FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5at FF
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5 - 暇つぶし2ch416:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/06/28 22:06:47 XmLKYjpT0
セリス地下室倶楽部の大作数年がかりでやっと保管しました。
ったら、なんだか楽しみな新作がキテル━━━(゜∀゜)━━━ !!

今日の更新「偽りの果実」は1500行もある大作でした。
千一夜で一番の大作で、テキストオンリーで84kbあります。
ファイルサイズ基準なら、FF8の「かまいたちの夜」という作品が
140kbありますが、これにはAAの重さが響いているので、別物ですね。

またしばらく更新休みます。
ちょっとずつ毎日更新して、10日くらい休んで、また更新という
リズムがちょうど良いようです。
ってことで、トリップテスト。これであってるかな。

417:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/28 22:28:10 JVksVkoc0
ラトームさんキタ━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━!!!!!!

418:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/06/29 01:50:08 Y/gHROs50
休むとかいっておいて、アグスレ22と23のログを保管しました。
いったんテキストに落としてコピペしたので、読みにくいような気も
します。でも読めなくはない‥‥?
あの形式でなら、おそらく他のスレの過去ログもうpできると思いました。
たぶん。

ログ倉庫を更新してみて、他のスレの保管は進むのに、セリス地下室倶楽部
だけが残っていた理由を思い出しました。
大作があったんで、作業終了にできなかったのでした。
作業終了したスレを圧縮してしまおうかとも思いつつ、作業が面倒で
投げたままになってます。現在70Mあるうち、半分以上は過去ログだし……。
100Mまでは鯖代が変わらないんで、お金に響くようになったら考えます。
安い鯖ですが、おかねだいじにってことで。

>417 
ノシ

419:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/29 13:04:19 5rKcrsyf0
復活宣言キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!

420:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/30 21:28:22 KM+0ZxDH0
これはワクワクする展開ですね

421:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/02 01:48:45 J/sUDZZ70
>>413
ktkr!
FF6スキーでロックスキーとしては楽しみで仕方ない。テーマを聞きながら正座してる。

422:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/03 22:15:35 eNQnEdCL0
ほしゅったり

423: ◆o7JDqGUgsg
06/07/04 20:33:22 Leb1H91Z0
たくさんの感想、ありがとうございます。
同じ趣味趣向の方がいると、創作意欲が沸きますね。

泣かれたり正座とかされちゃあ頑張らないと!w

424:断てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/07/04 20:36:07 Leb1H91Z0
>>410-413の続きになります。
FainalFantasyⅥ 外伝 ~断てない鎖~


 翌日。世界が崩壊しても、日は変わらず登る。だが、日の出とともに聞こえるはずの鳥のさえずりは、聞こえなかった。それは朝の静けさというよりは、死をおとなしく受け入れてしまったような静けさだった。
 迫り来る死の雰囲気を感じながら、ロックは作り笑いを浮かべながら口を開いた。
「じいさん。この一年―いや、一年も経ってないんだったか?」
「さあ。どうでもいいことさ。けっけっけっ……」
「ははっ。とにかく、世話になったな」
「何を今更。ロックのためなら何だってやるさ。こんなワシと普通に接してくれるのは、あんただけだからね」
「おいおい、そう卑屈になるなよ」
 ロックの苦笑に、老人はうそ臭い笑みで返した。
「ま、せいぜい頑張りな」
「あぁ。……レイチェルを、頼んだぞ」
「任せておきな。あんたの宝物は、ワシが大事に、大事に、とっておくさ」
「……よし、行くか」
 頬を叩き、ロックは気合を入れて、歩き出した。


 海岸沿いに歩きながら、ロックは老人とのやりとりを思い出した。

425:断てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/07/04 20:37:12 Leb1H91Z0
『南西にある半島。そこにある女の墓があるよ』
『墓?』
『あぁ。世界唯一の飛空挺を持つギャンブラー、セッツァーの親友、ダリルの墓さ』
『セッツァーの、親友……セッツァー、無事だろうか……?』
『なんだ、セッツァーとも知り合いなのかい?
 まあ、セッツァーの話は今は置いといて……その墓の近くにチョコボが一羽、いるはずさ』
『あんたのか?』
『そうさ。連れて行ってくれ。ワシの最後の財産さ』
『……いいのか?』
『言っただろう? ロックのためなら何だってするってさ。けっけっけっ……』
『………………』
『もうワシには乗る力も無い。元気良く走らせてやったほうが、あいつも喜ぶだろうさ』
『……じゃあ、ありがたく乗らせてもらうぜ』

 老人曰く、ただのチョコボではないらしい。その脚力は山をも走破するほどだとか。
 たとえそれが嘘だとしても、足があるのは嬉しいことだった。ロックは歩調を速めた。
 ダリルの墓へ向かって―


「ここか……」
  大きな岩を削って作られたような巨大な墓を、ロックは見上げていた。
「こんな凝った墓を作るなんて、セッツァーらしいぜ」
 視線を下げ、墓石の一点―素人目にはわからないほど巧妙に作られた小さなスイッチを見つめながら、苦笑した。
 押してみたいが、今は
「で……この辺にチョコボがいるって言ってたけど…………」
 あたりを見回すが、それらしい姿は見当たらない。
「ファルコン!」
 チョコボの名を呼んでみる。チョコボだというのに、名がファルコンとは……名付け親のセンスを少し疑う。
 この墓の主、ダリルの飛空挺の名から取ったのだ、と名付け親はいっていたが。
「………………」

426:断てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/07/04 20:38:08 Leb1H91Z0
 しばらく待ったが、返事はなかった。
 もしかして、世界崩壊の折に死んでしまったのではないだろうか……?
「……ファルコン!」
 ―ェェ…………
 不安に思いながらも、もう一度呼んでみると、かすかな鳴き声が聞こえた。
「……墓の近くじゃなかったのか?」
 再び聞こえてくる鳴き声。見回すと、砂漠の方から何かが砂煙を上げながらこちらへ接近してきている。
 目を凝らすと、それがチョコボであることがわかった。そして、何かに追われていることも。
 こちらへと走ってくるチョコボの背後には、チョコボよりも大きな鳥の姿。体調は三メートルを超えているだろう。凶悪な鳴き声を上げながら、逃げるチョコボをくちばしで捕まえようとしている。
「クエー!」
「モンスターか!」
 腰の短剣を抜き、ロックは戦闘態勢に入った。
 チョコボは風のようにロックの横を駆け抜けると、ダリルの墓の影に身を潜めた。チョコボを追っていた怪鳥は、目標をロックに移したようだ。大きなくちばしを開いて、こちらへと降下してくる。
 呪文を唱えながら、横っ飛びに怪鳥の突進をかわす。すぐに振り返り、魔法を放った。
「―グラビデ!」
 怪鳥を中心に、空間がが歪んで見えるほどの強力な重力が発生する。怪鳥は必死に羽ばたき、抵抗するが、やがて地面に押し付けられる。その上にロックは飛び乗り、首にナイフを突き立てた。
 素早く後退すると、直後に怪鳥の首から青黒い血が飛び散る。怪鳥の悲鳴は、やがてごぼごぼと不快な音に変わり、その音も、聞こえなくなる。
 完全に絶命したのを確認してから、ロックは墓に向かって声を上げた。
「ファルコン、出てこい! もうモンスターは退治した!」

427:断てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/07/04 20:39:06 Leb1H91Z0
 しばらく待っていると、墓石の影から一羽のチョコボが現れた。あの怪鳥に追われていたため、この近くにいなかったのだろう。
「お前がファルコンか?」
「クエ!」
 ロックの呼びかけに、そのチョコボ―ファルコンは力強く声を上げた。
 見た目はごく普通のチョコボである。怪我もしてないようだ。特徴といえば、首にバンダナを巻いていることくらいか。
「このバンダナ……」
 自分の頭に巻かれているバンダナを外し、ファルコンのバンダナと見比べてみる。
 ……同じデザインである。
「あんのじじぃ……」
 実は、このチョコボの本当の名は『ロック』だったりしないだろうか……? そんな不安が脳裏をよぎる。
「……ロック?」
「…………クゥ?」
 恐る恐る呼びかけてみると、そのチョコボは怪訝な表情でこちらの顔を見つめてきた。どうやら、『ファルコン』で合っていたようだ。
「ふぅ。……いいか、ファルコン。これからお前は俺と旅をするんだ」
「クエェ?」
 チョコボ用の装具を示しながら言うと、ファルコンは再び怪訝な表情でこちらを見つめる。
「じいさんに頼まれたんだ。『連れて行ってやってくれ』ってさ」
「クゥエ、クエ!」
 ロックの言葉に、ファルコンは元気良く声を上げると、背を向け、座り込んだ。装具を着けろ、ということだろうか。
「言葉がわかるか。利口なやつだな」
 鞍をかけ、轡(くつわ)をかませ、ロックはファルコンの背に乗った。鐙(あぶみ)にしっかりと足をかけ、手綱を力強く握る。
「俺の名前はロック。トレジャーハンターだ。これからよろしくな、ファルコン!」
「クエッ!」


続きは後日。
どう考えてもSSではありません。本当にありがとうございました。

428:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/04 20:47:51 RRG6K5hi0
いやいや、見事なSS(サイドストーリー)ですよ。
そうか、ロックはチョコボに乗って、フェニックスの魔石のあるダンジョンに行ったんだぁ、と納得しちゃいました。
こういう本編の隙間を埋めるような話は大好きなので、続き期待してます。
じいさん、良いキャラですね。

429:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/05 15:41:27 fAiTELR90
一瞬で隠しスイッチを見つけるあたりがロックだな。流石大泥b、げふん、トレジャーハンターだ。

430:断てない鎖 修正 ◆o7JDqGUgsg
06/07/05 17:44:52 1sTCmc620
× 押してみたいが、今は
     ↓
○ 押してみたいが、今はチョコボとの合流が先決だ。


431:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/07 01:08:16 AxzuD5K3O
GJです
続きは長々と待たせてもらうんで

432:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/07 09:18:59 JmaqyXdT0
待つ楽しみ堪能中。

433:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/07 09:19:45 JmaqyXdT0
そーいえば七夕か。
FFDQのシリーズで、七夕ぽいイベントのあるやつってあったっけ?

434:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/07 10:22:29 ZipqhYs80
落ちそうなのでage

435:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/08 11:49:00 Ulun/aTqO
保守

436:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/08 18:56:43 gON+Zp9c0
保守

437:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/10 00:03:11 sUJuBkZ60
雨の季節ですね。
up用の掲示板がなんでか動かないのでご迷惑をおかけしております。
なんで動かなくなったかな。

438:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/10 00:04:28 sUJuBkZ60
そんなこんなで、またしばらく更新休み予定です。

439:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/11 13:04:12 +lsUL9nY0
保守

440:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/12 00:14:28 7qjQsNjM0
ほしゅ

441:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/12 03:27:26 xdYk7PZQO
あげますね

442:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/12 21:45:09 BknEaYQZ0
作品up用掲示板を置き直しました。今回は無事動いている模様。

このところあげてくださる方が多いですね。ありがとうございます。

443:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/12 21:47:04 jBG6WRNs0
乙彼です。
でもageる意味はないような。

444:FFTで
06/07/13 19:08:33 NpGLs9470
この日、暗くじめじめとした骸旅団のアジトには、旅団の主立った幹部が集結していた。
定例の会議である。
しかし、そこにはいずこかへ姿を消して久しいウィーグラフ団長の姿はなく、
副団長のギュスタヴとウィーグラフの妹であるミルウーダが頭領不在の旅団をまとめる
二大幹部として団の主導権を握り、その他の中隊長、小隊長クラスがいて
なんとか統率を保っているという状態であった。
この日はミルウーダの持ち出した議題を巡って会議が紛糾していた。
それはギュスタヴ派の略奪・暴行問題である。

もともと旅団の中でも荒っぽいことで知られるギュスタヴの部隊であるが、
ウィーグラフがいなくなってからは規律が乱れること甚だしく、
旅団が黙認している富豪や貴族に対する略奪のみならず、
規則として厳禁しているはずの平民・貧民に対しての同様の行為が
白昼堂々と行われるようになっていたのである。
それは食糧、物資の強奪のみならず、強盗、暴行、放火、誘拐、強姦、殺人にも及び、
それらの野蛮かつ凄惨な行為が、かつては貧民の救世主として称えられ、期待された
骸旅団の評判を著しく低下させるということになっていた。
しかし、ギュスタヴは団長不在の旅団の中でナンバー1の実力者であり、
これらの乱行を苦々しく思ってはいても口を出せる者はいなかったが、
最近はウィーグラフ団長を軽んずる発言も目立つギュスタヴの目に余る行為に
ついにミルウーダが会議を通じて苦言を行ったのである。
しかし、ギュスタヴは行為そのものの存在は認めたものの、
自らの積極的介入は否定し、しかも部下の行為にはそれなりに同情すべき
ことがあるとして、なんらかの処分を下すことすら拒否したのであった。

445:ためになる話
06/07/13 19:09:38 NpGLs9470
「それでは、副団長は旅団の規則をどう考えているというのか!?」
誠意のないギュスタヴの態度に激昂したミルウーダは声を荒げて叫んだ。
彼女はもともとすぐに感情的になる性格で、その点が実兄の跡を継いで
団長になるにはネックになるであろうといわれるところであった。
「旅団の規則を否定することは、旅団の存在をも否定することになる!
 旅団がただの盗賊団になりさがってもそれでいいと副団長はいうの!?」
ミルウーダは声を震わせてそう叫んだ。
これまでの不満がここで一気に噴出したという感じだった。
響き渡った彼女の怒声によって会議の場は静まりかえり、
出席者のすべての目が怒れるミルウーダと一方のギュスタヴに注がれた。
だが、ギュスタヴは平然として、薄笑いさえ浮かべている。
その態度がミルウーダの炎のごとき怒りに油を注ぐ結果となり、
さらにミルウーダが口を開こうとしたときにギュスタヴが突然それを遮った。
「ここにいる誰が旅団を否定するといったんだ? 
 貧民に対する略奪行為は厳禁、それは我が旅団の原則だ。
 だがな、現実を見てみろ。うちの組織は今や虫の息だ。
 団員は豆のスープどころか水も飲めねえで寝込んでるやつもいる。
 空腹と病で毎日死者が出ている。
 こんな状況で、何もかも原則通りにいくと思うか?
 そりゃあ、ウィーグラフが定めた原則は美しいと思う。
 だが、こんな現実を前にしては書生の理想論と一緒だ。
 そのうえ、その当人が尻尾を巻いて逃げだしたとあっちゃあ……」
ギュスタヴがそこまでいうとミルウーダの顔色が変わった。
「なにっ!!??」

446:ためになる話
06/07/13 19:11:54 NpGLs9470
ミルウーダは立ち上がって腰の剣に手をかけ、気色ばんでギュスタヴに挑む風を見せた。
ギュスタヴは平然とはしているが、ミルウーダをにらむ目の色が変わり、
ミルウーダが剣を抜けばいつでも応戦するという構えをとった。
「もういっぺん言ってみろ!団長が、逃げ出しただと!?」
そういってミルウーダがさらに一歩を踏み出すとギュスタヴも立ち上がった。
まさに一触即発、旅団の二大幹部が衝突する危機となったが、他の幹部数人が
あわててミルウーダに駆け寄り、散々になだめさとしたため、
彼女はなんとか椅子に腰を下ろした。同時にギュスタヴも席につく。
間髪入れず、会議の進行役がこの件については保留とする旨を発言して
慌ただしく一同の賛同を得、次の議題に移ったためにそれ以上の衝突は起こらなかったが、
会議はそれ以降非常に気まずい空気の中で進められた。
旅団の会計担当であるミルウーダの副官が旅団の収支や財産目録を読み上げ、
今月の旅団の財政も非常に厳しいことなどを告げた後、
財産管理など旅団の会計管理の一切を担当する会計をミルウーダに再任する旨の
裁決が採られ、全会一致で再任が決定した。
その後も行方不明となっている団長の消息に関する報告や
これからの旅団の方針について淡々と進められたが、
ミルウーダとギュスタヴは一言も発言をせず、
次の会議の開催日を決定してようやく閉会した。

447:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/13 19:12:54 NpGLs9470
「今日の会議は大荒れでしたな。」
ギュスタヴ一派の有力幹部であり、会議にも出席した男が
会議を終えて別室にてくつろぐギュスタヴに向かって苦笑しながら話しかけた。
「まあ、いつものことだ。慣れてる。」
テーブルの上に足を投げ出したギュスタヴはウイスキーの瓶を片手に、笑いながらそういった。
「まあ、ミルウーダは奴なりに兄貴の旅団を守ろうという気持ちがあるんだろうがな。
その分、一般の団員には情が薄いんだろうぜ。
略奪なんて正規軍でも普通にやってることだ。
まったく、ああいう頭の堅いのが上にいるとやりにくいよなあ。下級の団員が哀れだな。」
ギュスタヴはそういってウィスキーを瓶を直接口にあてた。
一気にかなりのアルコールを飲み干すと、右手で口を拭きながら、
かたわらに控えている幹部に向かっていった。
「だが、まあ、ああいうのも旅団には必要なんだろうぜ。」
「しかし、今日のミルウーダの剣幕を見ていると、
我々に刃を向けるのも時間の問題のような気もします。」
「そのときはミルウーダを返り討ちにして俺が団長になるだけのことだ。
俺は逆にそうなることを望んでるだがなあ!」
ギュスタヴはそういってウィスキーをかっくらうと、大口を開けて笑った。

448:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/13 19:13:54 NpGLs9470
一方、自室に戻ったミルウーダの表情はギュスタヴとは対照的な悲壮さであった。
彼女はまるで病人のようにふらふらと部屋の中に入ってくるなり、椅子に腰を下ろすと、
テーブルに肘をつき、頭を抱え込んだ。彼女のブロンドの髪も乱れ、精彩がない。
今日の会議のこともあるが、ここのところのミルウーダはずっとこんな風だった。
元気がなく、夜は眠れず、体調も悪く、微熱が続き、いつも頭痛があった。
ウィーグラフが姿を消してからというもの、ミルウーダは一人、
兄の不在中、旅団が存在意義を失わぬよう孤軍奮闘していたのだが、
ここにきて様々な矛盾が噴出し、彼女の努力も限界にきていた。
彼女の理想を理解する者は少なく、逆にそれと正反対の考えの者の数は多かった。
いまの骸旅団は単なる盗賊団以外のなにものでもなかった。
絶望のミルウーダが唯一生きるためのよりどころとしようとした組織が、
この世から消え去ろうとしていたのだ……

449:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/13 19:14:33 NpGLs9470

「では、わたしはこれで失礼いたします。」
ミルウーダの副官が会計関係の書類をおいて、静かに部屋から立ち去った。
ミルウーダは何も声をかけなかったが、副官が立ち去ると黙ってその扉を見つめた。
やがて視線をテーブルの上に置かれたひとかたまりの書類に移すと、
その中にある一冊の小さな帳簿を手にした。
それこそは骸旅団のすべての収支が記された帳簿だった。
彼女がページをめくると、最近の旅団の家計がいかに厳しいかということが一目でわかった。
収入は有志からの寄附のほか、貴族や富豪から略奪した金品が主で、
旅団が経営する農場や商店からの収益を足しても高が知れていた。
支出は、団員の給与や旅団として必要な武器・物資・食糧のための費用、
作戦遂行に係る費用、貧民に対する慈善事業金、そのほかの雑費であり、
すべてが不十分であった。
ミルウーダは帳簿をめくり続け、ある支出の項目で視線を止めた。
そして彼女は異様な興奮をもって、そこに書かれた文字と数字を見つめた。
息が上がり、顔は赤くなった。目は異常な輝きを見せた。
そこには『パララ村への慈善事業金 300,000ギル』と記載されていた。
30万ギルは貧乏な旅団にとって負担となる数字だった。
帳簿にはほかにも同じような額の慈善事業金が別の村名とともに記されていた。
旅団がする慈善事業とは、貧民に物資や食糧を配ったり、炊き出しをしたり、
場合によっては直接現金を配布したりするものだ。

だが…飢饉と疫病に見舞われ、困窮を極めるパララ村に一切お金は渡っていなかった。
パララ村に限らず、帳簿に記されたここ3ヶ月の慈善事業金は
実際には一度もその目的のために支出されたことはなかったのだ。
それは、すべて旅団の出口で止まっていた。
出口とは旅団の会計担当最高責任者であるミルウーダ・フォルズのことだった。
金はすべてミルウーダの手許で止まっていた。

次回 ミルウーダの天国と地獄

450:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/13 21:45:37 1a4DFAXc0
FFT━━━(゜∀゜)━━━ !!
これはタイトルが「FFTでためになる話」?
それとも「ためになる話」?
実は無題? 後日のタイトル発表を待て?
次回のミルウーダの話は、別編なの? それとも同じ話で続くの?

など、保管を考えると疑問がいっぱいw
どこかでお答えいただけるとありがたいです<作者さま

それはそれとして、続きお待ちしてます。
硬派なFFT楽しみだー。


451:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/13 21:48:33 1a4DFAXc0
興奮して事務連絡忘れてた。

千一夜の更新再開しました。
予告より長めに休んでしまいましたけど、また10日くらい続けて
更新できれば良いなと妄想中です。
これから保管するログだけのインデックスを作りましたし、
過去ログをupしてくださる方、スレの保管を担当してくださる方、
お待ちしておりますm(._.)m

>443
age無くても保守はできるんですよね?
でもわざわざ上げたくなるということは、よっぽど危険そうな順番に
あったのかなと。

452:fft
06/07/14 18:34:44 7ZqBrX9N0
あまり深く考えていなかったです。
では、タイトルが「ためになる話」。
「ミルウーダと地獄」とかは章名っつーことで。
次も同じ話です。
あと残念ながら硬派ではありません(^^;)

453:fft
06/07/14 18:37:27 7ZqBrX9N0
ミルウーダが最初に旅団の金に手をつけたのは5ヶ月前のことである。
彼女が悪質な地主から救ったある家族の幼子が病に冒されていた。
このままほっておけば命に係わるが、医者にかかれば治る病気であった。
だが、医者に診せるためのお金がその一家にはなかった。
かといってミルウーダにも金はない…
ミルウーダは貧乏人だけが泣かなくてはならない世の中の不条理さに腹を立てたが
いま怒ったところで子供の命を助けることはできない……
そこで彼女は生まれて初めて旅団の金に手をつけたのである。
先月に会計担当に着任したのが事の運びを容易にした。
たったの10,000ギル。
この程度ならば2,3ヶ月で返済できると考え、武器購入の名目で帳尻を合わせた。
しかしその工作をやったあと、彼女の心境は戦々恐々となった。
(どうしよう…いくら貧民を救うためとはいえ、旅団の金に手をつけてしまった…
 このことがばれたらただでは済まない…)
不名誉な罵声を浴びせられながら処刑されることを思うと恐ろしくてしょうがなかった。
いかに気丈な人間といえども、引け目を感じればたちまち弱くなるものである。

454:fft
06/07/14 18:38:17 7ZqBrX9N0
そんな恐怖のうちに一週間、二週間が過ぎ、やがて一ヶ月が経過したが、
ミルウーダの不安とは裏腹にそんなことに気がつく者は誰もいなかった。
もともと会計や計算が苦手な者たちである。
大ざっぱな旅団の会計に少々工作をしたところで気づかれる恐れはないのだった。
ミルウーダは胸をなで下ろした。
その頃には、旅団の金に手をつけたという罪悪感はかなり薄くなっていた。
借りた1万ギルを返すのも馬鹿馬鹿しいような気持ちになっていた。
変に返そうとすれば、そのときに流用が露見するかもしれないのだ。
結局、ミルウーダは金を戻すのを止めた。
帳簿の工作が案外簡単に行くという経験だけが彼女の心のなかに残った。

455:fft
06/07/14 18:38:57 7ZqBrX9N0
これ以後、ミルウーダは会計担当という地位を利用して、
ちょくちょくお金を流用するようになっていた。
貧窮にあえいで旅団を抜けようとしている同志に密かに金を融通してやったり、
団員募集のエサとなる入団時の手付金に色をつけてやったりした。
新しい団員の獲得はそのままミルウーダ一派の勢力拡大に繋がるのである。
旅団の金に手をつけるときはいずれ返す返すと思いながらだが、
しばらくすると借りたことを綺麗さっぱり忘れていた。
人間というものは貸した金のことはいつまでも覚えているが、
借りた金のことは忘れやすいものなのである。
そして、彼女は横領を正当化する理由も考え始めた。
(この金はどうせギュスタヴたちが酒にして消えてしまう金だわ……
 それならその前にわたしが有効活用した方がマシよ……)
(先週、貴族どもから強奪した20万ギル……
 あの作戦を指揮したのはわたしよね……
 わたしがいなかったらどうせ入らなかったお金だわ。)

456:fft
06/07/14 18:39:41 7ZqBrX9N0
そんなことを繰り返しているうちに、どんどん罪悪感は薄くなっていった。
立場を利用して自由に扱える団の金が
自分のものであるかのように錯覚するようになっていた。
額も大きくなり、その用途は限りなく私的なものになっていった。
お金をたくさんもっている自分がなぜこれほどまでの空腹に耐えなくてはならないのか。
それは非常にナンセンスなことに思えた。
ある日、彼女は食品を扱う商人をひそかに呼び出した。
彼女は一枚の紙を見せて、そこに書かれた食料を指定の場所に運びこむように命じた。
商人はその紙を見て不審の色を見せた。
彼はいつも旅団に食糧を調達していたのだが、今回に限っては内容がいつもと違うのだ。
いつもより量は格段に少ないが、逆に質はかなり良いものになっている。
「これで…いいのですか?」
商人は疑わしげにミルウーダに尋ねた。
ミルウーダは暗い視線を商人にぶつけて答えた。
「そのとおりにしなさい。ただし、このことは他言は無用よ。特別な用途に使うのだから。」
しかし、清廉なるミルウーダが本格的に欲望に目覚めるのはこれからなのである。

457:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/15 16:02:24 MnGA/UwHO
ラトームさんお疲れ様です!!

458:fft
06/07/15 21:37:58 sM/fiGx70
ある日のこと。
ミルウーダはイグーロスにおける隠密任務の決行に加わった。
それは旅団員の数名が地方貴族に化け、
畏国の大貴族どもが集う華やかなる舞踏会に潜入し、
そこに出席した重臣や貴族どもから重要な情報を聞き出すという計画であった。
この作戦を決行するにあたっては、多少なりとも貴族に化けられるだけの教養と
外見をもった団員が選抜されなくてはならなかった。
その結果、数名の男の団員とミルウーダが選ばれたのである。
ミルウーダは数少ない女の団員であるだけでなく、
貴族になりきるだけの教養と才能も十分に兼ね備えていると判断されたのである。
ミルウーダは、この時点で相当な額の旅団の資金を使い込んでいたのだが、
それにしても、貴族に対する嫌悪感が消えたわけではなく、
貴族に化けることにはかなりの抵抗があった。
しかし、旅団の重要なる任務ということでやむを得ず了承したのである

459:fft
06/07/15 21:38:31 sM/fiGx70
当日、ミルウーダは風呂に入って汚れを綺麗に落とし、髪を整え、化粧をし、
旅団が苦労して調達してきた舞踏会の衣装に着替えた。
その衣装は相当にセンスの悪い、しかも時代の遅れの代物だったが、
貧乏人のミルウーダにとっては豪華絢爛たる女王のドレスに見えた。
その上、ほかの貴族に化けた団員たちがこれまたたちが悪い連中で、
ミルウーダが本物の貴族の令嬢のようだ、とか、
舞踏会のどんな令嬢でもミルウーダの美しさにはかなわないだろう、
などとおべんちゃらを言って褒めちぎったので、
ミルウーダもすっかりその気になってしまった。
旅団が用意した馬車を駆って、目的の舞踏会場に乗り込んだときには、
「貴族なんていっても所詮はお金をかけて着飾っているから豪華に見えるだけなのよ。
 わたしだって衣装次第でこれくらいにはなるのだわ。」
などと、任務そっちのけで、すっかりお嬢様気分であった。
しかし、そこは生まれも育ちも貧乏人の悲しさである。
舞い上がっていたミルウーダも会場に足を踏み入れて3分でぼろが出てしまった。
まず、舞踏会場の常連というような気合いの入った連中の中にあっては、
旅団が見立てたミルウーダの衣装などダサくてしょうがない。
足を踏み入れるなりこれがすぐに数人の失笑を買った。

460:fft
06/07/15 21:41:22 sM/fiGx70
そして、もともと礼儀作法なんて学んだこともないミルウーダが
貴族社会の作法などを知っているはずもなく、
情報を得るにもどうやって貴族に話しかけたらいいのかさっぱりわからず、
(これまたダサい)取り巻きとともに場違いな空間の中にポツンと取り残された格好になり、
彼女が馬車の中で仲間相手に空想していたような、
「きっと貴族どもはわたしの姿を見つけるなり浅ましく群がってくるのでしょうね」
「貴族の女共は本当の美しさがどういうものかを知って悔しがるのよ」
というようなことは一切起こらなかった。
それどころか、悪質な貴族のなかには浮きあがったミルウーダを馬鹿にした発言や、
これみよがしに侮辱する発言をするような手合いもいて、
ミルウーダは悔しさのあまり頭突きをしてやりたいようなありさまとなった。

結局、舞踏会ではなんの情報も得ることなく、任務は完全に失敗に終わり、
偽貴族の仲間が恐れたとおり、ミルウーダは帰りの馬車の中で周囲に当たり散らしたのである。
彼女はこの任務そのものよりも、周到な用意をしなかった旅団に対して恨みを向け、
「旅団さえきちんとした衣装を用意してくれればこんなみじめなことにならなかったのに!」
と、まるで自分の母親の見立てに腹を立てるワガママ娘のように泣きじゃくった。
意気消沈した仲間らはミルウーダをなだめながらも、
その衣装はレンタル物できちんとした状態で返さなければ
弁償しなければならないから、どうか破かないでくれと懇請するのだった。

461:fft
06/07/15 21:42:38 sM/fiGx70
次の日、ミルウーダはなんのためらいもなく、旅団のアジトを抜け出し、
変装をして街に出向くと、街一番の仕立屋のドアを開けた。
もちろん、今度こそきちんとした衣装をつくり、もう一度舞踏会に潜入するためである。
いわばリベンジであったが、旅団にはそういった再任務の予定はなかった。
もちろん、衣装を仕立てるための予算も用意されていない。
だが、会計担当のミルウーダはいくらでも数字を工作することができたのである。
彼女は慈善金の名目で50万ギルを捻出し、それで新しい舞踏服を仕立てようとしたのである。
昨夜さんざん恥をかかされて夜も寝られなかったミルウーダの目は血走っていた。
しかし、今日の行動にはなんの迷いもなかった。
仕立屋にいま社交界でもっとも最新の衣装を注文し、代金を支払ってしまったミルウーダには
もはやあとには引けないという覚悟があった。
そして、一線を越えてしまった者特有の、
舞い上がったすがすがしさがその気持ちを支配していた。

462:fft
06/07/15 21:43:24 sM/fiGx70
しかし、新しい衣装を揃えればそれでよいというものではない。
指輪やネックレスや靴などのアクセサリーもそれ相応のものがいる。
そして、なにより必要なのが令嬢の作法だ。
基本的な知識は街の本屋で本を購入して理解するとしても
実際に身につけるためにはそれなりの訓練が必要になるだろう。
ミルウーダは礼儀作法を教授してくれるという教室に密かに通うことになった。
もちろん、これらのことはすべて旅団の金から支払われた。
また、彼女は特別任務だといってたびたびアジトを空けるようになったが、
旅団の最高幹部のすることなので、その行動を疑う者はいなかった。

そして、骸旅団のアジトで定例の会議が行われ、
ミルウーダとギュスタヴがその席上でやり合ったその日が、実に舞踏会の当日なのであった!
ミルウーダはすでに完成した衣装やアクセサリーを秘密の場所に隠し、
相当にぼったくられた礼儀教室で学んだ令嬢の作法を完璧にマスターし、
あとはこっそりと夜にアジトを抜け出して舞踏会に出るだけであった。
自らもこんな状態でありながら、彼女はギュスタヴの略奪行為を難詰したのであった。
だが、彼女の中で、そのことに矛盾はなかったのである。
なぜなら、彼女の行動は重臣から情報を聞き出すという重要任務のためだからである。

ミルウーダは視線を釘付けにしていた帳簿や、その他の書類を金庫に入れて鍵をかけた。
そろそろ時間である。
彼女は、やっと来た晴れ舞台に向かうため、こっそりとアジトを抜け出したのであった。

463:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/17 15:52:46 ygaaE3PR0
保守は・・・まだいるよ

464:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/18 22:14:29 CS1A6GtD0
ミルウーダGOGO!

業務連絡です。
また2週間くらい更新止まります。サイトの掲示板の方も
このスレもレス入れる余裕無さそうです。すみません。
7月に入ってから忙しくなり、いろんなことに手が回らず、
すみません。cgiの置き直しにも時間かかって、お待たせしたし。

ついでに。
保守がてら、千一夜サイトとあなたとの出会いはいつどこで?
を書いていただけるとちょっと嬉しいです。
理由は後日。

次の更新は、昼寝士さんにいただいてる宿題からですかね。

465:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/19 14:06:15 dRQSivcD0
初めての2ちゃんスレがファリス超萌えの確か9ぐらいで、
SSと言うものを知る。その勢いで2作ほど投下してしまったり。
その後で何気なく全スレチェックしてたら千夜一夜っていういかにもSS置き場な場所発見して現在に至る。


466: ◆HQOE8rQ11A
06/07/19 14:13:16 n7Rnjkeo0
DQの二次創作ねーかなと思って探したら発見

467:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/19 16:21:31 DcaY2Ce00
アグスレからのリンクだったり

468:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/19 23:50:35 xbTFd4pM0
トーナメントから。
「SS」という物の存在を知ったのもこれがきっかけでした。

469:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/21 01:29:13 Qbihybq20
もうすでに覚えていない…いつだろう?

470:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/21 03:05:52 h9vyOCdx0
やれやれ… 全く私は気付くのが遅すぎましたね。このスレの存在に…
某スレでラトームさんに間接的に教えて頂きました。今は、バルフラSS書こうかとスレの様子見してます。
全部出来たらここに落とした方が良さそうですかね…

471:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/21 14:35:50 pGXvaEW20
エロパロ板から来ますた。
保管庫の方にはいつもお世話になっていますよと。

472:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/22 22:09:25 oqdRyqgN0
某スレとか言われてもわからんしな。


473:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/22 22:28:02 mhK7QSj+0
板内をふらふら見て回ってて、たどり着いたような気がします。
ラトームさんの前の管理人の方の時でした。

474:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/22 23:09:21 xiwEKNcT0
某スレが数ヶ月前の祭で落ちていたときに知りました。

475:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/24 01:24:19 M1kCqp0B0
全員違う感じ?

476:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/24 07:18:18 jU+z22N30
『かなり真面目に~』のほうに投下しようと思ったんだけど、スレ違いかと思って聞いてみたらここを紹介された。
時期は結構最近だな……今年の6月ごろ。

477:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/24 09:14:19 0sjCCu2S0
>>475
そうでもない。
よく見れば「板内巡回で発見」が4人。
あとは
アグスレ、トナメ、某スレでラトーム氏、エロパロの不明、かなり真面目~スレ
から一人ずつ。

478:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/24 17:39:36 NnREUZ0S0
恋スレからきました。記念カキコ。

479:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/26 02:03:38 f/55HTYn0
ティファ×ルードって需要あるかな

480:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/26 02:53:41 ek60y88a0
ティファ、エアリスのカプ話なら専用板をお勧めする
向こうでSS投下が可能だし、レスも多いよ

481:アルミラージ斉藤 ◆nVUuKCCk76
06/07/26 05:17:00 hEV9XPFs0
あげ

482:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/27 06:50:42 7L4nSnl30
1日1レスこれ特殊

483:ギの人
06/07/27 16:50:13 imqluG7nO
>ラトームさん

復活オメ&更新お疲れ様です。
このスレだけは今でも巡回してますよ。


484:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/07/27 19:04:13 uYypvmZg0
業務連絡です。今のくそ忙しさが来月もずっと過ぎまで続くと
決定しますた、もう踊るしか。
              Å
            / \  ハッ
          ヽ(´Д`;)ノ
             (  へ)
             く
どのくらい忙しいかと言うと、
エンドールに店を買うためにネネにこき使われている時の
トルネコ並みです。しかも銀の女神像ナシ、みたいな。
それでもトルネコには愛のお弁当があったもんなー。売るけど。
考えたら、ネネにこきつかわれてるわけじゃないし。
愛っていいなーいいなあああーーーーー

レスでもなんでもないただの愚痴ですみません。
レスはまた今度に。
次の更新はきっとかくじつにお盆すぎてます…。うぇ


485:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/27 22:30:53 Gfdki0wS0
>>484
ラトームさんキタ━━(゚∀゚)━━!!!!
何も出来ないけど、せめて一緒に踊らせてください
              Å
            / \  ハッ
          ヽ(´Д`;)ノ
             (  へ)
             く


486:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/28 02:32:28 nHWNqPGb0
他スレで見つけたSSもここで紹介していいんですか?
あまりにも上手で感動しました、はい。

487:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/28 20:41:46 fu/G7bIP0
>486
今も存続しているスレだったらそのスレのurlを貼っておく、というのは?
勝手に転載されたら作者もあまりいい気持ちにはならないような気がする。
書かれてからずいぶん時間がたっていて書いた人も見かけない、というのなら話は別だが。

488:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/29 18:13:52 ldjBkXhF0
とりあえずそのSSを教えてほしいな・・・

489:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/30 12:06:58 ppfX4+V70
>>486
すごい生殺しなんだけど…

490:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/31 10:35:53 jq6W5VOB0
「ライアンですが、場車内の空気が最悪です」ってやつじゃね?
SSという感じではないけど。

491:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/31 18:29:45 G0sQOvBe0
各自、そうだと思われるSSを紹介していくと面白いかもね。

492:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/07/31 20:45:46 9ov4b2Tb0
昔某スレで何気なく書き込んだ「こんなSS書いてほしいかも~」
に即座に反応し素晴らしいSSを書いてくれた職人がいたおかげで、
こういうSS関連のスレを見るようになったよ
題材はFF9です


493:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/02 08:20:04 5fRU5xht0
保守

494:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/03 01:02:18 WHtWVz9x0
>>492
FF9好きだから読んでみたい
保管庫にある話?

495:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/03 20:52:47 9ldcc8hq0
まだ完成していないんですが、レス数にして30ぐらいの(ss=ショートストーリーとはいえないぐらいの)作品を貼ると迷惑ですか?
面白いかどうかは別にして。


496:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/03 23:15:30 R+mBWGqf0
まずは完成させてはどうか

497:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/04 01:44:33 ZMqKI9Vh0
まずは完成させようと思って書き始めてから早3ヶ月。
遅筆と多忙のコンボを甘く見ていたことを痛感。
前半の終わりが見えかけてきたことだし、少なくとももう3ヶ月はがんばってみるか。

495とは別人ね。

498:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/06 00:20:26 DyUy1U+P0
書き上げることが大事だよな、やっぱ。
途中までであげられると、感想も出しにくいし。
がんがれ。

499:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/08 01:14:16 ZWOTNOJY0
ほしゅいる?

500:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/08 02:52:57 oWHxaVdi0
去年よく流行った一連のカプばな~スレは
クラウド関連の良SSが沢山投下されてたっけ。

クラウド(FF7)×サンチョ(DQ5)とかクラウド(FF7)×すぎやまこういち(作曲家)みたいに、
カップリングはぶっとんでたけどw

501:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/09 22:09:08 myL3PVZq0
そういえば以前ラトームさんが、
>dat落ちした過去ログをほぼ全く拾えない状況にありまして
とおっしゃっていたような。
ということは気に入ったSSを見つけたらうpしていくしかないのかも。

かくいう自分は、我ながら気に入っていたSSをデータあぼん&投下したスレdat落ちの
コンポで永久に失ってしまった…
もっとバックアップをちゃんとしておかなかったことが悔やまれる。

502:ギの人
06/08/10 01:03:25 SxD3QT6x0
●あるからURLさえ分かれば過去ログ取れるけど…。
全部は無理だが少しなら取ってこようか?

503:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/12 03:06:16 ZlkS1VQu0
職人さん降臨待ちsage

504:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/13 20:56:59 0Hr8V/lg0
ギの人キタ━━━(゜∀゜)━━━ !!!!!
とりあえず、完結小説があった過去スレです
スレリンク(ff板)
スレリンク(ff板)
スレリンク(ff板)

505:ギの人
06/08/13 21:42:51 PIUlyqx90
>504

千一夜のアップローダにあげておきました

506:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/13 22:02:32 0Hr8V/lg0
ありがとうございます

507:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/15 01:36:04 5ngruidb0
今夜は半分ほど投下します。ジャンルは昼メロ?
題は『勇者の宿命』です。

 大魔王が倒れし後、アレフガルドには平和が訪れた。しかし数百年の後、竜王と名乗る強大な魔がこの地を再び闇に閉ざした。
 この世に光ある限り、必ず闇は存在する。それはこの世の理だ。しかし世界の人々にとってはそんな理はありがたくない。どんな時代の人間だって平和に暮らせるならそれを望む。
 そういう意味ではその時代が丸ごと不幸であったと言える。
 彼─アレスが生きたのはそのような暗黒の時代の始まりであった。アレスは、彼の家系が伝説の勇者ロトに連なると幼い頃から祖父に聞かされ続けてきた。
 アレフガルドでは多くの者が怪しげな家系図を持ち上げて「我こそはロトの正統な子孫だ」と主張していた。ロトが大魔王を倒した後、どのようにしてその後を過ごしたのかは定かでない。妻を娶って子をなし、数百年の後に無数の子孫へとつながっているのかもしれない。
 だが確たる証拠はなく、いずれも笑い話の類として扱われていた。─アレフガルドを治めるラダトーム王室としても、「伝説の勇者の子孫」などという存在が伝説でなく現実に存在してもらっては困るという事情が存在した。
 失政を犯した際に伝説の勇者とやらが信望者を連れて王宮に乗り込み、「この国を大魔王の魔手から救ったのは我が祖先だ。その正統なる子孫たる我こそがこの国を治めるのにふさわしい」などと主張する事態も想定されるからだ。
 閑話休題。だからアレスも祖父が繰言のように言うのを半ば聞き流し続けてきた。剣術や魔術を学んできたのも別に勇者の末裔としての自覚に目覚めたからと言うわけでなく、自衛の為という程度の動機であった。
 しかし彼が成人したとき、彼の年老いた祖父は彼を家の地下室に連れて行った。そして「これがお前の宿命だ」と言いながら古い宝箱から取り出して見せたのだ─その青き鎧を。
 アレスの父はアレスがまだ幼い頃、魔王が現れた直後に死んでいた。死因は山菜採りに山奥へ行き怪物に襲われたためと町の人々、またアレスには説明されていた。
「しかし真実は違う。お前の父は魔王討伐のための修行に出て、怪物に返り討ちに遭ったのだ」

508:ここまで
06/08/15 01:37:49 5ngruidb0
 アレスは父の最期の姿を覚えている。母は「幼い子供に見せるものではない」と反対したが、祖父は半ば強引にアレスに「それ」を見せたのだ。
 スライムの集団に襲われてその消化液にまみれ、わずかな遺留品がなければ本人とはわからない無惨な姿だった。数日間は食事がのどを通らなかった。
 しばし過去を思い出したが、祖父は変わらず話を続けている。
「魔王は間接的にお前の父を奪ったのだ」
 その言葉にアレスは白々しさを感じた。父は自ら魔物の巣窟に入り込み、当然の結果として反撃に遭っただけだ。それも、最下等の魔物たるスライムを相手に。
 冗談じゃない。祖父は父と─自らの息子と同じ目に孫を遭わせるつもりなのか?確かにアレスは父とは違い、幼い頃から剣術や魔法の修行を積まされていた。それは─死地に赴かせるつもりだったからなのか?
「さあ、お前も旅立つのだ。かつて我らの遠き祖先ロトがそうしたように─」
 天井を仰ぎ見るような姿勢で祖父はとうとうと謳った。その感極まったのか、自己陶酔した様子に、ついに長年アレスが溜め込んできたものがもれ出た。
「じいちゃんは─俺が死んでも構わないというのか……」
「ん?」
「親父みたいに、俺がみじめに野垂れ死んでも構わないってことかよ!」
「アレスよ……」
「俺は……勇者なんかにならなくていい。ただ……平和に暮らせればそれでいいのに……」
「─お前はそれでもロトの子孫なのか!そんな弱音を吐くことが許されると思っているのか!」
 祖父は激怒した。これほど激しく怒る祖父を見るのは初めてだった。しかしアレスも後には引けない。
「ああそうさ……勇者の子孫?そんなものが何だってんだよ。
 この鎧だって本物かどうかも分からないし、本物だとしてもうちの先祖の誰かが盗んだものかもしれないじゃないか!
 それに─仮にこの鎧が本物で、俺が本物のロトの子孫だとしても、何で俺が戦わなきゃならないんだ。
 お城には俺より強い戦士なんてごまんといるし、他にも自称ロトの子孫はたくさんいるだろうさ」
「この─軟弱者が!」
 突然、アレスの視界に何かが飛び込んできた。それが祖父の樫の杖だと気づいたのは、顔を横殴りにされた後のことだった。

509:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/15 21:22:34 V4hHDlWm0
堀井雄二×坂口博信でカプばな~
スレリンク(ff板)
クラウド×すぎやまこういちでカプばな~
スレリンク(ff板)

こういうのはFFDQのSSのうちに入るのだろうか

510:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/15 21:43:49 Fi0NXWks0
そういうのも全部挙げていったらきりがないよ

511:北風
06/08/15 22:46:15 5ngruidb0
『勇者の宿命』続きです。

「やっと─我らが真のロトの子孫であると証明されるときが来たというのに、世界の危機が訪れたというのに─このすくたれ者め!」
思わず身をかがめたアレスに、祖父の折檻はなおも続いた。
しかしアレスは反撃をしようとは思わなかった。まさか老人、それも血のつながった祖父を殴るわけにはいかない。
それにアレスも修行を積んできた身。年寄りの打擲など守りを固めれば十分耐えられる。
(ま、じいちゃんもじきに収まるさ)
 そうアレスが諦観したときだ。急に祖父が動きを止めた。そして顔をひきつらせ─どうっと倒れた。

 祖父の葬儀はしめやかに行われた。魔物が跳梁跋扈する時分、葬儀など珍しくもない。
 むしろ突然の心臓発作とはいえ、曲がりなりにも天寿をまっとうできただけアレスの祖父は幸せな方だったろう─というのが周囲の人たちの慰めだった。
 アレスは地下室であったことを母親にも語らなかった。祖父の尊厳を守るためにも、それがせめてもの最後の祖父孝行だと考えたからである。
 葬儀の翌日─アレスは例の地下室にいた。アレスの目の前には『ロトの鎧』が宝箱から出されていた。アレスは視界に鎧を入れながらも、心はどこか遠く離れたところにあるようだった。
「この鎧がうちにあったから─親父も、じいちゃんも、もっと昔の先祖たちも─」
 ロトの子孫だという自負、あるいは妄執。それに囚われた人生を送ったのだろう。
祖父が見せた激怒も今までの人生で溜め込んできたものが吹き出ていたのだということに気づいた。
祖父は(いや、それ以前の先祖たちも)自分がロトの子孫であるということを誇りに思ってきたに違いない。現にそれを裏付ける証拠─『ロトの鎧』もある。
しかし平時にそれを主張しても他の有象無象の自称ロトの子孫と一緒くたにされるだけである。第一勇者が活躍するにふさわしい場所がない。
そして─かねて望んでいたように、世界の危機が訪れた。それはなんと罪深い望みであったろう。平和をもたらした勇者の子孫が、世界の危機を望むとは。
しかしもはや自身はすでに年老い、戦うことはできない。自然と息子(アレスの父)孫たる自分に過剰な期待を抱くに至ったのだろう。

512:北風
06/08/15 22:47:33 5ngruidb0
「くそ、ロトの子孫だなんてくそくらえだ!」
 アレスはすべてが馬鹿らしくなった。

 やがてアレスは旅立った。
 父の死の真相、祖父の妄執、そして憤死。知ってしまった今、アレスはそれらを無視することも、誰かに話して心の荷を軽くすることもできなかった。
 もはやアレスの心はアレス自身のものとは言いがたかった。父、祖父を含め、ロトの子孫を称することでひそかな誇りを保ってきた自らの家系に縛られていたのだ。
 また同時に、世界の危機を望んだ祖先たちの罪深い望みを償うという意味合いもあった。奇しくも祖父の言った「宿命」という言葉が浮かんでくる。
 その際アレスはあのロトの鎧を身に着けていた。ただし色を塗り替え、ロトの紋章たるラーミアの意匠を隠した上で。ロトの子孫を名乗ることを拒む─それがささやかな「宿命」への抵抗だった。

 さて史書にアレスの名は残されていない。ただ、当時は無数の自称ロトの子孫が竜王討伐に旅立ち、そして帰ってこなかったということが記されているだけだ。
 そして「ロトの子孫」というブランドは一時的に下落し、伝説は忘れ去られた。
 伝説が復活するのは、真のロトの子孫がラダトーム城に現れ、時のラダトーム王ラルス16世が全面的な支援を宣言して後のことである。
 真のロトの子孫たる勇者は廃墟となったドムドーラの町でロトの鎧を手に入れたという。それはかつてアレスが祖父に地下室で見せられ、その後自らまとって旅に出たあの鎧と酷似していた。
 ドムドーラの町は完全に破壊されていた。わずかな生存者によりその鎧の前の持ち主が武器屋の主人ユキノフだということは判明している。しかしユキノフ以前の持ち主が誰であるのかは不明である。
 その鎧がアレスの家に伝えられていた『ロトの鎧』と同じものであるか。
 アレスの家系が本当にロトの子孫であったのか。
 そして何よりもアレスがその後、勇者の一人として旅を続けられたのかどうか─それは鎧だけが知っている。



513:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/16 08:52:55 ykt4BDrH0
いやあ、こういうの好きやわぁ・・・
GJ乙!

514:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/16 11:32:01 0jbQs0i50
こういうローテンションな作品もたまにはいいかな、ってぐらい。

515:絶てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/08/17 07:38:56 TPODGtfF0
やばやば、かなり間が開いてしまってます orz

>>424-427の続きになっております。
FainalFantasyⅥ 外伝 ~断てない鎖~


「―とは言ったものの、まずはどこへ行こうかな……?」
「クーエェ?」
 ファルコンの背に寝転がり、地図を眺めながら、ロックはぼんやりとつぶやいた。ちょうどファルコンとロックの後頭部が当たる形である。
 よく見れば、コーリンゲンのある大陸には、他に町や村がないようだった。あるのはコーリンゲンと、ダリルの墓。そして、大陸の北方に位置する建物だけだった。
「無策に行くのは危険、か。海を渡る前に、この『竜の首コロシアム』ってところに行ってみるか」
 竜の頭のように歪んだ半島。その根元―まさに竜の首に位置するであろう建物を眺めながら、ロックは起き上がった。体を反転させ、しっかりと座る。
 コロシアム……たしか、円形闘技場のことだと記憶している。戦いを生業とする施設であるならば、何か情報がつかめるかもしれない。
「蛇の道は蛇、ね。よし、行くか」
 手綱を操り、ロックは一路、北へ―

「こいつぁ速い! 本当に山をも駆け登りそうだな!」
 ファルコンの想像以上の脚力に、ロックは歓声を上げていた。
「じいさんの言ってたことは伊達じゃなかったんだな!」
「クーエェ!」
 ロックの言葉に気を良くしたのか、ファルコンは更にスピードを上げた。
「はっはっは! あまりはしゃぐなよ!」
 老人の言葉通り、大地は枯れてきているのだろう。草花の色が薄い。空も、常に薄い黒雲が張っていて、まだ朝であるのにどこか薄暗い。
 しかし、風は気持ちよかった。脚力の優れたチョコボの上から感じる風は、崩壊前に彼の仲間―セッツァーの飛空挺『ブラックジャック』のデッキから感じたものによく似ていた。チョコボの上でそれほどの風を感じられるとは、やはりファルコンは只者ではないんだろう。
「風は……まだ生きてる。みんなも、きっと生きてる!」
 確かな希望を胸に、ロックは一路、北へ―

516:絶てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/08/17 07:40:50 TPODGtfF0

 砂埃に汚された白壁。妙に毒々しい紫色の屋根。
「壁はしょうがないとして、屋根は設計者のセンスを疑うな……」
 竜の首コロシアムを半眼で見上げながら、ロックはぽつりとつぶやいた。
 確か、オペラ座の屋根も紫色だったが、あの紫には気品があった。塗料の質も落ちてきているのだろうか。
「……さすがに、中には入れられないかな。ファルコン、ここで待ってろ」
「クエ」
 指示に答え、ファルコンは入り口の横に座り、毛づくろいを始めた。
 開放されている木製の扉を開け放ち、建物の中へ入る。
 建物の中は喧騒にあふれていた。赤茶のタイルが敷き詰められた床。頑丈そうなグレーの石壁。正面には少し先に低めの階段と、その左右には一つずつカウンターが設けてあった。そして、その右側のカウンターには―
「このオルトロス様がコロシアムの受付をしているなんて……トホホ」
 右側のカウンターには、タコがいた。
 うねる八本の足を操り、数枚の書類に同時に何かを書き留めている。
「あー、オルちゃんじゃないか」
「誰だ!? このオルトロス様を『オルちゃん』などと呼ぶやつは!」
 持っていたペンを放り、オルトロスは怒鳴り声を上げた。
「よ。お前も生きてたのか。本当にしぶといやつだな」
「お、お前は! いつぞやのドロボー野郎!」
「ド・ロ・ボ・ウ? 俺を呼ぶならトレジャーハンターと言ってくれ」
「同じようなもんやないか」
 いそいそと放ったペンを拾いながらオルトロスはつぶやいた。
「ちっちっ! 大違いだぜ!……ところで、こんな所で何をやってるだ?」
「見てわからんのかいっ! 受付をやってるんや!」
 オルトロスは机をバンバン……もとい、ピタピタと吸盤で叩きながら怒鳴り散らしてくる。
「なんで受付なんかやってるんだ?」
「いやぁ、それはその…………言えん。かっ、考えがあってのことや!
 それと、いま俺様は書類の整理で忙しい。コロシアムに参加するんやったら、階段の上にいるやつに言ってくれや」
「ふーん……? ま、別にいいけどな」
 適当に話を切り上げて、正面の階段に足をかけると、背後からオルトロスの声が聞こえた。

517:絶てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/08/17 07:42:22 TPODGtfF0
「そうそう……しょうもないアイテムを賭けてもダメだよ~ん。テュポーン大先生が出てきて君におしおきしちゃうよ!」
「……テュポーンもいるのか…………」
 本当にしぶといやつらである。
 階段を上りきると、正面の大きな扉の前に正装の男が立っていた。彼に言えば、コロシアムにエントリーできるのだろう。
「コロシアムに参加しますか?」
「いや、今はいい。それより、ここの責任者はどこにいる?」
「オーナーでしたら、酒場にいらっしゃるでしょう。酒場はそちらに」
 男の示す先には『INN』と記された看板の掲げられた両開きの扉があった。宿屋兼酒場、ということなのだろう。
 扉を開くと、ロビーよりもあふれる喧騒がロックの体を打った。
 宿も、酒場も、よく賑わっていた。観客だけでなく、参加者もくつろいでいるのだろう。剣や棍棒を持った男や女達が酒を酌み交わしていた。
 酒場内を見回すと、カウンター席の隅っこに腰掛ける身なりのよい初老の男性が目に付いた。おおよそ、コロシアムという名前と不釣合いの格好で、空のグラスを片手にバーテンと談笑しているようだ。
「もしかして、このコロシアムのオーナーでいらっしますか?」
「んん? その通りだ」
「お隣、よろしいでしょうか?」
「構わんよ」
 男性―オーナーの許可を得て、ロックは隣の席に座った。
 自分用に適当なものを注文し、さらに一品。
「俺からオーナーへ、彼の好きなものを」
「おぉ、悪いな。それじゃあ、こやつと同じものをもらおうか」
 しばらくして、ロックとオーナーの前に頼まれた飲み物が置かれる。グラスに口をつけてから、オーナーは口を開いた。

518:絶てない鎖 ◆o7JDqGUgsg
06/08/17 07:44:30 TPODGtfF0
「それで、ワシに何のようだ?」
「……ちょっと、探し物をしていまして。もしかしたら、オーナーならご存知では、と思ってここまで来たんです」
「ほう。その探し物とは?」
「…………さまよえる魂を蘇らせる秘宝」
 ロックの言葉に、オーナーの眉がぴくりと動いた。
「……ほう」
「ご存知でしょうか?」
「…………そういった秘宝の類の話はよく聞く。が……すまん、死者を蘇らせる秘宝の話は聞いたことがない」
「……そう、ですか……」
「まあ、こんな施設だ。聞きまわれば、誰かしら知っている奴がいるだろう。そう気を落とすな」
「……はい。ありがとうございました」
 グラスの中身を一気に飲み干し、その場を立ち去ろうとしたロックは、ふと思い立って口を開いた。
「ところで、受付にいたオルトロスはなんでここで働いてるんです?」
「受付にいるオルトロス? あいつは、借金を返せないので受付で働かせることにした。全部返すには百年くらいかかるな」
「借金、ですか……」
 何か釈然としないものを感じつつ、ロックはその場を後にした。


続きは後日。
こういうのはよくないって言われてるので、肩身が狭いです。

519:断てない鎖 修正 ◆o7JDqGUgsg
06/08/17 17:58:42 EleQg59B0
タイトル
×絶てない鎖
○断てない鎖

×「それで、ワシに何のようだ?」
○「それで、ワシに何の用だ?」

タイトル間違えるなんて orz

520:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/18 22:26:27 03XVFTW00
ヤンガス・・・・


ヤンガス・・・・


はぁ・・・はぁ・・・・


らっー


らっー





雷光一閃突きィーーーーーーーッ!!!!!


521:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/21 00:02:58 3FPX/jEB0
ぐっ

ぐっっっ




ぐぅらんどくろーーーーす!


522:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/22 10:32:12 EEHMDP8x0
ククールなのか○チェロなのか

523:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/23 04:32:50 YObzPshl0
ageとこう

524:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/25 00:33:11 fRXHbrbN0
○チェロって書くと、弦楽器ができます、っていってるみたいだな

525:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/25 11:03:08 voeF/5KN0
それはない

526:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/27 11:17:33 sTfEbRoE0
×チェロ……

527:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/28 19:39:51 j1b2coHr0
☆チェロ

528:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/08/28 20:07:37 v6EoGv+o0
□チェ□

業務連絡です。
中秋の名月あたりに更新のびます、スミマセンorz

ログうpなど、ありがとうございました!

引き続き、ログなど募集中です。
ぐふっ






529:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/08/31 07:17:22 fLkdtkjuO
保守

530:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/08/31 18:30:42 dXgRPSNT0
>>504-505

ちょっと時間が出来たので、とりあえずログうpだけ完了。
ありがとうございました!

URLリンク(yotsuba.saiin.net)
URLリンク(yotsuba.saiin.net)
URLリンク(yotsuba.saiin.net)



531:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/02 04:46:55 Ov8J1/WB0
乙です!

532:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/02 16:19:42 2XIX2SwpO
保管庫みれないorz

533:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/04 17:26:33 hrt3opFnO
保守しときます

534:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/06 23:40:35 vCp/8jSdO
あげまする

535:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/09 00:06:09 0fEIk2s20
ほしゅしゅ

536:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/12 09:10:04 JCOvLN2P0
ほしゅり

537:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/12 17:28:34 ajOdqIdiO
千一夜の過去ログにいくつか短編があったと思うのですが、持っている方はいらっしゃいますか。
以下の三つです。

FFDQ千一夜物語 第五百五十夜
スレリンク(ff板)

FFDQ千一夜物語 第五百五十一夜
スレリンク(ff板)

FFDQ千一夜物語 第五百五十二夜
スレリンク(ff板)

FFDQ千一夜物語 第五百五十二夜の2
スレリンク(ff板)


538:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/13 15:43:13 VuEvzrAY0
よくわからんが、その4つのリンクから3つの短編探し出してって事?
それともそれ以外の過去ログあったら教えてって事?

539:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/15 21:32:49 /daAzitQ0
537だけど、書き方まずかったな。
●持っている方がいたら、その4つのスレのログを是非拾って欲しい、と言いたかったんだ。
短編でもおもしろいものもあったし、今はもうないDQ8主人公スレのssを拾ってくれたのがあったから。
どうぞよろしくお願いします。

540:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/16 10:03:24 diY4sO1B0
●持ちじゃないけど全部見れる。
これをzipかなんかにしてうp?
SSサルベージしてうp?

541:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/18 12:54:19 05pCfdEC0
最近ここを見出した者です。流れ斬ってスマソ
古畑任三郎 vs FFDQキャラ のログを保管してもらえるところを
密かに探していました
古畑スレは基準に合わないのでしょうか?
最初はネタスレ気味でしたが中盤以降良質なSSもあるので
古畑氏は世界観をぶち壊すほど介入していないような…
現スレを確認した限り古畑スレについて議論した跡も見えなかったので
一度ご検討くださいませ

542:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/18 13:18:38 05pCfdEC0
すいません、再び
今SS収集基準をよっく見直してみたら
名詞「形式はダメなんですね…
お騒がせしてスイマセンでした…

543:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/20 11:16:44 gjOqY7NP0
ほしゅ

544:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/22 03:02:04 QAkzxRQ+0


545:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/24 21:07:19 a9n5oisi0


546:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/24 21:53:24 bs0Az/mS0


547:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/24 22:35:13 YN6FAUFE0


548:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/25 21:41:52 qXesiNbj0


549:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/25 22:23:39 4CWAc0rb0


550:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/26 09:54:51 V/ijM+YN0
ヽ(;´Д`)ノ

551:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/09/30 05:26:38 Vb1NU1cl0
ほぼ日本國暴風圏ヽ(;´Д`)ノ保守

552:sage
06/10/01 23:56:45 Ykq2ktQT0
保守

553:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/02 06:18:08 AGNo+F6oO
どーゆう事?

554:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/02 06:34:59 OK+KG1vQO
ク リ リ ン の こ と か ー !

555:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/03 21:37:23 9IevuQC+0
ハッサンのことかー!と言いつつ保守

556:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/06 16:51:36 85wlkwZF0


557:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/07 10:03:43 Hw6kafY90


558:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/07 18:43:55 nCLIBstK0


559:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/09 01:17:25 WCzRwLyuO
アッー!

560:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/11 09:42:12 wjDhV9Dc0
ほる・アッー!保守

561:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/12 21:43:43 4dd7Ym6v0


562:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/13 10:43:07 FOXZvmKu0
人少ない(´;ω;`)

ここって、恋愛物は投下NGとかって規制は無いですよね?
まずありえないカプの組み合わせで、エロもなく、他に投下するところが思いつきません。


……出来たら投下しても、いいよね?

563:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/13 15:55:00 T3UaQWhR0
щ(゚Д゚щ)カモォォォン

564:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/10/13 21:12:00 DSu1kLpM0
ラブラブщ(゚Д゚щ)カモォォォン

最初に作品名(DQ3とかFF5とか)入れておいていただけると
なお嬉しいです。でも、それがオチにつながってるとかなんとか
でしたら、無理はお願いしませんです。


中秋の名月は美しかったですね!
今の目標は「文化の日までに2回更新」です。
すみませんすみませんすみませんーーーー

565:562
06/10/13 22:34:09 FOXZvmKu0
>>563,564
ではお言葉に甘えて、出来てるところまで投下させていただきます。

ラトームさん、お疲れ様です!
中秋の名月、残念ながら悪天候の為、見られませんでしたorz
貴方様の無事が確かめられば、それで十分です。
どうかプレッシャーを感じて、無理をされませんように。

あ、作品はDQ8です。
ネタバレ全開、通常エンドバージョンです(今日はそこまで行きませんが)
よろしくお願いします。

566:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/13 22:38:41 FOXZvmKu0
「最近、姫様、あまり泉の水を飲めませんね? お体の調子でも悪いのですか?」
ふしぎな泉で、エイトが首を傾げる。
翡翠色の瞳と目が合って、オレは思わず苦笑する。
ヤバイな。ほどほどにしないと、いくらそっちの方面には鈍感な面子が揃ってるとはいえ、気づかれるのは時間の問題だ。
オレが夜中にこっそりミーティア姫様を連れ出して、この泉で逢い引きしてて、そのせいで彼女が大量の水が飲めない状態になってるなんて知られるのは、絶対にマズい。
だけど内緒の恋っていうのは密の味で、どうにも抑えることが出来ずにいる。

初めて逢った時、彼女は馬の姿だった。
エイトやトロデ王がオディロ院長暗殺未遂の疑いをかけられて、修道院の牢に入れられている時、鉄の処女からの抜け道がちゃんと使えるかどうかを確かめるため、オレは院を抜け出して馬小屋に向かった。
その時に心細そうに修道院の方を見ている白馬を見て、勘のいいオレは、すぐにエイトたちの馬だと見当が付いた。
だけど保護してやろうと近寄ったのに、これがなかなか頑固なレディで、一歩も動こうとしてくれなかった。
仇でも見るような目で睨まれて、あの時は本当にどうしようかと思ったもんだ。
後から聞いた話だけど、外に出られないはずのオレの頼み事が原因で、エイトたちが戻ってこないっていうのに、そのオレがちゃっかり修道院を抜け出してたのを見て、腹が立ったらしい。
あの時は侵入者があったことで監視の目が緩くなって、外に出ることができたんだが、まあ彼女がそう感じたのは当然のことだとも思う。

その時のことが心に残っていて、馬に嫌われるのは騎士としてのプライドが許さないって部分もあり、旅に加わった後は積極的に彼女の世話をするようにした。
エイトもトロデ王も、彼女を大事にしてはいたけど、馬に関しては素人で、世話の仕方が下手すぎて見ていられなかった部分もある。
その内に彼女のオレを見る目も優しくなり、言葉は通じないながらも友情らしきものが芽生えたと思った頃、この泉で彼女の真の姿を見ることになった。

567:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/13 22:39:38 FOXZvmKu0
一目で恋に落ちた。

馬は睡眠時間が短い生き物だ。そしてオレの得意分野は夜更かし。
だからどこかの町に泊まる度、オレは宿を抜け出して彼女を泉へと連れ出した。
ほんの数分間だけでも、人間の姿の彼女を独り占めするために。
彼女も、そんなオレのわがままに付き合ってくれた。

自分でも笑ってしまうほどに、清い関係だった。
彼女が人の姿に戻れるのは、ほんの数分だけだ。
姿を見て、声を聞くだけで、あっという間に時間は過ぎてしまう。
それにオレなんかが彼女の純潔を奪ってしまったら、トロデーンとサザンビークの間で戦争が起きかねない。
そんな危険は橋は渡らない。
『君は婚約者のいる相手だから、後腐れが無くていい』と、精一杯の虚勢を張る。
そして彼女にも言う。
『婚約者という安全パイをキープして、オレとの恋を楽しめばいい』
最低なことを言っている自覚はあるが、他にどうしようがある?
彼女だってわかってる。他にどうしようもないことぐらい。
だけど、一生に一度くらい『恋』に溺れたっていいはずだ。
そう、これはあくまでも『恋』だ。『愛』にはならない。
熱しきった後は冷めるだけ。

……それでも、この熱が冷める気配は一向にないことに、少しだけ戸惑っている自分がいる。

568:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/13 22:40:39 FOXZvmKu0
世の中は、案外うまく出来ている。
不自然なこと、無理なことは、決して長くは続かない。
煉獄島から脱出して、マルチェロの法皇就任式に乗り込んだ日。
聖地と呼ばれていた場所は崩壊し、たくさんの人が死んだ。
そして、その日にオレの人生は決まったんだ。

空に浮かぶ城に攻め込もうにも、目の前で起こった惨劇を放置することも出来なかった。
急を要するケガ人に回復魔法をかけ、崩壊した建物に閉じ込められた人間を救出した。
後は生き残りの騎士団員と聖職者たちに任せても何とかなりそうだという頃には、魔力は底をついていて、とても暗黒神なんかと一戦交えられる状態には無かったんで、一晩休んで体力を回復させることにした。
一応は暴力行為で煉獄島を脱獄した身なんで、教会関係者のいない三角谷を選んだ。
ここならトロデ王を外で待たせる必要もなく、心配がいらないというのも理由の一つだ。

そしてオレはまた、彼女をふしぎな泉へと連れ出す。
大切な話をするために。

「無事で良かった。この一カ月間、本当に心配していたのよ」
泉の水を飲んで人間の姿に戻った彼女の声と姿に、固めていたはずの決意が一気に崩壊した。
華奢な体を折れてしまいそうな力で抱き締め、唇を奪う。
頭では駄目だとわかってるのに、自分を抑えられない。
「ク、ククールさん?」
驚きと戸惑いを隠せずにオレを見上げている彼女を、強引に草の上に押し倒す。
首筋に下を這わせ、跡が残るほどに強く吸い上げると、上ずった声が落ちてくる。
「どうし、たの? 急にこんな……」
ごめん、オレ最低なことしてる。
君の気持ちも考えずに、一方的に自分の感情をぶつけてる。
呆れてくれて構わない。オレはこういう人間なんだ。

569:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/13 22:41:18 FOXZvmKu0
小さな手が、そっとオレの肩にかかる。
そうだ、そのまま押しのけてくれ。そうしたら頭が冷える。
お互いに、棲む世界が違うことは知っていた。
君の呪いが解けるまでの、期限付きの恋だった。
秘密の味が甘すぎて、ほんの少しのめり込んだだけ。
そして予定よりも少しだけ早く、終わりの時が来ただけだ。

だけどその手はオレを拒絶することなく、柔らかく首に巻き付けられた。
そして、耳元で甘く囁かれる声。

「好き……」

……何もかも投げ出してしまおうか?
このまま彼女を奪ってしまったなら、もう後には戻れない。いや、戻らずに済む。
「もしもオレが……」
暗黒神を倒せたなら、望んでもいいだろうか。
世界を守る英雄になれたら、君に釣り合う男と認めてもらえないか?
何もかも捨てたっていい。過去も、約束も、覚悟も、罪も。
「ミーティア、君と……」
一緒に生きていけるなら、その後で地獄に堕ちたってかまわない!

そう続けようとした言葉は、声にならなかった。

時間切れだった。
泉の水の効力は切れ、ミーティアは馬の姿に戻ってしまった。

570:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/13 22:42:24 FOXZvmKu0
……ああ、そうだな。許されるはずがなかった、そんなこと。
この時ばかりは、ラプソーンの呪いに感謝せずにはいられない。おかげで婦女暴行魔にならずに済んだ。
何を言うためにここに来たかも、ようやく思い出した。
頭も冷やしてくれたことだし、暗黒神君には今まで散々コケにしてくれた分と合わせて、しっかりお礼をしないとな。

「エイトってさ、いいヤツだよな」
我ながら回りくどい話の切り出し方だとは思うが、いきなり核心を突いた話をする度胸が無い。
ミーティアは少し戸惑った様子を見せるが、静かにオレの話に耳を傾けてくれる。
いつだってそうだった。
彼女が人の姿でいられるのは、ほんの数分。たわいの無い言葉を交わした後は、一方的にオレが話すだけ。
口説き文句だったり、聖書の暗誦だったり、修道院でしでかした悪事の数々だったり、内容は様々だ。
だけどそれに対していつもミーティアは、静かな優しい瞳を向けてくれていた。

「オレとエイトってさ、境遇だけは似てるんだよ。十歳になる前には親はいなくなってて、親代わりに育ててくれた人は親切でユニークだけど、その集団の中で一番偉い人だったから、甘えるってわけにもいかなくて。
それでも自分の居場所を護るために、武器を取って戦う人生選んだっていうのに、ドルマゲスの中の暗黒神にそれをメチャクチャにされた時には、手も足も出なかった」
それなのに、オレとあいつは似ても似つかない。あいつには、自分の心を守るための、嘘も、ごまかしも、諦めも無い。
お人よしのおせっかいで、変なところでは頑固者で、とんでもなく呑気なヤツで。
でも、あいつとなら、どんなことでも何とかなると思わせてくれる、器の大きさを持っている。
どこで違ってしまったんだろうと考えた。
もちろん、持って生まれた資質ってのがあるんだろうけど、その他にも決定的な違いが一つだけあった。

571:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/13 22:44:07 FOXZvmKu0
「君は直接会ったことは無いはずだけど、オレに兄貴がいるのは知ってるだろう? そしてそいつが、オレを憎んで毛嫌いしてるってことも」
空を仰いで、大きく一つ息を吸った。
今までずっと、目を背けてきたことから、逃げられない時がやってきた。
「オレの兄貴も君と同じように、夜の静けさをたたえた黒髪と、深い森のような緑の瞳。そして、ちょっとばかり立派なデコの持ち主なんだ」
ミーティアと初めて会った日、あいつと同じ色の瞳が、あいつと同じようにオレを睨むのを見て、自分でも驚くほどに胸が痛んだ。
「兄貴がオレを憎むのは、無理もないことだって思ってた。お互い、他に行くとこも無いんだし、諦める以外どうしようもないって、気にしないようにして受け流してきた。
……だけど、やっぱり辛かったよ。たった一人の肉親が、冷たい憎しみの目しか向けてくれないっていうのは」
喉の奥が鈍く痛む。上を向いたまま固く目を閉じ、言葉を続ける。
「だからエイトを羨ましく思った。オレの人生の一番近い所にいる人間が、自分を憎む兄貴じゃなくて、自分を慕ってくれる可愛い女の子だったら、オレだってもう少しマシな人間になれたんじゃないかと、思わずにはいられなかった。
だから、君があいつと同じ色の瞳で、オレを優しく見てくれるのが嬉しかった。自分が何かに許されたような気持ちになれたんだ」
頬に、ザラリとした舌の感触。
……反則だ。
これが人間の女の子だったら、どんなことしてでも見栄を張るのに、馬が相手だと、どうしても気が緩む。
艶やかな鬣の中に顔を埋めて、目から出る液体を隠しても、震える声も体も抑えることが出来ない。
だけど最後まで言い切らないといけない。どんなにみっともなくたって。
「もう、終わりにしよう。いや、元から始まってさえいなかったんだ。オレは君自身のことなんて、初めから見ていない。オレは君に、兄貴を重ねていただけなんだから」
目を拭って顔を上げると、そこにはやっぱり兄貴と同じ色の瞳。
そこには憎しみも怒りもなく、ただ悲しそうに潤んでいる。
彼女にこんな顔をさせているのは、他ならぬオレ自身。

「今までゴメン。さようなら……姫様」
許してくれとは言わない。だからせめて暗黒神は必ず倒して君の呪いを解く。
それ以外にオレに出来ることは、もう何も残っていないんだから。



572:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/16 23:45:23 NM7wClOK0
保守

573:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/17 08:27:11 nq4lytGe0
最下層age

574:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/18 10:52:36 wa+X35pw0
>>566-571
続きが気になる。
基本的にはエイト&姫が好きだけどうまく行くといいなぁ。
ありえないカップリングでもハッピーエンドを望んでしまう。
ガンガって!

575:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/19 23:30:32 Zey2Fje90
>566-571の続きになります。


暗黒神は消滅し、トロデーン城にかけられていた呪いは無事に解けた。
城の中庭で祝宴が開かれてるが、正直あまりめでたい気分にはなれない。
オレにとっては、やらなきゃならない事の一つが終わっただけでしかない。
それどころか、青いマントにかかる黒髪の後ろ姿を、目で追ってしまいそうになる自分の未練がましさに、嫌気がさす。
ちょっと見渡せば、レディたちが城を救った美貌の騎士を、熱い眼差しで見つめてきてるっていうのに、知らん顔をするのは礼儀に反する。
彼女たちの夢を壊さないように、魅力たっぷりに紳士的な態度で、笑顔をふりまく。

ただそれだけのことだったのに、いきなり火の玉が飛んできた。

ゼシカのメラは普通の倍の威力だけど、今のオレにとっては、ちょっと熱いってだけだ。
だけど、オレって被害者だよな?
なのに何でゼシカに怒られながら、城の裏まで引っ張ってこられなきゃならないんだ?
理不尽さを感じながらも、初めて会った時のこと思い出して、ちょっと懐かしい気持ちになる。
あの時は、オレの方がゼシカを外に連れ出したんだけど、口よりも先にメラが出るところは変わってない。
ちょっとは淑やかにならないと、嫁の貰い手ないぞ?

「あんたはどうして、女とみれば見境なく口説くわけ? ホンットに、初めて会った時から全然成長してないんだから!」
うわ、こいつにだけは『成長してない』とか言われたくねえ。
オレはかなり変わったはずだ。
以前だったら、『ヤキモチか?』とか『オレの本命は君一人だよ』とか言ってただろうが、ゼシカに対しては冗談で済まないから、言わないだけの分別はついた。
初めて会った頃は、世界最高峰のダイナマイトバディの持ち主のゼシカを、何とか口説き落とそうとも思ったもんだが、本当に残念なことに、今はゼシカを異性として意識出来ない。
男らしすぎるんだよな。いい意味でだけど。

576:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/19 23:31:33 Zey2Fje90
「あんなの、口説いた内に入るかよ。長い間呪いで苦しんでたレディだちに、甘い夢を見せてやることの、何が悪いんだよ。美形ってのは、全世界の共有財産なの。奉仕するのがオレの義務。
あ、きわどい格好して男たちの目を楽しませてるゼシカも、ちゃんと美形の義務を果たしてるから、安心していいぜ」
「ふざけないでよ、バカ! ミーティア姫が可哀想じゃないの!」

……驚いた。心底驚いて、声が出ない。
「姫様は本当に本物の箱入りお姫様なんだから、あんたが女の人を口説くのは挨拶代わりだなんて、きっとわからないわよ? 誤解を招くようなことして、本気で愛想つかされても知らないんだからね」
「ゼシカ、お前……どうして? いつから?」
「見てればわかるわよ。ククールって、自分のことクールなポーカーフェイスだと勘違いしてるみたいだけど、メチャクチャ顔に出やすいタイプだってこと、自覚した方がいいわよ」

まいった。
女の勘は侮れないって知ってたはずなのに、油断した。
ブラコンゼシカは恋愛には疎いと思い込んでたけど、よく考えてみたら『アスカンタのパヴァン王とキラは怪しい』とか言って、一人で盛り上がってたこともあったっけ。
基本的に女は、こういう話には興味津々な生き物だ。
あんまりにも男らしいから、ゼシカが女だってことすら忘れかけてた。大失敗だ。

「今は気づいてるのは私だけだけど、エイトやトロデ王が知ったら、タダじゃ済まないわよ。『こんな女たらしに姫は任せられん!』って言われて、ミーティア姫のそばにも寄れなくなるのがオチね。そうなりたくなかったら、ちょっと生活態度を改めなさい」
だけど、オレたちがとっくに別れていることには、さすがに気づいていないらしい。

577:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/19 23:33:21 Zey2Fje90
オレは基本が嘘つきだから、嘘を吐くことの難しさはよく心得てる。
予め起こる事態を想定して、周到に用意しておいた嘘じゃない限り、どこかでボロが出るだけだ。
ましてゼシカは勘が鋭い。ごまかせるとは思わない方がいい。
そう判断したオレは、ゴルドが崩壊した夜の、不思議な泉であったことの全てをゼシカに話した。

「……だから、何よ」
ゼシカは真っすぐな目を向けて、詰め寄ってくる。
「自分のたった一人の肉親の面影を重ねて好きになることの、何が悪いのよ。あんたの場合、逆に憎んだっておかしくなかったのを思うと、むしろ健全じゃない。
誰かを好きになるのに間違いなんて無いし、立派な理由なんかも必要無いわよ。大事なのは今の気持ちでしょう?
それに、それじゃああんまり一方的すぎて、ミーティア姫の気持ちは完全に無視してるじゃないの。ようやく姫様の呪いも解けたんだから、ちゃんと時間をかけて話し合わなくちゃダメよ」

こうなったら、ゼシカは絶対に引き下がってはくれない。
一度決めたことは、絶対にそうしないと気が済まない性分で、自分の信じた道を進むってのがゼシカの信条だ。
そしてそれは、いつでも自分が正しい道を選べるっていう自信から来てるもの。
だから、オレのように正しくないとわかってる道を選んでしまう人間の気持ちなんて、ゼシカにはわからない。
そのことに苛立ちを感じる気持ちと、いつまでもそのままでいてほしいという、憧れにも似た気持ちが絡み合う。
オレの本当の気持ちをゼシカに話そうと決めたのが、曇りの無い心に影を落としてやりたくなったからなのか、心配してくれる気持ちに対する精一杯の誠意なのか、オレ自身にも判断できなかった。

578:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/19 23:36:38 Zey2Fje90
「ゴルドでマルチェロが行っちまうって時、ゼシカ言ってたよな。『このまま行かせていいの?』って。もちろん良くないさ。あいつは人殺しの大罪人だ。野放しにしていいはずがない」
「……っ! 違う! 私、そんな意味で言ったんじゃない!」
わかってる。ゼシカが、マルチェロのケガを治してやれって意味で言ったことぐらい。
「それにあれはマルチェロ一人のせいってわけじゃ……。暗黒神の杖の魔力のせいで……」
ゼシカは本当に正直者だ。わかりやすすぎる程に、語尾が曖昧になってる。
「無理に庇おうとしなくていい」
一応は血の繋がった兄弟で、十年も同じ修道院で暮らしてたんだ。少なくともオレたちと戦ってた時、あいつが自分の意志を保ってたことくらいわかってる。
杖の魔力に支配されたことのあるゼシカにも、それは感じられたはずだ。自分の時とは明らかに違うってことが。
あの杖がどんな物かわかってて、それを手放そうとせずに、暗黒神の力を手に入れようなんてバカな考え起こした。
ゴルドが崩壊したのは、間違いなく、マルチェロのせいだ。
それなのにあの時、俺は『好き勝手やって死ぬなんて許さない』なんて言って、あいつを生かした。
それこそ、勝手な言い分だ。
死にたくないのに、一方的に命を奪われた人間からしてみれば、あいつが生きていることの方が許せないだろう。
「ゼシカだって、兄の仇を討つために旅に出たんだから、わかるだろ? オディロ院長が殺された時、マルチェロはオレに敵討ちを命じ、オレはそれを遂行した。ドルマゲスに、生きて罪を償わせようなんて気持ちは、これっぽっちも無かった。
それなのに、あれだけ多くの人間の仇になってしまったあいつを死なせたくないなんて、どのツラさげて言えるっていうんだ。本当は、このオレの手で斬り殺さなくちゃならないくらいだったんだ」

579:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/19 23:38:05 Zey2Fje90
谷底に落ちていくあいつの腕を、最初に掴んだ時は迷っていた。
引き上げるべきか、手を離して死なせるべきか。
だけど腕を振り払われた時、体は正直な答えを出していた。
間に合うはずのないタイミングで、奇跡のように再び腕を掴めた時、オレは覚悟を決めたんだ。
「オレは、またあいつが何かやらかそうとした時は、必ず止めに行かなきゃならない。それが、あいつを生かしたオレの責任だからだ。
その時は、全てを捨てて行かなきゃならないかもしれないのに、大事な人を作るなんて、オレには出来ない。オレには誰かと一緒に生きる人生なんてものは無いんだよ。それは相手がミーティア…姫様じゃなくても同じだ」

気がつくと、ゼシカは大きな瞳から、ポロポロ涙をこぼしていた。
「あんた……バカよ。罪滅ぼししたいっていうなら、命懸けで戦って暗黒神を倒しただけでも充分じゃない。どうしてマルチェロの為に、あんたが自分の人生、犠牲にしなきゃならないの? そんなこと、誰も望んでないわよ。
死んでしまった人たちの分まで、ちゃんと生きて幸せになろうとしなきゃダメよ。少なくとも私は絶対そうするんだから!」
……ゼシカは本当に強いな。
そういえば、もう一つケジメをつけなきゃいけないことがあったんだ。
オレは、自分の騎士団の指輪を外す。
「ごめんな。『君だけを守る騎士になる』なんて、出来もしないこと軽々しく言って。さっき言ったように、オレには誰かと生きるなんて人生なんて無い。だから『片時も離れず守る』って言った言葉、無かったことにしてくれ」
「……そんなの、初めから本気になんてしてなかったわよ、バカ」
ほんとに最低だな、オレ。
こんなふうにゼシカを泣かせて、いつか天罰が下るだろうと思う。

580:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/10/20 00:05:50 QJu1mb8Z0
「だけどゼシカのことは、大事な仲間で親友だと思ってる。そばで守ることは出来ないけど、お前が困ってることがあったら、その時は必ず助けに行く」
ゼシカの手を取り、騎士団の指輪を渡す。
「オレはもう騎士じゃないけど、この指輪にかけて、それだけは約束する」
女性に指輪を渡すっていうのは、本来もっと違う場面なんだろうけど、オレがその時を迎えることは一生ない。
だから勝手だけど、この行き場の無い想いを、ゼシカに預かっていてほしいと思った。
「オレ、ゼシカには結構救われてんだぜ? もしマルチェロを行かせた時、最初に聞いた言葉が『あんなヤツ野放しにするな』だったら、絶対立ち直れなかった。あいつのケガの心配してくれたこと、本当に感謝してる」
ゼシカは指輪を、固く握り締めて泣いている。
「あんたバカよ。ほんとにどうしようもないバカ……」
「お前、さっきからバカバカ言い過ぎ」
口は悪いけど、ゼシカは本当にオレのことを心配してくれてる。
こんな話をしたら悲しませるってわかってたのに、きっとどこかで甘えてたんだな。

「私には、できること無いの?」
「……幸せに……なってほしい」
旅の間も誰ひとり助けられなくて、兄貴の言う通りに、自分が本当に疫病神なんじゃないかと思ってしまうそうなこともあった。
だから、ゼシカが幸せになってくれたら、オレはきっとかなり嬉しいだろうと思う。
オレと深く関わった人間全てが不幸になるわけじゃないと、そう信じさせてほしい。
まっすぐに強いゼシカは、きっと自分の力で悲しみや辛さを乗り越えて、堂々と明るい道を進んでくれるだろう。

選んだ生き方を後悔はしない。
兄貴が何度、同じようなことを繰り返しても、きっとオレがあいつを殺せる日は来ない。
だから何度でも止めに行く。
そう決めた時、不思議なほど気が楽になったオレは、もしかして何かに呪われてるのかもしれないな。

581:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/20 22:07:24 yojFGBQo0
GJ だがいつの間にか兄弟ネタになってる件

582: ◆2CDckY/JG6
06/10/24 09:11:00 CHYAvN1I0
4日に1レス。これ応用。

583: ◆2CDckY/JG6
06/10/27 13:53:06 A4FWhS4w0
3日に1レス。これ基本。

584:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/28 17:49:33 NYSyUBa+0
◆uWt7kdGYAcさん面白いですねー

585:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/29 22:10:20 pT/DIKLc0
久々にこのスレ来たが、やっぱり色々読めていいな

586:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/31 17:08:18 MsE2bFDv0
良かったよ~

◆uWt7kdGYAcさん、GJ!

587:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/31 21:22:49 kJQMLxnJ0
落ちちゃったみたいです…

FFの恋する小説スレPart5
スレリンク(ff板)

588:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/10/31 23:58:11 qhKT3wQ/0
>>587
それは1スレ前で、ずいぶん前に使い切ったはず。
今はPart6で、使い切ったから新スレ立ったよ。

FFの恋する小説スレPart7
スレリンク(ff板)

589: ◆2CDckY/JG6
06/11/03 12:44:05 p3gEqaC80
3日に1レス。これ基本。

590:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/11/03 12:44:36 Ry7rAsH30
4日に1レス。これ応用。

591: ◆2CDckY/JG6
06/11/06 10:15:12 CgblJ8nc0
3日に1レス。これ基本。

592:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/11/07 20:42:36 OwkEbcmk0
メテオスウォームとワードオブカーズってどちらの方が使用頻度高い?
レベル7魔法は回数余りがちだから結構気軽に使えるけれども

593:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/11/07 21:04:31 OwkEbcmk0
誤爆してた。すみません

594:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:32:32 3fi2G6dM0
>566-571 >575-580 の続きです。


暗黒神を倒してから、早数カ月。
オレはベルガラックを拠点にして、観光ガイドみたいなことをして生計を立てている。
まずはカジノのオーナー兄妹と契約して、世界中の町でカジノの宣伝をし、興味のある人間はそのままルーラでご案内する。
更に『サザン湖でピクニックツアー』とか『オークニスで雪と戯れるツアー』とか、平和極まりない企画の添乗員までやってる。
魔物と戦えて、回復魔法も使えて、どうしてもヤバくなったらルーラで逃げられるオレは、確かに適任ではあると思う。
旅の間は、自分のことを器用貧乏で中途半端だと思って、密かに仲間に対してコンプレックスを抱いたりもしたけど、平和になった時に意外に潰しの効く能力が多かったことは、素直にラッキーだと思っておくことにしよう。

そんな生活にもすっかり慣れた頃、トロデーン城、近衛隊長エイト殿から手紙が届いた。
それを見て、オレは少し迷っている。
手紙の内容は、近日、サザンビークのチャゴス王子とトロデーンのミーティア姫の結婚式が執り行われることが決まり、式場であるサヴェッラ大聖堂まで、トロデーン王女殿下の護衛を頼みたいという内容だった。
エイトのヤツも、何考えてんだか。
花嫁の護衛に同年代の独身男、ましてやオレのような絶世の美男子を選ぶなんて、非常識にも程がある。
世紀のロイヤルウェディングだってのに、サザンビーク側からつっこまれそうな人選してんじゃねえよ。
ヤンガスとゼシカにも同じ内容の手紙を送ったっていうから、久しぶりに顔を合わせようって意味なんだろう。完全な公私混同だ。
オレはもう二度と、彼女の前に姿を現すつもりは無い。
オレが行かなきゃ困るほど、トロデーンが人手不足ってことはないはずだ。断っても問題無いだろう。

……でも、相手があのチャゴスってのが、問題だよな。
娘を溺愛してるトロデ王が、婚約解消しなかったってことは、あの王子も少しはマシになったのかもしれないけど、どうにも不安は拭い切れない。

595:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:33:37 3fi2G6dM0
心配してた通りだ。
久しぶりに会ったチャゴスは、王家の谷の時よりも更に性根の腐り具合が進行してるようで、自分が口出しできる立場じゃないとわかってはいても、あんな男に彼女が嫁ぐと思うと、どうにも我慢が出来なかった。

「オレは、姫の幸せを守るのも、近衛隊長の仕事だと思うんだがな」
結婚式をぶち壊すようにけしかけても、エイトは困ったような顔をするだけだ。
臣下の立場で、君主のやることに口出しできないっていうのは、わからなくもない。
だけどオレは、エイトなら大事な姫を守ってくれると信じてた。
トロデのおっさんにしたって、いくら国同士の約束だからって、愛娘を最低な男に嫁がせるようなマネはしないと思ってた。
だからあの時、別れる決心もついたっていうのに、これじゃあ何の意味も無い。


おまけに何なんだ、あのエイトのマイペースぶりは
普通、主君の姫君の結婚式の朝に寝坊するか?
今考えると、旅の間も、さりげなく一番のねぼすけ野郎だったっけな。

「やっと一人になったわね」
大階段の下から大聖堂を見ていたオレの所に、ゼシカがやってきた。
いろいろ考えてたせいで、気づくのが遅れた。
「一人じゃあ、皆の前に顔を出せない程のヘタレだとは思わなかったわ。保護者付きだなんて、恥ずかしくないの?」
ゼシカは、相変わらず辛辣だ。
オレも皮肉やイヤミは苦手じゃないが、この毒舌ぶりには、足元にも及ばない。
しかも、当たらずとも遠からずってとこだから、反論も出来ない。
「わかってんなら、よけいなことは言うなよ」
ゼシカに面倒なこと言われて、詰め寄られるのが嫌だったから、馴染みの女たちに同伴してもらって牽制してたって部分は、確かにあるからな。

596:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:35:14 3fi2G6dM0
だけどゼシカは、おかまいなしだ。
「私ね、出発前、トロデーン城でミーティア姫と話したのよ。チャゴス王子なんかと結婚するの、止めようと思ったの」
……何か、ちょっとホッとした。
少なくとも、この結婚に反対なのはオレだけじゃないんだってわかって、安心した。
「だけどミーティア姫は、王族として生まれたからには、義務は果たさなくちゃいけないんだって、その一点張りだった。正直、彼女があそこまで頑固だとは思わなかったわ」
頑固、か。
本人は自分で言ってたんだよな。わがままで頑固で、いざという時は、絶対に譲らないんだって。
そして、その被害者の八割がエイトだってことも言ってたっけ。

噂をすればってわけじゃないけど、ようやくエイトが起きてきた。
「きのうオレが言ったこと、覚えてるか? 姫の幸せを守るのも近衛隊長の仕事だって」
だから、守ってやってくれ。彼女が不幸になるってわかってる結婚なんて止めてくれ。
「あと、オレたちは仲間だ。お前が何かするつもりなら力を貸すぜ」
新しい錬金のレシピが欲しいっていうなら、世界中から集めてくる。
昔の記憶を取り戻したいっていうなら、どんな協力もする。
親を捜したいっていうなら、どこまでだって付き合う。
だから今回だけは、お前の力を貸してくれ。

エイトが階段を駆け上がっていった後、何か言いたげにオレを見ているゼシカに向き直る。
「いいぜ、文句があるなら言えよ」
エイトの前で余計なことを言わずにいてくれたからな。どんな悪態でも、甘んじて受けるさ。
「文句なんか無いわよ。ここであんたが出てったら、駆け落ちにしか見えないじゃない。そんなことしたら、ミーティア姫はトロデーンには帰れなくなっちゃう。
近衛隊長のエイトなら、その点は問題無いでしょう? 国際問題にはなるかもしれないけど、姫様のことを第一に考えるなら、その方がいいわ」
確かにこれは、暗黒神を倒して平和になったはずの世界に、波風立てようとしてるってことだ。
でも、いつでも正しい道を選ぶゼシカがそう言うなら、これは間違ったことじゃないって、信じてもいいんだよな?

597:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:37:57 3fi2G6dM0
階段を上がっていくと、エイトは入り口の所で騎士団員と押し問答をしていた。
「あー、もう! 騎士団のヤツなんて殴り倒しちゃえばいいのに、何やってるのよ、エイトは!」
気の短いゼシカが、物騒な言葉を口にする。
そして、その言葉をヤンガスが実践した。
そういえばこの二人は、初めて会った時からケンカっ早かったっけ。
ようやくエイトが大聖堂の中へ入っていくが、それを見た周辺警護の騎士団員たちが、大聖堂の方へ集まっていく。
「ほら、早く助けにいくわよ。あれだけエイトをけしかけといて、自分は何もせずにいるつもり?」
確かにゼシカの言う通りだ。退路の確保は、責任を持って引き受けなきゃならない。
そう思って、大聖堂から飛び出してきたエイトと合流するために、人込みをかき分けている時、視界の端に映ったものに、オレの足は止まった。

純白のウエディングドレスと、ベールから覗く漆黒の髪……。

トロデ王がミーティア姫の手を引いて、大聖堂の陰から四阿の横を通り抜け、大階段まで回り込んでいた。
大聖堂前の騒ぎで、それに気づいている人間はいない。
だけど、そこまでだった。
いくら聖堂騎士団の目を盗んでも、階段の下では、サヴェッラの衛兵が警護をしてる。
二人はすぐに取り囲まれてしまった。
思わず助けに行こうとしてしまう自分を、何とか押し止どめる。
「おーい! 大変だ! 急いできてくれ、エイト」
さっきゼシカが言ってた通りだ。ここでオレが出て行けば、かえって面倒なことになる。
「下で、トロデ王とミーティア姫様が兵士どもに囲まれているぞ!」

オレが指さした先で、純白のベールが翻った。
深緑の瞳と、視線が交わる。
……いや、これは錯覚だ。目が合うとか、そういう距離じゃない。
階段から離れ、聖堂騎士団と対峙してるエイトたちに合流する。
「ここはオレたちに任せろ。エイトは姫様とトロデ王を頼む」
ここから先は、トロデーンの人間が彼女を守っていくべきだ。オレの出る幕じゃないってことぐらい、承知してるさ。

598:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:39:22 3fi2G6dM0
元来、聖堂騎士団は家督を継げない、貴族の次男三男や庶子が、体裁を保ちつつ厄介払いされる先として創設された、お飾りの騎馬衛兵だ。
それが、泣く子も黙るスパルタ騎士団長殿の手腕で、実戦的な戦闘集団に作り替えられていたはずだった。
なのに、その騎士団長が行方不明になった途端、このザマか。
オレは旅の間は、ほとんど弓を使ってて、修道院にいた頃から剣の腕は大して上がってないのに、手ごたえが無さ過ぎるにも程がある。
あんまり手ごわいのも、この場面では嬉しくないが、こうも情けないヤツらばかりだっていうのも、元聖堂騎士としては複雑な気分だ。
思わず感傷にふけって、ヤンガスとゼシカに置いてけぼりにされそうになった。
まあ、オレは逃げ足は速いから、そうなってもどうってこと無いけどな。

結婚式から花嫁を奪い、手を取り合って逃げる男女。
エイトの方に少しばかり華が足りないが、それなりに絵にはなってる。
いつの間にか先回りしてたトロデ王が御者を務める馬車に乗り込み、サヴェッラを離れていく。
それを追いかけようとしたヤンガスの襟首を、ゼシカが掴んで止めた。
そうそう、ここで邪魔をするのは野暮ってもんだ。
元々、仲の良い幼なじみで、旅の間も夢の中で会うくらいには、心が通い合ってる。
これがきっかけで二人の距離が縮まって、いつか結ばれてくれれば、それが一番いい。
トロデーンにとっても、彼女にとっても。
オレも、エイトが相手なら、何の心配もせずにいられる。

嫁いだはずの姫様が花嫁姿のままで戻ってきたら、城の人間も混乱するだろうと、ルーラで先回りしてトロデーン城へ行き、事の次第を説明する。
チャゴスの人となりを知らない城の連中は、突然の破談に驚いてはいたが、大切な姫が城に戻ってくるというのは喜ばしいことだって結論に落ち着き、出迎えの準備で慌ただしくなった。
そしてオレは、エイトたちが城に帰ってくるのを待たずに、トロデーンを離れた。
同伴してた女たちを送ってかなきゃいけないって理由をつけたから、誰も無理に引き留めてこようとはしなかった。

599:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:40:42 3fi2G6dM0
ベルガラックに戻り、付き添ってくれた女たちには改めて礼をすると約束して別れ、フォーグとユッケに明日からまた仕事に復帰出来ることを報告に行く。
こっちにはまだ、サヴェッラでの花嫁奪還劇の情報は伝わってなくて、新ツアー、『サザンビーク王家の花嫁を一目見るツアー』なんてのが企画されてた。
ちょっとばかり胸が痛む。
下手したら今度のことで、お尋ね者になるかもしれないんで、サヴェッラでやらかしたことは正直に話しておいた。
もしサザンビークや教会関係者に追及されることがあったら、すぐにクビにして、無関係だと主張する心の準備をしといてくれないと、余計な迷惑をかけることになるからな。
だけどチャゴスはベルガラックでも評判が悪いらしくて、二人とも妙に喜んでた。
あの王子、本当にどうしようもねえな。むしろ、気の毒になってきた。

ユッケにせがまれて詳しく話をさせられたせいで、ギャリング邸を出た時には、もう陽が落ち掛かっていた。
赤く染まる町並みの中、よく知った人間の姿に気づき、オレは自分の目を疑った。
裾の長い青いチュニックを着て、赤いバンダナを頭に巻いた人物が、興味深そうに賢者の像を見上げていた。
その瞳の色は、緑色。

「ミーティア!? ……っじゃなくて、姫様!?」
思わず呼び捨てにしてしまい、慌てて『姫様』を付け足し、そっちの方がよっぽどヤバいことに気づいて、自分で自分の口を塞いだ。
ミーティア姫はこっちを向きはしたけど、全く動じずに、その場に立っている。
オレは慌てて彼女に駆け寄り、無言で手を引いてその場を離れる。
オレが大声出したせいもあるけど、すっかり回りの注目を浴びてしまってる。
こんなポワンとした美少女が、男装なんてしてる時点で目立ってた。初めから目立つオレと一緒になんていたら、尚更だ。
人目につかない場所を他に思いつかなくて、とりあえず間借りして住んでる部屋に、彼女を案内した。

600:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:41:40 3fi2G6dM0
すれ違う知り合いに色々言われたけど、全部無視して部屋に入り鍵をかけ、ようやく一息吐く。
「一人で来たのか?」
色々言いたいことはあったけど、まずはこの確認だ。
「はい。馬の姿だった時は町の中に入れなかったので、道がわからなくて戸惑ったけれど、町の人に訊ねたら親切に教えてくれました。ククールさんが目立つ人で良かったわ。すぐに居場所がわかったもの」
「何……やってんだよ」
これは彼女だけに言ってる言葉じゃない。
深層のお姫様に、こんな歓楽街を一人で歩くことを許した人間、全部に言いたい。
「そんな格好してるってことは、エイトは承知してるのか?」
「ええ、ミーティアの持ってるドレスでは、目立ちすぎるだろうからって。本当はゼシカさんの服を借りようと思ったんだけど、どうしても……その……胸の部分が余って、着られなかったものですから」
その格好も十分目立ってるよ。美人だから何着ても似合うって意味では似合ってるけど、男装ってのは違和感ありすぎる。
それにゼシカの服なんて、問題外だ。
あれは、不埒な考え起こす奴の方が気の毒な目に遇うゼシカだから出来るんで、あんな格好で歩いてたら、いつ襲われたって文句言えない。

いや、今はそういうことを問題にしてるんじゃない。
「何しに来た?」
自分を訪ねてきてくれたレディに対して、こんなことは言いたくない。
だけどここでハッキリした態度を取らないと、お互いの為にならない。
「……ゼシカさんが、ちゃんと話をしないとダメだって……」
そんなことだろうと思った。
「サヴェッラへ出発する直前に、話してくれたの。あなたがどういう気持ちで一人で生きようと決めたかということ」
やっぱり余計な話、するんじゃなかったな。ま、自分で話すと決めたんだし、ゼシカに文句を言う筋合いじゃない。

601:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:45:06 3fi2G6dM0
「だったらわかったろ? オレには『助けたこと、後悔するぞ』なんて、涙が出そうにありがたい捨てゼリフ吐いて行方不明になってくれた兄貴がいる。そんなヤツを見逃して野放しにしちまった責任は取らないといけない」
あの無駄に精力的な兄貴が、このままおとなしくしててくれるなんて思えないからな。
「君はトロデーンの王女様で、いつかは王位を継いで国を守っていく立場になる。その時、オレは側にいられるかどうか、わからない。オレには、一緒にトロデーンを守っていくことは出来ないんだ」
だからエイトならって思ったんだけど、こうやって服まで貸して姫を送り出すあたり、脈は薄いな。
「オレの親父はマイエラ一帯の領主だったけど、領民のことを顧みないで豪遊しまくって、最後は無一文になって流行り病で死んじまった。
あの辺り、昔はもう少し栄えてたんだけど、領地を手当たり次第、適当に抵当に入れて借金しまくったせいで、債権者に土地をバラバラに差し押さえられて、町として残れたのはドニだけだった。
バカな人間が治める土地の末路は悲惨なもんだ。……オレは、君にそんな君主には、なってほしくない。トロデーンを守ってくれるヤツと一緒になって、しっかりと国を守ってほしい」

「……わかりました」
少しの間の後、ミーティアはしっかりとした声でそう言った。
「わかってはいたの。本当は、ミーティアにはここに来る資格は無かったってこと。だって、私が結婚式から逃げたのは、あなたが好きだったからじゃない。
もしそうだったなら、サヴェッラに発つ前、ゼシカさんから話を聞いた時に、チャゴス王子と結婚するのはイヤだって言ってたはずだもの」
いつもの柔らかい口調じゃなく、どこか怒りを含んでいるような声で、ミーティアは続ける。
「国同士の約束を守って結婚するのが、王族として生まれた者の義務だと思って諦めていた。それがどうしても我慢出来なくなったのは、王子があの時、みんなを侮辱したから……。
トロデーンを呪いから救ってくれた、大切な仲間たちを貶めるような事を言ったあの人を、どうしても許すことが出来なかった。あなたと結ばれたかったからじゃない。わかってるわ、今更、何を言う資格も無いことぐらい」

602:『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
06/11/09 13:49:48 3fi2G6dM0
『そんなことない』と思わず言ってしまいそうになる。
でも言えるわけがない。
「ただ、一言お礼が言いたかっただけなの。色々と心配してくれてありがとうって。……もう帰りますね。ほんのちょっとだけって、無理を言って抜け出してきたんですもの。あんまり遅くなると、お父様やエイトが心配するから。突然訪ねてきたりして、ごめんなさい」
部屋を出て行こうとするミーティアの腕を、思わず掴んでしまっていた。
翡翠色の瞳が、驚いたように見上げてくる。
「いや、あの……送ってくよ」
「一人で大丈夫。外に出てキメラの翼を使うだけですもの。一人で何も出来ないようでは、国を守っていくなんて出来ないわ。あまり過保護にしないで」
自分から別れを切り出したくせに、いつまでも未練がましいのはオレの方。
手を離すとミーティアは、迷う様子もなく、ドアを開けて出て行った。


サヴェッラでの花嫁奪還劇から一カ月。
トロデーンとサザンビークの間では、何度も使者を遣り取りしての話し合いが行われ、和解が成立した。
トロデーン側は、全ての非は自分たちの方にあると認め、サザンビークに対し十年間、毎年、百万Gの慰謝料を払い続けることになった。
更に、花嫁を逃がした主犯であるトロデ王は責任を取り、ミーティア姫に王位を譲って引退することを表明した。
公式には破談の理由は、トロデーン王家の唯一の直系であるミーティア王女が、他国に嫁ぐのは自国の統治に支障をきたす恐れがあったからってことになった。
花婿の人間性が最低だからなんて本当のことが理由として通用するはずもなく、発表できるはずもなかったからだ。
だけどこれで、国家間の戦争なんてものに発展することは無さそうで、まずは一安心だ。
これで本当に、オレが心配しなきゃいけないとこは何も無い。そう思った。

ヤンガスが、パルミドの情報屋から仕入れて来た、『戴冠式の日にミーティア姫の暗殺が企てられているようだ』なんて話を聞くまではな。

603:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/11/11 16:44:02 yPcV3DhmO
最下層なんでageます

604:ギコガード
06/11/11 16:57:13 naXIezhQ0
チラッ・・・・
懐かしい

605:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/11/11 21:51:11 ztg+yxwb0
>>603
まったく意味がないのでやめてください

606: ◆2CDckY/JG6
06/11/14 09:28:00 051lYuTf0
3日に1レス。これ基本。

607:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/11/15 01:49:38 PE1tSnvL0
>>『覚悟』 ◆uWt7kdGYAc
DQ8プレイして感じた印象や、なかま会話で聞けるセリフや場面が
がうまく作中に反映されていて、読んでて違和感がないどころか
説得力があって引き込まれました。
言われてみれば主人公、最後に起きるの多かったかもw
続き楽しみにしてます。

608: ◆Vlst9Z/R.A
06/11/15 03:41:37 AA2LX9cy0
お久しぶりです
現在FFDQ板恋スレのスレッドログ保管と、エロパロ板FF7総合スレのSS編集中です
一応ご連絡までですが、よろしくお願いします

恋スレに関しては作品の長編化が進んでおりますので、長期連載のモノに関しては
個人保管をお願いしているのですが、これに関してはいかがしましょうか?
スレ単位でログの保管は続けますので、作品を切り捨ててしまうことにはならないと
思うのですが……

609: ◆2CDckY/JG6
06/11/18 06:23:27 +rtBQcew0
3日に1レス。これ基本。


610:ラトーム ◆518LaTOOcM
06/11/19 01:13:23 Vr69Qbyv0
>608
ありがとうございます!
個人保管ってのは、読んでいる側の個人保管っていうことですよね?
それに準じると、千一夜のサイトでもログ保管だけするということになるので
ご不満は出るかと思いますが……。
長期連載ものを保管するのはかなり大変な事になるので、個人的には、
それで良いのではないかなと思います。
作者の方が後日まとめたものを渡してくださったりできれば、それが
一番嬉しいですが(千一夜の掲示板でデータのやり取りをしていただいても
構いません)。それを強要するのもどうかと思いますし。

以上、取り急ぎご連絡まで。


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