06/03/20 19:34:34 oV4g+Sx30
「あの魔物はコイツ―参加者の位置を指し示すレーダーを持ってた。
相手の居場所がわかるってのは、それだけで強力なアドバンテージだよ。
こいつがあれば、生い茂る森の中でも、敵の襲撃を気にせずに済むんだから」
唐突な説明に、テリーとゼルが『?』という表情を浮かべる。
「それが…どうなんだよ?」
不思議そうに首を傾げた少年に、アーヴァインは薄く微笑みながら、話を続けた。
「テリーは、急に目が見えなくなったら、どうする?」
「そりゃ、慌てるし困るよ。何がどこにあるかわからなくなるだろ?」
「そうだね。『どこに何があるか急にわからなくなったら』、誰だって困るし戸惑うよね~」
教師と生徒のような二人のやり取りに、リルムが「あっ!」と声を上げる。
「そっか。今まではレーダーに頼ってたのに、急にそれがなくなったら……」
「なるほど。奴も手負いの身、万が一戦闘になれば命が危うい。
不安にもなるだろうし、警戒して進まざるを得なくなる―」
少女の言葉を、マティウスが引き継ぐ。
「この一体からサスーンにかけては、深い森だ。
障害物も死角も多い。城の位置も方位磁針で確認していかなければならない。
肉体的・精神的・物理的に、それほどの速さで移動することは不可能ということか」
得心するマティウス。「僕のセリフなのに~」と拗ねるアーヴァイン。
二人を交互に見やり、ゼルは問い掛ける。
「つまり、急げばどうにか間に合うかもしれねぇってこったな」
「まぁ、ね。全力ダッシュでギリギリってところだろうけど」
「なら、やっぱり行くぜ。俺が本気出しゃあ、十分もありゃ充分だ」
大見得を切りながら、右手と左手を打ち合わせて気合を入れる。
その身体に、赤く輝く光―加速の魔法が降り注いだ。
驚くゼルに、魔法を唱えた張本人は、そっぽを向いて言う。
「ニワトリ頭。行く以上は、バカップルとオッサンとゴゴ達の知り合い、きちんと助けてこいよ。
怪我させたり、どっかでくたばったりしたら、似顔絵二十枚描いてやるんだからね!」
少女の啖呵に呆気に取られる青年。
そんな彼の手に、アーヴァインは、持っていたレーダーを押し付ける。
「お、おい。いいのかよ?」
ゼルのうろたえを余所に、アーヴァインはぱちりとウインクした。
25:どうにもならない状況で 8/11
06/03/20 19:41:27 oV4g+Sx30
「前線に出るのはあんただ。身を守る手段は多いほうがいいだろ?
あんたに死なれても面白くないし、今の僕には仇討ちなんてできないからな」
昼間のことを思い出したのか、一瞬だけ沈んだ表情を浮かべる。
内心の不安を覆い隠すように、ふざけた調子を装いながら、アーヴァインは右手をゆっくりと上げた。
「無理したら承知しないぞ。図書委員ちゃん、僕が奪っちゃうからな」
「バーカ。あの子より先に、手ぇ出す相手いるだろうがよ。
それに前にも言っただろ。テメーに心配されるほど落ちぶれちゃいねえってな」
ガーデン流の敬礼に敬礼で応え、ゼルはレーダーを手に駆け出す。
真紅の帽子と煌くベストは、瞬きする間に、夜の闇に飲み込まれていった。
「良かったのか?」
青年の背中を見送っていたマティウスが呟く。
彼はゼルから、三人がここに残った理由を聞いていた。
リルムは口を尖らせ、頬杖をつく。
「ち~~~っともよくないに決まってるじゃん。
でも、一番足が速くて体力が残ってるの、ニワトリ頭だってのは事実だしさ」
「こんな事にならなきゃ、死んだって行かせてないよ。
元々、ゼルをサスーンに行かせないために、ここで待機してたんだからさ」
不安と苛立ちがない交ぜになった表情で、アーヴァインは息を吐く。
「リノアを殺した犯人だっているかもしれないし、何度も言うけどアイツの身だってアレだしね……
だけど放っておいたら、ティーダとユウナとついでにプサンさんとかも危ないんだ。
特にティーダ特にティーダ特にティーダ、狙われてるし鈍感だし見つかってばかりだし、絶対ヤバイよぉ~~!」
頭を掻き毟りながら叫ぶアーヴァイン。
唐突にテンパった青年に引きつつ、テリーはマティウスに声をかける。
「お、おじさん達は、どうするんだよ?」
「私達はアリーナを追うつもりだ。
ただ、魔力が残っていないのなら、お前達の手当てを引き受けてもよいがな」
「これぐらいの傷なら、リルム一人で何とかできるよ。
だからゴゴ達は、そのアリーナってヤツ、ギッタギタにやっつけてきてよ」
「そうか。ならば行かせてもらおう」
26:どうにもならない状況で 9/11
06/03/20 19:43:55 oV4g+Sx30
リルムの言葉にマティウスは立ち上がる。
その背中に、幼子の声がぶつかる。
「お、おじさん。……ギードのこと見つけたら、助けてやってくれよ。
あいつら、ギードのこと痛めつけて……頼むから、助けてやってよ。
お願いだから、ここに連れてきてくれよ!」
必死の形相で訴えるテリーに、マティウスはしばし思案する素振りを見せる。
「確か、アリーナはギードとやらの魔法で眠らされたのだったな?」
「? う、うん」
「…敵の敵は味方。味方は助け出すべきか」
マティウスは同行者に声をかける。
「ゴゴ。一旦北に抜け、山脈沿いに南東に向かうぞ。
ギードの身柄も確保せねばならん。奴らがある程度足止めされていることを期待しよう」
「わかった」
そして、じっと視線を送っていたアーヴァインに、命令を下すように告げる。
「万が一、連中を取り逃した時は、サスーンで決着を着けることになるだろう。
青年よ。場合によっては、お前達の力や道具を借りるやもしれぬ。
今後の戦況次第だが……覚悟は固めておけ」
「…Aye aye, Sir」
青年は、ゼルに向けたのと同じポーズを二人にも行う。
皇帝と物真似師は、お互い肯き合うと、闇の彼方に姿を消した。
残された三人は焚き火を囲み直し、休息と傷の治療を始める。
少女が唱える魔法と、火の粉が爆ぜる音が、夜の山中に響く。
小さな炎を見つめながら、『静かだ』とテリーは思った。
同じ三人でも、あの頃は、ずっとずっと賑やかで楽しかったのだ。
トンヌラとレックスと、三人で仲間を探していた『あの頃』。
わたぼうとルカとイルとわるぼう。
リュカ、ビアンカ、タバサ、サンチョ、ピピン、はぐれメタルのはぐりん。
そして、スライムナイトのピエールを探していた、あの時は―
27:どうにもならない状況で 10/11
06/03/20 19:49:44 oV4g+Sx30
どうして今まで気付かなかったのだろう。
信じたくなかったからか? 認めたくなかったからか?
レックスを傷つけて、イルとトンヌラを殺した魔物が、『レックスの仲間』だったなんて。
―信じたくないからか? 認めたくないからか?
思い出して、気付いても、誰にも言えないままなのは。
伝えるべき言葉の代わりに、嗚咽と涙ばかりがこぼれてしまうのは。
アーヴァインとリルムが何かを喋る。
半分は「ごめんね」。残りは「自分が悪かったんだ」。
テリーでも、ピエールでもなく、二人は己の無力さを責め続ける。
それだから余計に、隠し事をしている自分が卑怯に思えた。
けれども、喋れば喋ったで、レックスを裏切ることになるような気がした。
どうにもならない状況で、どうにかすることもできなかった。
ただ、涙と時間だけが、静かに流れ続けた。
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、疲労、右肩負傷)
所持品:竜騎士の靴、自分の服、ふきとばしの杖[1]、手帳、首輪
第一行動方針:傷の治療&待機】
【リルム(右目失明、魔力消費)
所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ
第一行動方針:傷の手当て&待機】
【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復)
所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3
鋼鉄の剣、コルトガバメント(予備弾倉×4)、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
第一行動方針:ギードを待つ
第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
28:どうにもならない状況で 11/11
06/03/20 19:52:16 oV4g+Sx30
【ゼル(ヘイスト)
所持品:レッドキャップ、ミラージュベスト、リノアのネックレス、対人レーダー
第一行動方針:全速力でサスーン城へ向かう/ティーダ達を連れ戻す
第二行動方針:スコールを探してネックレスを渡す
第三行動方針:リノアの仇を討つ(?)】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近→サスーン】
【マティウス(MP1/2程度)
所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)、ビームウィップ
第一行動方針:アリーナ達を探し、倒す
第二行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
基本行動方針:アルティミシアを止める
最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
所持品:ミラクルシューズ、ソードブレイカー、手榴弾、ミスリルボウ
第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近→北から回って南東へ】
>>27修正
×:レックスを傷つけて、イルとトンヌラを殺した魔物が、『レックスの仲間』だったなんて。
↓
○:レックスを傷つけて、イルとドルバとトンヌラを殺した魔物が、『レックスの仲間』だったなんて。
29:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 12:12:38 +9u/g00s0
hosyu
30:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 22:35:29 0VT0+Cxl0
ほしゅ
31:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 07:54:27 /5iVvgfF0
保守
32:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 13:17:00 6u16kJwR0
保守です。
33:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 01:04:09 bDsGJGN00
保守
34:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 12:53:38 7QhGcCmw0
保守っす
35:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 21:59:20 aN+4wUpP0
ホシュ
36:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 08:17:52 b53/ulD70
保守
37:竜の墓標にて 1/4
06/03/24 14:37:49 NwAOr0/Y0
その堂々たる体躯は不動の境地で与えられた役目をこなしている。
天地を揺るがす魔女の出現にも微塵も動じない。
吹き抜けて行く冷たい嵐であっても、夜闇であってももはや負けるはずもない。
竜は見ていた。
天地が鳴動した直後にこの場を訪れた二人の勇士を。
旅路の国王は閉じた目の奥で微笑みかける活発な少女と大人しげな少年の姿を見る。
先代の勇者は虚空に己が息子と笑いあっていた盗賊と僧侶の姿を見る。
他にもこの世界で出会った名前、見聞きした名前のいくつかが音となり拡散して消えた。
強靭たる精神を持つ二人が挫けるはずも無いが、雰囲気はどこか暗くなる。
そんな時に見つけたのが悠然と居る竜の姿だった。
誰に敗れ去ったのか、額や胴に傷跡を刻まれた巨体はそれでも竜族の威厳をまとい残したまま。
勇敢なる二人の男はその姿に戦士の誇りを見出し、彼の懐へと花を手向ける。
失われてしまった命への、このゲームの被害者への哀悼と祈りを込めて。
墓標が出会うことなき血族の躯を抱いていることをその祖父が知る余地はない。
魔女への憤激、哀悼の深みを胸に父二人はさらに先を目指す。
38:竜の墓標にて 2/4
06/03/24 14:38:43 bvtDxMxa0
竜は見ていた。
沈黙の只中を行く大剣の戦士を。
なすべきことを定めたその足取りにもはや迷いは無い。
希望を信じ、希望を掴み取るために寡黙に前進を続ける。
そして、彼もまた静かにたたずむ死せし竜に出会う。
懐に捧げられた花に気付き、剣士はそこに誰かの友情と悲しみを見出す。
致命傷であろう額は深く割れ、身体のあちらこちらに抉るような傷が残されている。
しかし改めて全身を見直してみれば竜としての威厳があるように、格好いいように整えられた姿がそこにある。
横たわる竜の傍らには彼を弔ってくれる仲間が確実にいたのだ。
楽観的かも知れぬ、しかしおそらくその者も悲しみを乗り越え希望を信じ、前進の歩みを再開したのだ―
浮かび上がる思いに胸が熱くなる。
敬礼、一つ。少し熱量を増した心の火種を感じながら剣士はその場を後にした。
意地の悪い風が竜の懐より花を奪い散らしたのはその後のことである。
39:竜の墓標にて 3/4
06/03/24 14:40:26 NwAOr0/Y0
竜は見ていた。
復讐を誓う孤独なる赤い火を。
茫漠たる平原には吹きすさぶ風のほかには何の気配も無い。
一人その空白を行く男の手元から轟音が鳴り、遠めにある岩を穿つ。
支給品の着火具を用いて点火する扱いにくいその銃をさらにもう一度、試し撃つ。
警戒と共に道々そうやってきた男がそれを見つけたのは三度目の試射が外れたあとであった。
命中確認のためにゆっくりと近づいた男はそれが岩ではなく竜の遺骸であることを知る。
幸運にも自らが放った銃弾はどこかへ逸れ、彼を傷つけるようなことにはなっていなかった。
茫漠たる広がりの中に残されたモニュメント、男はそこに孤独と奇妙な安堵を見出す。
いくつもの傷でボロボロの身体、残った威容は覚悟の死の賜物か。
ポツリとたたずむ孤独と寂寥の在り様には共感すら感じられる。
いつか、自分もこのように孤独に散るのだろう。
再び見た竜は変わらず寂しげだったが、しかしどこにも後悔は残っているようには見えなかった。
思わず手を伸ばして触れた竜の体から闇に鈍く輝くうろこがこぼれ落ちる。
拾い上げたそれを夜風にかざす男の表情には久方ぶりの笑みがあったかもしれない。
死者からの贈り物を大事に懐に収め、復讐者は静かに歩み去った。
なあ、物言わぬドラゴンの友よ。
今にも疑心に飲まれちまいそうな俺だけど、誇りだけは忘れないように見守っていてくれ。
あ、勝手に友達扱いだけど…いいよな? 俺もお前のように格好良くありたいんだ。
かっこ悪いままじゃいられねぇ…この命、賭けてもあの男を、そして悪を倒さねえと、な。
だから孤独に狂わないように、疑心暗鬼に塗り潰されないように、俺と共に在ってくれ。
……なあ、物言わぬドラゴンの友よ。
40:竜の墓標にて 4/4
06/03/24 14:41:11 NwAOr0/Y0
浮遊大陸の夜風は冷たく吹きすさび、夜闇はなおその色を濃くする。
忠実なる墓守は通り過ぎていった男達をどのような目で、思いで見ていたであろうか?
竜は、最早何も語ることなく不動の境地で与えられた役目をこなし続ける。
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
第一行動方針:アルスを探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
第一行動方針:仲間を探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:ネルブの谷→盆地内へ】
【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
所持品:バスターソード
第一行動方針:エドガーを探す
最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在位置:ネルブの谷・カナーン側入り口】
【ギルガメッシュ(HP1/2程度・人間不信気味)
所持品:厚底サンダル、種子島銃、銅の剣、デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3、変化の杖、りゅうのうろこ
第一行動方針:フリオニールを倒す】
【現在位置:カナーン北西の山沿い】
41:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 02:59:20 BBXMbJfnO
新作乙&保守
42:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/26 02:08:39 ObMwwy3uO
ホッシュル・ルー
43:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/26 23:04:43 Hah+mdNp0
保守
44:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 12:22:33 QcLSA/3Z0
山
漏れも漏れも・・・( ^_^)