05/08/21 01:17:55 E1lhLpU6
「変な奴」
そう呟くと、片手でいつきを抱き寄せたまま、もう一方の手でいつきの前髪をかきあげた。
そしてくしゃくしゃと、髪が乱れるのもお構いなしに撫でる。
「ふ、ふぇ…」
突然のことに戸惑っていると、今度はいつきの肩を両腕で抱きすくめ、しなだれかかってきた。
「ちょ…、なにしてるだか…」
いつきの鼓動が早鐘のように鳴る。
蘭丸は動かない。
「こ、こら…だめだべ、こんな…」
全身の力が抜けかけたその時。
先に蘭丸のほうから、ふっと力が抜けた。
ずしっ、と蘭丸の全体重がいつきにかかり、そのまま二人はひっくり返った。
「わっ」
慌てて体勢を立て直し顔を上げると、蘭丸が顔面蒼白になりながら力なく岩にもたれていた。
今にも倒れそうなその体を、いつきはしっかり抱えた。
「もう!」
いつきは蘭丸がかなりこっぴどい傷を負っていたのを思い出していた。
限界に来たのだろう。すでに蘭丸はいつきの腕の中で気を失っていた。
「だから大人しくしてろって言ったべな…」
はぁぁ、と長く吐いたため息が、夜の闇に白く映えた。