について説明し始めた。
「まずは赤いランプから、『優先』です」
梅小路葵、結城晶、ニーギ・ゴージャスブルー、先刻まで顔をあわせていた面々が並ぶ。
「この期に及んで、本来の目的を果たさずに会場から脱け出そうと企てている輩です。
さすがの貴方にも、3人をまとめて始末せよという指令は、いささか荷が重すぎた様ですね…」
先程のコンタクトの際に告げた、始末に失敗したという彼の言葉をそのまま受けて、アヤは含みのある表情で答える。
その他にケーブル、山田栄二といった名前が同じ色のランプで彩られていた。
「緑色のランプは『有望株』、目ざましい働きが期待できる者達です」
楓、アルル・ナジャ、リョウ・サカザキといった名前が挙がっている。
いずれの面々も、距離からしてここからそう遠くないところに存在していた。
「もし彼等と遭遇しても、極力交戦は避けて下さい。勿論、自身に危険が及ぶ様であれば、その限りではありませんが…」
ここまで大体目を通したアランは、一連の疑問が浮かび上がってきた。

生存者の情報及び動向は、昨晩から今朝方にかけて剛経由である程度の情報は得ていた。
もちろん最新の情報ではないので、今やあまり当てにはならなくなってはいるが。
現に主催側にとって不都合な、逆に好都合に動いている参加者は変化の様相を見せている。
死亡による脱落は仕方がないにしても、生きているにも拘わらずそれぞれの枠から外されるのは
一体どういう基準をもってしてなのだろうか。
特に気になったのは、今までの面子を押しのけて不穏分子から一気に有望株へと転じた少女、アルルの存在である。
まだ1日も経たない内に、一体彼女にいかなる心境の変化があったのか。
はっきりとは聞かなかったが、ニーギの言う「魔力を解除できそうな子」というのは彼女に間違いないだろう。
だとすればアルルの捜索をしているだろう3人にも相当な危険が及ぶのは避けられまい。
あのニーギに大火傷を負わせた張本人でもあるというのだから。

25:Double Cross 5/9
06/11/16 01:14:52 Em/PQHP/
「…じゃあ、残った黄色い点の連中はどう対処すれば?」
「今後の状況に応じて如何様にも動向が変化する可能性があり、赤や緑に比べてはっきりとしたスタンスが
定まっていないと言えるでしょう。臨機応変な対応が求められますので、ゲームの進行を妨げぬ様、
その時その時に応じた適切な処置を行なって下さい。
勿論、各生存者の動向はあくまでも今現在のもので、この先突然の針路変更は十分に有り得ますけどね」
何とも抽象的な指示に微妙な態度を見せるアランに、アヤは念を押した。
「この街で今生きてるのって、本当にこれだけなんだな…」
ゲーム開始前、あれだけいた人数の残りは骸となってしまっている。
様々な思いが胸中に湧き起こる中、口から出てきたアランの言葉であった。
「剛は生きてるのか。あんたらの内情を知ってる奴を放置してたらマズいんじゃないのか?」
「たとえそうだとしても、自らのみで現状をどうこうしようなどという力は、今の彼にはありますまい。
この先出会ったら、利用するもよし、邪魔ならば始末してもよし、お好きにどうぞ」
と冷淡に言い放つ秘書の言葉に、まだ剛を簡単には処分できない裏事情が何かあるのではないかと、彼は思った。

「では、いよいよ本題に移りたいと思います」
今まではあくまでも前置きに過ぎないという指示に身構えるアランに向けられたのは、予期しようもない映像だった。
「今残っているのは貴方を含めて16人、光点からリアルタイムで情報が伝わり、死亡した時点でデータから抹消されるため
その数には間違いはない、筈でした」
マップの画面に差し込まれた映像、不鮮明ではあるがそこには若い女の姿があった。
「光点の中にはカウントされていない人物を、5区に設置した監視カメラの一つがとらえた映像です」
その言葉と映像で、アランは瞬時にして全てを理解した。
ジョーカーも含めた参加者にとって、主催から嵌められた首輪は未だ脅威の対象である事、
しかしその呪縛の切り札が、ごく僅かではあるが崩壊し始めている事、
そしてニーギ、葵といった要注意人物を差し置いてまで、わざわざ自分がここに呼び付けられた本当の理由を。

26:Double Cross 6/9
06/11/16 01:17:07 Em/PQHP/
「ルガール様はこのゲームが滞りなく進行する事を、何よりも望んでおられます。
たとえ些細であっても、それを妨げる事態は決してあってはならないのです」
「つまり、その娘を処分しろってことだな、できれば大事にならない内に」
既に女子供に3人手をかけた彼にとって、もう一人犠牲者が増えたところで今更どうこう言う問題ではない。
「ゲームの進行を円滑に行なうべく、背後の憂いを絶つ、これが今回貴方に与えられた任務です」
そうアヤが言うと、画面にもう一枚若い女の顔写真が現れる。
標的となる少女よりも気の強そうな表情をしているものの、どこか重なるところがある。
「貴方の前任として働いていた女忍者です。参加者と戦闘中に惜しくも命を落としてしまいましたが、
おそらくより多く手柄を立てようと気が急いていたのも、敗因の一つだったのかも知れません」
まるで貴方とは正反対に、とそんな嫌味も含まれているような気がした。
「選手No22かすみ。今回のターゲットですが、データ上では1日目の夜に死亡した事になっています。
前任のあやねとは血縁関係にあり、若いながらも忍びとしての腕前は彼女と同等以上とも言われ、決して油断はできません」
「だからどうした」
標的となる少女の事細かな情報を伝えることによって、己の気持ちが揺らぐかどうか試しているのだろうか、この秘書は。
「若い女の子に手をかける真似はこれ以上勘弁願いたい、俺がそう言うとでも?」
だがそんな脅しにも近いアランの問いかけにも、アヤは動じなかった。

「手段は問いません、一番やりやすい方法で殺害を実行していただければ結構です。
そして任務が成功した暁には、貴方の身柄を本部に回収する事も考えている、とルガール様は仰せられていました」
「………」
アランの表情に今までとは違う光が入ってきたのを、アヤは見逃さなかった。

サウスタウンにおける移動手段や、点在する私兵との連絡の取り方など細かい情報を幾つか伝えた後、彼女はこう告げる。
「私からは以上ですが、最後に一つだけ。
この会場の中で、貴方が我々と唯一繋がりを持っている人間である事を忘れないで下さい、Mr.アルジェント」
「…分かった、肝に銘じておくよ」
「それでは、ご武運をお祈り申し上げます」
一通りの挨拶を交わし、本部との交信はようやく終わりを告げた。

27:Double Cross 7/9
06/11/16 01:18:36 Em/PQHP/
白い建物から離れ、歩き出したアランが首なし拳崇を発見したのは、それから間もなくの事であった。
主催側から見せられた生存者情報からは外されていたため、もう死んでいるだろうという認識はあったが、
こうもタイミング良く出くわすとは、彼の死体を見せつけたいがために、
わざわざ場所を選んだのではないかと思えてならなかった。
その一角が崩壊しかけているとは言え、首輪の脅威は未だ健在であり、
下手に動けばこいつと同じ目に遭わせるぞという警告にも取れた。
拳崇の遺体を眺めながら、アランは今後の行く先をぼんやりと考えていた。

まずは主催から指示が出た以上、かすみという娘の元に真っ先に向わなければならないだろう。
殺害対象がガーネットと言った顔見知りでなかっただけに、幾らか気持ちが楽だったのは正直な思いだった。
同時に彼女と接触すれば、首輪解除の重要な手掛かりがつかめる事はまず間違いない。
そして近くには、ケーブル、山田といった『不穏分子』なるものも存在する。
何故かヴィレンまでも近くにいるのが気がかりではあったが。
可能な限り近辺の情報を収集し、ニーギ達に伝えることができれば彼女らにも大きなプラスとして働くだろう。

そして、任務を果たせば身柄を回収するというルガールからの伝言。
もちろん100%信用できるものではない。
しかしある時は主催者の言う事に従い、ある時は反乱者の手助けをする、自分がこんな矛盾に満ちた綱渡りを続けているのは
全ては大切なあの人のため、思い出したように切ない想いが胸をしめつける。

(…結局、最後の最後まで俺はどっちつかずの存在か)
拳崇の死体と一緒に、アランは首輪の残骸を見つめていた。何故か頭部だけが見当たらず、探すのを諦めて
破片の一部をさりげない動作で懐にしまい込む。手掛かりはあればあっただけ困ることはない。
そしてもう一人の男の遺体に近づく、あちこち刺されており身体の損傷は拳崇よりもっと酷いものであったが
注目すべき部分はそこではなかった。

28:Double Cross 8/9
06/11/16 01:19:44 Em/PQHP/
首輪から不自然に飛び出した差し込みプラグ、自分を含め他の参加者にもちろんそんなものは見当たらない。
出来れば調べたいところだが、うかつに触れば爆発しかねないだろうし、未だ監視下に置かれている立場から、
辛うじて思いとどまった。今はできる事から一つずつ、確実に行なえばいい。

(だからどうした!)
豪華絢爛な女が教えてくれた呪文を心の中で叫び、自らの勇気を奮い立たせる。
あの人のためにここから何としても脱出し、その為に任務は果たす。
そして会場にいる限り、ゲームを引っ掻き回し続ける決意は変わらない。
これまでも、そしてこれからも。

当面の課題は支給武器の残弾数であり何とかならないかと、先程アヤにそれとなく尋ねてみた。
すると答えの代わりに、会場に放置されたまだ使えそうな武器の位置情報を教えてくれた。
つまりは現地で調達せよということで、さすがに新たな補充は他の参加者から不自然と疑われるという判断なのであろう。
男の心臓に、止めさしたかのように包丁が突き立てられていおり、不気味ではあったもののこれも回収することにした。
出来るだけ武器を回収して身の安全を守ると共に、殺気立った参加者の力を少しでも削ぐことができれば、
という気休めにしかならないが、両方の思惑があった。

(俺はこの会場から、必ず、生きて抜け出してやる)
幾許かの戦利品を収め、アランは路地裏から離れて再び歩き出す。
(無念の死を遂げた、連中の分までもな…!)
思いも新たに見上げた夜空の向こうに、懐かしい人の笑顔を、一瞬垣間見た様な気がした。

吹き抜ける風によって、シャツにくくり付けた、首もとにぶらさげた、銀色のネックレスが、
そのいずれもが、いつまでも揺れていた。


【アラン・アルジェント 所持品:PPKワルサー(残り7発)、携帯電話(剛の連絡先登録済)、折り畳みナイフ、首輪、
 出刃包丁(霧島の遺体より回収) 目的:ゲームを内側から壊す、プローブの情報を盗む為に本部へ潜入
(当面は可能な限り武器の回収及び脱出に関する情報収集)主催よりかすみを抹殺せよという指示】
【現在位置:5区路地裏より移動中】

29:Double Cross 9/9
06/11/16 01:22:48 Em/PQHP/



アランは知らない。

仮に拳崇と生きて再会できたとしても、昨晩と同じく歩調を合わせることができたかどうか疑わしかった事を、
そして薄暗い路地裏の、2つの遺体の更に奥の奥の突き当たりに何があったのかを、

知ろうとしなければ、おそらくこの先も知らないままであろう。



路地裏の突き当たりにうず高く積まれたゴミの山から、黒い長傘が強風に煽られて倒れる。

その先端には、耳や鼻を削がれ、両目を抉られ、頬肉も切り裂かれ、
頭皮ごと髪の毛をむしり取られ、散々叩きつけられた末踏みにじられた、
探しても見つからなかった拳崇の頭部の成れの果てが
傘の先端部分に突き刺さっていた。



この街に存在する生きとし生けるもの全てを滅ぼさんとする、憎悪に満ちた暗黒の渦は、
未だ衰える事を知らずに増殖を続けていた。

30: ◆qBzruAYf1g
06/11/16 01:34:27 Em/PQHP/
何とか無事に投下できました。
試験投下から余計な部分を足してしまったので、ご意見苦情等引き続き受け付けます。
ちなみに拳崇の頭が何でこうなったかは、これまでの話で察して下さい。
場合によってはパーツの一部分が持ち去られているかも知れません。

さて、改めましてご挨拶をば。
長い間書けない時期が続いており、
このスレをのぞく度に申し訳ない気持ちで一杯でした。
しかしフラッシュの人をはじめ皆さんの心温かい書き込みのおかげで
もう一度書いてみようという勇気がわいてきたのです。
アケロワを応援して下さった皆さん、本当にありがとうございます。
たとえ書き手としてのこの先参加が難しくなっても、
このロワを行く末を見届けるつもりです。

最後に、新規古参問わずこれを機にまた活気が戻ってくる事を願って止みません。

31:ゲームセンター名無し
06/11/16 13:33:13 BJLuoPfg
超乙!!
・・・ただ、したらばでネタバレがあったからか新鮮味が・・・
ネタバレは出来るなら無しがいいな

32:ゲームセンター名無し
06/11/16 14:52:46 T5wRL0yg
したらば見なきゃいいじゃん

33:ゲームセンター名無し
06/11/16 21:36:05 Xug1lMhM
そんなあっさり言うなよ・・・

34:ゲームセンター名無し
06/11/16 22:59:04 8lFyEEzz
乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙乙(ry
信じよう、ゴールの時が来ることを

35:ゲームセンター名無し
06/11/16 23:51:18 5uW5hOVM
ほら、したらば落とすと本投下まで感想書けないじゃん?
そうなると見たときのキター感をぶつけられないんだし、訂正が出る時は出るんだし、出来れば仮投下とか無いほうがいいな。

36:ゲームセンター名無し
06/11/16 23:55:27 ro66RxBh
乙ー!!

ネタバレ防止のためにしたらばに投下してくれたのに、したらば見てネタバレしちゃうっていうのは本末転倒のような気が。
いっそしたらばにネタバレ専用スレでも立てた方がいいのかな?

37:ゲームセンター名無し
06/11/17 00:46:29 yuJnnX3I
そんなことしなくてもしたらば見なければいい事じゃん

38:ゲームセンター名無し
06/11/17 08:55:21 uEHLY30b
読み手のワガママに付き合う必要はねーよ

39:ゲームセンター名無し
06/11/17 11:55:03 mMufWIDA
それでネタバレスレに投下しましたと来て
スレ見て新鮮味がと言い出すわけだな

40:ゲームセンター名無し
06/11/17 13:27:05 6tWP1qJa
肉まん男の頭部を傘でMr.フルスイングした奴は誰なんだー!?

41:ゲームセンター名無し
06/11/17 15:48:11 q7EBE4LW
六角さんを殺した人と同様、世の中に走らなくていいこともあるんだぜ?

42:ゲームセンター名無し
06/11/17 22:48:56 qcAQ5MQO
シェ留美遺産のことかー!!

43:ゲームセンター名無し
06/11/17 23:54:55 mMufWIDA
←樹海| フッジッサーン
 ̄|| ̄ /^o^\三
  ||   ┏┗  三

44:Critical Parade 1/5
06/11/18 01:19:12 GMXCYriP
少なくとも道連れ二人は、彼が他人の行動に接した時、小指の先についた耳垢のカスほどの許容も見せないと思っていた。
だが実際は、その尊大かつ強大な神魔は、大方の予想を裏切って、彼女へ意識を傾ける素振りを見せている。
「そうか……」
中空で足を組み、肘をつく。常人にとっては空気椅子と呼ばれる難姿勢だが、蒼月はどうやら本当に空気を椅子としているらしい。
一体いかなる執着か、先ほどまで見せていた下位の者に対する熾烈な傲慢さを微塵も出さず、表情を消し、むっつりと目を閉じた。
「……まったく、あの娘にも困ったものだ」
長考に入る蒼月に、取り巻きその1ことネオは気が気ではない。
「おおい蒼月、急いでくれよ。あいつ危ねえ状態なんだよ」
「騒がしい」
察するに、蒼月あるいはこの魔物は、かすみを他の平民よりワンランク上に位置づけているように思われる。
蒼月がかすみを優先したら、リョウは捨て置かれることになるのだ。
切れ長の目が糸ほどの細さに開いた。視線が剛を突き刺している。
「愚民よ。貴様は蒙昧なれど、塵ほどは我の深遠なる思考の滋養としてやろう」
超高空からの物言いに難癖をつけようとして、思いのほか鋭い視線に刹那たじろいだようだったが、剛はすぐに例の貌を取り戻した。
「あっちからこっちまでは直線だ。ついてくる気があるなら、ほっといても来るだろうよ。
 わざわざ出迎えに行く手間ァ、かけたいか? カミサマよ」
「口の利き方に気をつけよ下郎」
眉が不快の側に寄ったようだったが、提案はもっともだと考えたらしい。
「貴様は、連れを救済してほしいのだったな」
「お、おう! 急がねえと、アイツ怪我してるし! 頼むよ!」
「手負いか……」
「で、でもよ、そいつカラテ強えんだよ! なんかムテキの龍とかで有名だっつってさ!」
「ほう」
あまり興味を惹かれていない様子だった。いや、蒼月よりも明敏な反応を見せた男が一人。

45:Critical Parade 2/5
06/11/18 01:20:15 GMXCYriP
「無敵の龍だあ? おいボンクラ探偵、てめえのツレの名前もういっぺん言ってみろ」
「なんだよ……リョウっつってた。リョウ=サカザキ。何とかカラテのムテキの龍っつって、サウスタウンでも有名なんだってよ」
「手負いっつったな? どの程度だ?」
「あー……」
怪我人と聞いた蒼月が渋い反応を見せた手前、あまりその話はしたくない。
誰がどう見てもそう判断するであろうほどの重傷だったのだ。
症状を聞いて、せっかく発掘に向かおうと思っている蒼月の気分が変わってしまっては元も子もない。
「……まあ、いや、大丈夫だかんな。気にすんな。深く突っ込むな。喋んな」
鼻を鳴らして、剛はもういいとあごをしゃくった。
その反応で、少なくとも行動に支障が出るレベルの負傷だと推測できた。
今の剛でも互角に渡り合える程度の重症なら、言うことはない。
「さあ、どうすんだカミサマ?」
余裕を取り戻し、唇の端を吊り上げさえしながら蒼月を見る。

剛にはいくつかの懸念があった。
かすみがノートPCの正体を理解してしまった以上、剛の持つ情報価値は既にないに等しい。
それでも蒼月の水術の範囲に居座るには、かすみの存在価値が低いままに見せかけておかなければならない。
蒼月がかすみに何らかの執着を抱いているのは予想外だったが、この分ならかすみから再接近してこない限り
当分は彼女を蚊帳の外へ置いておくことが出来るだろう。
どさくさに紛れて、PCだけ残して死んでもらえれば、手間も省けて良い。
そしてもうひとつ、リョウの存在である。
今までこの抜け作が適当な言い方をしていたために気づかなかった。
よりにもよって、自分を仇と付け狙う相手を助けに行く馬鹿がどこにいる。
と考えていたのは先ほどまでの話。楽観は出来ないが、そうそう悲観することもなさそうだ。
この期に及んでリョウを助けに行くのも嫌だと言い出せば、集団での信用が落ちる。急がないと危ない状況だというなら。
仮に間に合ってしまったとしても……。
懸念は消えた。

46:Critical Parade 3/5
06/11/18 01:21:17 GMXCYriP
念のため、ウージーに僅かに残った弾は、リョウに会うまでとっておきたい。
「よかろう。かすみは一時捨て置く。ついてくればそれで良し、無様にさすらっているようなら、躾け直しを考えねばならぬな」
展開としては上出来である。
「よし、それじゃあ行くか」
かすみのことで足がすっかり止まっていた。なるべく時間をかけながら行きたいところだが
そろそろ歩き出さなければ変に疑われかねない。
「いや、待て」
細く目を開いた蒼月が、そのままの姿勢で5区大通りの東を透視している。
「また、卑賤の輩が現れたようだな」
「んあ?」
夜だというのに手で目庇を作って遠望しようとするネオの首根っこを掴んで壁際に引き寄せ、剛もそちらを窺う。
数は三人、いや四か。どちらが正しいかは、倒れている人間が死人かどうかで決まる。
もっともこんな危険な場所で倒れている人間が、戦力として数えられるかと言えば答えはもちろん否だ。
「どうだ? 知った顔はいるか?」
「随分と気を回してくれるじゃねえか」
「何。知己を通じて我に従うよう説かしめようと考えたまでのこと。高貴なる我の神気に打たれて気を失ってしまわぬようにな」
言ってろ、と思った。口には出さなかった。その一言の返事が、おそらくこの神魔が最も嫌う応対だろうと予測がつく。
宵闇に透かして、あまり友好的とは言えない凝った空気を漂わせる集団を覗く。
一人はすぐに見当がついた。白い胴着に標準的な体型。リュウで間違いない。
とすれば倒れている包帯のカタマリは、ガタイから言って七枷社か。
他の二人は、実際に見るのは初めての人間だった。
キングオブファイターズ常連、二階堂紅丸と、もう一人は確かシェルミー。
こちらの二人の人となりは知らないが、あの状況を見るに、いきなり仕掛けてくるような相手ではないと十分に判断できる。
とすれば、先刻遭遇した二人が問題となる。
「あの胴着の奴」
声を潜めて傍らの二人へ聞こえるようにささやく。

47:Critical Parade 4/5
06/11/18 01:22:33 GMXCYriP
「放送で言っていた四人殺しのリュウだ。俺も殺されかけた」
「ほう、威勢がいいな。我に謁する権利を与えよう」
「はおっ!?」
蒼月の能面が好意的な色を浮かべる横で、ネオが変な顔をした。
「会うのかよ!? やめた方がいいだろどう考えても!?」
「卑しき者は、下らぬ献策をするにもいちいち騒がなければ気が済まぬのか?」
どんな相手であろうと、危機をもたらされることは有り得ないという強固な自負が、神魔にある。
その絶対性に疑問を投げかけられて、蒼月は不快そうに視線を巡らせた。
機嫌を損ねるのはまずい。無理にとりなそうとしても、面倒が大きくなるだけである。無視して話を続ける。
「リュウの野郎は石頭の甘チャンだ。まかり間違っても先制で仕掛けてくるなんてのは有り得ねえ」
甘チャンと聞いてネオの変な顔がさらにバリエーションを見せるが、何も言ってこないので放置。
「あとの二人は知らねえが、あの様子だ。俺の掴んでるネタをちらつかせりゃ、少なくとも牙を剥いてきたりはしねえだろう」
問題は、包帯の社である。この男は、自制が些か薄い。
感情的に剛を拒絶する選択肢を採る可能性が極めて高い。
ともかく、やるだけやってみる価値はありそうだ。どうせ社はミイラなのだ。例え彼の拒絶に跳ね返されたとしても、
自分がもうジョーカーでなく脱出組であると知らしめておくのは、後々有効になってくる可能性はある。
方針は決まった。可能であれば仲間に引き入れよう。そのためにはまずアプローチから細心の注意を……
と、蒼月が目を開く。
「ほう。よく見ればあやつら、あの蛇めの眷属か」
「……なんだと?」
目に映らぬ椅子から立ち上がり、蒼月は地上数センチの花道に降り立つと、そのまま滑るように前へ出る。
「おい、どうするつもりだ!?」
返事が返ってくることはない。制圧した宮殿を往く王よろしく、悠然と倣岸に、神魔は進んでいく。
「おいおい、リョウは……」
「言ってる場合か! クソッ」
苛立った一睨みを残し、剛は流れていく蒼月の背を足早に追いかけていく。

48:Critical Parade 5/5
06/11/18 01:25:01 GMXCYriP
ネオは取り残された。
このまま抜けてしまってもいいようなものだが、一人ではリョウを瓦礫から掘り起こせないという弱みがある。
「あーっ、うまくいかねえなーっ!」
剛と似たような気を吐き、ネオも後に続いた。


【ネオ(全身打撲、主に足) 所持品:魔銃クリムゾン・食料等、多目的ゴーグル、使い捨てカメラ写ルンDeath、
 目的:アクセスポイントに行き外のジオと連絡を取って事件解決!(推理が当たっているかどうかはまだ不明)メモを舞の遺族に渡す。リョウを助けたい】
【風間蒼月(水邪) 所持品:なし 目的:蛇めの眷属に我が威を知らしめてやろうヒョオーーーウ!!】
【備考:蒼月は現在完全に水邪が表に出た状態。蒼月自身の意識は消滅していない】
【日守剛 所持品:ウージー(残り弾僅か、一度撃ったら空になる程度)、包丁、果物ナイフ 目的:仲間集め、当面は蒼月についていく
 左腕欠損。蒼月の力により止血。】

【現在位置:5区・東方近距離に紅丸シェルミー・リュウの位置】

49:ゲームセンター名無し
06/11/18 02:33:00 Om9u685s
く、空襲警報!空襲警報!新作が来てるぞ!
雷ーズと水邪様組が早くも接触ですかっ!?

50:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:34:05 j9CCulK/
俺たちは突然走り出した犬福を追って、線路の脇を移動する。
とはいえ、ダッシュで飛び出した犬福と違ってこっちは
満身創痍のおっさんと足の折れたチンピラ、そんで俺。
「こっちだ、エッジ」
三人が三人とも体を引きずるようにしながら移動している中、
ケーブルのおっさんが犬福の思念ってやつを読みながら俺たちを誘導する。
怪我をした左肩がジンジンと痛むけど、前を歩くおっさんの体は
俺なんかよりずっとひどい状態で、弱音なんかかっこ悪くて吐けやしなかった。
犬福は線路に飛び降りた後、ホーム端の出口から駅を出て、地下街に入ったらしい。
「おい…やっぱ動きづらいからこれはずせ」
イリヤの野郎が俺を睨みつける。
これ、とは後ろ手に縛られた右腕のことらしい。
犬福を追うと決まった直後、さすがに縛ったまま置いておくわけにもいかないと、
おっさんがイリヤの拘束を両腕から片手にして、軽く間接が極まるような感じに縛り上げたらしい。
足が折れているイリヤは、自由になった左腕で俺の肩につかまってなんとか動いている。

俺の怪我が左肩で、イリヤの怪我が左足だから、まあバランスは取れてるような気もするが
やっぱり俺たちを襲ったヤツに肩なんぞ貸すのはひどくいけ好かなかった。
まあ何よりも、おっさんのボディチェックで一応安全宣言は出たものの、
こいつに密着するってのがどうにもアブない気がして仕方なかったってのもあって
俺は不安と野郎の体を引きずりながらずりずりと移動していた。

51:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:35:39 j9CCulK/
「もう少し向こうだな、多分次の角を曲がって少しいったところだ…と、これは」
おっさんが険しい顔をする。
「誰か一緒にいるようだな…だが、犬福の思念が妙だ…ひどく荒れているというか」
「さっきもおかしかったもんなあ、急に噛み付くし」
俺は手についた歯型を見る。歯、あったんだなあいつ…
「おいおい、誰かいてあのケダモノが殺気立ってるんだろ?危ないんじゃねえのか?」
俺の隣でイリヤが声を上げる。
「確かに、犬福が飛び出した原因が一緒にいる相手だとして、それが飼い主、まあいるのかは知らないが
 犬福にとって敵性をもたない人間ならば、この思念の乱れは説明がつかない」
「つまり、少なくともあのケダモノにとっちゃ『敵』ってワケだ」
しゃくだが確かにイリヤの言うとおりだった。あののほほんとした犬福が怒る相手…もしかしたら
犬福はそいつが何かしているのを見たのかもしれない。ヘタすると、何かされた可能性だってある。
「つーわけで、これ外せ」
「ダメだ、もう少し近づけば相手の思念が読める、敵かどうかはそれで判断すればいい」
「なるほど、頭ん中まで覗き込むわけだ、ケッ、モンスターが」
「ミュータント、だ…」
呟いて、おっさんは壁に背中をつける。曲がり角の店の柱、そこから曲がった先の通路を覗き込む。
「ふむ、なるほど、敵味方は別として、なかなかできる」
感心したようにおっさんが言う。
「少し向こうに小さく姿が見えただけだが、思念がなんとか読めた、こちらの気配から人数までほぼバレたぞ」
「うぇっ!?なにそれ、ヤベェんじゃねえのか?」
「いや、出方を伺うつもりのようだ、少なくとも襲い掛かってくる気はないようだし、犬福も気になっているようだな
 どうする?呼びかけてみるか?」


52:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:38:19 j9CCulK/
「うーん、犬福の様子が気になるけど、このままにらみ合っててもしょうがねえしなあ」
「その犬福なら、床に転がってる」
「まさか!?」
俺はしたくもない血まみれの犬福を想像してしまってぶんぶんと首を振った。
「大丈夫だ、ただ、襲いかかって避けられ、ヘバった様子だな、回収するにせよ、彼女に接触しなければならん」
「女ァ!?」
俺が思わず声をあげたところで、コツコツという靴音と共に、そいつが近づいてきた、とおっさんが言った。
身構える俺たちに聞こえてきた声は、はっきりいって予想の斜め上をきりもみでかっ飛んでいくものだった。



「すいませーん、そこの人たち、この子の飼い主の人知りませんかー?」




53:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:43:05 j9CCulK/
「なるほど、君の話はわかった」
ケーブルは物怖じせずに近づいてきた少女、かすみの話を一通り聞いてそう言った。
彼女の話は要約すれば、
・ジョーカーと間違われて殺されかけたが奇跡的に生き返った。
・そしてそのせいで首輪がオフになり自由になったのを利用して主催側の兵士を襲った。
・その後、主催側から見放されたジョーカーに首輪をはずしてもらった。
・主催側の兵士から手に入れたノートパソコンを見ようとした隙にその元ジョーカーに襲われて
・逃げてきたところ、最初に自分を殺そうとした連中といっしょにいたイキモノが襲ってきた。
といったところだった。
「興味深い、全て信じるならば、特に首輪に関してはな」
彼女の話した「首輪が死亡を判別するとオフになる」「オフになった首輪は外せる」という点は
ケーブルだけでなく、その場にいたエッジやヴィレンの興味をも大いにひいた。
「でもよ、話が本当だとしたら、犬福の飼い主っぽい人がこの人を殺そうとしたんだろ?」
「それもジョーカーだと思って、な」
珍しくヴィレンがエッジに合いの手を入れる。言わんとしていることはテレパスを使わずともケーブルにもわかった。
「彼女にジョーカーだと思わせる何かがあったか、もしくは…本当にジョーカーか」
その言葉に応えるように、エッジの腕の中の犬福が息を切らしながらも唸る。
愛らしい顔に似合わぬほどに、殺気を放っているのが見て取れる。
「でも本当にジョーカーなら自分のことをジョーカーと間違われて、なんていうか?それにおっさんの…」
「そう言うことでジョーカーではない、と思わせるためかもしれん。それにな、一流のウソつきは
 自分の心の中でもそのウソをつきとおすことが出来るものだ」
その言葉にかすみは応えない。ヘタな弁解は疑惑を深めると悟り、判断を委ねているようだった。


54:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:45:22 j9CCulK/
「判断はひとまず保留。とりあえずは、駅に戻ろう、誰か来ているかもしれん。かすみ、と言ったな
 我々は主催者に抵抗する意思のあるものを集めている。信用してくれるなら、一緒に来てくれ」
しばしの沈黙の後、ケーブルはそう言うとゆっくりと駅に向かって歩き出す。
かすみは小さく、はい、と呟いてその背中を追った。
エッジとヴィレンは顔を見合わせ、やれやれといった表情になった後、
はたとお互いがいがみ合っていることを思い出し、にらみ合って、そっぽを向いた。





「そろそろ、動くべきかもしれんな」
無事に駅のホームに戻るとケーブルはそうこぼした。
「列車に乗って例の駅に行くってことか?」
エッジの問いかけに頷き、かすみを見やる。
「かすみ、信用のために言っておくが、私はテレパス、つまり心を読むことが出来る、わかるか?」
「隠し事ができない、ということですか」
かすみは後ろ手に持ったノートパソコンをケーブルに向ける。
「そうだ、君がさっき語った内容で一つだけ、言葉と心に矛盾があった。それがそのパソコンについてだ」
「え、なに、どゆこと?」
エッジがたずねるとケーブルは少し険しい目になって言った。
「彼女は心で『このパソコンに入っている内容はまだ知られたくない』と『思い』ながら
 パソコンを『見ようとした隙に』襲われたと『言った』」
かすみは沈黙を守り、ヴィレンは成り行きを眺め、犬福は相変わらず唸っていた。
「内容を隠しながらそう言った真相を、私はその内容にあると見ている。つまり、その中に
『元ジョーカーから見て都合の悪い情報』つまり『我々参加者に有益な情報』が入っている、とね」

55:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:47:29 j9CCulK/
「なんでだ?元ジョーカーって今は参加者なんだろ?そしたら元ジョーカーに不利なもんは参加者にも」
「違うなエッジ、元ジョーカーがその身分を明かしているということは、己の情報を種に、優位に立とうとした結果だろう
 つまり、そのジョーカーが持つ情報、すなわち主催側の情報が公になると、自分の優位性が失われる」
「利用価値がねえ元主催側なんぞ、危なくて生かしちゃおけねえ、ってこったな」
沈黙していたヴィレンが納得したように、そして吐き捨てるように言った。
「そうだ、もし我々に協力の意思があれば、そのノートパソコンの中身を見せて欲しい」
かすみは黙ったまま、三人と一匹をじっと見つめる。
信用に足る相手かどうかを慎重に値踏みしている様子だった。

「わかりました、ただしさわりだけです。最後までは、できるだけ監視のない場所で」
最後までは、から後の台詞はケーブルの耳にささやかれるように伝えられた。
言葉どおり、監視と盗聴を警戒して、表向きは警戒を続けている様子を取り繕ったのである。
つまりそれは、ケーブルたちを信用して、列車に同乗する、という意思の現れだった。
ゆっくりとノートパソコンを開こうとしたところで、向こうから列車の近づく音が聞こえてきた。
「ちょっと待ってくれ、誰か乗っていないか確認する。乗るのは次の列車にしよう」
ケーブルはかすみを制止して列車のほうを見やる。
ブレーキを軋ませ、ゆっくりとホームにはいった列車のドアが開き、
しかしだれも降りてくる者はなかった。
「ふむ、今回も誰も乗っていないようだな…」
と、列車の近くまで覗きに行ったケーブルが、こちらに戻りながら呟いた瞬間―――

56:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:50:21 j9CCulK/
「にょぉぉぉ!!」
ぼすっ
犬福がかすみに体当りをした。
先ほどまでと違い、パソコンと列車に意識の向いていたかすみはそれを避けきれず、ノートパソコンを取り落とす。
「マヌケがッ!!」
その声と共にヴィレンが体を横に転がす。足が使えない以上、最速の移動手段だった。
そして、間一髪コンクリートに衝突する前に、『右手で』ノートパソコンをキャッチした。
「ふぅ、ナイスキャッチ、イリヤ!」
エッジが叫ぶと、今度は左手がかすみの足元にいる犬福の尻尾を掴んだ。
「にょ!?」
そしてそのまま、パソコンをかばうように抱えてホームを転がる。
格好悪く転がる先は、停まっている目の前の列車――
「エッジ!イリヤを止めろ!『拘束を解いている』!!!!!」
ケーブルの叫び。
「にょおぉぉぉ!?!?」
犬福の叫び。
「しまった!!!」
かすみの叫び。
「ダメだ撃つな!犬福とパソコンに当たる!」
エッジの叫び。
「出し抜いてやったぜ、フリークスども!!!」
そして、閉まりゆく列車のドアから放たれる、ヴィレンの叫び。
列車が折り返しの出発をするまで、ドアの窓からヴィレンがパソコンと犬福を掲げる。
近づけば両方とも叩きつけ、壊す、という脅迫だった。

57:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:51:36 j9CCulK/
列車が動き出し、遠ざかっていくのと同時に、ケーブルが駅の出口へ駆け出す。
「おっさん!?どこ行くんだ!」
エッジが後を追いながらたずねる。
かすみは音もなくケーブルの横を走っていた。
「コントロールセンターに戻る!!」
「なるほど、列車を止めるんだな!」
「逆だ、列車を終着まで一切止めない」
ケーブルの言葉に首を傾げるエッジ。
「もし犬福を置いていけば、テレパスの通じないイリヤを追うことは出来ない。駅で停車すればどこで降りたかわからない
 だから終着、例の駅まで止めずに走らせる、そうすればヤツのいる場所は一箇所だ!」
「おっさんがこっそりテレポートで列車に乗り込むってのはダメなのか?」
「動いている列車にボディスライドできるほどの精度が出せる自信はないよ、万が一列車の前に出てしまえばひとたまりもない」
「なるほど…んじゃ、急ごうぜ」
「そうだな、次の列車で追いかけたい、急ご…グッ…」
ケーブルの足がもつれる、が、転ぶ寸前脇を走るかすみが支える。
「すまない、かすみ」
「いえ、気にしないでください…それに、私思い出しました」
「へ?なにを?」
あたりを見回しながら言うかすみに不思議そうにエッジが尋ねる。
「このビル、私が火月さんと出会ったビル…きっと、彼が導いてくれたんです。あなたたちと出会ってからずっと、
 火月さんの気配がするんです。だからきっと、あなたたちは信じられる…」
かすみのいう火月という名前に覚えはなかったが、その顔は決意に満ち、
エッジとケーブルはつられるように頷いた。

58:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 02:59:27 j9CCulK/
ケーブルは知らなかったが、彼のバッグに入っている忍刀は炎邪を封じるための、火月の半身ともいえる刀であった。
かすみも当然、そんなことは知らないが、一つ微笑むと、ケーブルを軽々と背に乗せて、コントロールセンターに至る階段を駆け上がる。
「す、スゲー、忍者がスーパーマンかアンタ!?」
どう見ても自分より大きな男性を背負ってるくせに苦もなく階段を駆け上がる彼女の姿に心底感動してエッジが感嘆の声をあげる。
「あれ、言いませんでしたっけ?私忍者ですよ?」
「ハハハ、これは心強い味方ができたな、エッジ」
ケーブルは笑い、かすみも笑い、エッジだけがぽかんと口をあけて、勢いよくセンターに駆け込む。
「それに大丈夫ですよ、あのパソコン、私の持ってるカードがなければ中は見れない…って、あーーーー!!!」





「いけ好かねぇケモノだが、まあ偽善者どもへの盾にゃ使えるか、あのバケモノが追ってきたときにでもな」
疾走する列車の中、ヴィレンはそう言って犬福をぶにぶにと弄ぶ。
「にょぉ~~」
尻尾を掴まれたまま回転された犬福は目を回して目下ヴィレンのなすがままである。
と、人質代わりにと咄嗟に掴んだ時には気づかなかったが、犬福の顔に違和感を覚える
「ん?なに咥えてやがんだ?」
犬福の口の中からはみ出している、よだれまみれになったそれを嫌々ながらヴィレンが引き抜く。
「…カード…?」

59:地下鉄(メトロ)に乗って ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 03:04:46 j9CCulK/



【ヴィレン(左足骨折・全身打撲、リリス憑依中、拘束中)所持品:ノートパソコン、IDカード、犬福 目的:ゲームに参加・生き残る】
【現在地:隠し駅までノンストップの地下鉄車両内】
【補足:犬福はノーマル状態です】


【かすみ 所持品:拳銃(残り14発+1カートリッジ)目的:ケーブルたちに協力 首輪なし、戦闘服着用】
【ケーブル(負傷 大消耗中) 所持品:衣服数点、忍者刀青龍、サブマシンガン、首輪、工具類、テーザー銃、暗器多数(ヴィレンから没収) 目的:イリヤ(ヴィレン)を追う、風間蒼月にメモの内容を伝える。首輪の構造を調べる】
【山田栄二(エッジ)(左肩負傷) 所持品:十徳ナイフ、忍者刀朱雀、衣服類・食料多数、犬福、アーミーナイフ(ヴィレンから没収) 目的:みんなに会う為、いつも行く喫茶店に文句を言いに行く為に生き残る。ケーブルについていく】
【現在地:2区地下鉄コントロールセンター】
【補足:ヴィレンパートに移った時点で地下鉄と終着と始発以外にノンストップにする作業は終了済】

60: ◆nucQuP5m3Y
06/11/18 03:06:31 j9CCulK/
う、うわぁ。
まさか同時に書いている人がいるとは夢にも思わず書いてました。
実はこの話、水邪組がノンストップになった列車(隠し駅行き)に乗っちゃうパートがあったんですが
投下前にリロードしたら見事にかぶっていて没。
とりあえずしたらばにでも投下しておきます。まさかこの時期にかぶるとは驚きですが
投下かぶりは活気がある証拠なので喜んでおくことにします。

矛盾点等ありましたらなんなりとご指摘ください。
今誤字みつけたんで修正、最後の補足部分です。

×【補足:ヴィレンパートに移った時点で地下鉄と終着と始発以外にノンストップにする作業は終了済】
○【補足:ヴィレンパートに移った時点で、地下鉄を終着と始発以外にノンストップにする作業は終了済】

61:ゲームセンター名無し
06/11/18 09:35:47 /XZLRIOu
なあ、俺は夢でも見ているのか…?
一晩に新作が2本…そんな馬鹿な話あると思うか…?

けど、事実なんだ…うはwwwwwおkwwwww俺ハイテンションで読んでくるwwww

62:ゲームセンター名無し
06/11/18 20:01:25 kac38tIr
勢いスゴス
感動した

63:ゲームセンター名無し
06/11/18 21:41:05 bGeN+HNm
ははははは、まさかそんな。新作が一度に2本なんてこのアケロワで今更そんなことが起こるわけが。


……涙出てきた。

64:ゲームセンター名無し
06/11/19 00:32:37 kGkYh/k+
              , -‐;z..__     _丿
        / ゙̄ヽ′ ニ‐- 、\  \   ところがどっこい
       Z´// ,ヘ.∧ ヽ \ヽ ゝ   ヽ   ‥‥‥‥
       /, / ,リ   vヘ lヽ\ヽヽ.|    ノ  夢じゃありません
       /イル_-、ij~  ハにヽ,,\`| <      ‥‥‥‥!
.        N⌒ヽヽ // ̄リ:| l l |   `)
            ト、_e.〉u ' e_ ノノ |.l l |  ∠.   現実です
          |、< 、 ij _,¨、イ||ト、|     ヽ      ‥‥‥!
.           |ドエエエ「-┴''´|.|L八   ノ -、   これが現実‥!
            l.ヒ_ー-r-ー'スソ | l トゝ、.__   | ,. - 、
    _,,. -‐ ''"トヽエエエエ!ゝ'´.イ i l;;;;:::::::::::`::ー/
   ハ:::::::::::::::::::::| l\ー一_v~'´ j ,1;;;;;;:::::::::::::::::::
.  /:::;l::::::::::::::::::::;W1;;;下、 /lル' !;;;;;;;;;::::::::::::::::
  /:::::;;;l:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;|: :X: : : : : |;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::
 /:::::;;;;;;|:::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;|/: : >、: : :|;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::

いや実に嬉しいことだけど お二方GJ

65:ゲームセンター名無し
06/11/19 00:38:35 Mi1hBY0l
二度あることは三度あるとよく言うが、
まさか今晩も新作が…

ところで最初の話は鳥無しだけど新規さん?

66:ゲームセンター名無し
06/11/19 01:19:24 s5FscYsu
新規さんでも古参さんでもいいじゃないか
別にトリップ「推奨」であって「必須」ではないんだから

どっちにしろ投下できる人は総じて凄いと思うよ

67:ゲームセンター名無し
06/11/19 02:32:40 BEbBS96W
なるほど。
鳥が違う、もしくは無いが実は同じ人間が書いてたって
作品も今までにあるんだろうな…

68:ゲームセンター名無し
06/11/19 10:51:01 eu4x51zm
>>67
Σ(゚Д゚;)ビクッ

69:ゲームセンター名無し
06/11/19 11:28:24 Niyozfkp
ヴィレンとかすみは一応面識あるわけだけど、それは置いといて良かったん?
しかし、丸腰で単独行動か。電車が止まらないからいいけど、
正直、いいの!?とは思ったかな。

70:ゲームセンター名無し
06/11/19 15:50:52 zET9cu0E
>>69
そういうフラグを上手く利用するのも面白いもんだwww

71:ゲームセンター名無し
06/11/19 17:26:32 Niyozfkp
>>70
いや、フラグ利用云々じゃなくて、単純に読み手としての感想な。
蛇対水神も、温和に進むにしろ対決になるにしろドッキドキだぜ。

72:ゲームセンター名無し
06/11/19 18:40:44 4FdqOCLD
ROMを務めていた>>72(22)は
その時の様子をこう語る

ヴィレンが電車に乗るまでの時間ですか?
いや……もう2 3秒かそこらで……ええ
ですから その後にヴィレンが使用するであろう数々の道具も……ええ
これから調達するということになります

ハイ 逃げられました
いえ……一気にです
こう……一気にザザって感じで……

え? 「丸腰で一人になるわけがないだろ?」って……ヴィレンがですか?
……………… ん~~~~~
やっぱりあなた達はワカってない ひとつ上の男を―

そりゃアンタ ああなっちまうとふつうは長いものに巻かれますわ 
ふつうはね
だけどこれはヴィレンのハナシでしょ

意地ですわ そう子供みたいに
一応多少冷静には考えてたみたいですけど
まァ あとはヒドいもんですわ

ROMやってるワケだから チンピラ ヴィレンの話は当然耳にはしてます
しかし見ると聞くではねェ…… 鬼気迫るっていうか……
ROMのワタシが言うのもなんですけど……
チョット頑張ってもらいたいですね トリックスターとして……

73:ゲームセンター名無し
06/11/19 21:02:49 eu4x51zm
まあヴィレン側やかすみ側からの描写がないので推測しかできないが
互いに今言い出してもいい結果にならないと踏んだとか
丸腰一人旅は環境利用闘法の上野ならムチャして銃を奪うより拘束からの離脱が優先
またそこらの雑貨を武器にすればいいし、とか?
でもノンストップになると何分先に着くかしらないが終点で探すしかないんだよね、武器

74:ゲームセンター名無し
06/11/19 21:14:29 +H4wk+SJ
感想スレってどうなったの?

75:ゲームセンター名無し
06/11/19 21:36:25 zET9cu0E
>>74
そういやないな、立てるか。

76:ゲームセンター名無し
06/11/19 22:15:20 NnFnxY+p
かすみはリアルデンデ

77:ゲームセンター名無し
06/11/19 22:18:11 zET9cu0E
無理でした…

78:ゲームセンター名無し
06/11/20 00:05:38 Q/8seUSw
必要ないだろ

79:ゲームセンター名無し
06/11/20 00:13:53 IXvfikHK
投下お疲れ様です。スレも一気に賑わいを見せて、一読者としても嬉しく思います。

ところで誰も触れてくれないから拗ねるほど悔しかったので、新作を手土産に更新報告に来ようと思ったけど
見事にキャラ被り起こしたからまあいいや。後で没スレに放りこんどきます。
携帯まとめ、最新作まで更新完了しておりますのでご利用くださいませ。
URLリンク(sr248.hp.infoseek.co.jp)

80:ゲームセンター名無し
06/11/20 00:19:44 ufexoTs1
>>78
いやあ、一週間にいっこのペースで作品投下されるなら必要あるんじゃね?

>>79
更新乙!仕事中いつも見ております!!

81:ゲームセンター名無し
06/11/20 01:01:21 dT/LKw2T
>>79
お帰りなさいませ!いつも携帯まとめ見させていただいてましたよ!

82:ゲームセンター名無し
06/11/20 01:11:32 jq9xz1p5
新作投下?携帯まとめ更新?それがどうした!!!!!!














ありがとう、愛してる。

ってニーギさんと葵さんが言ってた。

83:ゲームセンター名無し
06/11/20 04:39:22 SCD2on7m
そう言えばネオ水邪剛組書いた作者はどうなったん?
あれから何もコメントがないから、万が一問題が発生しても
連絡が取れなさそうで不安なんだが。

投下被ったけど早い者勝ちだし、どうせこの状況ならまず通るから
黙っていてもいいやとか、そういう問題じゃないだろ。
たとえ元常連書き手で名乗りたくない事情があったとしても
やっぱり何か一言欲しいと思う。

84:ゲームセンター名無し
06/11/20 08:05:43 k/LZgC9O
>>83
誰か特定できなきゃ不安か。
そしてIFを考えちゃって議論の用意を万全にしてないと恐いか。
あそこまでフラグチェックしてる人がここ見てないと思うか?

トリがないと信用出来ないか?
破棄宣言とかの事を考えないとダメか?
前向きにいこうよ・・・一度は死んだんだしさ

85:ゲームセンター名無し
06/11/20 17:01:37 vzTyDvbU
いや、現に偶然だが投下被りが発生し、後続の
書き手が一部破棄せざるを得なくなったんだから
一言もなく書き逃げというのは失礼な態度だと思うがな。

一度死んで復活したロワだから何でもありで
大目に見ようという以前に、人としての問題だと思う。
匿名掲示板である以上好意的な人間だけが
ここを見てるとは限らないしな。

そして必要以上に擁護しようものなら
>>84本人乙と言われるのがオチだぞ。

86:ゲームセンター名無し
06/11/20 17:57:03 k/LZgC9O
・・・俺、釣られた?

87:ゲームセンター名無し
06/11/20 19:41:26 ufexoTs1
>>85
( ゚д゚) ぽかーん

88:ニーギ
06/11/20 19:48:19 S4tbJsQX
だからどうしたっ!

89:ゲームセンター名無し
06/11/20 20:13:02 7U2cHEA7
何もアイデアがなくて暇だったから、生存者の性別/身長/国籍をわかる範囲でまとめてみた。
特に深い意味はない。間違ってるかもしれない。「だからどうした!」

ニーギ・ゴージャスブルー 女/155cm/日本?
結城晶 男/180cm/日本
梅小路葵 女/162cm/日本
アラン・アルジェント 男/181cm/イタリア
ヴィレン 男/179cm/ロシア
ケーブル 男/203cm/アメリカ?
エッジ(山田栄二) 男/173cm/日本
かすみ 女/158cm/日本
アルル・ナジャ 女/158cm/?
楓 男/約179cm/日本
二階堂紅丸 男/180cm/日本
シェルミー 女/173cm/フランス
リュウ 男/175cm/日本
リョウ・サカザキ 男/179cm/日本
水邪(風間蒼月) 男/約173cm/日本
日守剛 男/176cm/国籍無し
ネオ データ無し

ニーギが一番小さいのかよ!!!!!!!!!!!!!1!!1!



90:ゲームセンター名無し
06/11/20 20:15:26 FWmQCx5F
hydeよりちっさいニーギってwwwwwwwww

91:ニーギ
06/11/20 20:34:29 S4tbJsQX
だからどうしたっ!(体重36kg)

92:ゲームセンター名無し
06/11/20 20:57:27 7U2cHEA7
年齢も出してみたが時間軸や作品がバラバラで不確定要素が多すぎるので資料にもならない……。
カッコ内は年齢設定を抜粋しているゲームタイトルゲーム。

ニーギ・ゴージャスブルー:15歳(式神の城2)
結城晶:27歳(VF3)/28歳(VF4)
梅小路葵:17歳・高校3年生(VF3)/18歳・大学1年生(VF4)
アラン・アルジェント:23歳(TRF)
ヴィレン:21歳(TRF)
ケーブル:40代後半~50歳
エッジ(山田栄二):17歳・外道高校2年生(燃えろ!ジャスティス学園)
かすみ:17歳
アルル・ナジャ:16歳
楓:17歳(月華1)/18歳(月華2)
二階堂紅丸:21歳(KOF)
シェルミー:21歳(KOF)
リュウ:2の時点で確か27歳
リョウ・サカザキ:24歳(KOF)
水邪(風間蒼月):21歳(サムスピ天草降臨)
日守剛:年齢不明。資料によっては23歳説も(VF4)
ネオ :データ無し

ニーギが一番幼いのかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!1!!!121

93:ゲームセンター名無し
06/11/20 21:11:39 IXvfikHK
ニーギ15歳!?中学三年!?
うわどーしよう、思いっきり大学生とかそのくらいのつもりで書いてた!!読んでた!!
まあゲームキャラ年齢はあてにならないものだが…。

あと155cmで36kgは詐欺だと思うよ(150cmで45kgの私でさえ標準体型扱いなんだぞー)

94:ゲームセンター名無し
06/11/20 21:14:26 ufexoTs1
ネオは確か24歳だったと思ったぞ

95:ゲームセンター名無し
06/11/20 21:40:33 dT/LKw2T
>>93
よくある話だ、特にゲームの女キャラの設定は体重設定が異常なことが多い。
あとニーギ、世界を移動しまくってるから実年齢以上に色々経験してるような気もします。
がアルファ設定は色々突っ込んだらどつぼなんでこの辺で。

…彼女の骨ってプラスチックなんだよなぁ。その分軽かったりするんだろうか。

96:ゲームセンター名無し
06/11/20 21:43:27 7U2cHEA7
おお、ネオは24歳か……。資料が見つからなかったので嬉しい。

>>93
>>91が気になったので体重、3サイズもわかる範囲で調べてみた。
ニーギ・ゴージャスブルー:155cm 36kg B?W?H?
結城晶:180cm 79kg B115W90H94
梅小路葵:162cm 47kg B83W53H86
アラン・アルジェント:181cm 76kg
ヴィレン:179cm 69kg
ケーブル:203cm 156kg
エッジ(山田栄二):173cm 60kg B88W59H72
かすみ:158cm 48kg B89W54H85
アルル・ナジャ:158cm 46kg B80W58H80
        158cm 53kg B86W60H85(なぜか二種類ある)
楓:約175cm 約58kg(月華1)
  約179cm 約60kg(月華2)
二階堂紅丸:180cm 68kg(70kg?)
シェルミー:173cm 68kg B92W63H87(H90?)
リュウ:175cm 68kg B112W81H85
リョウ・サカザキ:179cm 68kg(75kg?)
水邪(風間蒼月):約173cm 約60kg(約64kg?)
日守剛:176cm 66kg B105W79H85
ネオ :データ無し

これこそ「だからどうした!」



97:ゲームセンター名無し
06/11/20 21:54:57 S4tbJsQX
シェルミーカワイソス

98:ゲームセンター名無し
06/11/20 22:40:55 Q/8seUSw
リスト見てて思い出したが、楓とリョウどうするんだろうな…
長文二人以外に扱いきれそうな人間がいないんだけど
俺がやってやる!って人出てくるかな…

99:ゲームセンター名無し
06/11/20 23:55:44 ufexoTs1
リストだぁ…?一体以下略


100:ゲームセンター名無し
06/11/20 23:59:38 POxB5+d4
みんなええ体してるのう

101:ゲームセンター名無し
06/11/21 00:02:54 Q/8seUSw
>>100
ウホッ

102:ゲームセンター名無し
06/11/21 00:40:30 Xh+9hxPF
ヌィーギが15歳? 葵のほうが年上?
かすみと山田がタメ? ケーブル2m超え?
シェルミーより楓や剛の方が体重軽い?
山田のウエストが59cm?

またまたご冗談を・・・・

展開予想が膨らみまくるな

103:ゲームセンター名無し
06/11/21 00:52:44 UmdPhmkd
ぶっちゃけ男連中も、バランス満たしてそうなのは晶とアランぐらいのもんだ
あの筋肉ならもっとあってもいいと思うが、あまり野暮なことは言いっこなしだな

104:ゲームセンター名無し
06/11/21 04:46:46 7E8o43aB
ここまで生き残った奴らなんだ!夢が詰まってるZE!!

105:ゲームセンター名無し
06/11/22 07:51:53 BDMasWgg
新作書いてる人いる?

106:F(ry
06/11/22 23:09:25 MtmTX3lJ
すげえ書きたいネタできたんだが俺かいていいものか。
書く人がたくさんいるならあまり俺ばっかりってものあれだが、いいかな?

107:ゲームセンター名無し
06/11/22 23:15:50 TQDeTtER
いいとも━(゚∀゚)━!!
遠慮なさらずにボンッ ドサッ コロコロっと書いて下され!

108:ゲームセンター名無し
06/11/22 23:45:19 wnDZ4Tuj
wktkwktk

もしよろしければ、使用キャラをしたらばにて教えてくれると嬉しいっす。
もしかしたら、ネタが出来たら初参戦させていただくかもしれないので…。
でも、俺のことはお気になさらず。

109:ゲームセンター名無し
06/11/23 02:50:57 lbq5LyCn
断片的に書きたいネタはあるものの、
それまでの話が思いつかず…

ところで生存者も残り少なくなってくると、
書きたいネタもキャラも被る可能性が格段に高くなってきている。

前もって「これ書きたい」とすり合わせをしとけば
スムーズにはいくが、待たせる時間がロスとなり
過疎化を引き起こした要因にもなった。
一方匿名のリレー小説なんだから投下ぎりぎりまで
何もかも伏せておくべきという考えもあると思う。
そうなると新作が来た時の喜びは計り知れないが
予期せぬ投下に考えてたネタを白紙に戻さざるを
得なくなり、その分完結への道のりが遠ざかる。

或いはごちゃごちゃ余計な事は考えても無意味で、
たとえ行き当たりばったりでも要は完結さえ
すればいいんだという意見もあるだろう。

完結へ向けてこの先どう動くべきか、1人で
考え込んでも結論は出ないから、皆の意見が聞きたい。

110:ゲームセンター名無し
06/11/24 01:45:43 Bo1eHyFQ
連休中には一本ぐらい来るかな?

111:F(ry
06/11/24 15:48:48 QDiZRZtT
い、いつが連休なのか…教えてくれないか…割とガチで…(修羅場モード)

書くけどね!

112:ゲームセンター名無し
06/11/24 16:24:07 ADCwHXl1
したらばが止まっているけど、
当面議論の必要はないのかな…

113:ゲームセンター名無し
06/11/26 02:59:21 WuvPTvBm
保守代わりに明日投下できるといいなあ…

114:ゲームセンター名無し
06/11/26 17:39:49 WuvPTvBm
今日12時ごろ投下

115:ゲームセンター名無し
06/11/26 18:04:26 XiFnxMXq
おらっしゃー!

116:ゲームセンター名無し
06/11/26 19:39:24 IZIiq8Tc
もしかして新作投下以外の雑談禁止、
投下まで登場キャラは明かさない、また投下の
メドが立つまで投下予告自体も控える、
今大体こんな流れになっているのか?

117:ゲームセンター名無し
06/11/26 21:44:23 WuvPTvBm
>>116
い、いや、新作というよりも保守代わりの外伝を書いたので…このスレの新作に影響が出ない程度の…

118:ゲームセンター名無し
06/11/26 21:47:51 sYSHq7Zy
このスレって予想展開NGなの?

119:ゲームセンター名無し
06/11/26 22:03:22 udbXqpEo
>>118
別にかまわないんじゃないかと思う。
以前は展開予想は書き手のプレッシャーになるから良くないとの世論があったことがあったんだけどねぇ。
嫌がる書き手がいるならば別だけど。

120:ゲームセンター名無し
06/11/26 22:19:25 zL+08spx
ここで書いていいのか

121:ゲームセンター名無し
06/11/26 23:15:24 +HMnOn4v
そろそろかな

122: ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:02:42 WuvPTvBm
では、投下します。
1日目の外伝的なお話ですので、フラグとか気にしないで読んでくださいね?

では、とある支給品の外伝ですが、どうぞ。

123:ゲームセンター名無し
06/11/27 00:03:35 BxhCtq/9
悪趣味な祭典の前夜、彼─アーデルハイドは父ルガールに連れられてある一室に連れて行かれた。
私の他にも、この祭典の重要人物と思われる外道達が数人、彼の後を付いていく。
厳重なる警備がなされる部屋のロックを解除する彼の父。
暗闇に包まれた部屋に光が当てられる。
そこには様々な武器が置いてあった。
禍々しい呪われた銃、神々しい光を放つ剣。ロケットランチャー。
中には蠢く正体不明の袋まである。
彼の父は外道達に説明する。
『この中の物は祭典をより美味しくする、まさにスパイスです。』
『皆様のご協力により、古今東西、様々なスパイスが手に入りました』
と。
そして彼の父は各武器の説明を始めた。
武器の使い方、性能、歴史。そして出資者の話。
正直、アデルは聞いていても面白くもなんともなかった、むしろ反吐がでる気分になっていた。

「さて、このスパイスも中々面白いものでしてな」
紹介する武器も半数ほど終わった頃だろうか。父は何の変哲も無いラジカセを手に取った。
「このラジカセはSONY純正の名機、発売後20年たった今でもキチンと綺麗な音がでます。オークションにだせば中々の高値が付く事でしょう」
会場から落胆の溜息が聞こえる。
武器の中には参加者を絶望の淵に落とす”ハズレ”と言う、武器にならない、悪趣味なものも混ざっている。これもそのうちの一つだろうと、私も含め誰もが思った、
父と、一人の男を除いて。
「ふふふっ…これもゲームを面白くする”はずれ”とお思いでしょう。しかし!ここにいるウォン氏の協力を得て、このラジカセは素晴らしい兵器となったのです!」
ラジカセが置いてあった場所の奥の布を引っ張る父。
下種どものどよめきが歓声に変わる。
布に囲まれていたせいで気づかなかったが、布の奥には強化ガラスに囲まれた四角い空間があった。

その中に、少女が展示されていた。

この倉庫に置かれる”物”の一つとして囚われた。
肩翼が引きちぎられた、羽の生えた少女が物として展示されていた。

彼女は虚ろな目で、天井しかない空を見ていた。

124:ゲームセンター名無し
06/11/27 00:04:32 WuvPTvBm
ACBR外伝

act024.5

     はーぴーのうた

125:はーぴーのうた
06/11/27 00:05:16 WuvPTvBm

【─一日目 VIPルーム大会場】
『KOFではアテナの犬だった彼が、中々どうして─』
『まさか病死者がでるとは…結核菌に1億でもかけて見ましょうか?』
『お兄様!あの赤頭巾の子とは私友達になれる気がするんですの!!』
祭典の始まりが終わり、最悪が始まった。
スタートして15分経過。既にこの馬鹿げたゲームの被害者がチラホラと出始めている。
一人、また一人と映し出される映像。
その巨大なスクリーンに映し出される映像。
…吐き気がする。
そう、昨日もそうだった…。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
─『では、これの威力をVTRで見てもらいましょうか』
父、ルガールが指を鳴らし、それを合図に巨大スクリーンが下りてくる。
そこに写る白い空間。耳を塞ぐ父、銃を構えた父の私兵達。
その中心で歌う少女、そしてボリュームを下げてても分かる彼女の強烈な歌声。

30秒程たっただろうか、VTRの中の父がもういい、と言わんばかりの表情と共に私兵に合図を送る。
その合図を切っ掛けに私兵達が彼女を乱暴に押さえつける。
そして顔を押さえつけ、彼女のたった一つの武器を封じるためだろうか…
彼女の、舌を…ハサミで切った…
彼女は断末魔にも似た叫び声を上げ、鮮血が止まらない口を押さえ、その場にうずくまる。
鮮血が滴り落ちるその彼女に、私兵たちは追い討ちをかけるかの如く彼女を押し倒し…

そこで映像は止まった──

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


126:はーぴーのうた
06/11/27 00:06:00 WuvPTvBm

「──様、お兄様!」
「ん…ああ、ローズか…」
妹の声で我に帰る。
「んもう、折角盛り上がってまいりましたのに…ほら!アレが八神庵ですのよ!今回の優勝候補の!!」
スクリーンに映し出される赤髪の男。その男の出現に、妹は声を荒げている。
妹が熱を上げれば上げるほど、アデルの興味は冷めていき、再び有翼の少女の事を再び考えてしまう。

『─こんな所で何をやってるんだ!早く彼女を助けに行かないか!』
『─何を言っている。彼女はもう手遅れだ。今更助け出した所でそれは偽善にしか過ぎない。』
『─うるさい黙れ!』
『─あんな死にかけの少女一人助ける暇があるのならこのふざけた大会を止めて見せないか。』
『─黙れ!!少女一人助けられなくてこの大会が止められるとでも思っているのか!!』

「─しかし…今回の優勝候補が何故あんな女と共に行動なんて…お兄様?どちらへ?」
妹が彼に何か語りかけている。しかしその声もアデルには聞こえなくなっている。
大会が開始し、熱気覚めやらぬ人ごみを抜け、気づけばアデルの身体は彼女の元へと向かっていた。



127:はーぴーのうた  5/24
06/11/27 00:10:56 BxhCtq/9
【─VIPルーム大会場 → 武器庫】


「…警備も無し…か。」
全ての支給品が配り終わられ、役目を終えた武器庫。
価値のある物が無くなったここに、警備など必要ないと言う事なのだろうか。
「…ここには価値がある物はない…と、言いたいのか…?」
名も知れぬ少女に対するこの仕打ちに沸々と怒りが沸いて来る。
こんな馬鹿げたゲームの支給品として連れて行かれて
社会復帰が不可能な程身体をボロボロにさせて
客の興味を引かせるためだけに見世物にされて
最後には監視する価値も見出さずに
一人、逃げる事も許されず…

「くそっ!まだ中にいるんだぞ!少女が!!」

警備の無い武器庫の中に入る。
馬鹿げたゲームに翻弄された悲劇の少女を助けるために。

128:はーぴーのうた  6/24
06/11/27 00:12:14 BxhCtq/9

【武器庫】

重い扉を押し開ける、音も無く開く扉、それにあわせ、暗闇に一筋の光が差し込む。
懸命に赤い目を凝らしてはみるが、照らし出された先に少女の姿はなかった。
彼女の証を呻きのひとつ、身じろぎのひとつたりとも逃すまいと、彼は全五感を振り絞る。
無機質なコンクリートの床に響く自らの靴音が邪魔をする、一歩、また一歩と歩くたびに彼女の気配を消すような気がした。

それにしても、この雰囲気が懐かしく感じる。そう、幼いころを思い出す。

父がよくする、マフィアやギャングとの取引の現場はこんな感じだった。
例えばうらびれた港の倉庫の中。銃器が発する鉄の匂い。重苦しい雰囲気。そしてそう低く無い頻度で転がる「邪魔者」の屍骸から漂う酸敗した脂肪の――。

「――っ!」

違和感を感じ、アデルははっと顔をあげる。。
今この現場にはあの時と違って、そう多数の銃器は置かれていなかったはずだ。だとすればこの決して薄く無い鉄の匂いの出所は─

──血──!?

木箱と木箱の間に少女はいた、手首に鎖を付けられたまま”物”として。少女はそこにいた。
あの鉄の匂いの元となったのだろう、舌を切られた時に出したと思われる出血で赤く染まった服を着た彼女が。
ボロボロになった片翼を弱々しく垂らし、ピクリとも動かない彼女に駆け寄る。
「っ…!!おい!しっかりするんだ!!」
口元に手をかざす。かすかだが吐息を感じる。それについてはホッと息をなでおろす。
ただかなり衰弱しているのだろう、アデルの声にまったく反応を示さない。
「…もう大丈夫だからな、絶対助けてみせるからな!!」
彼女を縛る鎖を外し、アデルは彼女を抱きかかえる。
この馬鹿げた大会を止められないのならば、せめて彼女だけでも助けてみせる。
それが父を止める事ができなかった彼の、せめてもの抵抗だった。


129:はーぴーのうた  7/24
06/11/27 00:13:09 BxhCtq/9
【会場内、客用個室】


『(…ここは…?)』
─浅い、浅い眠りから目を覚ます。
そこにあったのは、明るい光、見慣れない天井、美味しそうなスープの匂い、真っ白いワンピース、そしてふかふかのお布団。
目を瞑る前の風景を思い出す。暗く、薄汚れた天井、すえたカビと血の匂い、自分の血で赤く染まったワンピース、そして冷たい無機質な石の床。
彼女は思う。ああ、私はとうとう天国へいっちゃったんだと。
しかし、引きちぎられた片翼と、声を出せなくなった彼女の舌、そして体中の痛みにより、まだ生きているのだと気づいた。
「あ、目を覚ましたのか!よかった…」
突然の声にビクッと身体を振るわせる少女。逃げ出そうとベットの端へと後ずさる。
「…あ…か…!?」
また酷い事をされる、そう思うとも今の彼女には声を上げる事も、抵抗する事も出来ずただ震える事しかできない。
「…!!!」
声の主は彼女に近寄り、手を伸ばす。また行われるであろう惨劇を想像し、彼女は背中を丸め、ぎゅっと目を瞑る。
「…怖かっただろう…もう大丈夫だ…」
目を瞑り、ガタガタと震えている彼女の髪をそっと撫でる声の主。
その手は、とても冷たかったが、とても優しく、そしてとても暖かかった。
「私の名前はアーデルハイド、アーデルハイド・バーンシュタイン。君の、味方だ…」




130:ゲームセンター名無し
06/11/27 00:26:31 Nb14LVTl
恋の予感支援

131:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:42:02 yCFde6pw
「─そうだハーピー、スープを作ってみたんだ。飲むかい?」
アデルの問いかけにハーピーと呼ばれた少女は手に持ったスケッチブックにペンを走らせる。
そしてアデルに向けてその内容を見せる。
その書かれた内容にアデルは微笑を浮かべ、キッチンへと向かっていった。

彼はハーピーがしゃべれない事を察知していて、スケッチブックとペンをあらかじめ用意していた。
ベットから起きてすぐに筆談という訳にはいかないと思っていたのだが、人間ではないからなのだろうか、すぐにペンを走らせた。
彼女と筆談で会話して分かった事。彼女がハーピーという名前である事、彼女がこの世界の住民では無い事。
そして、羽が生えている以外は歌とおしゃべりが好きな普通の女の子であること。
『…普通の少女なのに…』
スープを皿に注ぎながら、そんな普通の女の子をこんな目に合わせた父に、そしてそれに協力して楽しんでいた会場の皆に、アデルは行き場のない憤りを感じていた。


「…ハーピー、出来たよ。こういうの作る事はあまり無いから味は保障できないが。」
アデルはハーピーにそっと先ほどスープを注いだ皿とスプーンを手渡す。
具はニンジンとキノコしか入っていない、簡単なコンソメスープだが、とても良い香りがする。
ハーピーはそれをスプーンですくい、口に入れる。
「………っ!?!」
口に入れた瞬間、ハーピーはもっていた皿とスプーンをベットに落とす。
そして声にならないうめき声を上げ、顔色を変えて苦しそうに口を押さえる。

132:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:44:37 yCFde6pw
「は、ハーピー!ど、どうしたんだ!?」
アデルが切羽詰った声を上げた。何か彼女に食べさせてはいけないものを食べさせてしまったのかもしれない。
慌てているアデルを目で制すると、彼女は左手で口を抑えたまま震える右手でペンを走らせた。
『大丈夫です、スープが熱かっただけです』
そう書かれたスケッチブックを見せて、心配をかけまいと思ってか、ハーピーはどこか無理のある笑顔を見せる。苦しげな笑顔に、アデルははっと息を呑んだ。
「…!ハーピー!ちょっと口をあけて見せてくれ!」
ハーピーの口の中を覗き込む。その中にあったものは、血は止まっているものの、生々しい赤の傷口。
こんな状態であんな熱い、塩気があるコンソメスープなど飲んでしまえば激痛が走るのは当然の事だった。
何故、私は気づかなかったのか。後悔の念が彼を襲う。
「…すまなかった、痛かっただろう…」
アデルの言葉に対して、ハーピーは申し訳無さそうな顔をする。
『ごめんなさい、折角私のために作ってくれたのに』
そう書かれたスケッチブックが、余計にアデルの胸を締め付けた。
「そんなのは良いんだ、君の体が治ったら、私のスープでよければ、いつでも作ってあげるから」
そういいながら、ハーピーの頭を軽くなでる。
(…しかし、ものが食べられないとなると…)
本当ならばこの大会が終わる数日間、ハーピーをこの部屋に匿っておこうと考えていた。
そしてほとぼりが冷めたころ、ハーピーを病院に連れて行けばいいと。
しかし何も口にできないとわかった今、ここに長時間滞在させるのは無謀すぎる。
どこかきちんとした医療機関に連れて行かないといけない。
この会場にもそういった医療機関はあるものの、父やら関係者にばれてしまっては元も子もない。
ならば…

133:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:45:53 yCFde6pw
「ハーピー、私と共に今すぐここを出よう。」
先ほどのスープの激痛がまだ残るのか、口を押さえるハーピー。その口を押さえる手を、アデルはそっと握る。
いきなり手を握られたうえ告白にも似た言葉を受けたハーピーは、血の気がうせて青白くなった頬をほんの少し染めてアデルの顔から目をそらした。
「本当はここに数日間隠れていて貰おうと思ってたのだが…ここに居たのでは君は死んでしまう。君を、ちゃんとした医療機関に連れて行く」
ここから出れるかどうかはある種の賭けだが、ハーピーを助けるにはそれしかない。アデルはそう思っていた。
この施設内にも医療機関はあるが、当然のことながらすべて父の息がかかっている。仮に命が永らえたとしても、ハーピーが元の世界へと戻る事は永遠になくなってしまうだろう。
「目を覚ましてすぐだから辛いかもしれないが、早くでた方がいい。…立てるかい?」
「………」
その問いに対し何かを思い出したのか、悲しそうな顔をしてハーピーは首を横に振った。
「どうしたんだい?…歩くのも辛いかい?」
ハーピーはもう一度首を振ると、つま先だけを覗かせていた長いワンピースをそっと捲った。
すらりとした白い足のアキレス腱を指差すハーピー。一見するとよく分からないが、良く見てみれば両の足首に切り傷が入っている。
「………っ!?」
動揺を抑えられず、アデルは両手で口を押さえた。
傷口が目立たなかったのは鋭利な刃物で両断されたからだろう。その目立たなさに反して、傷はよほど深いものだと知れた。
「舌だけじゃなく…靭帯も、切られたのか…?」
彼女は伏目がちな目に涙をためたまま、ゆっくりと、首を縦に振った。

134:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:47:45 yCFde6pw
「…ハーピー!」
「…☆△〒○■$!?!?!!!!」
アデルは彼女のやせ細った細い体をギュッと引き寄せる。
突然のアデルの行動にハーピーは軽く動揺し、ペンを走らせる。
『ちょ、ちょっとまってください!わたし、まだこころのじゅんびが…!』
「大丈夫、安心してくれ…」
『だ、だいじょうぶじゃないです…!そ、その!あ、アデルさんのこと信用できるいいひとだとおもいますけど、わたしたちであったばかりですし…』
「そんな事関係ない、私に任せて…さあ…力を抜いて…」
「…」
ハーピーは少し考えた後、コクリと頷き力を抜く、そしてアデルにすべてを委ねる。
「痛かったら、すぐに言ってくれ…」
やさしく微笑むアデル。その笑顔が直視できなくなり、ハーピーは目を瞑る。

彼はそんな彼女を抱き上げ、そして…


「よっ…っと!」
背中におぶった。
『…あれ…?』
「ん?どうしたんだ、ハーピー?」
そしてそこで彼女は気づく、自分の勘違いに。
『えっと…その…なんでもありません…』
顔を真っ赤にしてスケッチブックを見せるハーピー。
「…ん?そうか?それならいいんだが…さあ行こう、外に出るために!!」
そんなハーピーを尻目に彼女を抱きかかえ、外に出るための第一歩を歩むアデル。
希望に、望みに、二人とも満ち溢れていた。



─満ち溢れていたのだ。


135:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:49:31 yCFde6pw
【─VIPルーム】

『ほう…ロシアのチンピラマフィアがあの大物を食ってしまうとは…』
『カルノフですか、彼も堕ちたものですなぁ?』
『神月財閥のあの少女がいとも簡単に…くっくっく…たまらないですなあ…?』
朝蝿暮蚊、その言葉が似合う愚者どもの退屈な羽音。
「ウォン様、少しお話が…」
その羽音をかきわけ、黒服の男がメガネを掛けた東洋人に耳打ちする。
「ほう…彼があの”実験動物”を…」
「どうされますか、ウォン様」
ウォンと呼ばれた東洋人の男は、あごに人差し指を当て少し考えるしぐさをする。
「別に”アレ”自体は破棄するつもりでレンタルさせたのでね、どうでも良いのですが…外に出されてしまうのは困りますねぇ…」
「どうしましょうか、もしよろしければ我々が…」
本来なら部下に任せ、”実験動物”ごと消してもらうのが一番楽なのだが…
「いえ、今回は私がでますよ。…挨拶ついでにね。あなたは下がっていてください。」
相手は主催者たるルガールの息子、そんな事はできない。
そう伝えるとその黒服の男は再び人ごみの中に消える。
「彼は父とは違い明哲保身…道理をわきまえた話が分かる方だと思っていたのですが、残念ですよ。」
そうつぶやき、ウォンは烏合の集をかきわけ、会場を後にした。
彼に改めて挨拶をするために、そして”アレ”を”破棄”するために。


136:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:50:47 yCFde6pw
【客用個室→通路】

「ハーピー、もう少しで出口だ。あと少しだけ、我慢できるかい?」
背負ったハーピーに声をかけると、返事の代わりに可憐な笑顔が返ってきた。
にしてもこの施設は恐ろしく広い。アデルたちが部屋を出てから、かれこれ10分近くは歩いているというのにまだ出口の光は見えない。
「早く外に出て、適当な病院で治療して……君を元の世界に帰してあげないと」
ハーピーの温もりを背に感じながら、アデルは返事の無い会話を続ける。そうすることが彼女との絆を深めることになるような気がしたからだ。
「っ!?」
だが、そんな暖かな時間をほんの小さな風切り音がさえぎった。鋭利な何かが、彼をめがけて投げつけられたのだ。
「ちぃ!誰だ!?」
アデルは背中人一人背負ってると思えない機敏な動きで射線を外すと、油断無く相手がいると思しき方向に目を向けた。
「…ほう。拙者のクナイを避けるとは…お主、中々の手馴れと見た」
暗い壁に溶け込むかのような漆黒の影が、壁から湧き出してくる。
「我が名は如月…如月影二!!如月流忍術の使い手、そしてこのフロアの守り人!!」
背の少女の無事を確認すると、アデルは柳眉をひそめて名乗りを上げる影を見つめた。
「雇われ傭兵か…!」
傭兵という言葉に、どうやら忍は気を害したらしい。黒いマスクの下の口を歪め、彼はアデルの言葉を正面から否定した。
「否!我は傭兵など無粋な者にあらず!!腕を買われて雇われた忍者也!!」
もっとも、アデルにとっては相手の気分や立場などどうでもよいことだったのだろう。軽く伏せられた赤い目がかすかな苛立ちを宿す。
「小僧!黙って去るなら深追いはせぬ!しかし!これ以上進むと言うのな―――ぐふぉ!?」
青年に向けられた誇り高き忍びの口上は、彼の足を襲った鋭い衝撃に中断を余儀なくされた。

137:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:53:45 yCFde6pw
「邪魔だ、そこをどけ!」
自ら放った衝撃波を追いかけ滑るように移動したアデルは、体制を崩した影二の足をめがけ槍のような鋭い蹴りを繰り出した。
狙うは正確に膝の正面。力がほかに逃がせない分、当たれば確実に膝間接を破壊する。
「ぐ!」
アデルの本気の殺気が込められた蹴りを、影二は鎖帷子に守られた脛でかろうじて受けた。
もっとも完全にその勢いを殺すことは叶わず、彼のアデルに比べて幾分小さい身体は造作も無く吹き飛ばされる。
「き、貴様!口上中に」
受身を取って飛びのき、礼儀知らずの青年を咎めかけた彼の口が引きつる。
一流の忍びである影二ですら驚嘆を禁じえないほどの速さと静かさで、アデルは既に己の蹴りの射程内に影二をおさめるまでに迫ってきていた。
影二にガードの姿勢をとる暇も与えず、アデルの足が風を切って跳ね上がる。
「ぐぶぁ!ひ、卑劣な――」
真空の刃で影二の腹を、その爪先で彼の顎を打ち抜いたアデルの足は、間髪いれず鉈のような重さで振り下ろされた。ようやく彼の足を防ごうと上がってきた影二の交差させた腕を、そのガードごと打ち崩す。
「ぐがぁ!」
小手に守られているはずの決して柔でない影二の腕で、みしりと身体の芯に響く嫌な音が響いた。
「…ちょ…!!」
本能的な危険を感じた影二が後ずさる。後ずさるその胸倉を、アデルの手は逃さなかった。

138:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:55:58 yCFde6pw
本能的な危険を感じた影二が後ずさる。後ずさるその胸倉を、アデルの手は逃さなかった。
己の下に引きずり込んだ獲物に、彼は無言のまま容赦の無い蹴りと拳の雨を降らせる。止めとばかりの一撃に鳩尾を前蹴りで痛打され、影二の身体は再び宙を舞った。
「ぐ……ぐがぁ!」
哀しいかな強者にめぐり合えたという武人の喜びはとうに消し飛び、代わりに獣の本能が警鐘を鳴らしていた。
あれは捕食者だ。いかな努力とて越えられぬ絶対の壁。決して敵対者として関わってはいけない。
「流影……」
それでもけなげに振り上げられた両腕は相手を打ち据えるためのものではなく、再び目前に迫ってきたアデルからの気弾を返すためのものであった。
攻撃としては期待できなかろうが、放った飛び道具をそのまま返されるということはいくらかでも相手の意表をつくことになる。追い詰められた側としては決して悪い選択ではなかったであろう。が、
「な!」
「ふっ!」
彼の淡い期待はアデルの腕に展開された翠緑の光に即座にかきけされた。
己の気を受け止め、さらに増幅したアデルの腕が胸の前で大きく開かれる。懸命にアデルの肩にしがみ付くハーピーの、その血塗れた片羽と白いワンピースが煽りを受けてばさばさと広がり、その姿はあたかも光輝背負う天使のように。
「おおおおおおおおおっ!」

「ま、…まて…っ!」

制止の声もむなしく、すさまじい衝撃とともに影二の意識は漂白した。


139:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:56:36 yCFde6pw
【通路→会場内ヘリポート付近】


『あの~…さっきの人殺していないですよね?』
優しいハーピーには、先ほど倒した忍者が気になって仕方がないのだろう。そう書かれたスケッチブックをアデルの前に差し出す。
「大丈夫、手加減はしておいた。気を失っているだけだろう。それより…」
彼らの面前に聳え立つ、頑丈にロックが施された巨大な扉、そしてその前に置かれた小型ヘリコプター。
アデルは到着したのだ、目的地に。いや、目的地に行くためのスタート地点に。
「私はロックを外してくるから、ここで座って待ってくれ。」
ハーピーをヘリコプターの助手席に乗せる。片羽となったとは言え、空を飛ぶための翼がただでさえ狭いコックピットを狭くする。
「すぐ戻るから、そこで待ってて」
そうハーピーに告げると、彼は鍵を外しに扉まで駆け出した。

140:代理 ◆CFbBJSZQHE
06/11/27 00:58:17 yCFde6pw
【─通路】


「う…うう~ん…」
先ほどの圧倒的な戦いから数分、如月影二は真っ白な世界から現実へと目を覚ます。
「せ、拙者は…!?不覚!!」
先ほどの一方的な敗戦の結果を思い出し、膝を突き項垂れる。
「フロアの守人が人を通すなど…夏炉冬扇…本当、役に立ちませんね」
うなだれた彼の真後ろから、突然声が聞こえる。
「…なっ!?」
気配はまったく感じなかった。気配を消したとかそんなレベルではなく、突然その場に現れた、そんな感覚が如月影二を襲う。
「貴様!何者だ!名をな…」
名を名乗れ、そう言おうとしたその瞬間、彼の体が壁に叩きつけられる。
「ぐぶぁ…」
何をされたのかすら分からない、気づいた時には如月影二は壁に叩きつけられていた。
「何が…起き…」
最後まで言い切る事無く、如月影二の命は事切れる。
「ここにはジャパニーズ忍者がいると聞いて心わいたのですが、外剛内柔…見掛け倒しでしたね…」
そう吐き捨て、彼は歩みを進めた。


141:はーぴーのうた  18/24
06/11/27 01:01:02 BxhCtq/9

【会場内ヘリポート、自家用機メンテナンスルーム】
「ハーピー、待たせてしまってすまない。」
厳重なる扉のロックを外し、ハーピーが待つヘリコプターのドアを開けるアデル。
彼の顔を見て、安心したかのように天使の笑顔を向けるハーピー。
彼女の頭をそっと撫で、コクピット内に乗り込む。
「さて…」
操縦席の電気系統のスイッチを入れる、ドルルル…という激しい音と共に上部にあるプロペラが回りだす。
「よし!かかった!」
エンジンがかかった事に小さく拳を握る。後は出発をするのみ。
「ハーピー、少しゆれるが我慢をし…」
我慢してくれ、そう伝えようと後ろを振り向き、愕然とするアデル。

彼女が、いないのだ。
「…!?ハーピー…!?」
エンジンを切り、ヘリのドアを開け外にでる。
靭帯を切られ、翼をもがれた彼女。自分から外にでれるはずがない。
アデルに冷たく、激しく嫌な予感が過ぎる。
「ハーピー!どこだ!!」
狭い出口内に鳴り響くアデルの声。


「ほう…”これ”の名前はハーピーというのですか」

142:はーぴーのうた  19/24
06/11/27 01:02:03 BxhCtq/9

アデルの叫び声にも似た木魂が静まり返った頃、ゴスッという鈍い音の後、彼の後ろから少し高めの声が返ってくる。
「誰だ!!」
声のする方向に振り向く。
そこには、長髪の東洋人─ウォンが立っていた。
彼の横にはハーピーが倒れていた。先ほどの鈍い音は腹部を蹴られたのだろうか、体と羽を丸め、苦しそうに震えている。
「…っ貴様は…ウォン!?」
「これはこれは、私の名前を覚えて下さっていたのですか。アーデルハイト君。」
細い瞳がアデルに向けられる。眼鏡越しでも分かるその深い闇。
「しかし…君がこんな事をする人間だったとは…別に"コレ"自体には価値はありませんから、どうされても構わないのです、が!!」
そう言い放ち再び倒れているハーピーを石ころか何かのように蹴転がす
石ころのように転げるハーピー、その姿はアデルの中にある『殺意』という感情を燃え上がらせるには十分な行為だった。
「なら!ハーピーから離れろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
叫ぶや否や、ウォンに向けて駆け抜けるアデル。
「やれやれ…人の話は最後まで聞きましょう。」
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
その勢いのまま、憎しみの元凶の体をつかもうと、渾身の力を込めた左腕を伸ばす。
「!?」
だが、その左腕は空を切った。
「風声鶴唳…こう見えても私は臆病でして、些細な事も気になってしまうんですよ…」
本来なら眼前にいるはずのウォンが背後にいた。高速で動いたというより、元々そこにいたかのように平然な態度で先ほどの続きを話しながら。
「ちぃ!!」
何故自分の後ろに?そんな疑問が彼の頭を過ぎる。が、今はそんな事を考えている時ではない。そう自分に言い聞かせ二の撃を与えんと足を振り上げる。
が、再びその攻撃は空を切る。

143:はーぴーのうた  20/27
06/11/27 01:04:03 BxhCtq/9

「確かにこれ自体はどうでもいいのですが…外に連れ出そうとするのは感心しません。どこから足が付くのか分かりませんから…ね」
気づいた時にはウォンはハーピーの真横にいた。アデルを挑発するかの如く、ハーピーに三度目の蹴りが打ち込まれる。
「…貴様!!ハーピーから離れろと言った筈だああああぉっ!!」
アデルの左手に赤い闘気が付加される。怒り、憎しみ、そのようなネガティブな感情が篭ったその左腕は、今まででの攻撃の中で一番のスピードを出しながらウォンに向かっていく。
「やれやれ…本当、話を聞かない愚かしい人だ…」
かぎ爪のごとく開かれた赤い左手がウォンの体を捕ら「   
                                     」える。初撃の時とは違い、今回は手ごたえがあった。


「うううううおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

掴んだ勢いを殺さない内に、

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

怒りと憎しみを込め、

「はあああああああああああああああああああああ!!」

その体を、

「だあああああああああありゃあああああああぁぁぁぁぁあ!!!!」

壁に叩き込む。


144:はーぴーのうた  21/27
06/11/27 01:07:49 BxhCtq/9

ドゴォ!と言う激しい音と共に揺れる空間。


なおも力を緩めずに壁に押し付ける。
線を覆うように舞い上がる土煙。
手から伝わる内臓が破裂する特有の感触。
それに伴う鉄の匂い。



そして、舞い散る一枚の羽。



「………え?」



土煙の中に、1枚、又一枚と、羽が舞い上がる。



「は…ね…?」


145:はーぴーのうた  22/27
06/11/27 01:08:50 BxhCtq/9

「いやあ、凄い凄い、こんな物を食らってしまってはまさに七花八裂…いかな私とはいえバラバラになっていたかもしれませんねぇ。」
"壁に叩き込んだはず"の者の声が後ろから聞こえる。
「あ…あ…?」
後ろを振り向く、そこには"壁に叩き込んだはず"の”彼”が立っている。
「何が起こったかわからないと言った顔をしていますねえ…?」
土煙が引いていく。
「冥土の土産に教えてあげるのが筋…と言いたい所ですが、私に貴方を殺す気はありません。ですから教えて差し上げるわけにはいきませんねぇ、残念ながら。」

そこにあったのは、飛び散る翼、視線を隠す土煙、破裂した内臓の血の匂い。


「うそ…だ……」


再び赤く染まったワンピース、そして──



「うあ…あ…ああ…あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ああ…あああああ…」


慟哭が、響く。


146:はーぴーのうた  23/27
06/11/27 01:11:19 BxhCtq/9

「─しかし…ここまでグチャグチャにするとは…可愛そうに…」
ハーピーの成れの果てを見ながら、悲しみの言葉を投げかけるウォン。言葉とは裏腹に口元を吊り上げる。
「…貴様が…」
「…おや?どうかしましたか?」
「貴様が殺したんだろうがぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
行き場のない悲しみが、再び彼を動かす。
「おやおや?これは愚なる事をおっしゃる…」
その様子を見つつ、右腕を前に出すウォン。
「あなたの言葉はまるで得手勝手…」
右腕に灰色の闘気が集中し、その気は剣に形をかえる。
「責任転嫁…彼女を殺したのは…」







「貴方だ!」



剣となった灰色の闘気がアデルに向かい放たれる。

それが─彼を─



147:はーぴーのうた  24/30
06/11/27 01:18:15 BxhCtq/9
【会場内ヘリポート自家用機メンテナンスルーム→???】

─Amazing grace how sweet the sound 
That saved a wretch like me
I once was lost but now am found─


─歌が、聞こえる

「…ここは?」
歌声に引かれたように目を覚まし、あたりを見渡す。

太陽の優しい光、青く透き通った空、風にのってやって来る潮の匂い、一面に広がる青々と茂った草原

そして 翼を広げ 歌う 少女

「now I see──♪あ、アデルさ~ん♪」

少女が自分に気づき、彼の名前を呼びながらこっちに駆け寄ってくる。

「ハーピー…?ハーピー!生きてたのか!」

その問いに彼女は優しく微笑む。

「いいえ~♪私はお亡くなりになってしまいました~♪」

「…と、言うことは…そうか…私も彼の一撃を受けて…」

「それも違いますよ~♪ここは~あなたの~夢の中ですよ~♪」

「…夢?」

148:はーぴーのうた  25/30
06/11/27 01:19:24 BxhCtq/9
「そうですよ~♪アデルさんは今気絶している最中です~♪」

その答えに言葉を失ってしまうアデル。先ほど起きた事はすべて現実。彼女を守れなかったどころか、彼女をこの手で殺してしまった事も─

「暗い顔をしないでください~♪私がここにいるのは~♪アデルさんにお礼をしたいからなんです~♪」

「…お礼?」

「はい~♪助けてくれたお礼です~♪サタン様に頼んで~♪用意してもらったんですよ~♪」

満面の笑みを浮かべ両手を広げる。次の瞬間、ポンっと言う音と共にサイズが違う二つの箱が何処からともなく落ちてくる。

「はい~♪大きい箱と小さい箱~♪どちらでも~♪好きな方を選んでください~♪」

その二つの箱を彼の前に差し出す彼女。

それに対して彼は俯き、拳を握り締めたまま、何も返事をしなかった。

「あれぇ~♪アデルさ~ん?どうしたんですか~♪」

何も反応を示さない彼の顔を覗き込もうとする。

「…ふざけて…いるのか…?」

覗き込もうとする前に、彼が重々しく口をあける。

149:ゲームセンター名無し
06/11/27 01:51:21 biNzlcPs
支援

150:ゲームセンター名無し
06/11/27 01:53:19 biNzlcPs
支援

151:ゲームセンター名無し
06/11/27 01:54:24 biNzlcPs
支援

152:ゲームセンター名無し
06/11/27 01:55:33 biNzlcPs
支援

153:ゲームセンター名無し
06/11/27 01:57:13 biNzlcPs
支援

154:はーぴーのうた  26/30
06/11/27 02:05:13 BxhCtq/9
「…アデル…さん~?」

「ふざけているのか!お礼だと!何故!!何故私が君からお礼を受け取らなければならないんだ!?」

段々と荒々しくなる。彼女を助けられなかった悲しみ。彼女を殺してしまった自分への怒り。そのような者が彼の中に渦巻いていた。

「私は!君を救えなかった!それどころか君に止めを刺したのは私なんだ!!それなのに!お礼だと!?私は…!!」

話終わる前に彼の口を人差し指でそっと抑える。

「いいえ~♪私は貴方に救われたんですよ~♪」

「何を…何を救ったというのだ!!?」

「貴方に救ってもらったのは心ですよ~♪あのまま苦しい気持ちで人知れず死んでいくだけだった私の~心を~助けてくれました~♪だから~そんな顔はやめてください~♪」

「しかし…私は…」

まだ、自分自身が許せないといった表情をする彼。


155:はーぴーのうた  27/30
06/11/27 02:06:02 BxhCtq/9


彼女は少し背伸びして、瞳に溜めた涙をぬぐい、彼の頭をそっとかき上げる。

そして、彼の額にそっとキスをする。

「これが~♪どちらも選ばなかった時の、お礼です~♪」

「ハーピー…君は…」

「ちなみに~♪大きいプレゼントの中身は北海道直送毛蟹の詰め合わせ~♪小さいプレゼントの中身は富山県名物ますのすしでした~♪どちらもとっても美味しいのに、残念でした~♪」

「はは…どっちも…私にはいらないな…」

アデルは目に涙を溜めながらも、ここに来て初めての笑顔を見せた。


156:はーぴーのうた  27/30
06/11/27 02:06:56 BxhCtq/9

「あっ♪やっと笑ってくれましたね~♪」

そんな彼を見て、満面の微笑みを浮かべる彼女。

「貴方みたいな人には~♪笑顔が似合ってますよ~♪」

彼女の体が、少し宙に浮かぶ。

「これからも…そうやって…」

「ハーピー…?」

徐々に、徐々に空へと上っていく。

「笑っていて…くださいね…?」

そして、その体は…天に昇って

「ハーピー!!」

太陽の優しい光、青く透き通った空、風にのってやって来る潮の匂い、一面に広がる青々と茂った草原

そして 翼を広げ 天に向かう 少女


157:はーぴーのうた  29/30
06/11/27 02:07:46 BxhCtq/9

彼女の歌声が、再び聞こえてくる─


─Through many dangers

Toils and snares I have already come

Tis grace have brought me
 
Safe this for


And grace will lead me home─


─さようなら




ありがとう─



158:はーぴーのうた  END
06/11/27 02:08:42 BxhCtq/9
【会場内ヘリポート、自家用機メンテナンスルーム】

「うっ…っ…!」
浅い、浅い眠りから目を覚ます。
そこにあったのは、薄暗い蛍光灯、見慣れない天井、腹部の激しい痛み。
「…私…は…ぐうっ?」
痛みが残る腹部を見てみる。ウォンの一撃が痛々しいアザとなっている。が、貫かれた分けではないらしく、致命傷にはなっていない。
「何故…私は…」
腹部を押さえながら痛みを堪え周りを見渡す。ウォンも、彼女も居ない。
証拠を消すためにウォンが"処理"したのか、それとももしかしたら、すべて夢だったのでは。
そう思うアデルの面前に一枚の羽が舞い落ちる。
「…少なくとも、夢ではなかった、か…」
その翼を握り締め、その場に屈みこむ。
「ハーピー…」

そして、静かに嗚咽を漏らした。



「私には…無理だ…」


静かに


「さすがに…笑えないよ…ハーピー…」


嗚咽を漏らし続けた。


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