06/01/24 10:21:13 LKeJxKyi0
サントハイムの人たち、帰ってきてたね。
旅の最中はお姫様らしいところ余り見られなかったけど、ああいう状況になるとやっぱりお姫様だったね。
………でも、此からあの城の再建かぁ。
魔物が徹底的に汚してたし、大広間なんてバルザックとの戦闘で跡形もなくなってたよ?
嬉しいはずなのに、王様の顔色が青ざめていたのは見間違いじゃなかったと思うわ。
ライアンさん、此で出世するかな?
だって、世界を救った戦士だよー。国のことはほっぽり出してたわけだけど。
まぁ、王様もあんなに嬉しそうだったし、安泰なのかな。
ま、朴念仁だけどいい人だし、それに今は英雄よ?気の利くお嫁さんも直ぐ出来るでしょ。
あ、ロザリーヒルじゃない?あれ。
うわーなに?ピサロがこっち見てる。かっこつけてなんか偉そう………
ううーなんかむかつくなぁ。こっから馬の糞を投げつけてやろうかしら。
トルネコさんてさぁ、世界一の武器商人を目指してるんでしょ?この旅で商人らしいことしてた?
わたしは、馬車の片隅でのの字を描いていたことしか覚えてないんだけどなぁ。
奥さんのお陰でお店も益々繁盛しているようだし、むしろ帰らない方がお店のためになる気がするわ。
マーニャさんとミネアさんも、仇討ちの為だったんだよね。
二人のお父さん。自分がが発見した呪われし錬金術の遺産、
進化の秘宝を娘たちが封印した事を知って、きっと喜んでるよね。
……ええと、舞台の上で踊ってるマーニャさんにみとれるのは判るけど。
おっぱいばかり見てるのは、何かわたしにいいたいことがあるって解釈でいいのかな?
3:だんご
06/01/24 10:22:31 LKeJxKyi0
ピサロのヤツ、徹底的にやってくれちゃって。
瓦礫しか残って無いじゃないっ。草もボーボーで。
今度会ったら、どくばりの餌食にしてやろうかしら………
………長いこと旅してたんだ。やっと帰ってこられたね。
えへへ。みんなみたいに、わたしたちを待ってる人なんて誰もいないけれどさ。
でも大丈夫、勇者にはわたしが付いてるからね。一人ぼっちにはさせないよー。
みんなのお墓作らないとね。
誰も知らない山奥の此の村があった場所で、供養もされてないんだから。
クリフトさんに葬式あげて貰おうか?
もう勇者の使命は終わったんだよね………
えへへ。此で、もしかしてわたしの夢って叶うのかな?
もうみんなはいないけど……わたしたちがいつまでも幸せに此の村で暮らしてる夢。
その為には、此の村を再建しないとね。
(ギュッ)
ちょ、いきなりなにするの、吃驚するじゃないっ。
………え…?しあわせ、に……?
ぶーだめだよー。もう判ってないんだから。
わたしはね、あなたより年長さんなの。だから、おねーちゃんがあなたを幸せにするの。
それでね、一緒に幸せになるのよ。
さて、先ずは今日の寝床を用意しないと。このままじゃ、供養することもままならないしね。
早く準備してよね。何云ってるの、勿論あなたの仕事に決まってるじゃない。
わたしは料理作るんだから。ほらほら、行った行ったっ。
(タッタッタッタッタ………)
ふふふ。大好きだよ、わたしの勇者様――
4:だんご
06/01/24 10:41:47 LKeJxKyi0
いやぁ、昨夜は焦りました。
わたしが一レス分投稿したら、512k規制に引っ掛かってそれ以上書き込め無くなっちゃったし、
新スレを立てようと思ったら、それも規制に引っ掛かって駄目だったし。
気が動転して自治スレにスレ立て要請を出してみるものの、時間も遅いのかなんの反応もなかったし。
取り敢えず諦めて、今日出掛けに試してみたら無事立てられたので、最後まで投稿してみた次第です。
そんなわけで、此でシンシアの旅は終わりました。
あとはエピローグを投稿すれば終わりなのです。
が、済みません。その前に実はあと一ネタ仕込んであります。
残り数レス、お付き合い下さい。
5:箸休め
06/01/24 22:29:06 LKeJxKyi0
放たれた大火球が炸裂したのを見て、勝利を確信する。
だが、其れが敗因だった。攻撃するなら灼熱の炎でも輝く息でも吐けば良かったのだ。
とにかく、呪文でなければ足を止めることは出来ただろう。
炎を全身に纏いながらも、火球を抜け出し駆ける勇者の姿を見て、皆は安堵の溜息を漏らす。
紫の霧が、呪文の効果を勇者に届く前に完全に打ち消していた。
次手として、進化を窮めたと宣う化け物から放たれた、絶対零度の輝く息。
が、その数瞬前にブライが唱えたフバーハが、その威力の大半を削っていた。
その為、勇者の足を止めるには至らない。
エビルプリーストは両手を前に翳す。放たれたは凍てつく波動。
勇者の身を守っていたマホステの呪文も、炎吹雪を軽減する光の衣も、全てが消え去る。
その大口を更に異形に歪めて、紡がれる呪文。
が、後ろから密かに近付いていたトルネコがその口を塞いだ………!!
身震いで小賢しい商人を振るい落としたときには、勇者は直ぐ其処に迫っていた。
右手で薙ぎ払おうと、強大な鉤爪を振るう。
然し、其の世の何よりも強大なその凶器は、寸前で勇者に届かなかった。
全身の力を振り絞って、ライアンが世の何よりも硬い剣で押し留めている。肉の中程まで食い込む刃。
呆気にとられたのは一瞬か、だがその一瞬。
「てやぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」
彼女にとっては一瞬もあれば十分だった。死角から迫っていたアリーナの必殺の一撃。いや、二撃。
ただの魔物相手には必殺であっても、この化け物には体勢を崩す程度のものでしかなかった。
だが、崩した姿勢は再び僅かな隙を生む。
勇者は、押し留められている右手を踏み台に、大きく飛び上がった。
6:箸休め
06/01/24 22:30:40 LKeJxKyi0
「ギガッ―――」
天空の勇者にしか身につけられない神秘の剣が光を放つ。
所詮人間。勇者とはいえ矮小な生き物に過ぎない。天空の血?そんなものがなんだ。
天空の竜なぞ、既に敵ではない。此奴等を倒し、地上を征服した次に滅ぼされる存在よ。
進化を窮めたわれが、この様な生き物の攻撃に滅ぼされる筈がない。
例えどんな傷を受けようと、其れすら更なる進化の糧にしてくれる………!!
空いている手で頭を庇うような素振りを見せる。
だが。
光が満ち満ちて、天空の剣は其の刀身を視認することが困難になっていた。
「ソードォォォォッ!!!!!!!!」
振り下ろされる光の斬撃。
その狙いは急所ではなく。
完成した進化の秘宝。その魔力増幅装置である、黄金の腕輪。
光の刀身と錬金術の奥義・黄金の腕輪は反発し、放たれる昏い光と眩い光。
鬩ぎ合うその時は、永遠のものと思われた。いや、思ったのは一撃を放った勇者だけか。
掛かる時間は一瞬。威力に耐えきれずヒビが入り、次の瞬間砕け四散する黄金の腕輪。そして斬り落とされる腕。
7:箸休め
06/01/24 22:32:12 LKeJxKyi0
「グッガァァグォォガjwgyケウィhタwヌユゴイ@dスy!!!!!!!!!!!!」
進化の秘宝は、黄金の腕輪により増幅された闇の魔力が完成させた。
ならば、その増幅装置であった黄金の腕輪が存在を失ったら?
答えは目の前で繰り広げられていた。制御の効かない躯。崩壊していく体。溶け出る肉。
だが、膨大な魔力は確実に未だ醜い身体に残っており、その力は未だ健在。
「ぐぅっ!」
腕(であったもの)にライアンも勇者も薙ぎ払われた。
だが、期せず距離を取ることになった勇者は、隣にヤツが居ることを肌の感覚で悟る。
だが、そんなことはどうでも良い。今はあの化け物を………ッ!!
先程受けた一撃によるダメージと、限界に達した体力に悲鳴を上げる身体に鞭打ち、立ち上がる。
「ギガ―」
「ジゴ―」
集中する意識と魔力。鏡あわせのように突き出された腕。二人は同時に其れを開放する。
「デインッ!!!!」
「スパークッ!!!!」
選ばれし者のみが操ることを許された、窮極たる二つの雷の呪法。
天より降る雷と、地より昇る雷。
相反する雷は。互いに、喰らい合い絡み合い増幅しながらエビルプリーストであったものを灼き尽くす。
「わ、われこそ…は、魔…族の王、エビルプリースト……世界を…支配する……ッ
そのわ……れが、われがこ…んな処でっ……こんな処でぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
その肉片、細胞、塵一つすら残さぬ威力の雷が、進化の系図から外れた化け物を蹂躙する。
轟く雷鳴、唸る稲光が、進化の道から外れた化け物をこの世から、完全に消し去った。
8:箸休め
06/01/24 22:34:36 LKeJxKyi0
数年ぶりの村。いや、村であった処か。
残酷な時の流れは、全てに平等だった。
辺り一面に広がる草むら。辛うじて家だった物だと判る物体にからみつく蔦。
目を閉じれば浮かぶ惨劇の痕は、時間と植物たちの生命力が覆い隠していた。
未だ痛む拳が、此で良かったのかと問いかける。
マスタードラゴンの声が聞こえると、ピサロが一歩引いた。
「仮にも魔族を束ねるものだ。天空の城に入ることはできない」
静かな声で発された言葉は、この男との別れを意味していた。
目的が同じだから仲間に入れた。わだかまりは確かにあったが、仕方がなかった。
殺しても殺し足りないほど憎いのは確かだが、此奴も…………
「歯を食い縛れよ」
前もって掛けた声は其れだけ。
意味するところを察して、黙って従うピサロを確認する。
右拳をぎゅっと握り込んで、左頬に向けてそのまま思いっきりアリーナ仕込みの一発を喰らわせた。
仲間が、その痛みを想像して顔をしかめるほどの一発。
それでも倒れなかったのは、魔族の長としての矜持か。辛うじて踏みとどまった。
「本当は、今すぐにでも殺してやりたいぐらいだ。
けど、ロザリーさんに免じてその一発で我慢してやる。
だけど、きっと僕はお前を一生赦すことは出来ない」
ピサロは一度だけ、深く頷いた。
9:箸休め
06/01/24 22:35:49 LKeJxKyi0
天空の城ではマスタードラゴンに、城に残らないかと云われた。
だけど、其れを受け入れることはしなかった。
地上の人のため。別に其処まで高邁な精神でやってきた訳じゃない。その殆どは復讐のためだ。
だけど、全てを失った自分が手に入れた、其れが仲間との絆だった。
再び其れを捨てるだけの強さは自分にはない。だから地上に残った。
みんなの笑顔を見るのは好きだ。だから、みんなに帰るところがあり、待つ人がいるのは嬉しかった。
例え、自分を待つ者が、誰もいなくとも。
先ずは、みんなのお墓を作らないと。
供養もされずに数年間放置してしまった。仕方ないとはいえ、やはり申し訳ない思いで一杯だった。
彼処は宿屋のおじさんの家で、此処にあった家が、僕があの両親と暮らした家………
既に跡形もないほど破壊されていても、17年間暮らした村だ。目を瞑ってたって歩ける。
そして此処が…………
無意識のうちに懐をまさぐっていた手が握っていた物。シンシアにあげたはねぼうし。
血に塗れ汚れた其れを、拾ったあの日からずっと懐に入れ持ち歩いていた。
村を発った日からずっと泣くことはなかった。その目に涙が溢れる。跪いて啼き叫ぶ。
其れはまるであの日の焼き増し。あの日以来止まった時に繋がる時間。吹き抜ける一陣の風。
10:箸休め
06/01/24 22:40:23 LKeJxKyi0
痛みも苦しみも哀しみも辛さもない、ただただ光に満ちた世界。
流れるは、何ものにも邪魔されることのない、幸せの時。
たゆたうように眠りを過ごす其処で、ずーっと夢を見ていた。
わたしが望んだ形ではないけれど。あの人と一緒に居られた夢。
其れだけで充分だった。それ以上何もいらなかった。
そして、泣き喚きたくなるくらい、その夢のわたしが、妬ましかった。
わたしが欲しかったのは、其れ。その時が欲しかっただけなのに。
叶わない夢。叶ってはいけない夢。叶ってはいけなかった夢。
――どうして?願うことすら罪だったの?赦されないことだったの?わたしは、ただ。ただ――
声なき叫びと叫びがもたらしたのは、奇跡だったのか。
全てが調和された世界に生まれた綻び。止まった時に繋がる時間。吹き抜ける一陣の風。
身体を襲う浮遊感に戸惑う。身体に感じる感覚など、此処で感じることなど無かった。
訝しみながらも開けた目に映ったのは。丈の長い草むらの中、蹲りながら嗚咽する緑の髪の青年。
11:箸休め
06/01/24 22:41:06 LKeJxKyi0
「ちょっとおっきくなったかな?」
背中に声が掛けられる。響いた声は、ずっと耳から離れなかった声色。もう一度聴きたかった声音。
驚きで嗚咽が止まる。反射的に声のしたほうを振り向く。
もしも此処で思った通りの人がいなかったら、きっと勇者は壊れていただろう。
だが、其処に立っていたのは。物心付いた頃から、変わらずに共にいた娘。
「あー、もうそんな顔しちゃって。綺麗な顔が台無しじゃない。
なに握りしめてるの?其れ、わたしにくれたはねぼうし?
うわぁ、凄い汚れちゃってるよ。ひどいなぁ、結構気に入ってるのに?」
あっけらかんと宣う娘。顔には笑みが浮かんでいる。
だが、その瞳は何処までも深く、そして優しい。
「シン………ッ!」
声にならない叫び。立ち上がるのももどかしそうにシンシアに抱きつく。
其れが幻でないことを願いながら。その姿が消えないように。二度と居なくならないように掻き抱く。
理由など、どうでも良かった。其処にいる事実だけが欲しかった。
存在を確かめるように肉の感触を確かめる。
「もう。図体ばっかり大きくなっても、まだまだ子供なんだから」
胸に埋められた頭を撫でる小さな手。そして掛けられる砂糖菓子のように甘い声。
胸に満ちる暖かい想いに、あの日以来張っていた心が解きほぐされる。
「シンシアッ、僕は……僕は………っ」
伝えること、伝えたいことがいっぱいある。だが、想いが溢れて言葉にならない。
「大丈夫、時間は此からいーっぱいあるわ」
涙で溢れた瞳ではどんな表情をしているか確認することすら出来ない。
でもきっと。涙の向こうでいつもの、僕の大好きな満面の笑みを浮かべていることだろう。
両手で頭を抱えられる。首筋に掛かる暖かい吐息と冷たい滴。心臓の鼓動と感じる体温が、心を融かす。
そして掛けられる優しい声。
「おかえりなさい。わたしの大切な――」
雲一つ無い空は何処までも高く青く、照りつける太陽の光は地上にある全ての命を祝福していた。
Fin
12:箸休め=だんご
06/01/24 22:49:30 LKeJxKyi0
殆どの人は気が付いていたかもしれませんが、箸休めを書いていたのもわたしです。
箸休めを書いてたら、シンシアが酷い目に遭うじゃないですか。
心が痛くなってねぇ。それでなんとかしてやりたくて、シンシア道中記に着手した次第です。
で、そっちを書いている間に、箸休めで書いていたシンシアにもちゃんとした結末を付けてやりたくなって。
というわけで、仕込んでいた一ネタが此でした。
今度こそ、次にエピローグが来て終わりです。その他諸々の云いたいことは、その時に。
ていうか、わたしが思わぬ処で前スレを埋めちゃったから、みんな迷子?誰も書き込み無いよっ!?
自分で一人でスレ独占というのは、なんか胃に悪いです。
気が付いてー戻ってきてーわたしが悪かったからー
ということで、ageます。
13:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/24 22:54:41 F/sa65se0
新スレ立て乙
そしてだんごさんもGJ!
14:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/25 20:16:39 QYzNn9OE0
住人がきづくようにage
15:名無しでGO!
06/01/25 21:16:18 VzItfgsi0
漏れも同じ理由でage
YAMA氏早く来ないかなぁ
待ってるでぇ
16:YANA 63-1
06/01/25 22:24:22 a8WggDG90
シュウウウウゥゥゥゥゥ…
「………っ」
ガランッ
「ケホッ、ケホッ…ゴ…ゴドーっ!!」
「………」
「…ほう。イオナズンを受けて、尚立っているとは。やはり、ここまで辿り着くだけはある。
だが、それが限界だろう、人間。いっておくが、わしの魔力量を貴様らの常識で考えん方がいいぞ」
「…っ…(…しくじったな…神経系と骨格はとりあえず無事…訂正、あばらが三本、逝ってるな。…右目の視力が若干低下…問題なし。
内臓は…まぁいい、どの道とりあえず放置してもあと三十分くらいはいけるはずだ。外傷は…)」
スッ
「ベホマ」
ポウゥッ
「!ほう、完全治癒魔法か。だが知っているぞ、その系統の呪文で治せるのは〝直接触れられる〟傷だけだろう。
打撲や裂傷はともかく、内部の損傷までは取り繕えまい」
「…(ご名答。…ちっ、肺と心臓が音を上げてやがる。もう少し辛抱強いかと思ったが…根性無しめ)」
「そら、休んでいると黒焦げだ。メラ…」
「!ちぃっ!」
ダンッ
「ゾーマッ!!」
ボッッッッッ、ヒュンッッッ
トンッ
「ゴドー!」
「アリス、ぼさっとしてる暇はねぇ、走れっ」
「え、あ、うん!!」
「イオナズンッ!!」
ズドオオオオオォォォォォンッ
17:箸休め=だんご
06/01/25 22:24:26 11x3xSuG0
epilogue
「ふ~んふふ~ん~♪」
鼻唄を歌いながら台所に向かう彼女をを眺めつつ、食後のお茶を啜る。
彼は一日の労働による、心地の良い気怠さに身を任せていた。
世界のためにと剣を振るった手には、農具が握られ、
戦うことしか考えていなかった頭は、日々の生活をどうするか思案するのに使われていた。
命のやりとりをする必要のない、ただ生きる為だけに過ごす平穏な日々。
それは、飽きるほど退屈だけれど、何よりも幸せな日々だった。
自分たち二人しかいない名もない村。生まれ育ち、そして鎮魂のために暮らす場所――
「飽きた」
振り向きざま発せられた言葉を理解することは、彼には不可能なことだった。
「飽きた。飽きたの。もーうーあーきーたーのーぉー」
「え?何に?洗い物が面倒臭いなら替わるけど………」
「違うの、此処の生活に飽きたのっ」
いったい何を仰っているのだ、この娘さんは。
「だって、毎日毎日毎日同じ事の繰り返しじゃないっ。なんか別の事しないと腐っちゃう。
そうよ、刺激。わたしは刺激が欲しいのよっ!!あなたもそうでしょ?」
「いや、別に。僕は今の生活も充分しあ………」
18:箸休め=だんご
06/01/25 22:25:04 11x3xSuG0
やべ、被った。自粛します。
19:YANA 63-2
06/01/25 22:25:06 a8WggDG90
「くそ、そりゃそうだ、魔王ともあろう者が、呪文を使えないはずがねぇ。見くびってたな、これじゃ近寄れねぇ…!」
「いってる場合!?なんか策は無いの!!?」
「今考えてるっ。とりあえず、目には目を、魔法には…魔法ってところだ!」
ザッ
「ぬ?」
「腹を狙え。俺は頭を吹っ飛ばす」
「了解!メラミッッッ!!」
「ライデインっっっ!!」
「!!」
ボンッッッ、ピシャアアアアァァァァンッッッ
シュウウウウゥゥゥゥゥ…
「今度はどうだ、この野郎…」
「はぁ、はぁ…」
「…なんだ、それは」
「「!?」」
ブンッ
「女の火球魔法が足しにもならんのは云うに及ばず…勇者であるゴドーの雷ですら、わしの頭部を少々焦がした程度じゃ。
云っておくがな、わしと呪文で張り合おうなど愚の骨頂だぞ。やるのなら、そう…やはり、斬撃が一番堪えたな、くくっ」
「…あいつ…完全に誘ってるわ」
ギリッ
「ああ。…だが、現時点の俺たちの手札じゃ、打撃が一番有効なのは多分、本当だな」
「でも、あいつの懐に飛び込むなんて、自殺行為よ」
「………呪文がやばいなら、封じてみるか?」
「…はぁ?…ちょっと、まさか。相手は魔王よ、通じるかどうか」
「賭けてみる価値はあると思うぞ。どの道、このままじゃジリ貧だし」
「…ああもう、わかったわよ。やってやるわ」
「いいか、次に奴が魔力を集め始めたら…」
20:YANA 63-3
06/01/25 22:25:36 a8WggDG90
ザッ
「ふん、鬼ごっこは仕舞いか?」
「ああ。お望み通り、肉弾戦で相手をしてやるよ」
「ほほう。腹をくくったか、その潔さや良し、褒美に一撃で灰にしてやろう」
「やってみろ…はぁぁぁっ!!」
ダンッッッ
「性懲りも無く…メラ」
マホトーンッ!!
「ゾー…マ………な…に…!!?」
ガシュッッッ
「グハッッッ!!」
「あ…ホントに効いた」
「もろに入ったな…今のはちょっと痛いはずだぜ」
「ぐ…女、貴様、魔封じの呪文を…!?」
「ええ、さっきからあたしのこと眼中に無かったみたいだったけど、ちょっとは見直したかしら?
でも、魔王ともあろう者にこんな安直な手が通じるとは思わなかったわ。…あんた、案外搦め手には弱いんじゃないの?」
「ぬぐ…」
「さっきの続きといこうか。本当の地獄を見せてやる…アリス!」
「!」
「一気にけりをつけるぞ。…ついてこれるか?」
「…舐めないでよ。あたしがついていけなければ、誰があんたについていけるっていうのよ」
「…くくっ、たかだがわしの呪文を封じた程度で、何をいい気に。状況が振り出しに戻っただけではないか」
「それはどうかしら?…バイキルト!スカラ!」
ミシミシッ
「!…女…」
「…覚悟しろ。その肢体、原型がなくなるまでぶった切ってやる」
「あんたなんかに…あたしたちは止められない!!」
ダダンッッッ
21:YANA 63-4
06/01/25 22:26:08 a8WggDG90
「!!(バカな…この踏み込み…さっきので全力のスピードではなかったというのか!?)」
ザンッッ
「ぐ…このっ!!」
ブンッ、ゴッ
「くっ…上等、そうこなくちゃな」
「ほら、いつまでもどこ見てるのよ!」
「!ぬぅっ!」
ズシャッ
「く…ふ…(…捉えきれんだと…!?魔王である、わしが…!!)」
「決めるぞ、アリス!」
「ええ!」
ダダンッッッ
「(この…!!)…虫けら風情が…っ…図に乗るなああああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ゴオオオオオォォォォォォッッッッッ
「(…ほの…お………?…あれ、何かゆっくり…避けて…あー…ダメだ、あたしの動きもゆっくりだ…これは………やばい、かも…)」
22:YANA
06/01/25 22:32:04 a8WggDG90
うあ、かぶっとるorz
参上!
だんごさん、貴殿の意志はしかと受け取った!!
てか実はここ一週間くらい前まで、ダチのとこからかっぱらってきた
PS版ドラクエ4を全力クリア(PS版は初プレイ)してました。
更新遅かったのは本業が忙しかったのに加えて、そのためもあります。
そして一週間前、真のエンディングを迎え、ここに座っています。
そしてだんご氏に云うことがある。
ありがとう。実に五年越しのアナザーエンドに立ち会える幸運に感謝します(FC版クリアが五年前)。
23:箸休め=だんご
06/01/25 22:39:36 11x3xSuG0
「何云ってるのっ!良い若いもんが今からそれじゃあ、先が思いやられるわっ」
思いっきり眼前に指を突きつけられた。
「ということで、明日から旅に出ます」
「ちょっ、なに云ってるのっ!それじゃ、誰がいったいみんなのお墓をみるのっ。
それに云ってたじゃないかっ。ずっと此処で暮らすのが幸せだってっ」
「うん云った。だけど、ちょっと出掛けるぐらい良いじゃないの。
その位の間お墓の世話が出来なくたって、みんなも文句云わないわよ」
「いや、そういう事じゃなくてさ。然も明日ってなんなんだよっ」
慌てふためく彼を一瞥すると、彼女は言い放つ。
「ふーん、別に良いわよ、あなたが来なくても。そしたらわたしは一人で行くから」
「………!!!」
一度決心を固めた彼女を動かすのは、余程のことがなければ無理だと判っている。
そして今は、余程の事なんて何処にも転がっていない。
ああつまりだ。一人で行かせたくなければ、僕は彼女に付いていくしかないのだ。
思わず頭を抱えたくなるが、辛うじてそれは押し留めて問う。
「で、何処に行くつもり?」
「?そんなの決まってるじゃない、世界一周よ」
頭を抱え込んでしまった。
「いいじゃない、あなたが平和をもたらした世界を見て歩くのよ。
あなたの辿った足跡を辿ってね。ふふふ、楽しそうじゃない?」
本当に楽しげな笑みを浮かべて、心底嬉しそうな声を出す。ああ、心が融けそうだ。
24:箸休め=だんご
06/01/25 22:40:45 11x3xSuG0
「そしたら、みんなにもまた会えるよ?」
なかなか魅力的な条件を提示してくる。導かれ、共に戦った仲間とは確かに強い絆で結ばれている。
だが、みんなにも自分の生活がある。離れて暮らしていればなかなか会えるものではない。
「ねぇ、あなたも一緒に行くでしょ?」
止めは熟し切った果実のように甘い、問いかけ。彼にはもう頷くことしかできなかった。
「やったーっ!!じゃあほら、早く準備して早く寝るのよ。明日は早いんだからねっ」
全身から喜びを漂わせて、再び鼻唄を歌い始める彼女。
其の姿を見て溜息を吐きつつも、口元がにやけてくる自分が居る。
色々云いたいことはあるものの、喜んでいる姿を見て嬉しくないわけがない。
「もうっ!!あなたも早くこっち来て手伝ってよー!!」
ゴメンと呟いて、立ち上がった。
明日からは久方振りの旅の日々がやってくる。ワクワクしないと云ったら嘘になる。
だが、それ以上にただの旅行者として……
いや、洞窟に潜るとか言い出すかもしれないから、そんなにお気楽ではいられなさそうだ。
それでも。彼女と二人で、再び巡る世界は、きっとひどく楽しいものであろう。
それは掛け替えのない記憶となって、彼の人生を更に彩る筈だ。
其の日々を想像し、期待に胸を躍らせながら。
かつての勇者であった男は、彼の愛するシンシアを手伝うために歩き出した。
END
25:YANA
06/01/25 22:41:05 a8WggDG90
ってか前スレが512オーバーになった原因は八割がた俺のせいなんだろうなぁ…スマソ
ああそうそう。
前にやった次回予告の内容が63話に入りきらなかったことに謝罪を。馬鹿か、俺はorz
どうしても、ここでバラモスの呪文を封じておきたかったので試行錯誤したら鬼長くなっちまいました。
26:YANA
06/01/25 22:44:08 a8WggDG90
>>25
馬鹿だ。ここに馬鹿がいる。
お詫びといってはなんですが、64話も掲載。
27:YANA 64-1
06/01/25 22:45:00 a8WggDG90
ボオオオォォォォォ…
「………」
「………」
「…ふん、死んだか。よもやわしが、人間風情に本気を出すことになるとはな」
「………」
「………」
「…つまらん時を過ごした。暫し再生に専念するか…彼奴らの屍は、その後ゆっくりと咀嚼してやろう」
ズンッ、ズンッ
・ ・ ・
………………あれ?…ここ、どこ…?
確かあたしは………アイツと、バラモスを倒しに来て………。
…そっか。負けちゃったのか。…せっかく、アイツと今まで頑張ってきたのにな…こんなとこで終わっちゃうんだ…嫌だな。
もうちょっと、アイツと一緒にいたかったんだけど…。
………でも…えっと………〝アイツ〟って…誰だっけ?
………まずったな…というか、俺は馬鹿だな。あいつが火を吹く事くらい、予想できただろうに。
そうだろうよ、魔法を封じたくらいで勝てるような奴が、今まで世界中で誰も打倒し得なかった魔王であるはずがねぇ。
…っくしょう。アイツまで巻き込んで、派手な目標まで立てて、結局俺も、親父と同じじゃねぇか。笑わせる。
…俺が勝手にくたばるのは仕方ねぇ。でも、せめてアイツだけは………?
………アイツ?………俺は誰と、ここに来たんだっけ…?
〝少し、過去を振り返ってみよう〟
28:YANA 64-2
06/01/25 22:45:52 a8WggDG90
「誰かと思えばおまぁは・・・・・・・・・・・・誰だったかのう?」
スタロン…相変わらず、頭悪そうな顔してるわね。…って、そりゃそうか。あたしの記憶だもんね。
…そうそう、確かアイツとの出会いは、こいつに襲われるところを、助けてもらったんだっけ。
あの時は、アイツの勝手っぷりに腹立てたっけ…。
…うん、そう。アイツはすごく、勝手な奴だった。
「うわぁぁぁ!わかった、王冠は返すから、も、もう勘弁してくれ~っ!」
こいつは…確か、ロマリアの時の覆面パンツ…情けねぇ面しやがって。
アイツと冒険に出てから、初めてガチンコの殴り合いをしたのはこれだったな、確か。
アイツは、俺の戦い方が無茶だと呆れてた。
…そうだな。アイツは俺の無茶を見ると、いつもすぐにそれを咎めた。
「…私の眠りを妨げるのは…おまえ達か…?」
…わ、この人は…イシスの、幽霊。腕輪をもらったんだっけ。
もう、アイツってば、あたしの意思なんか無視して、夜のお城に忍び込むんだもん。
かと思えば、幽霊に平然と交渉成立させちゃって。
…あいつは、怖いものなんかないんだったよね。
「ありがとうございました!なんとお礼を言ってよいか!」
「うふふっ…仲、およろしいんですね!」
…えーっと…この二人は…そうだ、くろこしょうの。
あの時は、アイツが人攫いに捕まっていらん苦労をしたんだったな。…まったく、手間が掛かる。
…でもな…随分気が強くて、ことあるごとに突っかかってくるだけの女だと思ってたんだが…。
…アイツ、時々。本当に、極稀にだけど。物凄く優しい顔をするんだよな…。
29:YANA 64-3
06/01/25 22:46:27 a8WggDG90
「…んー、私は、もう賢者じゃないわよ?今はただの商人。枯れかけた夢を求める、ね」
アレイ…うん。あたしの、一番の親友。この時は賢者の修行を教わりに来たんだよね。
…でも、あたしもアイツも、この頃はまだあの子が心の奥で抱えてるモノのことを知らなくて…あの子の笑顔に、甘えてた。
…ううん、そうじゃない。甘えてたのはあたしだけ。
アイツはいつも仏頂面だけど…あの子のことを、あたしなんかよりもずっと理解してた。
「グォォォォッ!!黙れ黙れぃっ!!貴様ら生かしておけばいい気になりおってぇっ!」
やまたのおろちか。思えばこいつには、初めての敗北を味わわされたな。思い出すだけで腹が立つ。
あんまり悔しいんで少し鬱憤晴らしをしたんだが…まさかアイツが、あんなに泣きそうな顔するとは思わなかったぞ。
てっきりいつもみたいに怒鳴りつけられると思ってたのに…。
…ああ、くそ。アイツのああいう顔は怒鳴られるより堪えるんだ、って意識させられたのは、あの時だ。
「勇者よ、よくぞ来た!」
…あれ?この人は………あーっ!ランシールの、嫌味な神官!!
そうそう、ブルーオーブを探しに来たときは、この人に散々ねちっこく悪口いわれたのよ。
出てくるのはアイツの悪口ばかりで…まぁその後情けない顔でうな垂れてたから、あたしもすっきりしたけどね。
…そうそう、アイツの悪口いわれて腹が立ったの、あの時は不思議だったよね…。
「…で?あんた、海賊のアジトに盗みに入って、どう落とし前つけるつもりだい?」
…む。海賊の…。
俺の目玉と船を賭けて、勝負をしたんだったな。…アイツを賭けのチップにするのが、無性にムカついたのを覚えてる。
前にアイツに無茶をするなっていわれたばっかりだったのに、結局やっちまって。またあの顔をされる前に謝ったら…。
…俺は俺のやりたいように、か。…まったく、どうしろっていうんだ、アイツめ。………でも、そう。…少し、安心した。
30:YANA 64-4
06/01/25 22:46:59 a8WggDG90
「――ゴドー殿。…今一度。私の為に力を貸して欲しい…」
…エデンさん。勇者サイモンさんの息子さん。
お父さんの無念を晴らし、その目標としたお父さんを超えるために、サマンオサの魔物に戦いを挑んだ人。
最後は結局、アイツに国の未来を託して、復讐は果たせなかったけど…満足そうだったな。
…うん、アイツは、そんな風に、人の思いを優しく受け止めることも出来る奴だったんだ。
「かかか!そうか、人間にも貴様のような非情な人間がおるのだな!愉快よの!」
この汚い笑い方は…忘れもしねぇ、サマンオサの偽王か。
何年かぶりに本気でキレたんだっけな。…俺も、まだまだ理性を鍛える必要があるな。
そもそもエデンがあんな怪我をしたのも、俺がキレたのも、俺自身の判断ミスだった。…と思ったら。
…アイツは俺の行動をミスじゃない、もしそう思うならあとで自分が叱ってやる、と。…なんで喜んでるんだろうな、俺はよ。
「…よろしく、ここで医者をやっているライナーという者だ。よければ、名を聞かせてもらえるかな?」
あ…ライナーさん。綺麗で、大人で、強くて…そして、アイツへの好意を隠さない、真っ直ぐな人。
アイツがキレて右腕がなくなったとき、この人のところで治したんだよね。
…うん。わかってる。あたしがアイツに対して素直になれたのは、この人がいたからだってこと。
アイツはこれが終わったら、あたしに答えをくれるっていってたけど…ああもう、それも聞けないのかな…?
「…なぁ、あんたたち。そいつに用か…?」
…幽霊船のおっさん。あそこでは、色々あったな。
あの時は、俺自身が一番驚いた。まさか、アイツに俺の冷徹さを責められて、あんなに熱くなるとは思わなかった。
…最後まで、俺は俺であり続けるつもりだったのに。アイツに、俺が冷たい奴だって思われるのが、無性に許せなくて。
それでもアイツは…そんな俺に、ごめん、と謝った。
31:YANA 64-5
06/01/25 22:48:03 a8WggDG90
「………殺してやる。この町の人間。全員。一人残らず殺してやる…」
…あれ?これは…あたしじゃない。バークのときの。
もう、我ながら恥ずかしいこと思い出すなぁ。…頭に血が上って、アレイのことなんかこれっぽっちも考えないで、暴れようとして。
今、冷静になって考えると、あたしってば世紀の大殺人鬼になるとこだったわ。…それでも。それでも、アイツは。
そんなあたしの怒りに任せた正義感を、否定せず、その全てを肯定した上で、止めてくれた。
「…私たちは、ラーミアの巫女」
「…私たちは、ラーミアの巫女」
ラーミアの嬢ちゃんたちか。これは、ついさっきの話だな。
何百年…あんなところで、ラーミアの卵を守ってたんだよな。可哀想とか、幸せになれとか、赤の他人の俺にはいえなかった。
俺に出来ることは、ただ、二人が果てしない道を歩んできたことを、労ってやることだけだった。
………ん?…ああ、そうか。
――アイツは、俺が、二人を抱きしめた事に、怒ってたのか…そういえば、アイツには一度もしたことなかったな。
………(あれ?)。
………(む…)。
〝――まだ。何か一つ。もう少しで、『アイツ』のことを全部思い出せそうなのに〟
〝〝カタンッ〟〟
!!
!!
32:YANA 64-6
06/01/25 22:48:38 a8WggDG90
「ふーん。じゃあさ、僕が大きくなったら、強くなって、お兄ちゃんとお姉ちゃんを助けてあげるよ!」
うん…この子は…ジョン君。滅びの村、テドンの男の子。
一度目は我慢したんだけど…あはは、二度目は、ちょっと、無理だったな…。
「…そんな風に、辛そうな顔して一人で全部背負い込まないでよ…!」
…ポルトガでの事。いや、正確には、ムオルの村からの一連の出来事。
俺はアイツに、親父のことを知られたくなかった。…知られるのが、怖かった。
そう、あたしは、再びテドンを訪れたとき…そこで最後まで流さないと誓った涙を、流したんだっけ。
そんなあたしを、アイツは優しく、泣き止むまで抱きとめていてくれた。
ちょっとした出来心で、旅の仲間を作ってしまった。そいつは親父のことを知らなくて、魔物と戦うことを望んでいた。
心のどこかで、そいつは俺自身を見てくれるかもしれないことを期待した。だから、怖かった。
――アイツが、親父が勇者であることを知ったら、俺を〝勇者の息子〟としてしか見なくなるんじゃないかって。
よく、頑張ったな、って。そう、あたしが戦うことを決意させてくれた、あの人…オルテガさん、そっくりに微笑んで。
あたしはその時、あの人とアイツの関係に気付いた。…でもね。それももういいの。
でも、アイツは泣いた。笑顔で包み込むような慈愛はない。感情を殺し、平静を保つようなこともない。
それでもアイツは、不器用だけれど、それでも必死に、自分にとって俺は俺でしかないことを叫んだ。
それが、俺にとっては心の底から嬉しくて――ああ、なんだ。何も、難しいことはないじゃねぇか。
俺は、アイツが好きで好きで、いとおしくてしょうがなかったんだ。
あたしはオルテガさんに憧れた。けど、今のあたしの大切な人は、〝あの人〟でも、〝あの人の息子〟でもない。
時間が惜しい。グズグズするのは性に合わない。すぐにでもこの想いを伝えたい。
そうだった。あたしの大切な人の名は――
そのためには、あの野郎をぶちのめさねぇとな…なぁ…そうだろ!――
33:箸休め=だんご
06/01/25 23:21:06 11x3xSuG0
被らないよーに、時間をずらして書き込み。
まずは、YANA氏キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
いやもう、このままいつまでわたし一人なんだろうとか、
箸休めENDを複数回に分けて投稿するべきだったかとか、そんなこと考えてました。
良かった良かった。わたしの文はこれでもう終わりですが、此からも楽しみにさせていただきます。
ドラクエ4の方は、御礼を云われるとこそばゆいですが、
わたしの書いた拙いものが原動力になったかと思うと、それはそれで素直に嬉しいものです。
そして。此でファイナル!!本当に終わり。もうなんの隠し球もありません。
余り反響が無くてどう思って貰っていたのかは判りませんが、最後まで付き合ってくれた方々、本当にありがとうございました。。
せめて、割いてくれたその時間分が無駄にならない程度には楽しんでくれていれば幸いです。
何しろ、此処に投下したものが、生きてこの方初めてまともに最後まで書けて、かつ人の目にみせたものなので全くもって自信がありません。
まぁ、それでも自分なりに納得行くものになったと思ってます。
此が最後だから、もう一寸書きますよ。
34:箸休め=だんご
06/01/25 23:43:19 11x3xSuG0
確かシンシアを幸せにする為にはじめた筈だったのに、
なんか色々酷い目に遭ってるし、黒いし、毒吐きだしと、ある意味困ったキャラになっていたりして。いや、書くときはノリノリでしたが。
最初は執筆係氏の賢者にどうしても似てしまいましたが、最後の方は少しは違うものになってくれたような気もします。
つうかね、ツンデレむつかしいよっ、萌えを書ける人って凄いよっ。
意識しすぎて不自然になったところがチラホラ………
大した伏線もないですが、恐らく拾い忘れはないと思うし、使い古された感はありますが、ハッピーエンドに落ち着けて良かったかと。
因みに箸休めシンシアと珍道中シンシアは、全く別のパラレルワールドのようなものです。
かといって全く関係がないわけではないのは、幾つか本文に張った伏線からもわかるかと。
珍道中シンシアのあるところから、箸休め-珍道中-箸休めという構成が作れることに気が付き、
珍道中は全て夢にしようかと思ったのですが、そうするには少々進みすぎていたし、それはそれで可哀相なので、
箸休めシンシアは死んでいる間に共に旅するシンシアをのぞき見ていた(書いていてややこしい)、という形にしてみました。
もし、本文で此は判らんとか、此はおかしいとかあったら云ってください。なんかリアクションとります。多分。
もしも此でシンシアスキーが増えてくれたなら嬉しいなぁ。なんか、ググってみると不遇っぽいので。
二ヶ月の長きに渡り、ってホント長いな。わたしなどの拙い文にお付き合いいただき、有難う御座いました。
また、何か良いネタが出来たら書き込ませて頂きたいと思います。
それでは、名無しに戻りたいと思いますノシ
35:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/26 01:49:48 MonQ72ChO
迷える子羊が到着orz
そして来てみれば終わってるじゃないか!!そんな規制があるなんて知らなかったしヽ(`Д´)ノウワァァァーン!!
それはともかくだんごさんお疲れ様でした~
>>3-5の流れは混乱した…誰が書いてんの?ってw
個人的にはびっくりどっきりハッピーエンドって感じになりました
世界一周した後は、2人の子供が生まれちゃったりするのかな~
36:YANA 65-1
06/01/26 09:27:27 kOtTRS3M0
――――ベホマッッッッッ!!!!!
ズンッ
「…………………?」
ズンッ
「……………………貴様ら。何故…立っている…!?」
「…ゴドー」
「…アリス」
…!?…!!
「やっこさん、何か喚いてるみたいだぜ」
「あたしたちが生きてることが、よっぽどショックだったみたいね」
「…お互い、よく生きてたな」
「…んー、ホントは、ちょっと危なかったんだけどね」
「実は、俺もだ…丁度こいつが手元に転がってて、助かった。こいつの感触のおかげで、なんとかあっちに逝かずにすんだんだ」
「?…あ、オルテガさんの兜…捨てずに持ってたんだ。てっきり、もうどこかにやっちゃったのかと」
「ああ、俺自身びっくりした」
「でも…事態は何も好転してないのよね…どうするの?あいつの再生を何とかしないと、勝ち目はないわよ?
こっちは炎を封じる手立てはないわけだし…炎に対処しながらだと、絶対再生速度に追いつけないわ」
「それに関しては、同感だ。…いや実はな、ここにきて切り札を持ってきてたことを思い出したんだけどな…」
「は?切り札?」
「ああ…前々から用意して、袋に忍ばせておいたんだが…使う機会があまりにもなかったんで忘れてた」
「バカ。じゃあ、それで」
「待て待て。話は最後まで聞け」
「?」
「こいつを使うにはかなり接近する必要がある上…一発で奴の頭から足元まで、全身に当てないといけねぇ。
奴の炎とでかい図体のせいで、それが出来そうにねぇんだよ」
37:YANA 65-2
06/01/26 09:27:56 kOtTRS3M0
「はぁ…お手上げってわけ」
「さて、どうしたもんかな………ん?おまえ、その手にもってるのは何だ?」
「?………あれ、いつの間に。…ああ、思い出した。あたしも、これのおかげで意識を取り戻せたの。
…ほら、テドンの村のジョン君、覚えてる?あの子にもらった水鉄砲」
「………」
「ジョン君には悪いけど…まいったな…仇、討てそうにないなー…これでまおうなんかやっつけて…か…
いっそ、破れかぶれでホントに撃ってみる?案外効くかも…」
「………」
「…ゴドー?」
「…いけるぞ、アリス。あいつに勝てる」
「え、えぇ!?」
「よく聞け。…こいつを…」
「……!?」
「………!」
「…(…不可解。確かにわしの炎は奴らの全身を焼いたはず。我が炎に包まれたものは、例え極地の凍土であろうと溶解する…!!
生物や魔物でも云うに及ばず、その全身は灰燼となる…だが、あやつらはなんだ。なんなのだ!!?)」
「…いいな?」
「…わかったけど。本当に、そんなんでいいの?」
「ああ、アレがあいつに効いた以上、間違いなく効くはずだ」
「そうじゃなくて…あんた一人で」
「ああ、そっちか。心配するな…俺たちはもう」
「…うん。二人じゃない、よね」
「………」
「………」
コクリ
「…往くよ、ジョン君。あなたの力、あたしたちに貸して」
チャッ
「…往くぞ、親父。俺はあんたが大嫌いだ。だから、俺のために体を守ってくれとは言わん…」
ガチャッ、グイッ
「…(頼む。あいつのために、今だけは俺の力になってくれ)」
38:YANA 65-3
06/01/26 09:28:42 kOtTRS3M0
ザッ
「…よう。第2ラウンド開始といこうぜ」
「…不可解。あまりにも不可解じゃ。何故貴様らは生きている?人間の身であり、何故そう何度も魔王であるこの身に刃向かえる?」
「はぁ?…そんなもん、知るか。…ああ、そうだな。一言だけ答えてやるとしたら、それは…」
「………」
「俺たち人間は、今まさに死ぬ、っていう時に、時々何かに引き止められるんだ。
だからある意味、おまえや、他の魔物なんかよりもずっと死ににくい」
「…???…実に不可解。なんだ、それは」
「…俺たちは、それを」
――〝絆〟と呼ぶ。
「………」
「………くくくっ、くははははっ!!笑わせるな、そんな世迷言を!!よかろう、最早どうでもよい!!貴様らが今生きていようと、
それも無意味なこと!!今度こそ再び生き返らぬよう、そなたらのハラワタを食らい尽くしてくれるわ!!!」
「やってみろ」
チャキッ
「…ぬ?…貴様、一人か?おい、女、貴様は掛かってこぬのか?万に一つでも、わしの急所を捉えられるかも知れんぞ?」
「…ふん、あんたなんかにあたしはもったいないわ。いい、ゴドーを倒したら、相手をしてあげるんだから、
せいぜい殺されないように気をつけなさい」
「………思い上がるなよ、虫けら。よいか、ゴドーとやら。その兜一つがどれだけの力をもつかは知らんが、
先ほど貴様ら二人掛かりで返り討ちに遭った事を」
「ごちゃごちゃうるせぇ。こっちは肺がイカれて呼吸もままならねぇんだ、往くぞ!!」
ダンッッッ
「!ふん、莫迦め!!」
ブンッ、ゴッ
「!うおおおおぁぁぁぁっ!!」
ザンッッッ
「ぬぅ!?(効いていない!?…そうか、あの兜か…ならば攻撃の隙を突き、首元を…!!)」
スッ
39:YANA 65-4
06/01/26 09:29:17 kOtTRS3M0
「くらえっ!!」
「!」
ビチャッッッ
「むぅっ!!?(目に…何か…!!?)」
「はっ!!」
ザクンッ
「ぐお!!…ぬぐ…」
グシグシ…
「…何だ、今のは…」
「………」
キッ
「…女。何の真似だ、それは」
「知らない?………水鉄砲、よ」
「………」
「目にしみるでしょ?」
「………馬鹿に…するなぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」
ゴオオオオオオォォォォォォォッ
「!っと!」
タンッ
「ちぃ…」
「女、その位置にいる貴様なら確かに避けられよう、だがわしに接近戦を挑むゴドーは我が火炎を一身に浴びることになる。
それでよいのか!?よくはなかろう!!人間どもは馴れ合いが好きだからな、そら、こいつを庇いに来い!!」
「………」
「――いってるだろ。あいつは、俺を倒さねぇとおまえの相手はしねぇってな…!!」
ザクンッッッ
「がは!!…この…!!」
ビチャッ
40:YANA 65-5
06/01/26 09:29:47 kOtTRS3M0
「………」
「くはは!二度も同じ手を食うものか!貴様の役目は攻撃しようとするわしの目を撹乱することだろう!?
そんな水如き、払いのけられるんと思うたか!!」
「…おらっ!!」
ガシュッッッ
「くっ…よかろう!!こやつをくびり殺した後、女、貴様もゆっくりと嬲り殺しにしてくれるわ!!!」
ゴオオオオオオオオォォォォォォッ
「く…お…」
「熱かろう!?痛かろう!?苦しかろう!?」
「………」
ビチャッ
「無駄じゃ無駄じゃ!体に当たろうが目に当たろうが、そんな貧弱な水流では全てを焼き尽くすこの火炎は防げん!」
「…ベホ、マ」
ポウゥゥゥッ
「…む?…くくくっ、よいのか?回復などに手間をかけて。そんなことでは、わしの再生速度を上回ることなど出来ぬぞ…!」
ズブズブズブッ
「…いってろ。安心しろよ、おまえはちゃんと、俺が殺してやるから」
「ふん…威勢だけはいいな。だが、貴様が回復に一呼吸・一工程を置かねばならないのに対し、
わしは攻撃しながらでも再生による回復が可能…一対一の戦いならば、わしが絶対的に優位であると知れ!!」
「…ああ…(もう、知ってるよ…そんなことは…)」
ビチャッ
「…っ…目障りな女め。見ておれ、すぐにこの虫けらを叩き潰してやる…!」
ビチャッ
「…はっ、その台詞、何度目だよ。それが出来ねぇのは、証明済みだろうが…!!」
ビチャッ
「ほざけぇっっっ!!」
ゴオオオオオオオオオォォォォォォォッ
41:YANA 66-1
06/01/26 09:37:08 kOtTRS3M0
・ ・ ・
ビチャッ
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
「…く…(傷の再生は滞りなく行われている…疲労は拭えぬが、それは奴とて同じ…)」
「………でええぇぇぇぇいっ!!」
ザンッッッ
「ぐほっ…!!…う…(…何故だ…わしの優位は変わらぬというのに…何故わしが怯まねばならん!!?)」
「………」
「(見ろ…奴は既に喋る余裕すらないではないか…何を躊躇うことがある?)死ねェェェェッッッ!!」
ゴオオオオォォォォォォォッ
「ぐ…ベホ…マ…」
ポウウゥゥゥッ
「ボソボソと小賢しい…」
ビチャッ
「…貴様もだ女。いつまでそうして、わしの周りを這い回る?…まあよい。女だけなら問題ない。
この不快な勇者さえ消せば、わしの錯覚も収まろう」
ジャコッ
「!…(弾切れ…あいつからもらった水は全部当てた…あとは…!)」
キッ
「…頼んだわよ、ゴドー…!」
グワシッ、カランッ
「ぐ…」
「どうだ…この体勢なら身動きをとれまい。剣も盾も落とし…貴様には最早反撃の手段はない。
このまま握り潰すのは簡単だが………?」
「………」
「…(…?…女が水をかけてこなくなった?…ふん、何のつもりだったか知らんが、貴様だけなら殺すのは造作もない。
鬱陶しいゴドーめも、我が手中にいる…敗北は必至!)」
「…どう、した…殺さねぇのか?」
42:YANA 66-2
06/01/26 09:38:00 kOtTRS3M0
「…減らず口を。わしを嘲った事を後悔するがよい、その身はじわじわと焼き尽くしてくれる…!」
「…そうか。じゃ、最後に、俺の言葉を聞いてくれ」
「?…くくっ、よかろう。ここまでの善戦に免じて、遺言くらいは聞いてやる」
「………旅の航海中、海の上は魔物があんまり出なくてな…俺は、暇を持て余してた…
何しろ、打ち込める趣味っていうのが、あんまりなかった身だからよ」
「…?」
「それで、船に備え付けの釣竿を借りて、釣りをしてたんだ。…これが、意外と面白くてな」
「…??」
「…ところが、ポンポン釣り上げるうちに、魚の置き場所に困って…海水を汲み上げて、そこに放り込み始めた…」
「おい、貴様、何を言って…?」
「…で、その汲み上げた海水を、竿垂らしながら眺めてたら…面白い戦い方を思いついたわけだ…」
…バリッ
「…(…何だ?…奴の体に魔力が…?この期に及んで、まだ何かするつもりか…!?)」
「…さて、問題だ。―――おまえが、さっきから頭から腕から、全身に浴びてる水は、何だと思う?」
「―――」
サーーーーーーーーーーッ
「…き………貴様…」
バリ、バリバリッ
「…全魔力、収束完了」
ブン、ブンッ
「その腕を離せ!離れろっ!虫けらめっ!!」
「…せっかく掴んだんだ、遠慮するな。俺の全力の魔法なんて、滅多にあるもんじゃねぇんだからな…絞り粕まで持っていけ…!!」
「よせ、やめろーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!」
――ギガデインッッッッッ!!!!!!!
ピシャアアアアアァァァァァァァンッ
「ぐぎゃああああああああああああっっっ!!」
「はっ!」
ブンッ、トンッ
43:YANA 66-3
06/01/26 09:38:52 kOtTRS3M0
「ゴドー!」
「まだだ!」
ズンッ、ズンッ
「…まだ…じゃ…まだ勝負はついて…!」
ブスブス…
「…詰みだ」
チャキッ
「…ゴドオオオオオオオオオォォォォォォッ!!!!」
「…バラモオオオオオオオォォォォォォスッ!!!!」
ズパアアアアアァァァァァァンッッッ
――ゴトンッ
「………何か、言い残すことはあるか、魔王」
「…く…ふ…馬鹿な…わしが、たった二人の人間に…!!」
「………」
「………ゴ、ドー…わ、わし、は…あきらめんぞ…」
ズズゥン…
「…〝二人〟じゃねぇ」
ザッ
「…〝四人〟の勝利よ…!!」
「………あー…疲れたーーーーーーーーーーっ…」
バタンッ
44:YANA 66-4
06/01/26 09:39:57 kOtTRS3M0
「あ…大丈夫!?ゴドー!」
「…ん…ちょっと、不味い」
「ゴドーッ!!」
「…冗談だ。でも、半分は本当」
「………もう。今回のは、本当にひやひやしたんだからね。見てるこっちの身にもなってよ」
「アレしか方法を思いつかなかったんだから、仕方ねぇだろ」
「でも、これじゃまたあたしだけ楽をしたみたいじゃないの」
「ま、最後だし、力は出し切ったし、俺はこれでいいけど」
「あたしが満足しないのよ、それじゃ」
「…あーもう、うるせぇな、こっちはしんどくて口動かすのも億劫なんだ、文句は後でゆっくり聞いてやるから、今は黙れ」
「黙れって…そんな言い方はないんじゃない!?」
「黙らねぇと、無理矢理黙らせる」
「満身創痍で何いってんの。出来るもんならやってみなさいよ、バカ勇s………ん…ふ…」
「………」
「………」
「………」
つぷっ
「…(/////////)」
「………ありがとう、な。おまえへの気持ちに気付かなかったら、俺、あの時死んでた」
「………い」
「?」
「…ずるいよ。そんな風に言われたら、あたし、何もいえないじゃない…」
「…アリス」
ギュッ
「あ…」
「………俺、おまえが好きだ」
「………………うん…!」
「…帰ろうか。アリアハンに」
「…うん。でも、今はもうちょっとこのままで…」
「…そうだな」
45:YANA
06/01/26 09:49:12 kOtTRS3M0
俺の頭はスーパー系(挨拶
BGMの件については「島」のつく人の歌。何に影響受けてるかバレバレだね、俺
ちょっと解説。
真水って云うのは、実は世間で言うほど電気の伝達率よくありません(一部では絶縁体といわれてる程)。
で、これをやるのに一番都合がいいのが、多分に塩分その他不純物を含んだ海水。
死刑に使う電気椅子でも、死刑囚を一発昇天させるために海水を含んだスポンジを対象者の頭に乗せるのです。
46:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/26 14:20:03 fYbs1T/T0
鳥肌立ちますた・・・
GJです
47:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/26 16:49:41 FaItgeYF0
素晴らしい二人のチームワークでした。
次はゾーマ様の登場かワクワク
48:YANA 68-1
06/01/26 23:41:46 vvvSMveG0
『拝啓 …えっと…母さん、お久しぶりですね。…あ、まだ最後の手紙から、五日くらいしかたってませんでしたっけ。
もう、何ヶ月も手紙を書いていなかったような気がします。
私たちは、アリアハンに帰ってきました。…そう、私とゴドーは、無事、バラモス退治の旅を完遂して、帰ってきたんです!
これでもう、世界中が魔王の影に怯えないで生活できるんですよね。
私たちはこれから、王様のところにそれを報告に行くところです…短くてすみませんけど、今回はこれで失礼します。
安心して下さい、終わったら、すぐにでも母さんのところにも帰りますから。…その、会わせたい人もいるので! 敬具』
――ストンッ
「投函完了、と」
「終わったか?アリス」
「ん、ありがと、待っててくれて」
「俺はいいさ。ただ、町の皆が待ちくたびれてるかもな」
「………」
「どうした?」
「んーん、別に。…なんだかさ、ゴドー、表情が柔らかくなったなって」
「そうか?…そんなに硬い表情してたか、俺は」
「うん。いつも不機嫌そうに、眉間にしわを寄せてた…今だからいうけど、最初はちょっと怖かったんだからね」
「悪かった。勇者らしくあろうとして、結構、必死だったからな…こんな風に笑ってる余裕なんか、なかったんだろ」
「んー…でも今思うと、あれはあれでキリッとしててよかったかもね」
「なんだ、それ」
「あんまりヘラヘラ笑われても、それはそれで困るってこと。…あ、でも、ずっと仏頂面だと嫌だけど…その…」
「?」
「…そういう風に笑うのは、なるべく、あたしと一緒にいるときだけにして欲しいな」
「…ん、わかった。約束する」
「えへへ…」
「じゃ、行くか。門をくぐったら、もう町だぞ」
「うん!」
49:YANA 68-2
06/01/26 23:42:18 vvvSMveG0
ワァァァァァァ…
「「!!」」
よう、ゴドーッ!!やったじゃねーか!
バラモス打倒の報せは、すでにこのアリアハンまで届いております!
新たなアリアハンの勇者の誕生だーっ!!
「…報せに戻る必要も、なかったみたいだな」
「…そうみたいだね」
「ゴドー!」
「あ、母さん…」
「やったのね…うう…母さん、ゴドーが無事に帰ってきてくれたことが嬉しくて…」
「ああ、もう…泣かないでくれ。うん、大丈夫、やることやったら、ちゃんと家にも帰ってきて話をするから」
「うん…うん…」
「それじゃ、俺たちは城に行ってくる」
「あ、待って…」
「ん?」
「――おかえりなさい、ゴドー」
「――ああ、ただいま、母さん」
・ ・ ・
「お母さん、嬉しそうだったね」
「まぁ、何も知らない俺に、勇者の心構えから叩き込んだ人だから…喜びも一入(ひとしお)だろうな」
「…ねぇ、ゴドー」
「ん?」
「…帰ってきたんだね、あたしたち」
「…ああ、そうだな」
50:YANA 68-3
06/01/26 23:42:49 vvvSMveG0
「…!おお、ゴドー殿!ささ、上で王様がお待ちですぞ!」
「ああ、すまない」
カツン、カツン…
「ゴドー、いよいよ終わりだね」
「…長いようで、短かい旅だったけど…終わらせに、行くか」
「…うん。でもさ、あたしたちは…ここからが始まりでしょ?」
「…違いねぇ。じゃあ、〝始めに行く〟とするか」
「うん!」
ギィッ
「おおゴドーよ!待ちかねたぞ!」
カッ、ザッ
「はい。…勇者ゴドー、只今帰還しました」
「(ゴドー…やったね)」
「よくぞ魔王バラモスを打ち倒した!新たな英雄の誕生じゃな」
「は…」
「―――さすがオルテガの息子!国中の者がそなたをたたえるであろう」
「―――え?」
「………」
「さあみなの者! 祝いの宴じゃ!」
オオオオオオォォォォォッ!!
アリアハンの勇者、バンザーイ!
「ま、待って下さい、王s」
スッ
「!…ゴドー」
「………」
フルフルッ
51:YANA 68-4
06/01/26 23:43:27 vvvSMveG0
「でも、そんな…あんたの目的は…!」
「…今は、いい。魔王が滅んで、おまえがいて…今はそれだけで、十分だ…」
「……っ…」
「大臣!演奏の準備を!」
「はっ!全員、構え!…始め!」
ターン、タタタターン…
――ピシャアアアアアァァァァァンッ
「!!?なんじゃ!?」
「!?ゴドー!」
「…!!」
ピシャアアアァァァァンッ、ピシャアアアァァァァンッ
う、うわああああぁぁぁぁっ!!
ボシュンッ、ボシュンッ、ボシュンッッッ
「なに!?兵士に雷が…!?何が起こって…!?」
「…赤い、霧…?」
「え?」
「…上だっ!!」
キッ
「!?……………ちょ…ちょっと…何よ、あれ…」
52:YANA 68-5
06/01/26 23:44:22 vvvSMveG0
――ふふふ…喜びのひと時に 少し驚かせたようだな。
「ひ…ひぃ…」
「………」
「何なのよ、これ…悪い夢でも見てるの…?」
我は、闇の世界を支配する者…。
このわしがいる限り やがてこの世界も闇に閉ざされるであろう。
さあ 苦しみ悩むがよい…そなたらの苦しみは 我が悦び…。
命ある者全てを我が生贄とし 絶望で世界を覆いつくしてやろう。
「………何者だ、おまえは」
む?…貴様は…そうか、貴様がバラモスを…そうか、丁度よい。…よく覚えておけ、人間ども。
――我が名はゾーマ。大魔王ゾーマ。全てを滅ぼす者なり。
「…大魔王…」
「…ゾーマ」
そなたらが我が生贄となる日を、楽しみにしておるぞ…くははははははっ!
シュゥゥゥゥゥッ…
「………」
「………」
53:YANA 68-6
06/01/26 23:49:37 vvvSMveG0
ヨロッ
「!」
「お、王様!大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
「なんとしたことじゃ…やっと平和が取り戻せると思ったのに…闇の世界が来るなど、皆にどうしていえよう…」
「王様…」
「………」
「………」
「大臣…ゴドー…大魔王ゾーマのことは、くれぐれも内密にな…」
「は、はい…」
「………王様」
「………ゴドー。…そなたなら、或いはゾーマをも」
「!っ!!!」
「…いや、よい。聞かなかった事にしてくれ」
「………」
クルッ
「!ちょ、ゴドーっ!?どこ行くのよ!?」
「――」
ギィ…バタンッ
「………ゴドー…。…っ」
キッ
「…なんじゃ、そなたは…わしはもう疲れた…下がってよいぞ」
「娘よ、王様はお力を無くしておられる。用があるのなら、私が代わりに――」
「―――あなた達はいい。そうやって、勇者の起こす安易な奇跡に縋って、待っていればいいんだから」
54:YANA 68-7
06/01/26 23:50:15 vvvSMveG0
「…?」
「な…」
「あなた達は、一度でも考えたことがある?世界の全てを、望んでもいないのに背負わされた重圧を!
あなた達は、想像したことがある?そんな周囲の期待から逃げず、たった一人で、本気で全てを救おうとして、
皆が当たり前に得られる幸せを、笑顔を、友達を、通り過ぎて戦い続ける苦しみを!!
あなた達は味わったことがある?世界中から存在を祝福されながら、〝勇者の息子〟という記号でしか見られない虚しさをっ!!!」
「………」
「………」
「……っ……それだけです。失礼しました」
ダッ、バンッ…カンカンカンカン………ギィ、ギィ、ギィ
――笑っていた。嬉しそうだった。私に優しく笑み掛けて、抱きしめて、好きだといってくれた。
その笑顔が、再び消えた。あいつの顔は、以前のしかめ面に戻っていた。…それがきっと、あいつの勇者としての在り方だから。
あいつはまた、勇者に戻った。今度こそ、全てを終わらせるまで、あいつにあの笑顔は戻らない。
…そして、あいつはきっと、世界を救う。心と体を、鋼と剣で武装したまま。あいつは全ての闇を振り払う。
――そうして、最後に残ったあいつは、何を思うのだろう…?
55:YANA
06/01/27 00:11:18 ddNrmQOs0
俺 た ち の 戦 い は こ れ か ら だ ! 完
うん。嘘。引かないで下さい。
第二部 「ギアガ激動編」 完
…やっと、やっと長かった第二部が終了…しんどかった。
そして第三部、全体的な尺はまず第二部に及びませんが、ラストバトルの長さだけは比になりません。
…蛇足ですが、これだけ云わせてください。
それぞれの章にテーマソングをつけるなら、
第一、二部が「未来(あす)への咆哮」、
第三部が「GONG」です。
第二部は正統派の、弱き者を強大な魔物から守る勇者の物語。
そして第三部は…守りを捨て、未来を勝ち取りに行く勇者達、そして残された全てのか弱き人々の戦いの物語。
俺の人を楽しませる器が許す限り、どうか最後まで、二人の往く道を見届けて欲しいです…。
56:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 00:18:28 ciqkzEro0
ゾーマ様キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
57:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 00:18:34 VwOk20C80
ああ、一瞬本当に終わるのかと思ってあせった・・・
ゴドーとアリスのカップル本当に好きになりそうなときだったからな
第3部楽しみだ。
58:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 00:20:29 /h/bwEh+O
第二部完(゚∀゚)キタコレ!!
YANAさん乙です
59:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 00:35:41 BedNbFPNO
YANEさん超GJです!!(゚∀゚)
コレ、アニメにならんの?wあまりの物語に全身鳥肌総立ちです!!1111
そしてだんご氏=箸休め氏も超乙ですた!(`・ω・´)
60:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 00:45:57 Xh9rG5fXO
相変わらずGJです
BGMもハマってる!と思いきやナイルの流れ~で違和感がw
……イシス?
いやー燃えました。第三部期待
61:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 02:06:29 2waey+SS0
ドラクエ・FF版入れねぇなーとか呑気に思ってたら落ちたのか。
くそー、データ残してねぇよ…orz
まとめサイトあるけどやっぱスレ独特の空気がなー。
ってかだんご=箸休めさんお疲れw
ぶっちゃけ全然気づいてなかったですwww
シンシア良かったねー、ホントに良かった…。
YANAさんGJ!!二部完乙!!
気になるのはその他のキャラの再出があるのかってとこですww
そしてゲームやり直して気づいたが、サイモンの息子ってホントに出てるのなwww
では、皆ココだよageでwww
62:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 15:16:41 BedNbFPNO
神竜編はどうなるのかな~とふと思った。(´・ω・`)
神竜なかったらそれはそれで寂しいけど、話繋ぐのにやっぱ無理あるのかなぁ…
個人的には神竜編はすごく読ませていただきたいです。
63:YANA
06/01/27 16:58:30 xYsehYUf0
>>62
………。
1>とある事情で矛盾が生じるので、書かない(推奨)
2>エンディングやそれまでの流れとは全く無関係な、お祭り要素の一巻として書く(いつになるか保証できない)
3>それより次回作を見てくれ。こいつをどう思う?
さあ選べ(ぉ
第三部の展開を考えると、「天界」だの「神」だのが頻繁に語られる神竜編は、あってはならない矛盾になります。
…というのも、第三部の土台にあるのが、「精霊ルビス」の世界だから。
察しのいい人がどれだけいるかわかりませんが、俺から言えるのはこれだけです。
64:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 17:29:13 QFnto/mb0
てことは。
神竜編があるのなら、その舞台は異世界である必要が出てくるわけですね、おにーちゃん。
65:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/27 23:14:14 si3dsBj10
>>63
2に1票
66:YANA
06/01/27 23:56:34 MbdrR5Mz0
実は、二部中盤辺りを執筆中に、本気で考えたんです。神竜編をどうするか。
でも、アレフガルドや地上にまつわる、精霊神たるルビスたちの物語を
無視することが出来ず、あえなくストーリーに組み込むことを断念。
やるなら、世界を作ったルビス達「精霊」を蔑ろにせず、且つ、
神竜やゼニスらの「神」というポジションを確保した上で、独立したシナリオでやらにゃあなぁ、と。
ネタはあります。えぇ、山ほど。
ただし、クオリティは保証しません。今以上にやりたいこと全開、
どう見ても作者のオナニーです本当に(ry なことになります。それでもいいのなら…
劇場版!○○○○ー○!!(ネタバレワード)
ある日ゴドーとアリスが目覚めると、そこは天空に浮かぶ見知らぬ土地だった!
一方同じ頃、別々の場所で意識を取り戻す三人の仲間!
洞窟を進むと、そこには格闘場が!集結する勇者と愉快な仲間たち!
やめろ、ライナー!武器を収めろ、エデン!謎のトーナメントで繰り広げられる、猛者たちの宴!!
その頃アレイは観客席で菓子を売っていた!!
俺達をここに呼び出したのは誰だ?事件の背後に見え隠れする「かみ」の影!!
本編で実現されなかった夢のチームが、今、実現する!!!
…あなたは、こんなのを読みたいですか?
67:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/28 00:09:25 OsqeGct40
ああ、一寸読みたいかもなぁ。
(説得開始)
書いてたわたしが云うのもなんだが、此処に書いてるだけだって(ry
つうか、わたしのは間違いなくオナニーだったし。
まぁ、わたしたち読み手は与えられたものを貪るだけです。
書きたいのなら、是非。
68:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/28 00:12:30 Io8PZqEJ0
>>66
おもしろそうwwwwww
折角ネタあるんなら是非
69:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/28 01:02:35 mVbpJhGf0
ルビス様とゾーマ様がツンデレというのもなかなか面白い
70:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/28 01:48:18 14cB2OmV0
とりあえず、完全に番外編って形なら読みたいかなぁ…
だって、物語的にはゾーマ倒したら地上戻れないハズだし…違ったっけ?
71:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/28 02:03:58 hPE6uUWy0
>>70
違わない。
72:YANA
06/01/28 15:37:46 G6OAI4220
>>66
………。
なんだこの最高に頭の悪い構ってちゃんレスは。だから変なテンションの時レスをするなとあれほど… orz
よし決めた。書こう。ガチで書く。もう何も云うまい。
決定事項は、
「時間軸はゾーマ戦以降ではない、いつか」
「でも神竜が真の勇者の称号を得た者にしか会わないという設定は有効」
であるというニ点。
気長によろしく。
73:YANA 第三部序説-1
06/01/28 18:35:56 y1jyAXu60
――勇者ゴドーの伝説。
このギアガの地に住む者ならば、知らぬ者などいないだろう。
今では記録の上でしか確認することが出来ない「魔物」と呼ばれる、人に仇為す邪悪なる生命種。
ニ百年前、それを世界から根絶したとされている、完全無欠・無敵と伝えられる英雄の逸話である。
が。当時、確かに実在したとされる彼に関する記録には、謎が多く残る。
時にアリアハン暦864年、この地から、オルテガと呼ばれる勇者が旅立った。
旅の目的は、魔王バラモスの討伐。
…かの者は、当時でこそそれほど名が知られていなかったが、
その強大な力と、率いる数多の魔物の軍団でいずれ世界を手中に収めようとした、醜悪な怪物である。
しかしながら、勇者オルテガの魔王討伐は、彼の「魔物との死闘の末、火山の火口落下」という形で、失敗に終わった。
…勇者ゴドーの名が初めて歴史上に登場するのは、その十余年後である。
彼はオルテガの嫡男であり、父同様、勇者の称号を授かりアリアハンを旅立った。父の無念と遺志を、その胸に。
世界各地に逸話を残す、勇者ゴドーの、魔王討伐の伝説はこれより始まるのである。
ロマリアの地に曰く、盗賊に盗まれた金の王冠を奪還、かの盗賊も討伐。
バハラタの地に曰く、人攫いを討伐し、人質の男女を救出する。
黄金の国に曰く、五つ首の巨大なクチナワの変化を滅す。
サマンオサの地に曰く、王に成りすました怪物を倒し、国の危機を救う。
これ以外にも、その年代の、いくつもの国・町などの危機を救った伝承には、決まって勇者ゴドーの名が称えられている。
彼は魔王討伐の道中、これだけの、否、記録に残っていないものも含めれば、それこそ数え切れないほどの人間を救っているのである。
…そうして、最終的に彼の魔王討伐が成功したかというと…ここからが、歴史学者の学説が分かれるところだ。
74:YANA 第三部序説-2
06/01/28 18:36:41 y1jyAXu60
勇者ゴドーが、バラモスを倒し、アリアハンに凱旋したという記録は確かに残っている。
しかし、その凱旋の日付の時点で、「世界中の魔物が消えたという記録が何一つ残っていない」。
伝承によれば、「魔王を倒せば、その魔力で形成されている魔物の肉体は力の供給を失い、自壊する」とされている。
もし彼が本当に魔王・バラモスを倒したのであれば、世界中の魔物は凱旋の日付の段階で消滅していなければならないのである。
だが、その記録が、無い。
勇者ゴドーの伝説に否定的な立場をとる学者は、バラモス打倒の報告を捏造だとすることが多い。
又、凱旋の直後から、彼が歴史的に表立った活躍をしなくなったことも、彼が真相が世間の公になることを恐れ逃亡したのだ、
とする見方を強める要因の一つといえよう。
とはいえ、彼がそれまで行った人道的救済活動を鑑みるに、そのような捏造をやってのけるような人物とは、到底思えない。
無論、現在も大半の学者は彼の功績を考慮し、バラモス打倒に関しては真実であったとしている。
そして、もう一つ、不可解な点がある。
前述したように、彼はバラモス討伐の凱旋の直後、行方を暗ましている。
厳密には、それ以後も世界各地で彼の姿を見た、という証言は残っている。
だが、その様子はそれまでのように、歴史的偉業をなすわけでもなく、目立った活躍をしているわけではない。
つまり、彼は凱旋以後、勇者としての活動はしていない。
………だが。彼がそうして、勇者としての活動を停止した数ヵ月後…世界中の魔物は消滅したのだ。
これこそが、勇者ゴドーの伝説における、最大の謎である。
各地の記録を見ても、その時代に世界規模で活躍していた勇者といえば、彼一人である。
彼以外の勇者が、魔王を討伐したとは考えにくい。
加えて、魔物の消滅が記録された日付以降、彼の姿を見たという者は、世界中を探しても、誰一人存在しない。記録も残っていない。
これだけの材料が揃いながら、魔物の絶滅と勇者ゴドーの間に関連性を見出すなという方が無理な話だ。
彼が魔物絶滅に関わる〝何か〟をしたのは火を見るより明らかである。
75:YANA 第三部序説-3
06/01/28 18:38:59 y1jyAXu60
そうしてその〝何か〟について学者たちが議論している最中のことであった。
…ここに一冊の本がある。タイトルを『偽神のノート』…現在の義手・義足技術の発展に多大な貢献をした、
世界的医学者〝L.S.ライナー〟女史が、若くしてその命を閉ざさんとする晩年著した自伝。
これの出版が、〝何か〟の議論に一石を投じた。
ライナー女史は勇者ゴドーと同じ時代に生き、また彼の故郷と同じアリアハンで、当時闇医者を営んでいた。
その彼女が執筆した自伝には、一部で勇者ゴドーの名を何度か目にすることが出来る。
彼女が自伝で言うには、「ゴドーは大怪我をするたびに自分の研究室に来て治療を依頼して」いたのだという。
そして、驚くべきことに、そこには歴史学者なら誰もが興味を持っている〝勇者ゴドーの凱旋後の空白〟も記されていた。
…しかしながら、その内容は、にわかに信じられるものではなかった。
最初こそ歴史学者はこの自伝に群がったが、その内容のあまりの突飛さ・現実離れした単語の羅列に、次第に狂人の妄想だとか、
天才にありがちな性質の悪い悪戯だとかいわれるようになり、目もくれなくなっていった。
実際、ライナーという人物はかなりの変わり者で有名だったらしく、ゴミ捨て場の地下に住んでいたとか、
魔物を解剖するのが趣味だったとかいう逸話が有るくらいだ、無理もないだろう。
二百年後に生きる私だって、実際に読んでも信じられなかった。
――――そう。あの手紙が見つかるまでは。
アリアハンから遠く離れた、辺境の地の名も無い村。伝説の時代から姿を変えず残り続ける、保守的な山村だった。
先日、その村にある一つの民家の隠された地下倉庫で、大量の手紙の束が発見された。
その文面は、一人の少女が、母に自分の旅の過程を知らせるものだった。
…どうやら、魔物のいた時代のものだったらしく、彼らとの戦いの様子も散見できる。
だが、ここからが問題なのだ。
少女の手紙には、頻繁に「勇者ゴドー」の名が登場する。
更に言うなら、文面からいって、彼女は旅立ちの時からずっと、彼と苦楽を共にしていたと見ることが出来る。
それだけなら、勇者に憧れる少女の悪い冗談として流すことが出来るかもしれない。だが、そうもいかないのである。
76:YANA 第三部序説-4
06/01/28 18:39:50 y1jyAXu60
手紙の日付を見る。
…二百年前。そう、勇者ゴドーの時代、それもその全てが二年間という、短期間の間に投函・配達されたものだ。
鑑定の結果、インクと消印も偽造でなく間違いなく当時のものであることが証明された。
――二年間。歴史に詳しい諸兄ならご存知だろうが、この期間は、勇者ゴドーの旅立ちから、魔物根絶までの期間なのだ。
勇者ゴドーの伝説が記録としてまとめられ、学者以外の人間も閲覧できるようになったのは、今から凡そ百年前のこと。
つまり、当時の彼女が「勇者ゴドーの活躍に準(なぞら)えて、手紙の内容を改竄することは不可能」ということである。
これを踏まえた上で、手紙の内容を紐解く。
少女はゴドーとの旅での出来事を、事細かに手紙に記していた。
…ロマリアの金の冠。バハラタの人攫い。黄金の国の怪物退治。サマンオサの偽王打倒。
各地に残る逸話の記録された日付。そして、それらが記された手紙の日付。二つの間には、誤差といえる誤差が殆ど無い。
この手紙の主が勇者ゴドーと実際に旅をしていたのは、最早疑うべくも無いだろう。
さて。長くなったが、いよいよ本題に入る。
誰もが気になっているだろう。勇者ゴドー、凱旋以後の動向…勿論、それもこの手紙の中に記されている。
しかし、驚愕するような内容ではない。強いて言うなら、内容・日付などの記録の綿密さが、『それ』より遥かに増している程度。
――賢明な諸君なら、既にお察しのことと思う。我々は、「彼の動向を既に知っている」のだ。
私がこれについていうべきことは一つ。
――『偽神のノート』に、嘘は一切書かれていなかった。
ここに二つの記録が、偶然にも長き時を超えて存在し、同じ歴史を語っている。
77:YANA 第三部序説-5
06/01/28 18:40:27 y1jyAXu60
…しかしながら、かの本が語ったのは、ほんの一部分だけに過ぎない。
これよりこの手紙によって語られるのは、歴史の裏側、もう一つの伝説。
伝えよう。今まで、名も無かったこの物語を。
認めよう。いつの世も世界は完璧な英雄を求め、時代を必死に生き抜いた人間を神格化する。その偶像に甘えてしまう我らの弱さを。
受け容れよう。手紙に語られる勇者は、伝えられているような超人ではない、我々と同じ不完全な人間であったことを。
私は名づけよう。この、時の彼方に忘れられた、闇の世界の語り部に。
この手紙を遺してくれた、少女の名をとって。
『アリスワード』――と。
78:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/28 20:20:29 dmfkMv5UO
普段はROMってる私ですが是非見たいです、番外編。
79:名無しでGO!
06/01/28 22:19:21 W+DojnOB0
FFTのデュライ白書みたいな展開になってきましたね
期待してます
80:名無しでGO!
06/01/28 22:31:38 W+DojnOB0
始まりの部分ね
81:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/29 00:01:08 unNlmTNm0
ヤベェ…チョー続きがwktk!!
82:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/29 01:24:42 4L4oLJIY0
>>YANA氏
超乙であります!!
第三部、こういう展開大好きなんですわwwwww
期待しまくりんぐwwwwwww
>>だんご氏
遅ればせながら乙乙乙でござる!!!
これ読んでもう一度4をやりたい気がわいてきましたwww
上手く言えないけど本当に面白かったです!
またあなたの文に会えたら嬉しいなぁ
ありがとう
83:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/29 11:26:01 yHPwQZ2dO
横槍なレスだけど、ゲームじゃゾーマ破壊直後に世界が分断されてしまうけど世界が完全に分断されるまで多少時間がかかるとか、
キングヒドラに親父がぬわーされたあと一旦引き返すことができるわけでとか、
ゾーマ倒しても魔物が消えないよこの野郎仕方がないから神に訊けとか、
魔王の一番強い魔物軍団は実は神界を襲ってて一掃できるのは勇者だけ、とか、とかとか。
時間軸や設定に絶対無理、ということのない話は作れるんじゃないかなぁ。とふと神竜編を思い出してしまった俺はまた思ってしまうのです(´・ω・`)
とにもかくにも読みたいってだけなんで、おとなしく待つしかないのですが。
第3部、序説からなんかすごいのでこれからもワクテカしております。
84:YANA
06/01/29 13:34:30 aNz95iev0
83よ、すまん。せっかく案を出してもらって何だが。
その四つの案、どれか一つでも採用するとエンディングと
それまでの流れ全部台無しにする自信あるわ(;´Д`)
>世界が完全に分断されるまで多少時間がかかる
確実にクライマックスの展開に水を差します。
>一旦引き返すことができる
必殺を誓って敵地に乗り込んだゴドーは何があろうと敵に背は向けません。
(おろち戦ではアリスを守ろうとしたから。今回はアリスも必殺の覚悟)
>仕方がないから神に訊け・魔王~神界を襲ってて
しつこいようですが、この世界で「神」とはルビスのことです(公式設定)。H井氏はどうやらなかったことにする気みたいですが。
神竜のことは下界の人間は知りません。
あと魔王倒して魔物が消えないとやっぱりラストに水を差します。
神竜編に合わせてラストの展開を変える、っていう選択はまずありません。
かなり早い段階から、この展開の為に伏線を張りに張ったので。
まぁ、最後まで見届けて欲しいってのが本音です。
85:YANA 68-1
06/01/29 18:35:38 rzAgdKgp0
コオオオオオォォォォォォ…
「………」
「…クゥゥゥ」
「…ご苦労様、ラーミア。こんな陰気臭いところまで、よく飛んでくれた」
ザッ
「………ゴドー…」
『拝啓 母さん、まずは、ごめんなさい』
「………なんで、ついてきた」
「…当たり前でしょ。あんたを一人にしたら、何をしでかすかわからないもん」
「…おまえは、事の重大さをわかってるのか?」
「………」
『村には暫く、帰れそうにありません』
「…ギアガの大穴。いつかの祠で聞いた言葉…〝全ての災いはそこからいづる〟…」
「………見張りの兵士さんに聞いたわ。あたしたちがアリアハンでゾーマを見たのと同じ頃…
ここが大きく裂けて、何かが通り抜けて行ったって」
「…ここが、奴の居場所に繋がってるのは、多分、間違いねぇ」
「………」
「…だが、この先に何があるのかは分からん。無事奴のもとに辿り着けるかも保証できん。無駄死にするだけかも知れない」
「………」
『私たちの旅は、終わってなんかいませんでした』
86:YANA 68-2
06/01/29 18:36:11 rzAgdKgp0
「…もう一度云う。おまえは残れ」
「…やだ」
「………アリス」
「だって」
「聞け。…俺は嬉しいんだ。もう一度、親父を超える機会が巡ってきた。今度こそ、奴を倒せば、王様も俺を」
「うそ、だよ」
「………」
「…あんたはもう、気付いてるはず。どんなに頑張っても、王様はあんたとオルテガさんを別々には考えない」
「………」
「それに、今のあんたの顔は、バラモスを倒した時の百万分の一も嬉しそうじゃないよ…?」
「………」
「…あたしは、こんな中途半端なところであんたと別れるなんてやだ。せっかく、せっかくここまで来たのに…」
『これからが、本当の始まり…』
「………ねぇ、ゴドー。勝負、しようか?」
「…勝負?」
「うん。あんたが勝ったら、あたしはここに残る。でもあたしが勝ったら、あんたと一緒にここに飛び込む…どう?」
「…いいだろ。で、勝負の方法は?」
「………キスして」
「―――は?」
「あたしが満足したら、あんたの勝ち。もし満足できなかったら、あたしの勝ち」
「…なんだそれ」
「心配しないで。あたしは、真剣に審査するから」
「………………いくぞ」
「………………うん」
『もしかしたら、もう帰ることはないかも知れません』
87:YANA 68-3
06/01/29 18:36:43 rzAgdKgp0
「………ん」
「………」
スッ…
「………………不合格。あたしの勝ちね」
「…理由を聞かせろ」
「今のあんたは、空っぽだもん。そんな気持ちの無いキスじゃ、女の子は動かないよ?
…理想的なのは、バラモスを倒した時のキス。…うん、あれくらいあったかくないと」
「………」
「約束よ。あたしはあんたと一緒に行く」
「…一つ訊かせろ」
「なに?」
「…おまえは、何が目的で俺についてくる」
「…も、もう…それ、本気でいってるの?」
「当たり前だ、ふざけて訊くか」
「………好きな人の力になりたいっていうんじゃ、駄目、かな」
「(/////)………っ………ああ、もう、分かったよ。好きにしろ。知らねぇぞ、どうなっても」
『でも、心配はいりません。私たちは、必ずこの世界に平和をもたらします』
ザッ
「…秒読みは無しだ。一思いに行くぞ」
「うん」
ダンッッ
「………っ…!」
「…っ……」
ヒュウウウウウゥゥゥゥゥゥ………
『――それと、一つ約束をしてください』
―――――――――――ストンッ
88:YANA 68-4
06/01/29 18:37:18 rzAgdKgp0
『これから先の手紙は全て、念のため今までの手紙も一緒に、誰の目にもつかないところに隠して下さい』
「………………あれ?」
「………」
「…地面。…ううん、それだけじゃない。草原に…海?…どこ…?ここ…」
「…アリス。空を見てみろ」
「?………太陽が…ない…?」
『そして、誰にもその内容を口外しないで下さい。この事実は、多分、世界中を恐怖に陥れるから…』
――何か降ってきたと思ったら、あんたたち新入りかい。
「…ん?」
「…へ?」
「よう、あんたたち、上の世界から来たんだろう?」
「…上の…」
「世界?」
「おう、時々、上の世界の住人が、ギアガの大穴を抜けてここに降ってくるんだ」
「…悪い、おっさん。状況が掴めねぇ」
「そうだな、まずはこの世界の名前から教えようか。それ以上のことは、東に渡ってラダトームで聞いたほうが早い」
『全ての災厄の原因が住む世界。それは、私たちの大地の下に確かに存在します。その世界の名は――』
「ここは闇の世界、アレフガルドだ」
〝アリスワード〟 第三部 「アレフガルド激震編」
89:YANA
06/01/29 18:44:04 rzAgdKgp0
一応追記。
神竜編、番外編ではありますが、ゾーマ編以降の展開が全く内容に関係しないかっていうと、
実はそうでもありません。途中で、ちゃんとゾーマ戦以降の展開とリンクします。
ヒントをいうなら、『ひぐらし』の罪滅ぼし編を想像していただけると早いです。
(分かる人が何人いるかわかりませんが)
もし本編とのリンクについて心配されてる方がいる場合、そういうことでお待ち下さい。
90:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/29 23:41:03 vp0rXhag0
「アリスワード」がタイトルなんだね
wktk
91:YANA 69-1
06/01/30 18:18:33 PBuAHprZ0
『拝啓 母さん、お返事を、ありがとうございます。
それでは、全てをお話します。…まず、魔王バラモスは、本当に倒すべき敵の、手下の一人にしか過ぎませんでした。
そして闇の世界、アレフガルド。全ての災厄の原因…大魔王ゾーマの世界。でも、そんな世界にも、人間は住んでいます。
私たちは今、その世界の人々を治める唯一の国、ラダトームに来ています。
…しかし、この世界は暗黒に包まれ、太陽が空に昇ることはありません。…国の人々は言います。
ゾーマはそうして人間の希望を奪い、絶望を啜り、憎しみを食らい、悲しみの涙で喉を潤す…。
…かくして、ゾーマの思惑通り。この国の人々は、今、絶望に包まれています…。
私とゴドーは、何とかゾーマを倒す術を知るべく、ラダトームの王様を訪ねましたが…』
「………なんじゃ、そなたたちは。見ぬ顔じゃな…」
「………」
「そうか、そなたらもまた、上の世界から来たのか」
「はい。…私たちの世界も、ゾーマの脅威に晒されつつあります。ですので、ギアガの大穴を通り抜け…」
「…よい。みなまで言うな」
「…?」
「え…?」
「…わしはラルス。一応は、この国を治める王を務めている。…だが、それも肩書きだけのもの」
「「………」」
「ここに来るまでに、凡その事情は聞いているのではないか?…この国にあるのは絶望だけ…既に誰も、希望を失っておる…」
「…王様!それは」
「アリス」
「…っ……」
「…そなたたちは、ゾーマを倒すためにアレフガルドに来たのだろう?」
「はい」
「…ふむ…そうだな…そなたらがこの国に希望をもたらすというのなら、わしは待つとしよう…
入用なら、この城の空き部屋を使ってくれ。必要なものがあれば――」
・ ・ ・
ボフンッ
「………」
「…ねぇ、ゴドー」
「…なんだ?」
「…勇者って、何なのかな?…」
92:YANA 69-2
06/01/30 18:19:06 PBuAHprZ0
「…どういう意味だ?」
「だんだんね…あたし、分かんなくなってきちゃった」
「………」
「アリアハンの王様…この国の王様…皆、都合が悪いことがあると人任せで…」
「…しかもこの国は、その、人に頼る気力すらも、失いかけてると来てる」
「うん。………ねぇ。…人間って、本当に、救う価値があるのかな…?」
「…アリス?」
「だって、そうでしょ?…あんたがどんなに頑張っても…ううん、きっと、誰が頑張ってもそう。
皆、勇者、勇者っていって…こんなんじゃ、何をやっても、人間なんか滅んで当たり前だよ…」
「………」
「ゴドー、今からでもきっと、遅くない。勇者なんてやめて、あたしと一緒に村で暮らそう?」
「冗談じゃねぇ…俺の今までの苦労を無駄にする気か、おまえは。大体、奴を倒さねぇと遅かれ早かれ」
「わかってるよっっっ!!!」
「!…」
「だって、何をやっても無駄じゃない!?みんなみんな、危なくなっても自分じゃ何もしなくて!
あんただけが、傷ついて、倒れて、それでも立ち上がって頑張って!!それで危険がなくなっても、また大変になれば人に頼って!!」
「………」
「ゾーマを倒しても、倒さなくても関係ない!!…人間なんか…人間なんか…っ!!」
――コンコンッ
「っ……」
グシグシッ
「…どうぞ」
ガチャッ
「!…大臣さん」
「ゴドー殿と、アリス殿でしたな」
「はい」
「………はい」
「ゾーマを倒すのに有力な情報をいくつか持参しましたが…お取り込み中でしたかな?」
「………いえ。どうぞ、仰って下さい」
93:YANA 69-3
06/01/30 18:19:37 PBuAHprZ0
「はい。…まずは、この国の海岸から、向こうの大地にそびえる、靄(もや)の掛かった城…ご覧になられましたか?」
「…はい」
「あれが魔王ゾーマの居城。しかしあの島は絶海の孤島。回りは岩山に囲まれ、船で入ることは適いません。
まずはあの島に渡る手段を手に入れねばなりますまい」
「…何か、手掛かりは?」
「この国に、古い言い伝えがあります。…雨と太陽が合わさる時、虹の橋ができる。…何かのお役に立てばよいのですが」
「…雨と太陽、か」
「………」
「そして、この国に伝わる、三つの伝説の武具」
「伝説の武具?」
「遥か昔、この国に保管されていたものです。…王者の剣、光の鎧、勇者の盾。
…残念ながら、今は魔王に奪われてしまい、行方不明ですが」
「…なによ、結局あたしたちで探すしかないんじゃない」
「アリス」
「…ふん」
「いや、お恥ずかしい限りです。…ですが、逆にいえば、魔王がそれらを警戒したととることも出来ます。
伝説の武具があれば、奴を倒すことも或いは可能かと…」
「…わかりました。何とか、探してみます」
「…どうかお気をつけて。これまで数多の勇者が魔王を倒そうと旅に出ましたが…帰った者は、誰一人おりません」
「…心配には、及びません。私たちは」
――そう、あの――さえも。
「―――」
「――え…?」
「?どうか、なさいましたかな?」
グイッ
「ヒャッ!!」
「今、何ていった」
「で、ですから、魔王を倒そうと旅に出た者は、誰一人」
94:YANA 69-4
06/01/30 18:20:45 PBuAHprZ0
「違うっ!!その後だっ!!」
「え、は…そ、そう…あの〝オルテガ〟さえも…と」
「――」
「…そんな…こんなことって…ゴ、ゴドー!」
「…そいつは、何者だ」
「………実は、オルテガ殿は発見された当時瀕死の重傷を負っていて、その際記憶を無くされたらしく…
ご自分の名前と、アリアハンという土地から来たという以外のことは、何も」
「!!」
「アリアハン…間違い、ない…!」
「?…???そ、それがなにか…?」
「…親父が…生きてた…?………………アリス」
「…何よ」
「…勇者がどうとか、人間がどうとかは…とりあえず後回しだ」
「…聞くまでもないだろうけど。なにするつもり?」
「親父を追う」
「うん。わかった。そういうことなら、あたしも反論できない…でも、追って、それからどうするの?あんたは」
「………」
「もし、あんたがオルテガさんを今も許してなくて、殺したりするために追うって云うなら…あたしはあんたを止める。
…あの時、あんたがあたしにしてくれたように」
「………………わからねぇ。俺も、どうしたいのか」
95:YANA 69-5
06/01/30 18:21:20 PBuAHprZ0
「………そう。そう、かもね」
「…でも」
「うん?」
「少なくとも、俺は世界が滅ぶのをただじっと待ってるなんて、ごめんだ。…例えそれが、おまえと一緒だったとしても」
「…はぁ。ゴドーは、やっぱりそうだよね。もしかしたら、オルテガさんを追いかけてる内に、答えが見つかるかもしれないし…。
…あたしもそれに、賭けてみるわ」
「…アリス」
「なに?」
「…その。また、よろしく頼む」
「…うん。よろしくね、ゴドー」
『母さん、私は今、迷っています。人間を救うべきか。このまま、ゴドーの往く道を助けていいか。
でも…あの人は救おうとした。私は、あの人と同じ道を往くことで、答えを探そうと思います。 敬具』
96:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/30 21:43:08 dvtOhIIxO
3の時から伝説の武具なんだっけ?
97:YANA
06/01/30 22:18:54 n/UWnN6y0
そういや作中では、伝説っていわれてませんね。
>「その昔 王者の剣は魔王により砕かれ~」
昔ってのがどれくらい昔なのかわかりませんが、とりあえずここでは100年以上は昔と考えてます。
あと、あの三つの武装は(人の住む)アレフガルド創世の時代以前に作られた神具(公式設定)ですので、
まず間違いなく伝説級の存在、という意味もこめて。この辺は、最後の方でも説明があります。
そんなわけで、便宜上「伝説の武具」という扱いにしましたが、気に障ったらすみません…。
98:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/30 22:20:43 Ktp0FrVdO
違ったような希ガス
99:YANA 70-1
06/01/30 23:37:12 n/UWnN6y0
『拝啓 母さん、そういえば、まだお話していませんでしたね。
私はもしかしたら、帰れないかもしれません。ですから、今のうちに話しておきます。
あの人…オルテガさんは、ゴドーのお父さんです。今まで黙っていてごめんなさい。
本当は、バラモスを倒して、全部が終わったらお話するつもりだったのですが…今度の戦いは、本当にどうなるかわかりません。
魔王を倒すことを諦めて、世界が滅ぶのを待つか…魔王に戦いを挑み、負けてしまうか…勝てる可能性はあるのか。
…前のお手紙で、私たちは今後、オルテガさんの軌跡を辿ることになったことは、話したと思います。
それで、大臣さんにオルテガさんのお話を更に言及したところ…』
「オルテガ殿は、火傷による重傷を負い、暫くは寝たきりでした。
ですがこの国の現状を聞き、数年の療養生活の後、ゾーマを倒すため旅立ったのですが…」
「火傷…火山に落ちたときのものか。まさかあの火山が、この世界に繋がってたとはな。
…で、おy…オルテガは、どちらに向ったか、わかりますか?」
「いえ…申し訳ありませんが…」
「仕方ないわね…どうしようか?」
「ふむ…大臣さん、この近くに、何か、旅の手掛かりになりそうな場所はありませんか?」
「それでしたら。…船をもらったといいましたな?でしたらまずは、大陸の南、砂漠の町ドムドーラに向われるとよいでしょう。
町としての規模はここより大きいですからな、何か有力な情報を掴めるかも知れませんぞ」
「ありがとうございます…」
「ああ、それと」
「?」
「参考までに、もう一つ。………〝魔王の爪痕〟のことは、お聞きになりましたかな?」
「…いえ」
「ここより北西に、洞窟があります。その最深部に、この世の全てを拒む、巨大な地割れが口を開けております。
それは魔王がこの世界に現れた際に出来たとされる、曰く付きの地割れでして…それに由来し、〝魔王の爪痕〟と呼ばれています」
「全てを拒む地割れ…」
100:YANA 70-2
06/01/30 23:37:48 n/UWnN6y0
「手掛かりになるかな…行ってみようか?ゴドー」
「行かれるのでしたら、どうかお気をつけて。あの洞窟は、魔王の爪痕の影響か、あらゆる呪文が封じられてしまいます」
「はい。色々とありがとうございました。…それと」
「…?」
「先ほどは、取り乱してすみませんでした。…狭量な自分を、許して頂きたい」
「ゴドー…」
「…ふむ。感情は表に見せず、しかしその心はどこまでも真っ直ぐに…いやはや、貴公は、オルテガ殿とよく似ている」
「………」
「ゴドー。…こういうのは、喜んでもいいと思うよ?」
「…行くぞ、アリス」
「あ、もう。待ってよ!」
・ ・ ・
―――で。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
「ゴドーぉ…ちょっと待ってよぅ…」
「…いいけど。大丈夫か?おまえ」
「あう…呪文を使えない、っていうのがこんなにきついと思わなかったわ…」
「…無理だったら、外で休んでてもかまわねぇぞ」
「む、なにそれ、どういう意味よ。…あたしはお荷物だっていいたいわけ?」
「いや、そういうわけじゃ…」
「別に、あたしが軟弱なわけじゃないわ。あんたのタフさが異常なのよ…ふんだ」
プイッ
「………少しはマシになったみたいだな。ほら、階段が見えたぞ」
「…うん」
・ ・ ・
オオオオオオオォォォォォ…
101:YANA 70-3
06/01/30 23:38:18 n/UWnN6y0
「…っ……」
「………………凄い邪気。何よこれ…正気の沙汰じゃないわ」
「…これが…魔王の爪痕…くそ、冗談じゃねぇ、頭がどうかなりそうだ…」
「え?…ちょ、ちょっと…確かにこの空気は体に悪いけど…あんたがそんなに成る程じゃ…」
「おまえこそ…何でそんなに元気なんだよ…ゲホッ!」
「!も、もう、さっきの勢いはどうしたのよ。ほら、しっかり…」
―――ピカンッ
「…ん…」
「?どうしたの?」
「…今何か、地割れの中で光ったような…?」
「はぁ?…まさか、気のせいでしょ」
「…いや、確かに光った…」
ザッ、ザッ…
「あ、ちょっと、そんなに近寄ったら危ないわよ!」
「………」
「………ほら、何もないって」
「……っ」
ズッ
「!!ゴ、ゴドー!本当に大丈夫!?」
グオオオオオオオオォォォォォッ!
ズンッ
「!ヒドラ!?」
「っ…!(馬鹿な…俺がここまでの接近を許すだと…!?そうか、ここの強力な邪気に紛れて…!)…くっ…!!」
チャキッ…
「グオオオッ!!」
ゴオオオオォォォォッ
102:YANA 70-4
06/01/30 23:38:52 n/UWnN6y0
「そんな炎で…!」
タンッ
「…!ゴドー!!?」
「…(くそ…体が云うことを…!)」
ズルッ
「!!!ゴドーーーーーーッッッ!!!!」
「(あ…まず…)」
ヒュウウウウウゥゥゥゥゥゥッ
「グルルルル…」
「………許さない。あんただけは、絶対に!」
チャキッ、ブンッ
・ ・ ・
―――消えろ。
消えろ消えろ消えろ消えろ消えろきえろきえろきえろきえろきえろキエロキエロキエロキエロキエロ。
…なんだこりゃあ。痛くも痒くもねぇ。
帰れ帰れ帰れ帰れ帰れかえれかえれかえれかえれかえれカエレカエレカエレカエレカエレ。
…そうか。全てを拒絶するとか、何とかいってたな。…ここにあるのは、あらゆるものを拒む想念だけ。
出ていけ出ていけ出ていけ出ていけ出ていけでていけでていけでていけでていけでていけデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケ。
――そう。例えそれが、死であっても。ここにおいては、死ぬことさえも拒絶される、ということか。
失せろ失せろ失せろ失せろ失せろうせろうせろうせろうせろうせろウセロウセロウセロウセロウセロ――――!!!
103:YANA 70-5
06/01/30 23:39:28 n/UWnN6y0
――ああもう、うるせぇな。そんなに消えて欲しいなら、さっさと帰らせてくれ。
いつまでもここにいると、あとであいつに小言を云われるんだよ。
――ポウッ
?…なんだ?…光。…俺が帰れないのは、おまえが俺を呼び止めるからか。
成る程…おまえ、俺の気を引くためにここの邪気に混ぜてあんな気分の悪い方法を…。
…ちっ、仕方ねぇ。云いたいことはあるが、ここから出るためだ、付き合ってやるよ――!!
・ ・ ・
「はぁぁぁぁっ!!」
ザシュッ
「グギャァァァッ!」
「…っ…(魔法なしの単独の戦いも…あたしじゃこの辺りが限界か…)」
「グオオオオッ!」
「(でも安心して、ゴドー。あんたの仇くらいは、刺し違えてでも…!)」
ゴオオオオオォォォォォッ
「いくわよ、アリス!!――!?」
グイッ
ゴオオオ、パァンッッッ
「――よう。まだ死ぬには早いぞ、アリス」
「――ゴドー?…なんで、だってあんた、地割れに」
「ちょっと待ってろ」
ダンッ
「!?グオ…」
「くたばれっ」
ザン、ザン、ザン、ザン、ザンッッッ
「!…!!…」
ボトボトボトボトボト、ズズゥンッ
104:YANA 70-6
06/01/30 23:40:30 n/UWnN6y0
・ ・ ・
「ふん…」
「…ねぇ、ホントに、大丈夫?」
「だから、心配ねぇって。事情は今話したとおり。あの地割れには危険はない。あれはただ、全てを拒む力しか持ってねぇ」
「それはわかったけど…さっき、今にも死にそうな顔してたじゃない、あんた」
「ああ、それはこいつが原因だったらしい。もう何ともねぇよ」
「?………盾?…あ、そういえば、さっきあたしを炎から庇った時も、その盾が炎を弾いて…?何なの、その盾」
「よくわからん。…ただ、何とか俺があの地割れに落ちて、見つけるように仕向けたかったらしい。それで、あんな面倒を…」
「???」
「だが、この盾が凄い力を持ってるらしいことは分かったから、とりあえず使わせてもらうことにした」
「ふぅん。…でもよかった。あんたが無事で」
「…すまんな。ちょっとの間とはいえ、心配させて」
「…ふぅ、いいわ、もう。いい加減、慣れたもん。それに、へばってるあんたっていう貴重なものも見れたしね」
「………」
「あ、あはは、冗談、冗談よ。予定外の戦力アップも出来たし、ほら、こんなとこ早く出て、ドムドーラに行きましょ?ね?」
『母さん、魔王の爪痕には、なんだか凄い盾が眠っていたみたいです。もしかして、これが大臣さんの言ってた伝説の武具…?
あはは、そんな都合のいい話、ありませんよね! 敬具』
105:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/30 23:45:41 ROGMddbE0
>>YANA氏
乙です。
>王者の剣
『その昔 王者の剣は 魔王によりこなごなに くだかれたとききます。
しかし その魔王ですら王者の剣を くだいてしまうのに3年の年月を 要したとか。
いやはや すごい剣もあったもんですね。』
マイラの商人だったかがこんなこと言ってたハズ
ただこれも伝聞口調ですから、真偽のほどは微妙ですがね
106:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/31 01:33:28 X9j+fnun0
三つの武装はお城の宝って話はあったなー。
表現は作家さんの好きで良いと思うが・・・。
107:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/01/31 09:42:16 960GmhDQO
YANE氏乙です。
実際魔王の爪痕はやくそう持ってれば勇者一人でなんとかなるんだよなー。と思ってしまった俺は冷めてますかそうですか。ゴメンナサイorz
王者の剣ってその剣が剣の中の王者だから王者の剣なんだったような希ガス。定かじゃないけど。
なんだかんだ言って1~3のみの流れだけを見ても矛盾点はあるんだよね。
1・2で勇者ロトが使った武具がロトの装備と言われるようになった、って設定だけど2のロトの兜がありえないとか3で勇者の盾とすでに名がついているとか…
だからあんま気にしなくてもいいんじゃないかと思いますよ。これはYANE氏の作品なんだし。
矛盾点と言えば他にギアガにいた竜の女王。竜王って竜の女王の子孫だと思ってるんだけど分断された世界でどうやって竜王がアレフにきたのかとか。
あと3では1の範囲しかアレフガルドがない→2の世界はいつどうやってできた?など。
チラ裏だけど分断されるのに時間がかかるのでは?と思ったのはこの理由からなんですよね。
それとルビスの世界では完全にそうなのかもしれませんが、魔物も魔王の力で具現化しているものと、そうではなく単に邪気の影響で悪くなっているものの2種類がってのが一応公式だったような。
重ねてDQモンスターズのことも考えると魔物はそれ自体で生きていると考えるのが普通になってきそうですし。
108:YANA
06/01/31 13:54:18 YN934zuR0
>だからあんま気にしなくてもいいんじゃないかと
そういってくれると助かるます。あと原作の矛盾点は、出来るだけ埋めるつもりでプロット書きますた。
…でも俺の名前は家屋の雨除けじゃないんだorz
ちょいと時間がないので次回予告だけ。
次回はスレタイの原点に返り、テーマ「ツンデレ」と「エロス」
………ここんとこ真面目なシナリオが続くので、ちょっと息抜きを(でもフラグ回収はするw)
109:YANA 71-1
06/01/31 18:42:08 eJIY+V4c0
『拝啓 母さん、ラーミアもいないので、久しぶりの船旅です。…といっても、海岸沿いを小さな船で航海しただけですけど。
さて、そうして着いた砂漠の町、ドムドーラ。砂漠の町という事もあり、この町では水が貴重です。
ですが、町の井戸は涸れ果てる寸前で、やはり町の人も元気を失っています…。
そして私たちは、オルテガさんの手掛かりを探し、町の人に聞き込みをしているのですが…』
「………駄目だな、手掛かりになりそうな情報はねぇ」
「うん…オルテガさん、ここには寄ってないのかな?」
「ま、親父が旅立ったのはもう何年も前の話らしいからな…仕方ねぇといえば、仕方ねぇ」
「…でも、あんたは諦めないんでしょ?」
「どうやら俺のしぶとさは親父譲りらしいからな。…大臣さんの話を聞いたときから、どうももう死んでるっていう気がしねぇんだ」
「…ふぅん。親子の絆、っていうのかな?」
「よしてくれ、俺と親父に限って。…そうだな、することもないし、そろそろ武装の新調くらいするか。
バラモス戦以降、まともに買い替えしてねぇから、ここらでやっておいていいだろう」
「そうだね」
・ ・ ・
「…力の盾?悪いが、あいつが使うには小回りが利かねぇな、これは。俺はもう、いいのを持ってるし」
「いやいや、にいさん、こいつはただの強固な盾じゃないんだ。掲げるとなんと、持ち主の傷を癒すっていう…」
「…?」
「…!」
「…ふぅ。あたし用の装備は、ラダトームの方で揃っちゃったし、この町のお店は戦士用の装備ばっかりだし、暇だなー。
…何か面白そうなものは…と………?………なにこれ」
「…?…どうした、アリス。何か珍しいものでもあったか?」
「………」
「?(何見てるんだ…?)」
ヒョイッ
「………なんだこれ」
「わっ!!!ちょっとゴドー、声くらい掛けてよ!もう、びっくりしたー…」
「声なら掛けたぞ。…で。おまえ、こんなのが欲しいのか」
110:YANA 71-2
06/01/31 18:42:41 eJIY+V4c0
〝あぶない水着 価格:78,000G〟
「ち、違うわよっ!…そ、その…こんな、見るからに防御力無さそうで恥ずかしい水着が、どうしてこんな高いのかなー、って…」
「ん?ああ、ねえさん、そいつはシャレで置いてあるんだ」
「シャレ、ですか?」
「ああ、こんな世界だからな、そういうバカをやるのもいいだろうってな。見ての通り、ただの水着だから、
それ買って着て、魔物と戦おうなんて考えなさんな」
「し、しませんよ、そんなこと!」
「同感だ」
「………」
「なんだ」
「…ねぇ、ゴドー。これ、あたしに似合うかな?」
「医者に行くぞ」
「まま、待ちなさいって!誰が戦闘に使うっていったのよ!?あたしはただ…その…似合うかな、って、訊いただけじゃない」
「………仮に似合ったとしよう。だが、この値段は手がでねぇ」
「わ、分かってるわよ。…いいじゃない、話くらい。見たくない?あたしの水着姿。興味ない?」
「………」
クルッ
「あ、こら、ゴドー!!」
「やってられねぇ…宿をとりにいく」
・ ・ ・
ボフンッ
「もう…ちょっとくらい付き合ってくれてもいいじゃない…」
「あのな…当初の目的忘れて、寝言を言うのも大概にしろよ」
「…ぶー。何よぅ…あたしのこと好きだっていってくれたじゃない…もうちょっとさ…相手にしてくれてもさー…」
「…っ…」
「むー…」
111:YANA 71-3
06/01/31 18:43:13 eJIY+V4c0
コンコンッ
「む…どうぞ」
ガチャッ
「…すみません…」
「?どちら様?」
「…あの…こちらに、上の世界から来たという勇者様がいらしていると聞いたのですが…」
「ああ、そりゃ俺だ。その話は、誰から?」
「はい。この町で聞き込みをしている勇者様が、何でも上から来たらしいと噂されていまして」
「あー、あれねー。ま、不都合はないから、ちょっと口を滑らしちゃったんだけど」
「つかぬ事をお訊きしますが…勇者様は、今、上の世界に戻る術をお持ちですか?」
「?…ああ、ちょっと疲れるけど、瞬間移動の呪文で何とか行き来することは出来る」
「それでは…その…お願いが、あるんです」
「…いいよ、話してくれ」
「…(こいつは本当に…人助けだと見境がないんだから)」
「はい…自己紹介が遅れましたね。私の名はレナ。昔、アッサラームという町で踊り子をしておりました」
「ふむ(あー、そういえば…何だか足運びが一般人と違うな)」
「ですが、嫌なお客に迫られて…逃げ出してしまったんです…」
「どこにでも、バカな男はいるのね」
「で、行き着いた先がこの世界、か。…それで、俺たちに何をしろと?」
「…もし。もしあれば、でいいんです。勇者様がこの先アッサラームに立ち寄ることがあれば…座長に私の無事をお伝え下さい」
112:YANA 71-4
06/01/31 18:43:49 eJIY+V4c0
・ ・ ・
~アッサラーム・楽屋~
「…そうですか。レナちゃんが、そんなことを」
「ああ。…どこにいるかは云えませんが、無事生活しています、だそうだ」
「(で、早速そのため〝だけ〟に来ちゃうんだもんね。全く、相変わらずお人好しっていうか、何ていうか…)」
「胸の支(つか)えが取れました。知らせてくださって、ありがとうございます。お礼に、これを差し上げます」
ゴソゴソ…
「?…うわ(これ、さっきの水着じゃない!?)」
「………」
「魔法のビキニ、というモノです。見た目はただの水着ですが、魔力的な洗礼が施されているので、下手な攻撃なら通しません」
「いいんですか?これ、貴重なものなんでしょう?」
「いえ、心配していたレナちゃんの無事を知らせてくれたのです。これくらいは」
「わー、ありがとうございます!」
「………ありがとうございます」
「ね、ね、着てもいいでしょ?」
「…やめとけ」
「む…何でよ?座長さんの話聞いてたでしょ?装備品としての実用度なら、申し分ないじゃない?」
「………」
「…そんなに見たくないの?あたしの水着姿…」
「………」
「…もう!知らない!」
ダッ
「!お、おい、アリス!」
「先にドムドーラの宿に戻ってて!あたしはこの町で憂さを晴らしてくから!べーっだ!!」
「………………まいったな」
113:YANA 72-1
06/01/31 19:27:26 AMVy3X1S0
「…ゴドーのバカ…嫌なら嫌って、はっきりいえばいいのに…っ…バカ。大バカゴドー…」
ちょいと、そこ行くお嬢さん!
「へ?なに?あたし?」
「おお、やっぱり!私の友達!」
「は?(友達?…誰よ、このおじさん)」
「よく来てくれました!ささ、どうぞ、品物を見ていってください!」
「ちょっと、あたしは今、機嫌が悪いの。押し売りならまたにしてくれる?」
「おお、これは悲しい!私の友達は不幸に遭っている!いけません、私としたことが…」
「わかったら、さっさと」
「ずばり当てましょう!あなたは、男性のことで怒っていらっしゃる!」
「う…(聞いてないし…しかも当ててるし)」
「わかります、わかります、意中の男性が自分に冷たい!これは悲しいことです!そんなあなたにはこれです!!」
「………なにこれ」
「見た目はただの金のネックレス!しかし、これをつけた男性はたちまち女性の誘惑の虜に!
あなたの意中の男性につければ、必ずやその男性はあなたに振り向き、あなた無しではいられなくなるはずです!」
「………本当?」
「ええ、勿論ですとも!もし男性に何の変化もないようでしたら、どうぞ返品にいらして下さい!」
「(キュピーン)買ったわ。いくら?」
「16000Gになります」
「高いし!!」
~二時間後、ドムドーラの宿屋~
「はぁ、はぁ…散々値切り倒して2000G…覚悟はしてたけど、これ…もしかして騙されたかな…」
カン、カン、カン…
「(…さて。問題は、これをどうやってあいつにつけるかね…
警戒心の強いゴドーのことだから『つけてくれ』ってストレートにいっても怪しまれるかも…うーん)」
ガチャッ
「ただい………?」
「すぅ…すぅ…」
「………………寝てる。………チャ~ンス!」