06/11/14 19:50:04 jFBvhLJP0
誰もいない村。
闇の勢力を退けても、失われたものが返ってくるわけじゃない。
あの日と同じ。いくら強くなったと思っても、わたしは無力だった。
いろんなところを旅してきたけど、わたしの世界はやっぱりここで。
わたしをわたしとして受けとめてくれるひと。受けいれてくれるひと。
いない。もう、いない。どこにもいない。
わたしにすべてを教えてくれたひと。わたしのすべてを知っていたひと。
『終わったよ』
その一言、たった一言さえ、わたしは伝えることができない。
シンシア……。
あの羽根帽子。笑顔で返そうと持ってきた羽根帽子。
思わず握りしめた手から何かが伝わって、……しずくが、こぼれ落ちた。
ダメ。声をあげたら、わたしは壊れてしまう。
シンシア！ 助けて！ わたし、ダメだよ……ひとりじゃ、もう……
震える吐息に、声が混ざってきた。もう、限界だった。
返事をしてよ……ねえ……っ！