06/06/27 23:44:40 9DXGXYO80
俺は、また……大切な人を…………
狂った魔導士の哄笑。
悲鳴を上げる大地。沸騰する海。
真っ二つに折れる船体。転げ落ちる仲間たち。
過去を封印した殺し屋。老いた青魔導師。幼き画家。踊り戦うモーグリの戦士。世界最速の翼を持つギャンブラー。心優しき獣少年。忠誠心の厚い侍。女好きの国王。王族でありながら自由気ままに生きる武道家。潜在的に魔力を持った、人間ではない少女。
そして―
「…………っ……!」
無限に続くかと思われた悪夢にさいなまれ、ロックは目を覚ました。
ぐっしょりと汗をかいている。寒い。汗をかき始めてから時間が経っているようだ。
しかし、何故だか視界が白んでいる。鼻先がなんとなくむずがゆい。
「……? 何だ、これ?」
手を顔に当てると、薄く、やわらかい感触。つまみあげてみると、それは白い布だった。これを顔にかぶせられていたらしい。
柔らかな感触が全身を包み込んでいる。ベッドに寝かされているらしい。
ロックは上半身だけ起こし、周囲を見回した。テーブル、イス、暖炉。散らかった床。そして、地下へと通じているであろう階段。
見たことのある場所だった。忘れようのない……
「おぉ! ロック! 目が覚めたのかい!?」
どこか白々しい調子の声が聞こえた。声の方へ顔を向けると、一人の老人が感極まったような表情で―これもどこかうそ臭い―外へ通じる扉をくぐってこちらに歩み寄ってきていた。見知った顔だった。
コーリンゲンに住む不思議な老人。
「じいさん……。あんた、まだ生きてたのか?」
「生きてた、生きてたさ! ロック、あんたは死んだと思ってたよ。あぁ、死んだとばっかり思ってた」
冗談めいた言い方をしているが、どうやら本気でそう思っていたのかもしれない。顔にかけてあった白い布をまじまじと見つめながら、ロックは苦笑した。
「相変わらずだな」
「相変わらず? あぁ、相変わらずさ。何があってもワシはワシのままさ。変わるはずがないだろう? けっけっけっ……」
「……?」
本当に相変わらずだった。この変わり者の老人は、おかしな言い回しをしては相手を困らせている。
老人が近くのテーブルからイスを引っ張り、そこに座るのを待ってからロックは問い掛けた。