ドラクエ3~そしてツンデレへ~ Part2at FF
ドラクエ3~そしてツンデレへ~ Part2 - 暇つぶし2ch244:YANA 73-4
06/02/26 01:27:41 UHYaAorn0
 ・ ・ ・
「…ありがとう。大体わかった。要するに、その三つを集めればいいんだな?」
「そう。…その三つを集めるって事は、魔王にでも挑むつもりなんだろうね、君らは」
「「………」」
「僕は腕力も魔力も無いから、このくらいしか役に立てないけど。君らの無事を祈らせてもらうよ」
「…ううん。本当に、ありがとう。アレフガルドに来て、あなたが初めてだもん」
「?」
「こんなに快く、あたしたちに協力してくれたのは。なんとなく、勇気が出てきちゃった」
「はは、買被りだよ。僕はただ、新しい詩を紡げればいいだけなんだから。…さて、次はどこに向おうかな、っと」
 ガタンッ
「あ、待って」
「うん?」
「名前。まだだったよね?よかったら…」
「ああ。僕はガライ。ご覧の通りの吟遊詩人さ」
「ゴドーだ」
「アリスよ。よろしく」
「こちらこそ。また、いずれどこかで逢おう」
 ギィ、バタン

「…驚いた。あんな人も、いるんだ」
「…ふぅ。これでまた、面倒が増えたな」
「?なに、どういうこと」
「わからんか。俺たちがあいつから情報を得た以上…俺たちはあいつの要望に応える努力をしなくちゃならねぇ」
「あ」
「…要するに。形はどうあれ、何もしないで後には引けなくなった、ってことさ」

『母さん、今日は不思議な出会いを経験しました。暗闇に包まれた世界で出会ったその人は風に舞う木の葉のような人で、
 絶望にも依存にも振り回されず、ただ自分の道を往く…ああきっと、あの人の詩はさぞ美しいのでしょうね。 敬具』

245:YANA
06/02/26 01:34:14 UHYaAorn0
ただいま~。
アナログの仕事が修羅場っててこっちに手がつかなかったさ。
ごめんよ。でも資料集めてたのは本当。

そして見切り発車氏のなんか無闇に萌える2を尻目に、
もはやツンデレもへったくれもないストーリーを展開してるバカが一人。
およそ一ヶ月ぶりで、鈍っていないか心配です。

それにしても終盤が当初の予定以上にすごいことになりそうです。

246:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/26 02:58:30 yw/X89yq0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
YANAさんも見切り発車さんも、萌えるツンデレはサイコーです!
今回もGJ&乙です!
これからも期待してます!

247:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/26 11:27:36 J8hOmWg/O
ひさしぶりの降臨キタ―(゚∀゚)―!!

248:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/26 14:08:57 GJGSncnP0
メルキドニートの国かよwwwwww

249:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/26 16:03:05 J8hOmWg/O
ニートの楽園メルキド
いいキャッチフレーズじゃないか…

250:見切り発車
06/02/26 16:15:02 FUQqcqcX0
はい、ベホイミ。
どう、これでもう大体治ったでしょ?
気が付いたら死にそうだったなんてしらないわよ。
大方、寝ている間におばけねずみに咬まれたんでしょ。

大体、なんでわたしがスケベゴーグルの傷を治してあげなきゃならないのよ………
だ、第一其処までして見たいんだったら、ちょ、ちょっ、ちょっとくらいだったらね?
た、た、たっ、たっ、たのべ…………………ば?
一度見たんだから…………って、バカァ!!
なんでいつもそんなことばっかり云うのよっ!!!すみからす………
死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえーーーっ!!!
もー、早く膝から頭下ろしてッ!!ふとももが気持ち良いって……頬を擦り付けるなぁ!!
一体どんな育てられかたしてきたのよぉ、もう厭ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

コナンまでなによっ!?アンタは自分でホイミが使えるでしょっ!!自分でなんとかなさいっ!!

251:見切り発車
06/02/26 16:21:05 VSm7+HKk0
YANA氏戻ってキタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
wktkして待ってました。わたし的にはマイラ西の塔が楽しみだなぁ。

で、前回の反応を見て思ったのですが。
やっぱりみんなああいうネタ好きだねぇ。わたしも好きだぁ!!
あんまり萌え展開は苦手ですが、ポイントポイントを押さえていけたらなぁと思います。
然しアレだ、やっぱり反応が多いとやる気が出ますね。よし頑張ろう。

252:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/26 19:21:57 hwB+H0LqO
見切り発車氏GJ!!!!
かなり萌えましたwww
さらにはオカエリナサイYANMA氏!!!
二人の神にwktk!



ニートの楽園に行きたいな…明日からまた仕事orz

253:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/27 02:04:45 A8Cr0Pqb0
>>252
YANA氏だwwww

おかえりなさーい、YANA氏!!ドドッと終盤突入かな!?楽しみーwww

254:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/27 20:27:44 Xcn00BIR0
スケベゴーグル・・・・
ていうかガライもキャラ立ちすると格好いいな

255:見切り発車
06/02/28 00:36:27 puDJUW110
やっぱり土の上は歩きやすくて良いわー。
砂地は足を取られて無駄に体力使う割りに、進みも遅くて厭になっちゃうっ。
日差しが強いから顔が焼けちゃうし、髪の毛も痛むし。
もう一生砂漠になんて足を踏み入れないわよっ。
あーあ、街に着いたらちゃんとお手入れしないと。
ずーっと気を遣って大事にしてきたのになぁ……
そういえば久しぶりに逢ったのに、なーんにも云ってくれなかったなぁ。
可愛いとか云われてたのは、親の欲目だったのかしら………はぁ。

ねぇ………そんなこと無い、って信じてるんだけど。
万が一って事もあるかもしれないから、訊くね?
あの遠くに見える塔に登る。なーんてことは当たり前の如くないよね?
………帰る。帰ります。帰らせてください。
お二方がどうしても行かれるのなら、わたしも止めません。
わたしは引き返してムーンペタで船を造らせます。其れではごきげん………
ちょ、無理矢理引っ張ってかないでよう、この筋肉莫迦ッ!!
いやだーいやぁーーたかいところはいやぁー………

(ズルズル)

256:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/28 08:44:35 6RwY2OcjO
これは・・・もしや風の塔か!?マズイ、早く綺麗にしないと・・・

257:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/28 12:10:51 Tn9QTWgw0
ドラゴンの角じゃね

258:見切り発車
06/02/28 20:14:31 L7F6WWX20
なんで、塔の中に吹き抜けがあるのよぉ!!
手摺り一本用意されてないし。
風の塔もそうだったけれど、自殺の名所にでもしたいのかしら………
塔の天辺から落っこちて、傷一つ負わない人なんて居るわけないのに、危ないなぁ。
ほらぁ、ちゃんと手繋いでよー。
わ、わたしが落ちないためであって、深い意味はな…ないんだからねっ!!

ねぇ……そういえば一階でおじさんが昔は橋が架かってたって云ってたけど………
それってさぁ、今は架かってないって事じゃないの?
なら、なんでわたしたちはこの塔を登っているの?何処に登る必要があるの?

あー!!目を逸らしたっ!なんでよっ!!どうしてよっ!!!
後ろめたいことがあるんだっ!!口元がにやけて………なに考えてるのよっ!?
ちょ、離して……手を離して……っ!!
助けてぇーーーーー!!おとうさまぁぁぁぁーーーーーー……………

259:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/02/28 20:51:39 IVWHw1530
王女かわいいよ王女

260:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/01 00:02:44 588pMQKxO
高い所ニガテな王女萌えス

261:YANA 74-1
06/03/01 14:37:32 4Dwgi8Ie0
『拝啓 母さん、私たちが追っている、アレフガルドの言い伝え、
 その詳細をガライさんから聞き出した私とゴドーは、メルキドの南、海岸の祠に来ています。
 話によると、このアレフガルドには〝太陽の石〟・〝雨雲の杖〟と呼ばれる秘宝が伝わっており、
 その二つを携え、この世界の南東の島にある祠で〝聖なる守り〟と呼ばれる勇者の証を立てると、
 ゾーマの島に渡る手段を得られる、ということです。
 そしてそのうちの一つ、雨雲の杖がここにある、と聞いたのですが…』

「…くちゃい」
「大地が腐ってやがるな…。下手に動くといらん消耗になりそうだ」
「祠って、この毒沼の真ん中に見えるあれよね?あそこまで走るわけ?」
「いやならトラマナでも使っておけ。俺は我慢してもいいし」
「…うーん…そこまでの距離でもないし…しょうがないわね、あたしも走るわ」
「よし、じゃあ、往くぞ」
「うん…すぅ…だーーーーーーっ!!」
 ボチャボチャボチャボチャッッッ
 ・ ・ ・
「…ふぅ」
 土いじりをやめ、相変わらず曇天の空を見上げる。
 この祠の花を世話するのは、私の日課であり、数少ない日々の楽しみである。

 …しかし、ゾーマのせいでこの世界がこんな風になり、花も日に日に元気をなくしている。
 だからといって、いや、だからこそ毎日の手入れは欠かせない。
 ただでさえこの祠の土壌は、アレフガルドの他の土地より瘴気による腐敗が激しいのだ。手など抜けようはずも無い。
 勿論、そんな土に直に触れさせるわけにはいかず、花は随分前に二階に植え替えられ、汲み上げられた地下水で育てられている現状だ。
 そんなわけで、使える土を選別して外と二階を行ったり来たりするのは、結構、骨だったりする。
「…ちょっと、外の空気でも吸いにいこうかな」
 独りごちてみる。
 祠の中はルビス様の加護のおかげで安全だ。だが、気分としてやはり閉鎖的なのは健康によろしくない。

 …それが例え、妖精であるこの身であったとしても。

262:YANA 74-2
06/03/01 14:38:11 4Dwgi8Ie0

 つ、と。振り返って見る。玉座にはあるべき姿が無い。…姉さんは席を外しているようだ。
 …少しくらいなら、いいだろう。
 姉さんには祠の外に出ることは禁じられている。
 外は魔物が跳梁跋扈している。私の身を案じてのことなのだろうが、元々が風と大地の種族である妖精の女の子が、
 若い身空で引きこもり、というのは我慢ならない。

 ほんの少しのつもりで、祠の階段から門を目指す。

 と。外から何かが聞こえてくる。…魔物はここに近寄れない。では、まさか…人間?
 …前例が、無いわけではない。私は意を決して、階段を踏み抜いていった。
 ・ ・ ・
「…なにかしら?」
 ………ぁぁぁぁぁ…
「???」
「…ぁぁぁぁぁあああああああっっっ!!!」
「!!!」
 ボチャボチャボチャボチャボチャドシーーーーーンッッッ、ズザーーーーーーーッ
「~~~~~…いたたた…な、なにごと…!?」
「う~………いったー…」
 ボチャッ、ボチャッ、ザッ
「おまえな…少しは加減しろよ。というか最後の方、前見てなかっただろ」
「だ、だって、足、痛かったんだもん」
「まったく。…ん、そうだ」
「!」
 ビクッ
「うちのバカがすまなかったな。大丈夫か?…ほら、おまえも謝れって」
「ごめんなさい、毒沼を抜けるために、つい、力が入りすぎちゃって」
「…ふん。気をつけなさいよね」
「む…」
 カチーン

263:YANA 74-3
06/03/01 14:38:43 4Dwgi8Ie0
「悪かったな。気を悪くしないでくれ」
「…ま、いいわ。それよりあんたたち、人間でしょ?この祠に何の用?
 毒沼走り抜けてまで来たって事は、迷い込んできたわけじゃないんでしょ」
「ああ、実はな」
「あ、いい、いい。やっぱりいわなくてもいいわ」
「む…」
「え…」
「あんたたちがここに用があっても、ここは人間に用なんて無いの。さっさと出てってちょうだい」
「な、なによそれ!?横暴じゃない!責任者出しなさい、責任者!!」
「ふんだ、あんたたち如きに姉さんが出るまでも無いわ。いっておくけどね、あたしたちは人間って奴が大ッッッッ嫌いなんだから」
「はぁ!?ちょっと、あたしたちがあんたに何したっていうのよ!?わけをいいなさいよ、わけを!」
「胸に手を当てて聞いてみたら?このアレフガルドがいつまでもこんななのは、誰のせいかを!」
「!っ…」
「確かに元凶は大魔王。でも、立ちはだかる障害を乗り越えるのは自分たち自身でなければならない。
 あたしたち妖精は、直接的な戦いは出来ない。だから代わりに、いくつもの神秘を人間に提供した」
「………」
「………」
「…だけど人間は諦めた!初めの内こそ何人もの勇者が魔王を倒そうと旅立った!
 でもそれが無駄だと分かると、誰もこの世界を救おうとしなくなった!」
「………」
「………」
「知らないとはいわせないわ。アレフガルドの人間がどんな有様か。…わかった?わかったらさっさと」
「救う」
「え…?」
「ゴドー…」

264:YANA 74-4
06/03/01 14:39:17 4Dwgi8Ie0
「俺は諦めねぇ。ゾーマを倒し、この世界を、人間も、あんたたちも救ってみせる」
「っ…ふ、ふん…信じられるもんですか。人間のいうことなんか」
「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ!ゴドーがどういう成り行きでここに来たか知らないくせに!」
「うっさいわね、そんなの知りたくもないわ!大体あんた何なの!?ギャーギャー喚いてみっともない!」
「な、あんたにいわれたくないわ!あんたこそさっきから叫びっぱなしじゃない」
「なによ!」
「あによ!」
「………(…アリスが二人いるみたいだ)」
 ゴドー…。
「ん?」
「え…姉さん?」
「え?え?…何よ、二人とも。何か聴こえたの?」
「!」
 ジッ
「…ん?どうした」
「…嘘。あんた、今の、姉さんの声が聴こえたの?」
「?ああ。なんだ、アリスは聴こえなかったのか?」
「え?あたし?ううん、全然なんにも」
「………じゃあ、あんたが」
 イデア、そこまでです。
「!!姉さん…!」
 お二方を上にお連れしなさい。わかりましたね?
「………………はい」
「???」
「あんたの姉さんの方は、俺に用があるらしいな。悪いが、案内してくれ」
「…ふん。わかったわよ。いっておくけど、仕方なくだからね」
「ちょっと…わけわかんないんだけど」


265:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/01 20:26:03 588pMQKxO
YANA氏GJです!

266:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/01 21:14:04 yHAmSV0B0
妖精はツンが強いな
デレを出すのがいつになるやら・・・
え、やっぱ出ない?

267:見切り発車
06/03/01 22:04:04 h7uA4A4W0
ねぇ、アレン……その風のマント、どうするの?
………えーっと、まさかとは思うけれど身につけて、此処から飛び降りるつもりじゃあ………
ニヤって、ニヤって笑った!!そでれあの海峡越えるつもりなんだ!!
厭だよっ!!もし魔法の効果が切れてて、潰れたトマトになったらどうするのよっ!?
せめて、試してみてから………試さないって、わたし云った………?
お、おぼえてないよーそんなことおぼえて………ひゃあっ!?

(ブワー)

み、みたっ!?……赤いぱ………そ、其れは見たって云うのよっ!!もうバカァ!!!
あーん、もうお嫁にいけなよぉ………せ、せき………あれ?立てない………?
風に吃驚してこ、腰が抜けちゃったみたい。どーしよ……

(ヒョイ)

な、なにするのよ!!こ、こんなお姫様抱っこなんて恥ずかしい…でしょ!!
ちょ、そんなに端っこに近付くのよっ……やめて、お願いだからぁ。
な、なによ……当たってる?なに………む………
あ、あ、あっ、あ、あっ、あ、あててんのよぅっ……!
……なんで其処で赤くなるのよっ!!もっと恥ずかしくなるじゃない…………
って、そんないきなり飛びぃぃぃぃぃぃいいいいやあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー………

(ヒューーーーー)

268:見切り発車
06/03/01 22:10:05 h7uA4A4W0
>202
べ、別にあんたのために、か…書いたんじゃないんだからねっ!!
プ、プロット立てたらこうなっちゃっただけなんだからっ!勘違いしないでよ!!

269:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/01 22:22:49 ivCaQPotO
>>264
GJ!!

>>268
筆者がツンデレwwww乙wwwwwwwww

270:暇潰し
06/03/02 00:04:46 JI31gHYy0
~終わりの始まり~
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
                何故世界はこんなにも汚れに満ちているのだろうか
 人は皆自分だけの為に他人を傷つける
          何が努力だ。何が愛だ。何が友情だ。何が・・・
そんなものどこに存在しているというのだ
        もしあると言うなら、今すぐここに示してみせろ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
     何故世界はこんなにも不幸に満ちているのだろうか
  自分は何もしていないのに苦しい事ばかりじゃないか
                               こんな世界なら存在しなくていい
こんな世界なら壊れてしまえばいい
    誰もいなくなれば、どんな苦痛も、不幸も、悲鳴も、死さえも無くなるだろう
               そうだ。そうなってしまえばいい
                       僕を傷付けるものは全て無くなってしまえ
 そして僕も消えてしまえばいい
                     そうすればきっとこの世界は救われる・・・
壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ


271:暇潰し
06/03/02 00:06:03 JI31gHYy0
~Annunciation~
タタタッ・・・!
街の騒音に混じって軽快な足音が響く
「はぁはぁはぁ・・・。」
時間は通勤ラッシュをとっくに過ぎ、昼前である。
「ちっくしょ~」
そんな悪態をつきながらも、その声の主は通行人を華麗に交わしていく。
夏に入る頃の爽やかな風も手伝って、彼女が足を運ぶその度に赤チェックのスカートが危なげに舞う。
上は白いブラウスに赤のネクタイ。この先にある高校の制服である。
なかなか映える服装だが、遅刻なこともあり、周囲からはかなり目立ってしまっている。
普段から朝は強くないが、今回の寝坊は特に酷かった。
昨日遊んだ帰りに靴の紐が切れるし、夜は枕の形が気になってなかなか眠れなかった。
今朝は今朝で髪型がうまく決まらなかった。
「また怒られっかな~・・」
遅刻は3回で欠席1に数えられてしまう。ちなみに結構ピンチである。

♪♪♪あの~虹を~渡って~

「もう!何よこんな時に・・・」
携帯を取り出し、外れかけた赤いヘアピンを直しつつ画面を見る。
番号は分からないが、【RUBISU】と表示されている。
疑問を抱きつつも、条件反射で出てしまう。
「はい、もしもし?」
「私の名前はルビス。世界は再び危機に瀕しています」
イタズラかと思う。
「真理奈、あなたの力が必要です。どうか私達の世界を救って下さい」
「あんたね~・・・」
言い終わらない内に真理奈の世界は白く包まれた。


272:暇潰し
06/03/02 00:07:20 JI31gHYy0
目を開けるとそこは一面の草原だった。
正面の遠く向こうには海岸、右手には山が連なり、左手には森が見える。
ちょうど丘のような場所に真理奈は立っていた。
さっきまでの高層ビル群は跡形も無く消えて、代わりにどこまでも抜けるような青空が広がっていた。
「・・・・・・何だこれ」
まるで夢の中で場面が突然変わってしまうかのように、景色が一変してしまった。
無意識的に頬をつねる。痛い。
どうやら夢ではなさそうだ。
というか、「夢かな?」と考えることができる時点で夢ではないことを証明しているようなものだ。
しかし真理奈はそんな事を考えられない。
(学校は間に合わないか・・・)
と、どこか間の抜けたボンヤリをしていると、何やら青くて丸いものが坂を登り、真理奈の方へ向かってくる。
サッカーボールよりも小さいが、ツノや目や口らしきものがついている。生き物・・・か?
「ピキー!!」と声を出し、必死に走って(バウンドして?)来る。
よく見ると、青いのの後ろからウサギが追いかけて来ていた。
こちらもなぜか大きな1本のツノが額の辺りから生えている。
スピードをつけ、頭を低くし、青いのを突き刺そうと猛ダッシュをかけている。
青いのも頑張って逃げているが、とうとう転んでしまった。
ウサギがチャンスとばかりに青いの目掛けてジャンプする。
「危ない!!」
真理奈はとっさに飛び出し、ウサギを思いっ・・・きり蹴飛ばした。
タタタタ タータッタ~ン♪♪♪


273:暇潰し
06/03/02 00:09:19 JI31gHYy0
「ピー、ピー」
青いのが真理奈の足に擦り寄って来る。
「お~よしよし」
持ち上げて体を撫でてみる。
不思議な感触だ。プヨプヨと柔らかいが、形を崩しても元に戻る。
色は真っ青で、向こう側が透き通っている。
ツノを体の中に押し込んでみると「プニュ~・・・」と困ったような声と顔をした。
「ねぇ、ここはどこなの?」
さすがに人間の言葉は分からないみたいだ。
「ピー!」となぜか嬉しそうな返事をされてしまった。

「おい!お前そこで何してる?!」
突然、若い男の声が聞こえた。
振り返ると2人の男がこちらに向かってくるのが見えた。
しかし格好がおかしい。
映画に出てくるような鎧を着、手には槍が握られている。
「見かけない奴だな。どこから来た?」
「どこって・・家だけど?」
「家はどこかと聞いてるんだ!」
「怒鳴らなくてもいいじゃん・・・」
「こんな服見たことないし・・怪しいな。先輩、どうします?」
「そうだなぁ。とりあえず報告だな」
「分かりました。ほら、こっちこい」
若い方が真理奈の手を引く。
「ちょっと!引っ張らなくてもいいじゃん!」「ピー!」
「なんだ?・・スライムか。こんなの持って、ますます怪しい奴だ」
若いのはそう言うと、青いのを掴み投げ捨てた。
「あぁ!!」「いいから行くぞ!」「ピ~・・・」
スライムは強引に連れて行かれる真理奈をいつまでも見つめていた。


274:暇潰し
06/03/02 00:16:30 JI31gHYy0
「ね~ここはどこなの?」
「ん?アリアハンに決まってるだろ?」
「アリア・・・?」(そんな国あったっけ?)
「お前はどこから来たんだ?」
「幕張だけど?」
「マク・・?どこだそれは」
「千葉よ、日本の。ジャパン。分かる?」
「そんな国は聞いたことないな・・・」
話がまったく通じなかった。いや、日本語は通じるのだが、内容が話にならなかった。
「先輩、やっぱりモンスターが化けてるんじゃ・・?スライム持ってたし」
「誰がモンスターなのよ!」
「ん~それはないだろ仮にモンスターだとしても、俺達にこんな嘘を付く理由がない」
「なるほど・・・それもそうですね」
「それにもうモンスターは――」
話をしている内に、3人はアリアハンの町に入った。
何の事はない。真理奈がこの世界に現れた時は、アリアハンに背を向けていたのだ。
町の道路はまったく舗装されておらず、車はおろか、自転車の一台も走ってはいない。
そして都会のように小走りで歩く人もいない。皆運ばれてくる風を楽しむかのようにゆっくりと歩く。
建物はまばらで2階建てが多く、一軒一軒の敷地は広かった。確実に日本家屋とは様子が違う。
唯一高い建物と言えば、左手に見えるお城だった。これまた映画に出てくるような西欧のお城である。
真理奈はそれらを眺め、初めて今までと違うトコロにいるんだと実感した。
しかしまったく不安や焦りを感じなかった。
それはアリアハンの持つ、どこかのどかな雰囲気のおかげかもしれない。


275:202
06/03/02 02:23:30 nPN1QRi/O
とりあえずベッドで待ってますね。

276:暇潰し
06/03/02 12:18:08 MGeAPYKl0
「キャー!!」
突然女性の叫び声が辺りに響き渡った。
真理奈を連行していた2人はとっさに走り出す。
「お前はそこで待っていろ!」
先輩の方が走りながら振り返り、真理奈に言い放つ。
「・・・まったく何なのよ・・・」
真理奈は1人取り残され、またしても呆然とする。
2人と入れ替えに青年が町の中に入って来た。腕にはぐったりとした女性を抱きかかえている。
「モ、モンスターだ!モンスターが攻めて来たぞ!!」
青年は町中に警告するように声を上げた。町人はすぐそれに反応し、家の中に避難していった。
(モンスター?あの2人もそんな事言ってたっけ・・・あのウサギや青いのの事かな?)
持ち前の行動力からか、単に騒ぎが好きなのかどちらかは分からないが、真理奈は2人を追いかけることにした。

町の外では2人がモンスターと戦っていた。
普段からの訓練が活かされているのか、次々と撃破していく。
「中々やるようになったな!」「先輩のおかげです!!」
なんて熱血する余裕もあるみたい。と言ってる傍から後輩の後ろに大きなカエルが突進してきていた。
「おぉ~りぃやぁ~~!!」
真理奈はダッシュの勢いを付けカエルの腹に蹴りをぶち込む。カエルは泡を吹きながら吹き飛んでいった。
「油断よ、後輩ちゃん?」「お、お前!どうしてここに・・・」
「いいからいいから~。私ちょっと自身あるんだ。一緒に戦うよ」
「何言ってるんだ!ダメに決まって―」
「口論してる場合かなぁ?先輩が大変そうだよ?」
真理奈の指差す方を見ると、先輩がカラス達に骨やら石を頭上に落とされて困っていた。
「あ・・」「ほらほら、行くわよ!」真理奈は走り出す。
「・・・・」後輩ちゃんは真理奈の背中を追うように走り出した。

その頃、アリアハンへと続く道には続々とモンスタ-が集結していた。

277:暇潰し
06/03/02 13:00:16 MGeAPYKl0
「お前やるなぁ~!」「でしょでしょ~!!」「ありがとう。例を言うよ」
カラス達を撃退した後、お城の兵士が援軍に駆けつけ、事態は終息を迎えようとしていた。
真理奈は先輩後輩コンビと一休み。最初の疑いはどこへやら・・・
「しかし、なぜ今さらモンスターが凶暴化したんでしょうね?」
「分からん・・・」先輩は心底不思議という顔をしながら言った。
「今までもモンスターが襲ってくることはあったが、こんなにも多くのモンスターが攻めて来ることはなかった」
「???モンスターは凶暴なものなんじゃないの?」真理奈も不思議な顔をして尋ねる。
「ここ数年は大人しかったんだ。こんなの初めてだ・・・」
「お前はまだ若いからな。あの頃は――」
ドド・・ドドドドド・・・ドドドドドドド・・・・!!!
地面がかすかに揺れる。それはゆっくりと、確実に力を増しながら近くなってくる。
「隊長!!モンスターの大群が・・!」兵士が走りながら報告する。
兵士の焦り具合を見ると事態は良くないようだ、と推量できる。
実際に群れを見て推量を確信に変える。が、隊長としてひるむ訳にはいかなかった。
「・・・よし!隊列を組みなおせ!!傷を負った者は今の内に治療しておけ!!」
先輩は兵達に声をかけていく。
「さ、さすがにあれは無理だ。ここからは俺たちに任せて、お前は避難しろよ」
「震えながら何言ってるのよ後輩ちゃん。ここまで来たら最後まで付き合うわ」
「でも・・・」
「負けたら町の中にいても同じじゃない」
「それは・・そうだけど・・・」
「じゃあ決まり!」
「巻き込んですまない。だが無茶はするなよ」先輩が戻ってきて言った。
「大丈夫だって!」
真理奈は満面の笑みで答える。その顔に2人はどこか安心感を覚えた。

278:暇潰し
06/03/02 13:01:42 MGeAPYKl0
モンスター達はアリアハンから200m、兵士達からは100mの辺りで進行を停止した。
まるでその数を見せ付けるように、横一列に並んでいる。
そのちょうど真ん中には一際大きなモンスターが見える。
「馬鹿な・・・あれはグリズリーか・・・」
「え?!グリズリーってアリアハンにいるんですか?!」
「いや、いない。いるはずはない・・・」
(あれって熊よね?そりゃヤバいわ・・・)
日本にもいるが、当然遭った事はない。
「よし、俺達はあれをやるぞ」
「・・・お前、この盾使えよ。さすがにその装備じゃ辛いだろ」後輩ちゃんが盾を差し出す。
「ありがと」と、受け取ろうとする手を先輩は遮った。
「いや、俺のを使え。少なくともこいつよりも俺の方が強いからな」
先輩はニヤリと不敵に笑った。

グア~オオォォオー!!!
グリズリーが雄叫びを上げる。それに呼応するように他のモンスターも奇声を発した。
「怯えるな!日頃の成果を見せる時が来たぞ!」
「薬草と聖水忘れてないな?!何としてもアリアハンを守るんだ!!」
先輩が檄を飛ばす。
グァアアァァ~!!!オオオオオオオオオ!!!
グリズリーが再び吠え、モンスターに突撃を命じた。一斉に動きだすモンスター達。
「行け~!!」
隊長の掛け声に合わせて兵士達も迎撃に向かった。
真理奈も同じく駆け出す。真理奈の制服は戦場でも目立っていた。

279:暇潰し
06/03/02 13:04:09 MGeAPYKl0
ほとんどの兵士が善戦する中、真理奈達3人は苦戦を強いられていた。
グリズリーがその巨体に似合わず俊敏な動きで真理奈達を翻弄したからである。
素早い攻撃を何とか盾で受け止めるものの、盾がひしゃげる程の威力があった。
「うあぁぁー!!」ガキン!!後輩ちゃんへの攻撃を真理奈がかばう。
「後輩ちゃんしっかり!」
「ふんっ!!」先輩が力を込め、グリズリーの心臓目掛けて槍を突き出した。
が、皮膚を少し傷つけることしかできなかった。
「!!」
渾身の攻撃が効かなかった事で先輩は少し怯む。怯みは隙となり、戦闘中の隙は致命傷である。
グリズリーの爪が先輩の腹を貫いた。
「せんぱ・・・こんちくしょー!!!」
後輩ちゃんが怒りに任せて突撃する。
しかしそれも虚しくグリズリーにかわされ、後輩ちゃんは蹴り飛ばされた。真理奈がフロッガーにしたように・・・
(先輩・・・後輩ちゃん・・・)
グリズリーはなおも攻撃の手を緩める事なく、真理奈に迫ってきた。
左右の腕を交互に振り上げ、真理奈を裂くために動かされる。
ヒュッ!!ガキンっ!
盾が使い物にならなくなり、紙一重で避ける真理奈の服は少しずつ破れていった。
(ヤバっ・・・間に合わ―)
まともに攻撃を受け、吹き飛ばされる。
グリズリーの爪は真理奈の背中左脇と左腕を切り裂いていた。
血がブラウスも赤く染めていく・・・
(もうダメか・・・)
朦朧とする意識の中、グリズリーが近づいて来るのを確認する。
グリズリーは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。最後の止めを刺す為に腕を振り上げた。
(お母さん・・・!)
その時、青くて丸いものが飛び出し、真理奈を守るかのように立ちはだかった。
「ピーー!!」「お前・・!」
しかしスライムではグリズリーの抑止力にはならない・・・!
ズシュ!!!
戦場では珍しくない肉の千切れる音がした。


280:暇潰し
06/03/02 13:59:40 MGeAPYKl0
次に真理奈が目にしたのは空中を舞うグリズリーの腕だった。
「大丈夫か?」
見知らぬ青年が真理奈に声をかけて、返事を待たずにグリズリーとの戦闘に戻っていった。
「ベホイミ」
凛としたその声とともに体の痛みが消える。
振り返ると、少女が真理奈を見ていた。
「・・・あなたがやってくれたの?」
少女は答えない。
「大丈夫かの?」その後ろからおじいさんがやってきた。
「は、はい。あなたは?」
「自己紹介は後じゃな。今は勝つ事だけ考えるべきじゃ」
少女が真理奈に何かを差し出す。パンチングマシーンのグローブのようなものだ。
甲の部分にカッターの刃のようなものが3本取り付けてある。
しかしそれはカッターよりも刃が太く、簡単には折れそうになかった。
「これは・・・?」「鉄の爪じゃよ。最後の一撃、頼みますぞ」
そう言うとおじいさんはグリズリーの方へ向かっていった。
「ありがとね」真理奈は少女に礼を言う。
「ピー!!」スライムが自分も忘れるな、と声を上げる。
「お前もありがとね」スライムを持ち上げナデナデする。
そして真理奈は鉄の爪を右手にはめてみた。不思議と手に馴染む・・・
「よし!じゃあ行ってくるよ!こいつよろしく!」少女にスライムを渡した。
ニッコリと微笑むと、少女は小さく手を振ってくれた。
「ピ~!」
スライムの声援を背中に受け、真理奈は再び戦場に舞い戻る。


281:暇潰し
06/03/02 14:08:08 MGeAPYKl0
片腕を無くしたグリズリーは痛みと怒りに狂い、滅茶苦茶な攻撃を青年に仕掛ける。
スピードはやや落ちたものの、攻撃力は増している。まともに受ければ命はないだろう。
しかし、避けきれない程ではなくなっている。
チャンスが生まれるまで青年は走り回った。
「さてさて、久しぶりに頑張ろうとするかのう」
おじいちゃんがMPを練り、青年と目を合わしてタイミングを取る。
「ヒャダルコ!!」
氷の波が地面を這い、青年を攻撃することだけに執着していたグリズリーの両足を凍らせた。
グァワァァァ~!!!
突然動きの取れなくなったグリズリーはバランスを崩す。
その隙に青年はグリズリーの残りの腕に剣を突き刺し、腕の動きも奪う。
「今だ!!」
青年が叫ぶと同時に、真理奈が走りこんで来る。
(何かよく分かんない内にこんなことになっちゃったけど・・・)
(先輩と後輩ちゃんの仇は取る!!)
「ルカニ!」
「やぁぁぁああぁぁ~!!!」
真理奈は勢いを殺さずに飛び上がり、グリズリーの胸に鉄の爪を突き立て、心臓を貫いた。
グリズリーは空を見上げるように顔を上げ、動きを止めた。
オオオォォォオオ・・・・
戦場に戦いの終わりを告げるグリズリーの断末魔の叫びが響き渡った。

282:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/02 16:20:54 SWzc05OP0
王女は赤か・・・w

しかも何か味の大分違う作品がキター
全く予想がつかない内容になりそうだなw
期待してま

283:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/02 19:15:41 D6EGGtLO0
>>暇潰し
最高に良い始まりなんだが
どっちかって言うとこっちのが合ってないか?↓

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目

スレリンク(ff板)l50

284:暇潰し
06/03/02 19:33:41 wuFxlODjO
>>282
サンクス!素で嬉しいわ
>>283
そんなスレあったのか…知らなかった
主人公ツンデレじゃないしな~そっちに移行した方がいいか…

285:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/02 20:59:31 WjeUEWD00
私としては暇潰しさんのもここで読めると嬉しいと思ったのだけど・・・

286:YANA 75-1
06/03/02 22:02:53 C8Q+Eitv0
「………」
「えっと…」
「ようこそいらっしゃいました。まずは…妹が失礼をしましたね。すみません」
「いえ、あなたが謝ること、ないですよ」
「…ふんだ」
「………」
「ここは私たち妖精が、とある理由で管理する祠です。ここに来たと言う事は、既にこの祠の役割を知っていることになりますが…」
「………」
「説明しなければならないことがあるのも事実…さて。何からお話しましょうか」
「ちょっと待ってくれ」
「「「?」」」
「さっきから気になってたんだが…あー…あんた、どこかで俺と会ったことがないか?」
「………」
「…いや、気のせいだろ。悪かった。続けてくれ」
「いえ、お察しの通りです。覚えていたのですね」
「???」
「む…」
「あの日…あなたが16歳の誕生日を迎えた朝、夢の中であなたに語りかけたのは私なのですよ」
「!!あぁ、思い出した。俺に、友達の数がどうとか質問したり、酒場に放り込んで行動を監視したりした…!
 そうか、声に聞き覚えがあるはずだ!」
「ふふ…あの時は失礼なことをいったかもしれませんね。ごめんなさい」
「いや、それはいい。あれは、一度俺っていう人間を再確認するいい機会だった」
「なに、何の話よ?」
「こっちの話だ。機会があれば話してやる」
「むぅ…」
「あの時、あなたに語りかけたのにはわけがあります」
「ほう…」
「原因から申します。…このアレフガルドの主、精霊神ルビス様がゾーマに封印されました」
「精霊神…」
「ルビス?」

287:YANA 75-2
06/03/02 22:03:33 C8Q+Eitv0
「はい。その昔、奢り、信仰を失った地上の人間が神々の裁きを受けました。
 そんな中、心を失わなかった一部の人々はここ、アレフガルドに移り、新たな世界を築いたのです。ルビス様の導きの下に…」
「なるほど…この世界にとって、そのルビス様が神で、ゾーマはそれが世界を手にするのに邪魔だったわけですね」
「恐らく。ルビス様なくして、世界の再興、ゾーマの打倒は成らないでしょう。
 ですから、まずはルビス様を救って欲しかったのです。そこで、地上の勇者を選定し、その方にルビス様の救出を委ねる事に」

「何で俺なんだ?」

「――」
「ゴドー?」
「………ふん」
「いや、他意はないんだ。元々、世界は救うつもりだったし、今もそのつもりだ。
 間接的にとはいえ、救われる側から指名まで来てるし、応えない理由がねぇ」
「…そうではない、でしょう。あなたの疑問は」
「ああ。俺がわからねぇのは、〝何でわざわざ地上の人間から勇者を選定したのか〟ということと、
 それがなぜ俺である必要があったのか。何しろ神を救うんだ、しっかりした基準があって然るべきだろ」
「………」
「なに?どういうこと?」
「だって、おかしいだろ?火山にせよギアガの大穴にせよ、あちら側からこちら側に来るには、リスクがでかすぎる。
 選定した奴が死ぬ確率だって、決して低くはない。
 にも拘らず、アレフガルドでなく、地上の人間から勇者を選定する。明確な理由があるはずだ」
「そういえば…そうね」
「どうなんだ?えっと…」
「申し遅れました。私はエイド。あちらが、妹のイデアです」
「ああ、よろしく。…それで」
「ごめんなさい。その基準を語ることは、私達は許されておりません」
「…む」
「ですが、これだけは。地上の人間でなければならないこと、そしてその中でもあなたでなければならないこと。
 二つとも、ある一つの同じ理由によります。私からいえるのは、ここまでです」
「………」

288:YANA 75-3
06/03/02 22:04:15 C8Q+Eitv0
「本当にごめんなさい。勝手は重々承知です。それでも…私たちにはあの方が必要なのです。どうか、ルビス様を…」
「何度も言わせないでくれ」
「え…?」
「俺は今でも、世界を、そこに住む人を救うつもりだといった。そのルビス様だって、例外じゃない」
「ああ…ありがとうございます!」
「まったく…何だか、完全に吹っ切れちゃったみたいね、あんた」
「む…そうか?…いや、それでも、迷ってるといえば、迷ってるんだが」
「?」
「…そうだ、俺たち、ここに雨雲の杖っていう、魔王の島に渡るために必要な道具があると聞いてきたんだけど」
「はい。今でこそルビス様の代理の座となっていますが、あの神器の管理がこの祠の本来の役割なのです」
「へぇ」
「イデア、雨雲の杖を」

「イヤよ。私はイヤ」

「な…」
「姉さんが認めても、私はまだそいつを認めてない。だから杖は渡さない」
「何をいっているのです。この方が選定の条件を満たしているのは確かなのですよ?」
「聞かないわ!えぇそうよ!ゾーマを倒すのはオルテガに決まってる!私は再び彼がここに来た時にこれを渡すんだから!」
「イデア!」
「違う違う違う!私は認めない…オルテガ以外の人が…こんな奴が〝あの方〟d」
「イデアッ!!」
 バチンッッッッッ
「あ…」
「…っ…!!」
 ダッ、カンカンカンカンッ
「っ…イデア!待ちなさい!!」

289:YANA 75-4
06/03/02 22:04:56 C8Q+Eitv0
「…また、オルテガ、か」
「…まいっちゃったな」
「ん?」
「あの子、あたしと同じ匂いがする…多分…多分、だけど。あたしと似た経験、昔したんじゃないかなぁ…」
「…ちっ。記憶失ってまで誰彼構わず助けてやがるのか」
「うっわ、すっごい棚の上げっぷり」
「うるさい」
「あの…ごめんなさい。妹が…」
「いや、仕方ねぇさ。さっき逢ったばっかりの、どこの馬の骨とも知れねぇ奴に大切な神器とやらは渡せないだろう」
「本当に………!!」
「?どうしたんです?」
「いけない、あの子…祠の結界の外に!!」
「…行くぞ、アリス!」
「オッケー!」
 ダッ、カンカンカンカンッ
 ・ ・ ・
「あ…」
 言葉の途中であるにも拘らず、事態の危険性を察知するやゴドーは祠の外に駆け出した。
 そして一拍とおかず、それに追従する少女、アリス。
 今までいくつもの国や町、何人もの人々を救ってきたであろう経験が、その瞬間的な判断を可能にするのか。
「………」
 ――私がこの祠の、あの子が雨雲の杖の管理を任される前。十年近く昔の話。
 誤って祠の外で迷ってしまった時、一人の老いた、けれど不思議と力強く、優しい空気を持つ男性に助けられた。
 それ以来、草木や大地を愛し、逆に彼らを苦しめる原因を倒そうとしない人間を憎むイデアは、
 その男性…オルテガにだけ心を許している。
 無理からぬことだろう。彼は皮肉にも、勇者であった。イデアは彼が〝あの方〟であると、今尚信じていたのだ。
 オルテガが立派な勇者であることは、私も知っている。だが、彼はあの方ではない。

 私は精霊神ルビス様の代行者。仮にオルテガがゴドーの何倍優れていても、彼があの方でない以上は、選定するわけにはいかない。
 ルビス様がいない今は、ルビス様が私、私がルビス様。私はルビス様の意向を汲み、それを可能な限り遂行しなければならない。

 ――それにしても、ああ。妹は気付いていないようだけれど。ゴドーとオルテガの目が、こんなにも似ているのは…まさか。

290:YANA
06/03/02 22:26:09 dFFESOpS0
原作で杖一本受け取るだけのイベントが、こんなにも長くなるとは…。予想外。
妖精の祠編、次回完結。

さて、そろそろ知っている人は気付き始める頃かと思います。
あの方、ってのは知る人ぞ知るあの人です。

291:暇潰し
06/03/02 23:09:07 JYVWEr490
>>285
ありがとう!そう言われると揺らぎますなw

とりあえず>>283のスレを一通り読んできました。面白かった
と思うと同時に、同じ事考える人いるんだなぁ・・・と少しショックだったりw
確かに設定的にはあっちの方が合ってるんだよね
でも正直迷っています

実は以前携帯で書き溜めていたんですが、その携帯を洗濯してしまってデータが消えてしまったんです
だから今の時点では>>281までしか書けていません・・・
続きを書きながら、今後を考えたいと思います

・・・主人公ツンデレにすれば良かったなw

292:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/02 23:47:35 0iJNLS9v0
YANA氏GJ!

>>291
今からツンデレにすればいいじゃないかwww

293:見切り発車
06/03/03 00:02:48 3QNCR1B/0
お父様にお母様!!と云うことは、やっぱり死んじゃったのね……
本懐を果たすことの出来なかったわたしを許してくださる?
あれ……でも確かお父様は未だ成仏してなかった筈じゃあ………


ひはひーー!はにすんおよ、ほのひんにふははっ!!!
……アレ?此処は天国じゃないの?わたし、生きてる………?
草の良いにおーい。って、どうして生きてるの!?塔の屋上から飛び降りてっ!?

ぁ……風のマント………それ壊れてなかったんだ。
うわぁ……よく死ななかったねぇ、わたしたち……
………え?向こう側?
わぁ!!海峡越えてるよっ!!すごーい、ホントに空飛んだんだ……

……!勘違いして貰ったら困るけど、他に良い手があったかもしれないんだからねっ!
なのに相談もしないであんな危険な手段を選んだのは、最良じゃないんだから!!
此からは、わたしにちゃんと相談して………なによ?
もうちょっと年相おう……………ひ、ひ、ひっ、人のパンツにケチつけるなぁ!!!!
バギィィィィィィィィィィ!!!!!!!!

(ズシャズシャズシャズシャ)

アレンのバカァ………クスン

294:見切り発車
06/03/03 00:15:31 3QNCR1B/0
>257
さくばんは おたのしみでしたね

今回のプロットを立ててると、DQ2を根っこから作り直した物をプレイしたいと度々思います。
アレフガルドからは街が無くなってるし、最近の作と比べても街の数は少ないし。
もっと世界を広くし、ストーリーの幅も広げたものをやってみたいなぁ、なんて。
今の時代、ロム容量なんて気にすること無いんだぜ!!

で、今更だからみなさんに訊けるのだが。
やっぱり王女のパンツは縞パンの方が良かったのだろうか?
ちょっと背伸びをして過激なテーバックを履いてみました。なーんて設定にしてみたのだが。
結局個人的な嗜好を反映させただけで、今になってもどっちがよかったのかわたしにはわからんのです。

295:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 00:15:43 Bpn+DkzLO
YANAさんGJです! 暇潰しさんのもいい作品ですね! 自分もここで見れるとうれしいですw これからツンデレ成分が出てくるとゆう事で…………………………………………ダメカナ( ´・ω・`)

296:見切り発車
06/03/03 00:17:28 3QNCR1B/0
うわ、ネタでアンカーミスorz
○>275

いたたまれないので、ドラゴンの角から海峡に落ちてくるノシ

297:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 00:26:27 Bpn+DkzLO
お~!見切り発車さんも来てたー 王女がTバックなんて……………………………………………背伸びしてる王女萌えス( ´д`)ハァハァ

298:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 00:46:03 VYtdEObc0
>>293を読んだとき何故かカボチャパンツが脳裏に浮かんだ俺ガイル
「年相応」の解釈、逆だったorz

299:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 00:55:45 Ere1VQXlO
Tバックしかも赤(´д`)ハァハァ

300:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 01:00:12 bRNaFghJ0
おいおい王女がTバックだと?萌えるジャマイカ・・・

301:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 01:08:14 29GU/F7X0
ツンデレのセオリーとしてはいつも口ではえらぶっているのに下着はお子様パンツか
ソッチの知識は無いくせに自分は大人の振りして下着は背伸びパンツかだけど・・・

だめだ私には決められない・・・

302:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 07:54:38 h0dFYhypO
きっと母親から「これを履けばどんな男もいちころよ!」て言われたんだよ。
あと王子があててんのよの時感じた感想を王女に↓
王女実はノーブラ告白

になれば上目遣いで○o○していい。


303:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 17:29:39 mQnblHqkO
保守

304:YANA 76-1
06/03/03 19:21:36 v5KLaOsw0

 ザッザッザッザッ

「はっ、はっ、はっ…」
 ――信じない。例え姉さんがあの男を選んだとしても。
 私にとってオルテガ以外の勇者、ううん、人間は信用に値しない。

 選定を受けた、ということは、あの男は地上の人間。…頭では分かっている。アレフガルドの、堕落した人間とは違う。
 事実、彼は静かで、落ち着いた瞳の中に、あんなにも闘志を燃やしているではないか。
 それでも…それでも私には…!

「グオオオオォォォォッ!!」

「…!」
 突如、眼前に現れた魔物。…しまった。いつの間にか、祠の結界の外に飛び出してしまっていたのだ…!

 ――ドクンッ

 ああ。これは。あのとき、と、おなじ――。

 一瞬の逡巡。覚悟する。オルテガはいない。今度こそ、私は死ぬのだ。
 怖い?…どうなのだろう。既にこの身は、あの時たまたま拾い上げた命。
 こんな世界に身を置く以上、こういう時が訪れるのは仕方ないのだろう。
 後悔があるとすれば…そう。こんなことなら、雨雲の杖を、祠に、残していくべきだったか。

 頭上に、ダースリカントの豪腕が振り下ろされる。ゆっくり、ゆっくりと。
 私は目を閉じ、思考を停止する。次に目を開けるのは…あの世なんだろうなぁ、と漠然と感じながら。

 ボゥンッッッ


305:YANA 76-2
06/03/03 19:22:24 v5KLaOsw0
「グガァァァァッ!!?」
「………?」
 ――腕は、私に届かなかった。何かが飛来し、魔物の顔面で爆散したらしい、ダースリカントはうめいている。
 と。次の瞬間。黒い影が私を追い越し、眼前の巨大な獣を両断した。

 ………何の冗談だろう。こんなところまで、あのときと同じなんて。

 ・ ・ ・
「生きてるか?」
「………生憎と、ね」
「素直じゃないわね。こういうときくらい、お礼、いいなさいよ」
「ふん」
 プイッ
「その様子なら大丈夫そうだな」
「おかげさまでね。一応、ありがと」
「ん。祠まで送る。落ち着いたらいってくれ」
「いいわ、すぐでも」
「結構。俺も時間は惜しいからな」
「…むぅ。いっておくけどね、助けてくれたのは感謝してるけど、私は杖をあんたに渡す気はないんだからね」
「ああ、いいよ。それで」
「え…」
「ちょ、ゴドー、何いってるの!?それないと、魔王の島にいけないのよ?」
「仕方ねぇだろ。本人が渡す気ないっていってるんだから、無理矢理奪うわけにもいかんし、
 この場合説得して譲ってもらおうっていうのも失礼な話だ。…イデアのオルテガへの思いは、そんなんで覆るもんじゃねぇはずだ」
「「…む」」
「…くくっ、おまえら、面白いくらい反応が似てるな」
「「な、誰がぁっ!…っ!」」
「いい、いい。ほら、行くぞ」

306:YANA 76-3
06/03/03 19:23:02 v5KLaOsw0
 ・ ・ ・
「それで…どうするのよ?あんた。杖無しで、島に渡る方法はあるの?」
「今考えてるとこだ」
「…ねぇ。私、やっぱり、信じられないんだけど」
「ん?何がだ?」
「………あなたが、あの方の」
「待った」
「何よ」
「やめときな。それ以上は、いっちゃいけないんだろう?」
「………」
「ただの規律精神だったら、別に止めねぇんだがな。あんたの姉さんの反応がな…そういう感じじゃない、
 もっと別の、思いやりみたいなものが働いてるような気がするんだ」
「………鋭いじゃない。人間のくせに」
「あんたねぇ、もうちょっと」
「あー、アリス、話が拗れるからちょっと黙っててくれ」
「むー…」
「…とにかく、俺はあんたから杖を奪おうとは思わない。ここからはさっさといなくなるから、安心しt」
「一つだけ聞かせて」
「ん」
「あなたが、仮に、私たちの選定の条件を満たしていない、ただの何でもない人間だったとして。
 …神にも、精霊にも選ばれていない、一人の人間だったとして」
「………」
「………」
「あなたは、それでも、世界を救うために命を懸けてくれる?」
「………」
「………」
「………」
「…懸けよう」
「何を根拠に?」
「この世界と、大切な人が在る限り」
「………」

307:YANA 76-4
06/03/03 19:23:40 v5KLaOsw0
「選ばれようと、選ばれまいと、俺が守りたいと思えばそのために力を尽くすだけだ」
「………ん」
 ズイッ
「え…」
「ん………杖?」
「か、勘違いしないでよね!べ、別にあなたを認めたわけじゃないんだからね!」
「?」
「私にとって勇者はオルテガだけ。私は彼がもう一度、杖を求めてここを訪れるのを待ってる。でも彼は現れない。
 だから、あなたには、この世界のどこかにいるオルテガにこの杖を渡す役目を与えるわ。
 いい?預けるだけなんだからね?オルテガに会ったら、すぐに渡すのよ?」
「「………」」
「…な、なによその目は!あなた、いったじゃない!自分が選ばれた人間でなくても、命を懸けるって!
 だから、この役目に命を懸けなさい!い、今更嘘だったなんて、いわせ、ないんだからね!」
「…ふふっ…いいぜ。その役目、やろう」
「むー…」
「だが、真剣な話」
「?」
「オルテガが死んでいる事態も、考えるべきだ。もし俺が旅先でオルテガが死んでいると判断した場合…
 この杖を遊ばせて置くわけにはいかねぇ」
「………考えたくないけど。確かに、そう」
「その場合、俺はどうしたらこの杖を使うことを許される?」
「………ルビス様」
「え?」
「北の山奥に、マイラっていう村があるわ。そこから西の、内海の島。そこに建つ塔に、ルビス様は封じられている。
 もし、あなたが姉さんに言ったように、ルビス様を本当に助けられたら…きっとルビス様はあなたを認めてくださる。
 いくら私でも、ルビス様直々に認められた人間は認めるしかないもの」
「…わかった。わかったけど、最後のが引っ掛かる」
「え?」

308:YANA 76-5
06/03/03 19:24:27 v5KLaOsw0
「誰が認めたとか、認めないとか、関係ねぇだろ。
 あんたがオルテガだけを勇者と思ってるなら、あんたの中のその思いを大事にしてくれ」
「っ…でも!それじゃあなたに杖を使わせるわけにはいかない!」
「あ、ちょっと待って、イデア」
「な、なによ」
「ゴドーはそういうこといってるんじゃないと思う。
 ルビス様がゴドーを認めて、杖の使用を許してくれる。その下にいるあなたやエイドさんは、それに従うしかない。
 …でも、それに心まで従う必要はない、って。そういうことじゃないかな?ね?ゴドー」
「…っ」
「…あー…ま、そういうことだ。いいか?あんたはルビス様に忠実に従って、〝仕方なく〟俺を黙認するだけだ。
 まぁ、要するに。あんたは心の中では俺を勇者として認めなくても構わない、ってこと」
「………ふん。いいわ、どっちにしても、そのうち結果はでるんだから。
 でもあなたたちの役目は、あくまでオルテガにその杖を届けることなんだからね?忘れないでよ?」
「わかってるさ」
 ・ ・ ・
「…それにしても、ホント、あんたも変わったわよね」
「何がだ?」
「以前はオルテガさんの名前を出すだけで、目の色変えてたのに。それが今じゃ、『その思いを大事にしてくれ』だもんね」
「なに、誰も心まで強要する事は出来ねぇってことだ。…さ、次の目的地に行こうか」
「あ、ちょっと、何急いでるのよ!?」
「また仕事が増えたんだぞ?ぼやぼやしてると本当に世界が滅ぶ」
「………あんた、もしかして、まさか…本当にオルテガさんの死を確認する気?」
「当たり前だ。俺に嘘吐きの罪を背負わせたいのか、おまえは」
「…そうじゃないけど…」
「…っと。そうだった、な。悪かった。おまえにとっての親父は…」
 フルフル
「ううん、気にしないで。あたしも、見てみたいから。
 あんたの選んだ、世界を救う道ってやつを、ね。さ、急ぎましょう」
「ん」

『母さん、あの人は、オルテガさんは、記憶を無くしてもやっぱりオルテガさんでした。
 アレフガルドでも、私と同じように、あの人を慕い、強い意思を持つ女の子が育っていました。ちょっと、親近感です。敬具』 

309:見切り発車
06/03/03 21:02:20 3QNCR1B/0
もう、泥人形からやっつけてくれなきゃ駄目じゃないっ。
あの変な踊り踊られると、呪文唱えられなくなるんだから。
わたしのバギやベホイミが使えなくなったら、ピンチなのよ。
ピンチもピンチ、大ピンチ。ルプガナに着く前に腐った死体の仲間入りしちゃうんだから。
其れをちゃんと判ってるの?

それならだいじょーぶよ。
アレンが泥人形と格闘している間、ラリホーで他のモンスター眠らせちゃうから。
そしたらほら、アレンが横合いから殴られる心配もなくなって、わたしも安心。
じゃなくてっ!!ち、ちが……ちがうのっ、そうじゃなくてっ。ね?
そっ、そうっ。余計な攻撃受けたら結局ベホイミ使うことになってわたしが疲れちゃうじゃない?
そしたら泥人形やっつけても意味無いのよっ。
だから、その心配が無くなって安心っていみ……意味でっ。
べっ、別に痛そうな攻撃受けてるのみて、胸が痛んだりなんかしてなんだからねっ!!
勘違いされたら、わたしが迷惑なんだから…………

310:見切り発車
06/03/03 21:03:50 3QNCR1B/0
パンツ問題はアレでもよかったようなので、一安心。
だけど、カボチャパンツネタは捨てがたいな………

311:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 21:22:10 Ere1VQXlO
もしかして途中からサマル居ない?
もしも居ないんだったらバロスwwwwwwwxwwwwwww

312:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 21:55:42 rEU8riPL0
宿屋に忘れてきたってことでいいんじゃないか?wwwww

313:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/03 23:49:24 /D8PZ0/70
このスレの胸焼けがするくらいの特濃なツンデレが好きだ・・・

314:YANA 77-1
06/03/04 00:15:38 T8znOu6I0
『拝啓 母さん、出鼻は、いきなり挫かれました。
 湖に囲まれた町、リムルダール。大陸をぐるりと南から東に回り、辿り着いた、丁度魔王の島の真東に位置する町です。
 前のお手紙で、イデアから雨雲の杖を預かり、オルテガさんを見つけたら渡し、もしその死が確認されたらルビス様を助け、
 私たちで使う、という約束をしたことは書いたと思います。
 そして向った次の町で、それは明らかになりました…』

「…まさか、いきなりとは、な」
「………」

『ある子供はいいました。「オルテガが魔王を倒しに向かった」
 またある戦士はいいました。「老いた一人の男が、魔王の島に伸びる西の岬に立っているのを見た」
 またあるお爺さんはいいました。「哀れオルテガは、魔の島に渡る術を知らず、海の藻屑と消えた」』

「………」
「大体だな、あの親父は物事を何でも力技で解決しようとしすぎなんだよ」
「………」
「アリアハンの旅の扉の壁が壊れてなかったことからも、魔法の玉を使おうとかは考えなかったみたいだし。
 火山は正面突破で抜けようとするし。挙句の果てに海を泳いで渡ろうとするし」
「………」
「まったく、少しはモノを考えて行動しろっていうんだ」
「ゴドー。ちょっと黙って」
「………………………すまん」
「あ…ご、ごめんね。気を紛らわしてくれようとしたんだよね?つい、気が立ってて…」
「いいさ。戦いの前に感傷に浸られても面倒だ、今のうちに怒るだけ怒って、悲しむだけ悲しんでおけ」
「あんたは、平気そうね」
「当たり前だろ…まさか、忘れてねぇだろうな?俺はあの親父を憎んでるんだぞ?
 おまけに、ここに来てからは障害さえ作ってくれやがった」

315:YANA 77-2
06/03/04 00:16:13 T8znOu6I0
「障害?…ああ、例の約束のこと?その割には、イデアさんのオルテガさんへの想いに肩入れしてたじゃない」
「ん?馬鹿いうな、俺が親父を憎むのをとやかく言われる筋合いないのと同じで、
 イデアが親父をどう思ってようと俺が出る幕じゃねぇだろうが」
「ま、そうだけど。…あんた、そういう、いわれてみれば当たり前だけど、実行するのは難しいこと、割と簡単にやってるわよね」
「大した事じゃねぇって。単なる個人主義だよ、これは」
「そうかな。…でも、あんたのそういうとこ、結構好きかも」
「…ふん。まぁ話を戻すけど、それでも親父に特別死んで欲しいとか考えてたわけじゃねぇんだ」
「あれ、意外」
「面と向かっていってやりたいことは、山ほどあるんでな」
「記憶喪失なのに?」
「それでも、だ。例え五感がなくなってようが、いってやらんと俺の気が済まん」
「災難ね、オルテガさんも。クスクス…」
「…もう、大丈夫そうだな。よし、予想外のことだったとはいえ、これは寄り道が最低限で済んだ事態ともいえる。
 とりあえず、現状を整理しよう」
「ええ」
「敵は大魔王ゾーマ。奴の本拠地に渡るには、太陽の石、雨雲の杖、聖なる守りが必要だ」
「雨雲の杖は、手に入れた。でも…」
「マイラの西の塔、封印されたルビス様を助けること。杖の使用の条件であり、エイドが言うにはアレフガルドを救う鍵でもある。
 当面の目的の一つは、これだな」
「もう一つが、太陽の石と聖なる守りを見つけること」
「ああ。聖なる守りの在り処はガライは知らなかったが…こっちは自力で何とかするしかねぇだろ。
 あとは、例の伝説の武具、か。こいつの所在は、イマイチはっきりしねぇが…まぁ、なければないで、何とかするか」
「うわ、いい加減ね」
「そうそう武器に頼ってもいられんさ。…まぁ、こんなところかな。次は、太陽の石か…」

316:YANA 77-3
06/03/04 00:16:45 T8znOu6I0
「待って」
「ん?どうした?」
「信じて、いいんだよね?」
「…何をだ?」
「あたしはまだ、人間を救うべきかどうか、迷ってる。
 でも、あんたは…いったよね?必ず、世界も、そこに住む人も救うって。…答え、見つけたんだよね?」
「…ああ」
「でもまだ迷ってるって、いった」
「………ああ」
「無理に話せとはいわない。話したくなったら、話してくれればいい。いつまでたっても話したくないなら、それでもいい」
「………」
「でもその代わり」
「ん…」
「あんたはあたしの信じた男なんだから…もし、あたしの期待を裏切るような答えだったら、一生あんたを許さないから…!」
 ポフッ、ギュッ
「あ…」
「…約束する。絶対に、おまえも、世界も裏切らない」
「…うん」
「信じてくれて、ありがとう。…アリス」

『母さん、ゴドーはやっぱり、何かの答えに思い至ったようですが…それを私に語ることしませんでした。
 でも、約束してくれました。私の期待に、必ず応えると。今はそれを信じて、前に進みます。 敬具』

317:YANA
06/03/04 00:32:32 T8znOu6I0
リムルダールでネタが思いつかなかったので総集編(ぇー

近いうちにまた間があくかもしれないので、予告。

次回、太陽の石探しに戻ったラダトームでこの期に及んでまた新キャラを出して一話、
マイラで王者の剣と温泉イベント(ちょっと待て)をクリアするのに一話。
更にマイラ西の塔で1~2話を消費し、その後竜の女王の城で一話。
そこから先は…いよいよ第三部の半分以上のボリュームを占める(予定の)、最終決戦です。

さて、アナログの原稿も頑張ろう(ぉ

318:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/04 00:59:11 imtll2nsO
温泉クルーーー―(゚∀゚)ーーー―!!

319:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/04 02:42:40 JTqiwBkZ0
お・・・温泉だと・・・ゴクリ。

320:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/04 08:43:10 Fd1Zl/g3O
きっと一騒動あるにちがいない。

321:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/04 08:54:56 KQt4Je660
>>YANA氏

つ(□~
今日は寒いのでホットミルクドゾー

322:見切り発車
06/03/05 02:44:11 tJRYgUAG0
やってきました、ルプガナの街っ!!
久しぶりのベッドだ、お風呂だ、豪華お食事だっ!!
ムーンペタ以来の人里だよー。
むー、そりゃ人には会ってるよ。ムーンブルクの西の祠とか、ドラゴンの角とか。
だけど其れと此とはまた違うじゃないっ。だって、宿屋があるんだよっ!
ねぇ、今日はもう休みたいー。宿屋に行こうよぅ。
良いでしょ良いでしょ良いでしょ良いでしょー?
やったぁ!!へっへー、おやっどおやっど♪おやどはどこかなおやどはどこなー♪


はぁー、ふかふかのベッドに寝っ転がるなんてどれくらいぶりだろう………
疲れたなぁ……旅の最中は緊張しっぱなしだし、寝るときも地面の上だし……
シスコン王子は何気に気が利くけど、戦闘中は微妙に………
其れにあの、筋肉莫迦よ。考え無しの無鉄砲で……ホント莫迦なんだから………バーカ……
ああ、それにしても…眠いなぁ……疲れたなぁ………ふぁぁーー………
しょく…じ……たべないと……おふろ……ふぁ…も………すぅー…すぅぅ……………

323:見切り発車
06/03/05 02:45:25 tJRYgUAG0
危なく誤爆しかけたorz
書き終わってから気が付いたのだが、ツンデレ分がどっかいってますね、今回。

324:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 03:55:34 1zd8XnI+O
何故だろう。
>>322を見るとまた何かトラブルが起きる予感が。
そう・・・寝ぼけた王子が、とか。

325:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 13:20:15 zphPFR4M0
  

326:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 16:17:54 PcKLFzW5O
なぁ
ジパング
ランシール
海賊の家
ネクロゴンド
商人の町
の他あと一個グリーンオーブって
どこだったっけ…?
すぐわかる神いますか?


327:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 16:18:54 K06Wr5+PO
テドン…だっけ?

328:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 16:21:17 PcKLFzW5O
あ!!!!!
そうかもしんない!!
一分でわかるとは…
>>327
まじネ申!!
ありがとう!

329:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 16:26:30 PcKLFzW5O
手に入ったぜ!!
お陰でラーミア産まれそうです
センキュ!

330:見切り発車
06/03/05 20:19:58 9FgS+L4c0
うぅ……ん………
あれ、寝ちゃ………うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

(ゴチンッ!)

いっ………つぅ……っ!!!
なっ、に人の寝顔覗き込んでるのよっ!!
あー、まだ心臓がバクバクいってる………
もしも吃驚しすぎて、わたしの心臓が止まったらどうするつもりよっ。
……心臓マッサージに人工呼吸って、普通に云わないで………
其れに目付きと手つきが怪しい人にされるのは、わたしの方から断ります。

で、レディーの部屋に侵入した挙げ句に、乙女の顔を覗き込んでた犯罪者が一体なんの用なの?
何よ、その指?ほっぺ………?~~~~~~!!!!ば、ば、ばっ、ば、ばかぁ!!!!!
い、いいのよっ!!部屋を出る前に身だしなみのチェックなんてするんだからっ!!
もう、ホントになんの用なのよっ!!……もしもろくでもない用事だったら、切り刻むから。

………その指輪、どうしたの?くれる……の?
福引きで、当たった……?精神力を回復してくれる祈りの指輪……………
ええ、そう。そんなことだろうと思ってたわ。うん、思ってた。
で、どーしてわたしなのよ。
そんな効果があるんだったら、わたしじゃなくてコナンでもよかったじゃない。
あ、あげたかったって……そんなの理由にならないよっ!

………で、でも、どうしてもってアレンが云うなら、仕方なく貰って上げてもい、良いわ。
ほらぁ。貰って上げるから、そんな顔してないで早く寄越しなさいっ。

331:見切り発車
06/03/05 20:25:45 9FgS+L4c0
>>326-328
テラワロス

>324
期待に添えずに御免なさい。
今回は展開が決めていたので使えませんでした。
でも、その展開良いなぁ………

332:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 21:05:51 7cOoxvAi0
指輪!挙式はいつですか!?

333:見切り発車
06/03/06 02:31:03 FO6BpQu80
はぁ~。やっぱりちゃんとした処で食べるご飯は美味しいなぁ。
お風呂もちゃーんと入れたし。温かいお湯に浸かる幸せ……
ああ、お母様。ナナはこのまま堕落してしまいそうです。
指輪、かぁ………どーせあの莫迦、なーんにも考えてないんだろうなぁ。
はぁ………早く寝間着に着替えて寝よ寝よ。明日も早いんだろうし。
アレ、そういえば明日どうするって云ってたっけ………

(コンコン)

ちょっとま―――

(ガチャ)

………………………………………………明日は港に行くのね。
うん、其れは判った。でもさ、その前に云う事あったでしょ?
………やっぱり年相応の履いた方が良いよとか、
そのパンツロトの紋が描いてあるんだねとか、前も思ったけれどお尻がかわいいとかじゃなーい!!
ノックしたって、返事訊く前に開けたら意味無いって前にも云ったでしょっ!!!
その上未婚の娘の着替え途中を見ておいてっ!!!!云うことは其れだけかっ!?
アンタの頭の中には、謝罪するという行為は入ってないのかっ!?
……一度全ぶ……………今までの記憶、全部消してやるっ!!!!
バギバギバギバギバギバギバギバギィィィィィィィィィィィィィィーーーーーー!!!

(ズシャズシャズシャズシャ)

………別に……見られるのくらい………お尻…………褒められちゃった………莫迦…………

334:見切り発車
06/03/06 02:40:03 FO6BpQu80
妙にテンションが高まってしまい、こんな時間に勢いで一遍書き上げて投下してました。

然しおかしい。
反応からすると先程のは萌えが足りないのかと、もっと萌え成分を増量するつもりが、何故か増えたのはエr(ry
然も何故か王女が凶暴化してるし。ストレスでも溜まってたんですかね?

>302
其れは、由緒正しきムーンブルク王家伝来の赤ティーバックだったそうだ。
代々の国王は其れで落とされたと、此の文献には残っている。

>311-312
残念ながら、未だいます。相変わらず影薄いけれど。

>332
挙式イベントって、需要あるのかな?

335:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 03:57:07 HNs/YRCjO
王女可愛すぎ!!この展開に悶えるほどGJ!

挙式イベントより「私が他人の物になっちゃっていいの・・・?」
的な展開はどうでしょう。

336:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 05:01:23 uJD+dB/R0
可愛いなぁ王女
王女可愛いなぁ

337:見切り発車 幕間
06/03/06 19:16:23 206F3FTg0
親愛なる妹へ

ぼくが城を出てからだいぶ経ちますが、何か変わったことはないかい?
ぼくが添い寝をしなくても寝られるようになった?
風邪を引いたり、体調を崩したなんて事がなければいいのだけれど。
この手紙は、ルプガナという港町から、こうして手紙を書いてます。
此処に辿り着くまでに、なんども危険な目に遭ったけど、
ぼくの機転と実力のお陰で、生きて辿り着くことが出来たんだ。
特にあのドラゴンの角からの海峡越え、あれは是非見せたかったよ。
みんな、風のマントをつけたぼくにしがみついちゃってね。
無事に着地した後、二人がぼくを見る視線が憧憬に満ちていて、困ってしまったよ。
此から海に出るんだけど、きっと海の魔物だってぼくの剣術のと呪文でイチコロさ。
だから、心配しないでぼくがハーゴンを倒して帰るのを楽しみに待っているんだよ。

                お前の大好きな兄より

-------------

はぁ……お兄ちゃんたら、相変わらずなんだから…
でも、こんな嘘丸見えの手紙送ってきて、どういうつもりなんだろ?
苦労してないといいけど、アレンさんとナナさん。
今度訪ねて来られたときに謝っておかなきゃ………

338:見切り発車 米
06/03/06 19:18:14 206F3FTg0
サマルの影が薄くなっていたのはわたしも気になっていたので、
発見されたサマルの手紙を公開します。
最後のは妹のぼやきです。

339:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 21:18:55 +5YuG1Gr0
ちょwwww妹もモエスwwww

340:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 21:51:51 ZTw5ixDn0
>ぼくが添い寝をしなくても寝られるようになった?

ちょっとまてこらサマルwwww

341:YANA 78-1
06/03/06 22:21:26 DEb4rurn0
『拝啓 母さん、私たちはもしかして、ガライさんにからかわれたのでしょうか?
 それともガライさん自身、その情報が嘘である事を知らなかったとか?
 私とゴドーは今、ラダトームに戻り、お城を探索しています。というのも、ガライさんの情報では、
 太陽の石はラダトーム城に保管されているとのことだからです。
 しかし、お城のあらゆる場所を探し回っているにも拘らず、それらしきものの影さえ見受けられません…』

 カン、カン、カン…
「うー…見つけたと思ったんだけどな。こんな分かりにくいとこに階段が見えたから、今度こそって」
「地下のおっさんも知らなかった…これ以上の隠し場所があるってことか…?ふーむ…」
「ねぇ、もしかしてガライさん、勘違いとかしてたんじゃないかな?」
「だが、雨雲の杖はちゃんといわれた場所にあっただろ」
「そうなんだけどさ…」

 わーーーーーーっ!

「「!」」
「聴こえた?」
「ああ。行くぞ」
 ・ ・ ・
「「「「クエエエエエエッ!!」」」」
「わわわわわっ!つ、ついてこないでよ~っ!」
 バサッ、バサッ、バサッ
「はっ、はっ、はっ…わっ!!」
 ガッ、ズザーーーーッ
「クエエエッ!」
「ひ…」
 
 ザンッッッ


342:YANA 78-2
06/03/06 22:22:09 DEb4rurn0
「クエッ!?」
「え…」
「次!!せいっ!」
 ザクンッッ
「クゥッ!」
「二人とも、伏せて!!」
「!来いッ!」
「!?ひゃっ!」
 ガバッ
「マヒャドッッッ!!」
 ビュウウウウウゥゥゥゥッッッッッ
「「!!!」」
 ビキビキビキッッッ

「ミッションコンプリート、ってね」
「わ~…ありがとうございます」
「やれやれ。…おまえ、何やってるんだ、こんなところで。町の外は魔物だらけなのは知ってるだろ」
「はぁ…そうなんですが…」
 ・ ・ ・
「「魔物退治の特訓?」」
「はい…」
「………どう見ても逃げてるようにしか見えなかったんだが。これは俺の目が悪いのか」
「あはは…はぁ。そうなんです。僕、アルムっていいます。実はラダトームの新米の兵士なんですけど…お城でも一番弱くて。
 だから、特訓してるんですけど…実戦になると、強い魔物ばっかりで、数も多いし、どうしても逃げちゃうんです…」
「まぁ、確かに、この辺りの魔物はちょっと戦闘初心者の手には余るかもね」
「だが、実戦ってのはそんなもんだ。怖いんなら、兵士なんてやめたらどうだ」
「そ、それはダメです!!」
「む…」
「みんな、ゾーマの影に怯えて、萎縮して、絶望しています。僕よりずっとずっと強いはずの、他の兵士さんたちも、
 いざ魔王が本気になれば、こんな城や町なんて、あっという間に滅ぼされてしまうって…」

343:YANA 78-3
06/03/06 22:22:40 DEb4rurn0
「………」
「………」
「僕は、そんなのいやです。だから、弱くても、何の抵抗もしないでみんなを殺されるなんていやだから…」
「…ふぅ。まぁ、好きにすればいいさ」
「あの!」
「ん?」
「先ほどの戦いぶり、お見事でした!あなたの実力を見込んで、お願いがあるんです!」
「なんだよ」
「僕に、戦いを教えてくださいっ!!」
「え、えぇっ!?」
「いやだ」
「って即答!?ちょっと、考えてあげるくらいしないわけ!?」
「そこを、なんとか!」
「別に、意地悪でいってるわけじゃねぇ。単に、俺の戦い方がおまえに向いてないだけだ。
 人に合わせた戦い方を教えてやれるほど、俺は器用じゃねぇしな。おまえ、敵の攻撃を真っ向から受ける覚悟があるか?」
「う…」
「さっきはたまたま、奴らの注意がおまえに向いてたから無傷で倒せた。
 だが俺の本来の戦いは、肉を切らせて骨を断つやり方だ。度胸とタフさのない奴が真似したらあの世行きだぞ」
「………」
「でも」
「え?」
「戦い方を見て、何が不味いか見てやるくらいは出来る」
「!」
「じゃあ…!」
 ザッ
「…殺す気でかまわん、全力でかかって来い」
「あ、ありがとうございます!」
「もう…こういうやり方しか出来ないのかしら、こいつは」

344:YANA 78-4
06/03/06 22:23:17 DEb4rurn0
 ・ ・ ・
 ~三十分後~
「………」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………おまえ、ほんっっっっっっっとに弱いな」
「うぅ…」
「ちょ、ゴドー、もう少し他の言い方ないの?」
「じゃあ、採点よろしく」
「………………目一杯おまけして、20点」
「………」
 ズゥゥゥン
「あ、ご、ごめんね、アルム君!」
「ほらみろ、どう見ても一般人並じゃねぇか。緊張して剣の握りがガチガチ、太刀筋は迷いっぱなし、身体能力は平凡、
 そもそも本人が全力で切り込む根性なし。これなら九歳の時の俺のほうが強かったぞ」
「…すみません」
「………ただ、一つ気になるところがある」
「はい?」
「どうしたの?」
「おまえ、俺のどこを狙って切り込んできた?」
「?」
「はい…えっと…怒らないで、聞いてくれますか?」
「ああ。約束しよう」
「…腿と、股間の関節の辺りに」
「…やっぱりな。おまえ、一応、いわれた通り全力で殺りにきたらしいな」
「す、すすす、すみません!命の恩人に失礼とは思ったのですが、殺す気で来い、との指示でしたので…!」
「???なに、どういうこと?あたしにも分かるように説明しなさいよ」
「ん?ああ、普通、対人戦で切りかかるっていうと上半身を狙うことが多いよな?」
「うん」

345:YANA 78-5
06/03/06 22:25:16 DEb4rurn0
「だけど、こいつ、どうも俺の下半身ばっかり狙ってきてたみたいなんで、おかしいと思ってたんだ」
「?確かに狙いにくいといえばそうだけど、下半身を狙うとなんなのよ」
「いいか?こいつが狙ってきた部分…股関節は、人体の致命的な急所であり、死角でもあるんだ。どういうことかわかるか?」
「ううん。…そうなの?アルム君」
「はい。そこはですね、深い傷が入ると、たくさん血が出て、危ないんです。
 あと、なんていうか…狙われると、すごく、避けづらいんです」
「ボキャ貧な解説だが…成る程、一応の性質は理解してるらしい」
「す、すみません」
「じゃ、あんた解説してよ」
「いいけど。…まず、人体で一番自由に動かせるのが、肩関節。こいつは球関節っていう種類の関節で、
 更に関節窩(わ)っていう関節の嵌りが浅いから、とにかく可動率が高い」
「「………」」
「で、股関節も同じ球関節なんだが、こっちは体重を支えるためか関節窩が深い。だから肩ほどの自由度がなく、
 移動や攻撃の瞬間なんかに狙われると避けにくい。踏ん張りが利かないからな、下手にかわすと」
「「………………」」
「で、性質の悪いことに、ここには…えーっと、なんていったかな、とにかく結構重要な血管が通ってて、傷むとかなり不味い。
 俺も、攻撃中ここだけは狙われねぇようにいつも祈ってる。幸い魔物どもにそんな知恵は…どうした?」
「ごめん、もういい。私が悪うございました」
「す、すごいです!言葉の意味はよくわかりませんけど、すごく的確なことをいっている気がします!」
「おまえら………まぁ、とにかく。俺もここを狙われるなんて初めての経験だ。
 もしおまえに相応の力量があったら、ちょっと梃子摺るかもな」
「そんなこと…」
「で、気になったんだよ。なんでおまえが、ソレを知ってるのか」
「あ、はい。僕は、勇気もなくて、実力も大した事ないから…せめて、自分の体や、魔物のことを調べて、
 その性質に沿った戦いができたら、少しはマシかな、って、思って…書物を漁ったり、自分の怪我の経験を書き溜めたり」
「で、これか。…だが実践する根性がないんじゃな」
「…すみません」

346:YANA 78-6
06/03/06 22:26:04 DEb4rurn0
「ま、得意なことがあるんだ。あとは実戦で慣れるだけだろ。努力次第で伸びるんじゃねぇか?」
「ありがとうございます!」
「それまで死ななければ、の話だがな」
「あう…」
「ゴドー、一言多い」
「ふん。…さて、長居したが、そろそろ行くか」
「あ、待ってください!何か、お礼を」
「ん?いや、別に気にするな」
「いえ、駄目です!命を助けられ、修行までつけていただいて、何もお返しできないなんて!」
「そういわれてもな…」
「…あ、ゴドー。アルム君なら、何か知ってるかも?」
「あぁ?いやだが、こいつ新米だろう?そんな、ラダトームの古くからの宝を知ってるとは思えねぇんだが」
「何でしょう?何か、探し物でしょうか?協力させてください!」
「ん…じゃあ、一応聞くけど。おまえ、太陽の石って、知らないか?城にあるはずなんだけど」
「太陽の石、ですか?」
「話によると、真っ赤な水晶の玉らしいんだが…」
「はぁ…」
「…知るわけないよな」
「もしかして、アレの事かもしれませんね」
「「は?」」
 ・ ・ ・
 ~ラダトーム城、台所~
「いいですか?いきますよ?」
「「………」」
「えい」
 ギッ
「わわ!?か、壁が回転した!?」
「隠し部屋…?」
「ははっ、とにかく中の階段を上ってください」

347:YANA 78-7
06/03/06 22:26:39 DEb4rurn0

「うわ、凄い本…これ、全部例の調べ物の…?」
「はい。こつこつ運び込んでたら、こんなんになっちゃいまして」
「ここはおまえの寝室か。なんでまた、こんなところに?」
「あはは。僕、新入りの中でも特別弱くて。お城の警護も任せてもらえないで、代わりに雑用の仕事なんかもやってるんです。
 で、台所も近いし、丁度空いてたのを偶然見つけたんで、王様に許可をもらって間借りさせてもらってます。
 一人部屋なんで、本を溜めても他の兵士さんに迷惑はかかりませんし」
「これを偶然見つけたのか…?どういう運だ、まったく」
「僕、昔から悪運が強いんですよ…っと、これですね」
 ゴソゴソ、ポンッ
「これが…太陽の石?」
「わかりませんよ?僕が初めて部屋に来た時…ほら、そこに二つ、炎が燃えてるじゃないですか?
 あれ、何をやっても燃え上がることも消えることもないんです。その二つの炎の間の宝箱に、保管されてたんです。
 持ってると暖かいんで、寒い日はゆたんぽ代わりに使ってますけど」
「じ、神器をゆたんぽに…」
「いやぁ、おまえもしかしたら、将来大物になるかも知れねぇな」
「はい?」
「じゃあ、悪いけど、こいつはもらっていく。…城の連中には、すまないが上手く言っておいてくれ」
「大丈夫ですよ、皆さん、その石どころか、この部屋の存在すら忘れてたみたいですから」
「ん。わかった。…それと、まぁ、頑張れよ。俺は駄目だけど、その内いい師匠が見つかるといいな」
「はい!」

『母さん、二つ目の神器が手に入り、残すは聖なる守りのみとなりました。
 そうしたら、あとはルビス様を助けて…決着の日は、着々と近づいています。 敬具』

348:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 22:31:23 ZTw5ixDn0
YANA氏の文章、戦闘描写が出るたびに思うんですけど戦いや人体に関する含蓄が
すごいなぁと思います。
どこで学んでくるんですか、そんなこと!?

349:暇潰し
06/03/06 23:55:07 pXbrcnMS0
皆さん乙です
YANAさんはアルム君のように勉強家なんだろうなぁ
とか思いつつ・・・

さて自分の作品ですが、考えた結果このスレに投下することにしました
「このスレが好き」という自分のわがままで決めてしまいました
反対意見ありましたら容赦なく言ってください

ツンデレは何とか頑張ります
が、あの主人公にツンデレはキツそうです。ごめんなさい
萌えるツンデレは見切り発車さんに期待w

それでは改めてよろしくお願いします
・・・・・作品タイトルでも決めたいなぁ

350:暇潰し
06/03/06 23:58:00 pXbrcnMS0
夜――アリアハンで迎える初めての夜である。
真理奈は夜中に目を覚ましてしまった。
ここは宿屋2階のベッドの上。
横にはスライムが「ピー・・・ピー・・・」と寝息をかいている。
微かに笑った後、ベッドを抜け出して窓を開け、窓枠に腰掛ける。
まったく静かな夜である。
家屋の軒先には明かりの炎が焚かれているが、空の色を変えたりする程ではない。
視線を少し上げると、数ケ所に設置されている、民家と同じく小さい炎の中に浮かび上がるお城が見える。
夜空に浮かぶお城というと不気味に聞こえるが、決して威圧感を与えるような風景ではない。
時々運ばれてくる風に髪を揺らされ、どこか懐かしいような香りを感じる。
そして真理奈は自分の家の事を思う。
母親は心配していないだろうか、と。
いやあの母親では逆に、帰った時に怒られるのを心配した方がいいかもしれないが・・・
(携帯繋がらないかな・・・?)
ふとそう思い、携帯を取り出してみる。
・・・・・・・・圏外だ。
(そりゃ当たり前か)
諦めの表情に苦笑を浮かべる。と、携帯が鳴り出した。
♪♪♪あの虹を~
「はいはいはい!もしもし?!」慌てて出る。
「ルビスです。ありがとうございました」
「あんたね~!!」大声で怒鳴ってから、はっとする。
・・・良かった。スライムは起きなかったようだ。
「あなたには申し訳ないと思っています。しかし、これしか時間も方法も無かったのです」
「はいはい、そ~ですか」投げやりに答え、窓の外に目を戻す。

351:暇潰し
06/03/07 00:00:16 pXbrcnMS0
「で?もう帰してくれるの?」
「・・・それはまだできません。この世界を救って下さい。そうすればあなたの世界に帰します」
「随分な条件だこと!」
「お願いするしかありません。私の力は、あの力には及ばないのです」
「偉そうなくせして役立たずね~」
「・・・1通だけメールを送れるようにします。お母様によろしく」
「え?!」ツーツー・・・・
「何なのよ!」
終了ボタンを押し、画面を見ると確かにアンテナが4本立っている。
「マジ?!」
慣れた手つきで母親のアドレスを呼び出し、メール作成画面に入る。
「えーっと、えーっと・・・何て書けばいいの・・・」
迷っていると、アンテナが3本に減った。
「え?!ちょっと待ってよ・・・」カコカコカコ
【お母さんごめんなさい。何か帰れなくなっちゃった。怪我とかしたけど、心配しないで――】
「って怪我したって言ったら心配するじゃん!」
アンテナはもう1本になっている。
「こら~ルビス~!まだ終わってないんだからちょっと待て~!!」
・・・・ちょっとだけ2本に戻った。
【――ちゃんと帰るから怒らないで待ってて。真理奈】
「よし!送信!」送信完了と共に、再び圏外に戻ってしまった。
「ふぅ・・・今度から着信拒否しよっかな・・・」
少し本気で考える真理奈であった。

352:暇潰し
06/03/07 00:02:32 NXxWxYnp0
夜空を見上げると、本当に真っ暗で星が良く見えた。
あの星のどれか1つに自分の故郷があるのではないか。
そんな思いがするくらい、自分の世界が遠く感じる。
「世界を救って下さい・・・か」
昨日までそんなことを言われたこともなければ、考えたこともなかった。
真理奈の世界も色んな危機に瀕していると言えるだろう。
しかし、その危機を救おうとしているのは全人類のごく一部の人である。
ほとんどの人はその日を精一杯生きるのみである。
真理奈とてその中の1人である。
こっちの世界の危機がどんなものか知らないが、本当にそんな事ができるのだろうか。
人1人の力なんてたいしたものではない事を真理奈はよく知っている。
漫画のように何か秘めた力でもあれば可能なのかもしれないが、そんな力を持っている訳ではない。
それに「世界を救う」と言われても漠然としすぎているし、事が大きすぎてさっぱり実感が沸かない。
「これからどうなっちゃうんだろ・・・」
自分がルビスに選ばれた訳や、この世界の事、それに元の世界の事・・・
色々と知りたいことはあるが、今日のところは寝るしかなさそうだ。
使わない頭で考えすぎて疲れてしまった。
(やるしかない、か。自分の世界に帰りたいし)
ベッドに戻り、スライムを起こさないように手に乗せる。
スライムが息をする度にその体が膨らみ、しぼむ。それの繰り返し。
その緩やかなリズムによって、真理奈の心はまどろみの中に誘われる。
「おやす・・み・・・」
そんな初夜だった。


353:見切り発車
06/03/07 00:21:53 go5pv3FB0
もーなによっ!!
「余所者には船を貸さぬのがこの街のならわし。すまんのう」だってっ!!
謝るくらいなら、さっさと貸してくれれば良いのにっ。
に、似てないなんて自分でも判ってるわよっ!!!いちいち指摘しなくてもいいじゃない……
あーあ、もうどうするのよ。買うだけのお金だって持ち合わせてないでしょ?
わざわざ長い道程、踏破して漸く着いたってのに。
やっぱり時間掛かってもムーンペタで船を造らせた方が………
や、もう一度あの道を歩いて引き返すのは、遠慮したい。
……うん、そうだね。ちょっと他行って考えよーか。

徒歩で情報を集めるには限界があるから、船が欲しいのになぁ。
あーん、もうこうなったらいっそのことラリホーで眠らせている間に……
……真っ昼間から酒臭いわね………うっるさ……………
や、やめてくださいー……おねがいしますぅー………は、はなし…………

………………あんの筋肉莫迦、どーして全く後ろを気にしないかな……
か弱いお姫様が酔っぱらいに絡まれるって、ベタなイベント起こしたのにっ!
……あんたもいい加減ウザイ。それ以上付きまとうなら、港に沈めるよ?
あ、ちょっ!なに二人して走り出して………っ!!
待て、待ってっ!!えーん、待ってよぉーー……………

(タッタッタッタッタ)

354:見切り発車
06/03/07 00:32:31 go5pv3FB0
YANA氏乙。相変わらず戦闘シーンを見てると、こうなんつうか刺激されます。
だけど、わたしが戦闘シーンを書けるのは、またまた最後なのさ~。我慢我慢。
で、次が嬉し恥ずかし温泉イベントですねっ!?
せっかくだからwktkさせて貰うぜっ。

暇潰し氏乙。初夜に妄想爆発。
然も何か期待されてるしっ!?執筆係氏帰ってこないかなぁ(遠い目)

>>335
>挙式イベントより「私が他人の物になっちゃっていいの・・・?」 的な展開
というのは、王国再興しなきゃいけないのに~って感じですか?
其れだとむつかしいかもしれない、けれどまだまだ先の話にはなると思うので練ってみたいとは思います。

取り敢えず、リクエストがあれば出来る限り応えていきたいとは思いますが。
ぁ、アンタたちのために、こ、応えてる訳じゃないんだからね……っ。
そ、そうしたら面白くなるかなーって思ってやってるだけなんだからっ!!
期待なんかしたって…だ、駄目だよっ!!

355:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/07 12:38:25 TuMiXqzdO
いけない子だなぁ見切り発車は。

356:見切り発車
06/03/07 17:06:01 3nZnyeDw0
はぁはぁ、はぁはぁ……もうっ!いきなりはし…………

(ガキーン ズシャァ! ブォォォ)

……街中にグレムリン!?どーして……って考えてる暇無いわね。
二人とも、もう戦い始めてるし。
ええい、マヌーサッ!!
あんたはいつまでも、大して威力もない槍で突いてないのっ!
アイツらラリホー唱えてくるから、コナンは早くマホトーンで封じて……………
って、云ってる側から眠らされてぇぇぇぇ!!莫迦っ!
ああもう、援護いくわよっ、バギッ!!!

(ズシャズシャズシャ)

やったっ、一匹やっつけたっ!アレン、止めをっ!!

(ザシュッ!!)

ふぅー、無事倒せたね………?なにキョロキョロしてんの?
女の子がおそ……わ…れ…………

(タッタッタ ガシッ)

………ああ、この子なのね………「怖かったですわー」だって、ふんっ。
……アレンもそんなにきつく抱きしめてなくたって………もう、いい加減離れなさいよっ。
あ、ちょっとっ!何処行くのっ!?あー腰に手なんか回してぇっ!!
ねぇ、この莫迦どうするのよっ!?…こっちに気が付かない振りするな、スケベゴーグルッ!!
ああ、もうホントにどうするのよ、此……棺桶にでも入れて引き摺ろうかしら。

357:YANA 79-1
06/03/07 17:10:58 wMsb4t4/0
『拝啓 母さん、黄金の国、ジパングを覚えていますか?以前、おろちが支配していた島国です。
 そのジパングから、このアレフガルドに迷い込んだという夫婦が、ここ、マイラの村に住んでいるといいます。
 夫婦の評判は良好で、旦那さんの方は、なんでも刀鍛冶や道具の細工などを専門とする職人さんとかで、村で商売をしています。
 で、私たちはせっかくなので、伝説の武具について何か知っているのではないか、ということで、今お邪魔しています』

「………そう、ですか。おろちは」
「ああ。俺とアリスが、ぶっ倒した」
「あの…もしよければ、私たちがジパングまでお送りしますけど…」
「お気持ちはありがたい。だが、私は、妻を生贄の役目から逃すため彼女を連れ出し、ここに行き着いた。
 自分勝手な事情で故郷を捨てた、その事実は拭えません。今更、どの面を下げて戻れというのです…」
「…そうか。まぁ、無理にとはいわねぇさ」
「それに」
「ん?」
「ジパングは、まだ国だけの脅威に止まっていたからよかった。それに、今はその脅威からも解放されている。
 …しかし、この世界は。世界そのものが闇と絶望に包まれ、今にも滅びようとしている」
「「………」」
「こんな世界があることを知ってしまった以上、私は放って置くことは出来ません。やっと、この村での生活にも慣れてきました。
 …もう二度と…自分の住む国を、見捨てたくはないのです…!」
「…そっか。あなたも、まだ諦めてないんですね」
「え?」
「俺たちは、ゾーマを倒すために伝説の武具を探している。何か、知っていたら、協力して欲しい」
「伝説の武具?王者の剣、光の鎧、勇者の盾のことですね?それは、頼もしい!ですが…」
「ですが?」
「率直にいいますと…三つの武具は、もう二度と揃わないのです」
「…なんだって?」
「どういうことなんです!?」
「はい。…三つの武具のうち、王者の剣は…遥か昔、大魔王ゾーマの手によって、粉々に砕かれているのです」
「!」
「そいつは…周到なことだな」

358:YANA 79-2
06/03/07 17:11:35 wMsb4t4/0
「ですが、ゾーマがそれほどまでに恐れる剣…もし健在であったなら、確実に奴を倒す決め手となったでしょう。
 ――何しろ、奴が剣を砕くのにかけた歳月は、三年に及んだといわれています」
「すごい…」
「三つの武具は、神代の時代…アレフガルドの開闢以前から存在したといわれている神具。その力も凄まじいものでしょう。
 ですが、それも過去の話…今では、剣はおろか、盾と鎧もどこにあるか…」
「………なぁ、あんた。その、三つの武具だけど。それは、あんたが見れば本物かどうか分かるか?」
「はい?それは、もう。これでも幼少の頃より職人としての技術と知識の鍛錬は、怠ったことがありません故。
 日常的なものから伝説で語られるだけのものまで、あらゆる素材・鉱物を知り尽くしております。
 もし一目見れば、それほどの神器、ええ、見間違うはずがありません!」
「ゴドー?どうかしたの?」
「…そうか。じゃあ、この盾を見てくれないか?」
 ドンッ
「は…?」
「あ…これは」
「ある洞窟で見つけた盾だ。不思議な光を放って、俺を引き寄せた。
 前々からかなり強力な力を秘めてたとは思ってたんだが…生憎、俺にはモノの真贋がわからねぇんだ」
「………」
「もしかしたら…勇者の盾じゃねぇか、って」
「………すごい。なんて綺麗なミスリルだ。流白銀をこれほどの精度で加工するなんて、
 まともに石炭を使っては熱量が足りない…そうか、言い伝えでエルフが…ブツ…ブツ…石炭の選別を…」
「お~い…」
 ガバッ
「うわっ」
「素晴らしい!これは間違いなく、伝承に残る勇者の盾です!」
「わ、本物だったんだ。ってことは、ゴドー、あんた伝説の武具に選ばれたってこと?」
「………む」
「…しかし、盾だけでは…やはり、せめてあと剣だけでもないと、ゾーマは」
「…あんたは、そればっかりだな」
「は…?」
「え?」

359:YANA 79-3
06/03/07 17:12:10 wMsb4t4/0
「砕けたのなら、また作ればいい。あんた鍛冶師だろ?どうしてやろうとしない?」
「…無理を言わないで下さい。王者の剣はオリハルコンの塊。だが、もはやアレフガルドに、
 剣の精製に使えるほどのオリハルコンは存在しません…材料がない以上、例えどんなに技術があっても」
「ふぅん。…その、オリハルコンっていうのは、どういうモノなんだ?」
「そうですね…本来は、神々の武器を鍛えるための金属で、人間に扱うことは適わない鉱物、と聞いています。
 勇者の盾の素材、ミスリルも、光の鎧の素材、ブルーメタルも大変優れた鉱物ですが、性質こそ似ていても、
 鉱物の頂点に君臨するオリハルコンには一歩譲る形になるでしょう」
「………」
「人間に扱うことは適わない?…じゃあ、手に入れても作れない、ってことですか?」
「…いえ、もし。もし伝承が全て真実なら………決して不可能ではないはずd」
「似てるんだな?」
「「は?」」
「勇者の盾に、そのオリハルコンは似てるんだな?」
「はぁ…はい。そうですね、勇者の盾が自ら引き寄せたというあなたでしたら、或いはそれを肌で感じられるかも知れません」
「もしかして…」
 ゴソゴソ
「「?」」
「…こいつのことか?」
 ゴトンッ
「!」
「……‥純正の、オリハルコン…!?そんな、こんな巨大な結晶が…!!これをどこで!!?」
「ビンゴか。…いや、なに、ちょっとした痴話喧嘩の果てに」
 ボカッ
「…何言い出すのよ」
「…すまん、口が滑った」
「?…しかし、これは…むぅ…」
「…お膳立ては、揃ったぜ」
「………」

360:YANA 79-4
06/03/07 17:13:03 wMsb4t4/0
「あんたの力を借りたい。あんたは、この世界を見捨てないといった。俺も見捨てるつもりはねぇ。
 …一つ、世界の救済に手を貸してくれねぇか?」
「…無論です。勇者の盾とオリハルコン、そしてその担い手。…これほどの巡り会わせ、間違いなく生涯に一度限りでしょう。
 我が職人としての全霊を懸け、最高の一振りを鍛え上げて見せます…!是非、お任せを!!」
 ・ ・ ・
 カポーーーーーーーン
「ふにゃ~…気持ちい~」
 ザパーンッ
「マイラ名物・露天風呂、か~。鍛冶屋のお兄さんのお勧めだけはあるわねー…ふぅ」
「王者の剣は必ず明日までに仕上げるって意気込んでたな。ま、とりあえずゆっくりするか」
「うんうん。こんなにのんびりお風呂に入るなんて、どれくらい、ぶ、り………!!!!!??
 ゴゴゴゴゴゴドーっ!!!?何であんたがいるのよーーーーーーっ!!」
「ここ、混浴だぞ。知らなかったのか?」
「なァーーーーっ!!?」
「大丈夫。見てないから。あと風呂で騒ぐな、迷惑だ」
「ううっ…」
「…泣かんでいい、泣かんで。大人しく浸かってろ。…タオル、とれるぞ」
「!」
 チャプンッ
「~~~~~~」
「落ち着いたか?」
「ずるいよ…あたしばっかり慌ててさ。これじゃあたしだけバカみたいじゃない」
「…あのな。俺だって結構恥ずかしいんだぞ。必死こいて抑えてるだけだ」
「え…そうなの?」
「………」
 プイッ
「あ、今あからさまに目を逸らしたでしょ!?やっぱり嘘だぁっ!」
「バカ、おまえ、そんな上目遣いで覗き込んだら見えるだろうがっ」
「見えるって………!!?」
 バチャンッ

361:YANA 79-5
06/03/07 17:13:40 wMsb4t4/0
「………」
「…えっち」
「…そっちが勝手にやったんじゃねぇか。知るか」
「ねぇ、ゴドー」
「ん?」
「ギュッてして」
「はぁ?こんな格好でか?…馬鹿いうな」
「こんな時間だし、他に誰も見てないじゃない?ね?」
「俺は、そこまで分別なしじゃねぇよ。おまえと一緒にするな。もういい、俺はあっちで温まる。付き合ってられん」
 プイッ、ジャブジャブ…
「ふーん。そういうこというんだ…」
「………」
「えいっ」
 ザパーンッ、バフッ
「うおっ!?」
「ほーら、観念しなさいって!」
「な、何考えてんだっ、ば、おま、当たってる当たってる!」
「あててんのよっ」
「!!…!!」
「!?…!!!」
 ジャバジャバッ、ムギュッ
「あ…あれ?何これ…?なんか、変な感触が…」
「…それは俺のお稲荷さんだ」
「!!!!!いやーーーーーーーーっ!」
 ギュッッッッッ

 アリスのこうげき!かいしんのいちげき!
 ゴドーをたおした!


362:YANA 79-6
06/03/07 17:14:18 wMsb4t4/0

 ※ただいま大変お見苦しい場面があったことをお詫び申し上げます。そのまま暫くお待ちください。

 
「………ん?」
「あ、気がついた?」
「………あれ、俺は一体?ここは…マイラの宿屋か?」
「あは、あはは、ゴドー、温泉でのぼせて倒れたのよ?もう、世話焼かせないでよね!」
「そうなのか?…すまん。…にしては、いつつ…いつになく体が痛むな…特に下半身の」
「わ~っ!!そ、それよりほら、これ見て、これ!」
「ん?…なんだそれ。笛か?」
「うん。あんたを部屋に運ぶ途中の茂みで拾ったの。ほら、今までさ、拾い物が何かの鍵になったことって、沢山あったじゃない?
 これもそうかもしれない、って思って、持って来ちゃった」
「成る程。いい心がけだな」
「でしょでしょ?さ、鍛冶屋のお兄さんのところに行きましょ。剣、そろそろ、出来てる頃かもよ?」
「そうだな。…ああくそ、それにしてもいてぇな…何なんだ?」
 ・ ・ ・
「おはようございまー…」
「しっ!」
「わっ!」
「ぐー…ぐー…」
「…(静かにして下さい。夫が起きてしまいます)」
「(すみません…)」
「(…どうかしたのか?)」
「(ゴドーさんと、アリスさんですね?)」
「「………」」
 コクン
「(話は聞いています。こちらに…)」

363:YANA 79-7
06/03/07 17:14:58 wMsb4t4/0

「こちらをお持ち下さい」
「…!これは…」
「…つい先ほど、夫が誰にも知られたくない鍛鉄を行う時にだけ使う、裏山の鍛冶場から帰ってきました。
 この剣を、完成させて。これを私に手渡すと、夫は泥のように眠ってしまいました」
「………」
 スッ、ヒュンッ
「…綺麗」
「すごいな…まるで違和感を感じねぇ。俺の体の一部みたいだ。これが、あの石ころだったっていうのか…?」
「生涯最高の一刀だと。夫は太鼓判を押したようです」
「そうか…ありがとう、と伝えておいてくれ」
「はい。…ですが、夫が鍛冶場に向かう時、私にあそこまで嬉しそうに剣を打つ喜びを語ったのは久しぶりです。
 私は世界を救う一振りを作るのだ、この国を救う一端を担えるのだ、と、まるで子供のようにはしゃいで」
「「………」」
「夫は、辛かったのでしょう。故郷で、何人もの娘が殺されるのを、ただ指を咥えて見ているしかなかった…
 なのに自分だけは、私を連れて逃げ出した。それが今、漸く、あなたという勇者に協力し、かつての弱い自分と決別できる、と」
「………よかった」
「「?」」
「そう思ってくれる心が、今の俺には一番嬉しい」
「…ゴドー?」

『母さん、気のせいでしょうか。今朝のゴドーは、その…何だか、バラモスを倒した時のそれに近い…
 柔らかい笑顔を、久しぶりに見せた気がするのです。あいつの中で、一体どんな変化が起こっているのでしょう…?』


364:YANA
06/03/07 17:24:25 wMsb4t4/0
相手のデレにはツンで応え、ツンにはデレで応える、それがツンデレカップルクオリティ。
何やってんだろうね、このバカップルは。

はい、そんなわけで二番煎じ「あててんのよ」ネタです。
思いつきにしては結構上手く纏まったんじゃねぇかと(ry

>>356
ちょwwwてつのやりカワイソスwwwww
流石サマルだ、役立たずでも何ともないぜw
GJ!!

365:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/07 18:19:17 2OambF4P0
サマルの鉄の槍。それは最強武器2択の内の1つ。

366:名無しでGO!
06/03/07 20:25:41 9qJlpsp10
>>暇潰し氏
文章は面白いがやはりスレ違いと思われる
向こうでやるとよろしかろう
スレリンク(ff板)l50
変な奴も出てくるかもしれないからな

367:名無しでGO!
06/03/07 20:27:32 9qJlpsp10
変な奴→変な事を言う奴

368:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/07 21:25:03 iG7FLW7e0
バカップル最高wwwwwwwwwww

369:暇潰し
06/03/07 23:58:27 q0O+qqpa0
>>366
そうですか
では向こうに行くことにします
すいませんでした

370:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/08 00:35:21 hL/dNVfp0
>>369
内容は良かったと思うよ。
向こうに行ってもガンガレ

371:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/08 00:55:38 cngt+PBi0
YANA氏の話に挿絵が欲しくなった。ファンす

372:YANA 80-1
06/03/08 01:57:59 +okm9zcs0

 ドゴォォォォォォンッ

「~~~…いったー…な、なによ今のは!?受身を取る暇もなかったじゃない!」
「おかしいな…いきなり、体があさっての方向に走り出しやがったぞ?」
「ふーむ…何か仕掛けがあったとしか思えねぇな。もう一度調べてみよう」
「どうやってよ!?あたし、また突然今みたいに塔の外に放り出されるのはイヤだからね!」
「そうならないようにやるんだろうが。どっちにしても、後戻りは出来ねぇよ」

『拝啓 母さん、私たちは今、ルビス様を助けるため、マイラの西の塔に挑んでいます。
 …で。勢い込んで塔に乗り込み、階段を駆け上がり廊下を走っていたところ、突然体があらぬ方向に曲がり、
 塔の淵から身投げをしてしまったのです。あまりにびっくりしたのと、地上との距離がそれほどなかったせいで受身を取りそこない、
 久しぶりに地面激突を味わってしまいました…一体、どうなってるんでしょう?』

「ほっほっほっ、お若いの。ここの回転床に嵌ったようじゃの」
「え?」
「…む…爺さん、あんたは?」
「わしは単なる世話焼き爺じゃよ。それより、お若いの。おまえさんたちが踏んだのは回転床といってな、とある法則にしたがって、
 踏んだ者の進行方向を歪曲してしまう仕掛けなのじゃよ。この塔の至る所に施されておる」
「え゛。あれが、沢山あるってことですか…?」
「…だが、裏を返せばその〝とある法則〟さえ見破れば突破は可能、か」
「うむ。理解が早くて感心じゃ。…ところでおぬしら、〝妖精の笛〟を持っておるかの?」
「妖精の笛?なんですか、それ」
「まぁ、いいからいいから。どうじゃの?」
「………ん?おい、アリス。もしかして、おまえがマイラの茂みで拾ったっていう…」
「へ?…あーっ!!アレ!!」
 ゴソゴソッ
「おお、それじゃそれじゃ。いやいや、天はやはりルビス様を見捨ててはおらなんだようじゃな、南無南無」
「え、縁起の悪い念仏唱えないで下さい!」
「爺さん、今、ルビス様っていったか?どういうことだ?」

373:YANA 80-2
06/03/08 01:58:33 +okm9zcs0
「ふむ。この塔に挑んでいるということは、おぬしらはルビス様を助けに来たのであろう?」
「ああ」
「ならば、この塔の5階に、ルビス様の石像がある。それこそが、ルビス様ご本人が、ゾーマによって姿を変えられたモノ。
 石像の前で、妖精の笛を奏でるがよい。さすれば、封印は解けようぞ」
「うわー…割と適当に言ったのに、この拾い物の笛、本当に世界を救う鍵なんだー」
「爺さん。あんた、なんでそんなことまで」
「はてなぁ…なんでかは、わしにもわからん。ただ、いずれここを訪れる勇者を待っていた。
 それだけなんじゃなぁ。…ルビス様のことを、頼んだぞ、若者よ」
「ありがとう。参考になった」
「任せて下さい!」
 ・ ・ ・
「とはいったものの…どうする?」
「この白黒の矢印みたいなのか。さっき俺たちが踏んだのは」
「回転床、だっけ?避けて通ろうとして通れないことはないけど…」
「この先も、避けられるように設置されてるとは限らん。階が低い今のうちに克服しておいた方がいいだろ」
「同感ね。ま、落ちると分かってれば受身の取りようもあるけど…同じ道を上るのは面倒だしね」
「あっちに、お誂え向けにバリアと宝箱と回転床の部屋がある。せっかくだから向こうでやろう」

「じゃあ、俺から行くぞ。まずは慎重に」
 タンッ、クイッ
「!」
 バリバリバリッ
「………」
「おかえり。どう?何かわかった?」
「第一声がそれか、おまえは」
「どうせあんた、それくらいのダメージ屁でもないんでしょ。で?どうだった?」
「…床に乗るまでは、普通に歩けた。だが、あれを踏んで前に進もうとしたら、急に体が左に進みやがった」
「なるほどね。ってことは、相対的に言って、床に乗った状態で右に進もうとすれば正面に進むんじゃない?次はあたしが」
 タンッ、クイッ
「え!?」
 バリバリバリッ…

374:YANA 80-3
06/03/08 01:59:04 +okm9zcs0
「………いたい」
「というかおまえはトラマナを使え、馬鹿者」
「先に言ってよ、もう!…でもおっかしいな…こんなはずじゃないのに」
「………ん?おまえ、今どの床を踏んだ?」
「え?どの床って…そこの」
「…俺の踏んだ床と違うな」
「どこが?」
「ほら、見てみろ。俺が踏んだのはこっちの白い矢印がこっち側を向いてる床。
 それに対しておまえが踏んだのは、白い矢印があっち側を向いてる床だ」
「あ…そういえば」
「………もしかしたら、矢印が法則性の鍵を握っているのかもしれん」
 タンッ
「………」
「…(さっきのあいつの言うことも一理ある。俺が踏んだ床…そこで右に意識を傾けて…!)」

 ――タンッ


375:YANA 80-4
06/03/08 01:59:38 +okm9zcs0
 ・ ・ ・
「…今、何階だ?」
「ひぃ、ふぅ、みぃ…四階かな?」
「上に行く階段はなし。…いつもの如く、何らかの仕掛けがあると見ていいだろう」
「うん」

「だが、当面の問題は」
「あの、宝箱ね」

「………どう思う?」
「周りは手摺もない絶壁。不自然に張り出した床。通り道には回転床。
 ついでにいうなら、この階にあるのはあの宝箱だけ。…何かあるわね」
「だろうな。…だが」
「それが、どうしたっていうのよ!」
 タンッ
「「………(落ち着いて、意識を床に合わせる…!)」」
 タンタンタンッ…タンッ
「…ふぅ。仕組みを見切ったとはいえ、結構緊張するわね」
「神経泣かせなトラップだよ、全く。さて、箱の中身を、検めさせてもらうか――」
 ガチャッ
「!…よろ、い…!?」
「ただの鎧じゃねぇ…王者の剣、勇者の盾…三つ目ともなると、もう偶然では片付かん。この感じは」
「光の鎧!」
「こんなところに…ルビス様と一緒の場所に隠すとは、随分厳重なことだな。神本人と同格か」
「でも、これで、三つの武具、揃ったね」
「…あとは」
「ルビス様を助けるだけ…!!」

376:YANA 81-1
06/03/08 02:00:47 +okm9zcs0

 ヒューーーーッ、ストンッ
「…思ったとおり!見て、裏口よ!」
「塔探索の基本は落ちることと見たり、か。本でも書くか?」
「バカいってないで、ほら、急ぐわよ」
「ああ」

 カン、カン、カン、カン…
「…仕掛けらしいものは回転床だけ。通路はほぼ一本道」
「今までの作りとは違うな。さっきまでの真っ当な迷宮作りは、ここには何もないと思わせるためのブラフか」
「ということは」
「近いな。この先に、ルビス様がいる」
 ・ ・ ・ 

 ヒュゥゥゥゥ…

「塔の5階。広間。…じゃあ、この石像が」
「冷たい場所。…こんなところに、長い間閉じ込められてたなんて…」
「…アリス?」
「ううん、大丈夫。…それより、見て。この石像」
「ん…」
「これ、ルビス様自身なんだよね?綺麗な女性(ひと)だと思わない?」
「…ま、神だしな。人間のそれとは、元々規格が違うんだろう。笛を貸してくれ。封印を」
「うん」
 パシッ
「…す」

377:YANA 81-2
06/03/08 02:01:52 +okm9zcs0

 ♪~♪♪♪♪♪♪、♪、♪♪♪♪♪~

「………」
「………」
 カッッッッ
「!」
「っ!?」

 シュゥゥゥゥッ…
「…な、なに!?どうなったの?封印は!?」
「………」

 ―――よくぞ、封印を解いてくださいました。心より、礼を申し上げます。

「!あ…ああああ、あなたが、ルビス様…です、か?」
「はい。私は精霊ルビス。この、アレフガルドを創った者です。
 どなたかは存じませんが、ゾーマの戒めから解き放ってくださって、ありがとうございます」
「そ、そんなこと…ほ、ほら!ゴドー!あんたも何かいいなさいって!」
「ん…」
「ゴドー?………!!」
「?どうか、しましたか?…ルビス、様」
「っ………いえ。何でもありません。…時に、ゴドー。あなたは、どういった経緯でここに?なぜ私の封印を?」
「地上から、ゾーマを倒しに。
 そうしたら、あなたの代行者を名乗る、エイドという妖精から、世界を救う鍵はあなたが握っていると聞きました」
「エイドが…そうですか。やはり、あなたが…。
 では、あなたが私のことを知ったのは、エイドに会ってからということなのですね?」
「はい。そうなります」
「………そう…そうですか。今代の、あなたは、まだ………」
「?」


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