05/08/07 03:55:48 ps46DI7m
「う・・・」
「おめぇさ、まだうごいちゃなんねえ。」
ゆっくりと体を起こす。体が鉛のように重たかった。
一人の少女が視界に入った。蘭丸はしばしぼんやりと彼女を見つめる。
それが髪を下ろしたいつきであること、そして先ほどまで吹雪の中で
彼女と対峙していたことを思い出すまで、しばらくかかった。
「(僕は…敵の大将と戦って…そして…)」
「おきちゃなんねぇというに、いうこときけないだか。」
再度いつきにぴしゃりと叱り付けられ、蘭丸の意識ははっきりと目覚めた。
と同時に、ちりちりとした怒りが胸に沸いていた。
僕に命令できるのは、信長様だけだ!何だこの小娘は偉そうに…。
「黙れ小童!何のつもりだ!っ…く…」
「ほれ、傷にさわるべな。しばらくねてなきゃだめだ。」
たしかに、蘭丸は深い傷を負っていたようだった。それ以上体を起こそうにも力が入らず、
腹部にはがっちりと布が巻かれている。
掌で腹部に触れてみると、湿っぽい感覚があった。血が滲んでいるのかもしれない。
蘭丸は、起き上がっていつきに抗議することを諦めざるをえなかった。