FFの恋する小説スレPart5at FF
FFの恋する小説スレPart5 - 暇つぶし2ch550:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/01 01:07:02 FCK2U/Uc0
保守

551:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/01 17:37:43 9TLtWJX6O


552:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/02 08:41:27 FEJM+MuO0
保全

553:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/02 10:42:51 yMvrN1K40


          ./    \
          .| ^   ^ |
          | .>ノ(、_, )ヽ、.|
         __! ! -=ニ=- ノ     
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    / 、、i    ヽ__,,/
    / ヽノ  j ,   j |ヽ 
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    {     ̄''ー-、,,_,ヘ^ |
    ゝ-,,,_____)--、j
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     |    "'ー‐‐---'|'
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     ト,  ;;;;;;^ω^;;;;;;、 i
     |',',;;   }  ! ',',;;;i

554:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(4)
06/05/03 00:21:01 EqXZM4yr0
>>525-527より。
----------


 男がこのフロアを訪れるようになったのはつい最近のことだった。もっとも
日中は、以前までの所属部署で後任者への引継ぎなどに追われデスクを
空けている時間が圧倒的に多く、朝のこの時間ぐらいしかオフィスにいられ
なかった。
 男の所属する部署は神羅の都市開発部門。しかし都市開発と一口に言っても、
さらに10以上の細かい部署が設けられている。中でも『管理課』と呼ばれる
ここは、巨大都市ミッドガルの設計から建造、運営を包括的に担う部署で、
表舞台に出るような事はあまりないが、既存のシステムや魔晄炉の稼働状況の
監視・調整などを主な業務としていた。そして彼はつい先日、このセクションに
配属されたばかりだった。
(なんで管理なんや……)
 今回の人事異動は彼自身の希望によるものではなかった。実のところ、内心では
未だにこの配置転換に納得できていなかった。それでも、上からの指示には逆らえ
ない。それは組織の中にいる以上、従わざるを得ないし避けられない事だとも頭では
理解しているつもりだった。
 むしろ理解というよりも、諦めに近い。
 都市計画・開発という仕事に希望を抱き、神羅という企業に勤め始めた当時とは
徐々に変わりつつある自分の姿に、彼は無意識のうちに焦燥のようなものを感じて
いたのかも知れない。
 男にとって、それはこの先に続く長い悪夢の始まりに過ぎなかった。

555:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(5)
06/05/03 00:26:12 EqXZM4yr0

                    ***


 呼び出しに応じてその部屋の前までやってきた彼女を出迎えたのは、総務部
調査課に所属する男だった。先ほど、このフロアに設置されている通信機から、
彼女の携帯用端末にメッセージを送信しここへ呼び出したのも彼である。呼び
出しを受けた時点で、彼と遭遇することは予測していたものの、その姿を見るや
彼女はあからさまに眉をひそめた。
「……こんな所で会うなんて」
「一応、ここも社内ですから。我々がいても何ら不自然ではありません」
「そうじゃないわ」男の言葉に彼女は即座に反論した。「あなた方に会うとロクな
事がないって言う意味よ」その言葉に込めた意味を汲んで、男は苦笑する。
「相変わらず手厳しい」
「事実を言ったまでよ」
 あくまでも事務的な返答であしらいながら、男に先導され部屋の奥へと通された。
そこから専用エレベーターを使い建物上層へ、さらに厳重なセキュリティを通過した
先にある木目の美しい扉の前でふたりは立ち止まると、彼女はネームプレートを外し、
それを扉横に設置されているセンサーに通した。すると赤く点灯していたランプが
緑色に変わり、小さな認識音が聞こえてから扉のロックは静かに解除された。それを
確認した男がドアノブを回して扉を開くと、そのまま黙礼で入室する彼女を見送った。
 男の横を素通りして部屋へ足を踏み入れる。それまで通ってきたフロアよりは薄暗く、
一見すると誰もいないように見える室内に向けて一礼した。まるでそれを見計らった
ようにして部屋の扉は外側から静かに閉められた。扉が閉じられると同時に自動で
ロックがかかる。かちゃり、という音を最後に室内は静寂に包まれた。
 ビル全体が近代的で無機質な印象を与える作りにあって、この空間だけは木目調の
壁と天井、窓際に置かれた観葉植物と扉横にある大型の水槽などのお陰で、他の
フロアに比べると幾分かあたたかみを感じさせた。

556:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(6)
06/05/03 00:34:06 EqXZM4yr0
 しかし彼女にとってここは、社内でもっとも息苦しい場所に他ならない。
「……よく来てくれた」
 部屋の奥から、唐突に声が聞こえてきた。まるで声そのものに質量がある
ような、威厳と威圧感に満ちた男性の声。
(人を呼び出しておいて、よく言うわ)
 心の中で悪態をついてみたものの、彼女が男に逆らえるわけもなく。恭しく
礼をした。
「遅くなり申し訳ありません……プレジデント」
 プレジデント神羅。彼は文字通り、この企業の最高権力者だ。大きな革製の
椅子の背をこちら側に向け、姿は見えない。彼女が頭を上げようとしたところに、
プレジデントの声が届く。
「さっそくだが、“例の計画”の進捗状況を報告したまえ」
「…………」
 中途半端な姿勢のまま押し黙ってしまった彼女に、プレジデントは口調を
変えずに尋ねた。
「質問の意味を理解しているかね?」
「……はい」
「ならば答えたまえ」
 プレジデントの言う“例の計画”が何を示しているのか、彼女は充分過ぎるほど
理解していた。
「……はい」反射的にそう返してはみたものの、やはり口に出すことをためらってか、
場に沈黙が流れた。しかし彼女は、自分にこれ以上逃げ場がない事も充分に理解
していた。やがて諦めたようにして口を開く。
「システムの実装段階で、問題が発生しました。検……」
「問題が解決するまでにかかる時間と費用の見積は?」
 彼女が何かを言うよりも先に、プレジデントが言葉を発した。察するところシステムに
関する細かな話には、どうやら興味がないらしい。
「既に対策は講じております。新たな開発者……部内で実績を出している優秀な
技術者を呼びました。問題の解決までには1ヶ月もかからないものと」

557:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(7)
06/05/03 00:42:40 EqXZM4yr0
 そこまで言い終えて彼女はいったん言葉を止めた。少しばかり考えた末、
次の言葉を口に出す決意を固めた。
「失礼を承知で、……率直なところを申し上げれば私は、未だこの計画には
疑問を感じています」
 プレジデントは何も答えない。だがこれ以上語るべき言葉を見出せない彼女は、
重苦しい沈黙が通り過ぎるのを黙って待つことしかできなかった。腕時計の
秒針の音だけが聞こえる、その音をどれだけ数えた頃だろうか。やがて声が
返ってくる。
「私は、この計画に対する君の個人的な感想を訊くために、わざわざ君をここへ
呼んだ訳ではないんだがね」
「ですがプレジデント、人々の行動を監視するというシステムが果たして……!」
 彼女が必死に叫んだ言葉を吹き消すようにして、ふぅ、と言うため息の音が聞こ
えてきた。
 次に椅子が軋む音。
 最後に、男の声がした。
「……君は、何だね?」
「はい」

558:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(8)
06/05/03 00:45:34 EqXZM4yr0
「君が私に意見できる立場にある者なのか……と尋いている」
 彼女は今度こそ押し黙った。返す言葉も為す術も見つからず、その場に立ちつくす
だけだった。そんな彼女にとどめを刺すように、プレジデントは冷然と言った。

「都市開発部門の統括責任者が不在の今、君は代理としてその任を全うする。
……それだけを考えていれば良いのだよ。分かったなら下がりたまえ」

 結局、プレジデントは一度もこちらを見ることはなかった。



「余計なお世話かも知れませんが」
 部屋を出た彼女を労うように、総務部調査課の男は声をかけようとしたのだが。
「ええ、余計なお世話よ」
 そう言って彼女は会話を続けることを拒否すると、エレベーターホールへ向けて
歩き出した。男は何かを言う事も追うこともせず、ただ彼女の背中を見守っていた。
----------


・再三言っておくと、都合解釈を伴った捏造。
・人と言うよりも、神羅内の各部署の関係性に萌えてみたいという意味不明なコンセプトでお送りする予定。

559:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/03 02:49:22 0jrdMIuz0
>>554-558
GJ!
やはり“彼女”が誰なのか分からないorz
スカーレットなわけないし…続きが気になります。

560:DC後 【53】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/03 02:50:46 0jrdMIuz0
>348-354 >360-362 >416-420 >427-432 >441-442 >459-461 >464-470 >496-501
>508-509 >514 >510-512 >515-518 >535-538の続きです。

意識は戻ったが、本当に大変だったのはそれからだった。
シェルクは朝には寒がり、ティファは湯たんぽを用意し、
ユフィはベッドに上がって震えるシェルクを抱きしめた。
夜になると熱が上がり、ティファは今度は氷嚢を用意し、
ユフィは熱で朦朧(もうろう)としているシェルクの口に氷を入れてやる。
寝たきりだと身体中が痛むので、二人で寝返りを打たせてやり、身体を擦る。
クラウドは薬や栄養剤を探して走り回った。
少しずつ症状が落ち着き始めたのは5日目のことだった。

ティファが作った冷たいスープをユフィが飲ませている合間に
シェルクはぽつりと口を開いた。
「夢を…見ました…」
まだ少し熱があるので、顔が赤い。
「どんな?」
点滴を替えていたティファが答える。
ユフィは、冷たいスープなのに、つい息を吹きかけて冷そうとしかけて、
何をやっているんだと肩を竦め、シェルクに照れ笑いを見せる。
シェルクも笑って、ユフィが飲ませてくれるスープを飲む。
ひんやりとして、火照った口の中にも気持ちいい。
(おいしい…)
「おいしい?」
ユフィが顔を覗きこんで来るので、シェルクは素直に頷いた。
「やっぱね~!顔が笑ってるもん。」
「やっと私の料理を食べてもらえてうれしわ…それで、どんな夢を見たの?」
「…お姉ちゃんの夢…」

561:DC後 【54】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/03 02:52:37 0jrdMIuz0
せっせとスプーンを口元に運んでいたユフィの手が止まる。
ティファは椅子を持って来ると、ベッドの傍に置き、そこに腰掛けた。
「身体が動かなくなって…私…やっぱり…と思いました。」
「どうして?」
「私…私のせいでお姉ちゃん…」
何かを叫びかけたユフィを、ティファが黙って制する。
「怖かった…束の間だけど私に与えられた団欒、もう一度彼に会う事…
それすら許されないのかと…そう思うと、死ぬのが初めて“怖い”と思いました。」
シェルクは毛布をぎゅっと握りしめる。
「許されるはずがない…私は…幸せになる資格がない…
だからこのまま死んでしまうんだと…そう思いました。」
ネロの闇に捕われた時でさえ、こんなに怖いとは思わなかった。
怖くて怖くて…夢の中の暗闇を何かに追われる様に闇雲に走っていた。
「夢の中だと…上手く走れなくて転んでしまいました。そしたら足に何か絡み付いて…」
シェルクははっと我に返る。
「私…何を話しているんでしょう?こんな…非現実的なこと…」
「でも…話したいんでしょ?」
「シャルアが助けてくれたんだろ…?なんて言ってた?」
ティファもユフィも膝を乗り出して話を聞いている。
(臨死体験なんて…信じてもらえないかと思ってました…)
シェルクは話を聞いてもらえることにホッとして、続きを話し始めた。
「はい。お姉ちゃんが…助けてくれました。」

562:DC後 【55】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/03 02:55:24 0jrdMIuz0
シャルアはあの時の様に、シェルクの手を引いて走ろうとしていた。
が、絡み付いた“何か”の力と、シャルアが引っ張る力が拮抗して抜け出せない。
「お姉ちゃん…もうだめだよ!」
シャルアの唇が動いた。
言葉は発せられないがシェルクには何を言っているかが分かった。
“生きて…”
シェルクは激しく頭を振る。
“シェルクは強い…そいつだって、自分でやっつけられるよ。”
(やっつける…?)
シェルクは反射的に足に装備していたスピアを片手で抜き、足下を薙ぎ払った。
すると、足に絡み付いていた物達が、ふっ…と消えてしまった。
“ほらね”
シャルアはいたずらっぽい表情でウィンクして、シェルクを立たせてくれた。
「お姉ちゃん…」
“ずっと傍に居るよ。いつも見てるから…だから…”
シャルアは屈んで、シェルクの瞳を覗きこむ。
“頼むから「私のせいでお姉ちゃんが…」なんてうじうじしてる姿、見せないでよ”
「そんなの…無理だよ。」
“大丈夫…もう、一人じゃないだろ?”
夢の中なのに、頬に触れた手は温かかった。
“大好きなシェルク…”
シャルアは両手でシェルクの頬を包み込んだ。
“また会えるから…それまで私の分も生きるんだよ”

「そこで…目が覚めました…ティファと、ユフィと…クラウドさんが居ました。」
気が付くと、ユフィはシェルクに背中を向けて鼻をすすっている。

563:DC後 【56】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/03 02:58:05 0jrdMIuz0
「優しくて、強いお姉さんね。」
「はい…でも…」
“でも”という言葉に反応して、ユフィがシェルクに向き直る。
「それでも…私のせいでお姉ちゃんが…という想いはきっと消える事はないと思います。
“私の分も生きろ”と…私にそれが出来るのでしょうか?生きる事さえ罪だと感じているのに。」
「だぁーからぁっ!シェルクはそういう風に考えんなって言ってるんだろ?」
「ですが…」
「生きてることが罪なんて!そんなの、どっかの根暗野郎に言わせときゃいいの!」
激高するユフィをシェルクは驚いて見つめる。
「ヴィンセントだよ!アイツもそんな事ばっか言ってさぁ…でも、神羅屋敷の棺桶から出てきて、
アタシ達と旅して、ちゃんと役に立ったんだ!あ~見えても、“星を救った英雄”の一人なんだって!」
もちろん、『アタシほどじゃないけど』を付け足すのを忘れていない。
「シェルクだって大活躍だったじゃん!ね?アンタが居なかったら、
ヴィンセントの奴だって、この星だって、どーなってたか分からないんだから!」
「ユフィの言い方は問題有りだけど、私もそう思うわ。
あなたは前を向いて生きる事で償っていけると思うの。」
横でユフィがうんうん、と大きく頷く。
「だから…お姉さんの言葉を大切にね。」
ユフィは傍らに置いておいたスープの入った皿を再び手に取る。
「大丈夫だって!アタシが付いてるからさ!とにかく、まずは食べなくちゃね。」
「私達が…でしょ?」
ティファが呆れた口調で言う。
“ほらね”
耳元で姉の声がした様な気がした。
「ん?食べないの?」
ユフィがスプーンを持っておどけている。
(こういう時は…どういう風に言えばいいんでしょう?)
「シェルク…」
ティファがタオルでいつの間にか溢れていた涙を拭いてくれるた。
「今はいいの。いつでもいいのよ…私たちはずっと傍に居るから。」

つづく。

564:また訂正orz ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/03 12:04:25 0jrdMIuz0
>>563
また訂正です。ごめんなさいorz

> ×「だぁーからぁっ!シェルクはそういう風に考えんなって言ってるんだろ?」
> ○「だぁーからぁっ!シャルアはそういう風に考えんなって言ってるんだろ?」

ところで、ユフィとシャルアは顔見知りなんでしょうか。
今更何を言ってるんだ、ですがDCプレイ時から不思議で。
ひょっとしてBCで会ってるのかな?教えてちゃんでごめんなさい。

565:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/03 12:56:27 EXk559kbO
>>564
BCでは二人は会ってない
DCでユフィがWROに協力してるから、リーブから互いに紹介されたんじゃないかと思う

566:564
06/05/04 00:59:52 Ch7SYC360
>>565
そうでしたか…お陰でスッキリ(・∀・)しました。
ありが???とうございました。


567:564
06/05/04 01:24:28 Ch7SYC360
>>565
ごめんなさい、文字化けorz
失礼致しました。

568:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/04 04:19:19 owYEGRiq0
>>560-563
DC本編中で直接的には描かれなかった(様な気がする)シェルクの後悔の念というか、
失ったもの(姉)が大切だと気づく描写があって嬉しいと素直に思う。
この勢いでカプセル回収出立編を書いてもらいたい。またはDC-2をw。
9章(栄枯盛衰神羅ビル)でルクレツィアと同調しながらシェルクは「生きて」と言っていた
(字幕には登場しないんですが、ここは確かに「生きて」と言っているように聞こえたーよ)
ところから考えると、展開的にちょっと切ないです。続きにも期待。


ところでシャルアとユフィの面識について。
>>565と見解は同じですが、正式な形で互いを紹介されたような面識はないかも、と
言うのが個人的な見方です。WROの地下にシャルアを回収しに行ったのはユフィだと
思っている(リーブorケット・シーじゃ無理w)ので、対面はそれが初めてだった…のかな。
とか色々。
6章終盤「シャルアは…」と言いかけたセリフに続く言葉を想像すると、ユフィの人となりを
色々想像できて楽しいです。DCのお陰で好きになったよユフィ。

569:朱の夢1 (DCFF7/シングルプレイモード)
06/05/04 04:36:55 owYEGRiq0
舞台:DCFF7第2章~
備考:マルチプレイモードは考慮の対象外。
   :微妙にエグイ内容なので嫌な方は回避されたし。
   :それから、ロッソが好きな人も(多分に捏造された過去につき)回避推奨。




----------

 この地に生を受けたとき、少なくとも彼女にとって世界はまだとても退屈な場所だった。
 両親の笑顔が傍にある、そんなごくふつうの世界。
 頭上に広がる空がないことだけが「ふつう」とは唯一異なっていたが、それを知るのは
20年以上も先の話である。
 彼女には幼馴染みがいた。彼の名前がなんだったのか、今さら思い出そうとしても
分からない。思い出そうとする事もなくなった。
 ただ、覚えているのは朱にまみれた彼の表情。
 床に転がったそれを、踏みつける巨大な人影。抵抗することなく踏みつけられる彼の顔。
 なぜ、そんなことをするのかが分からなかった。
 なぜ、そうなるのかが分からなかった。
 彼女にとって初めての「死」はこうして突然に訪れた。あまりにも突然の出来事だったから、
彼女にはそれが理解できなかった。だからどうして良いのか分からず、その場で立っている
ことしかできなかった。
「……怖いか?」
 下卑た笑い声をたてながら、巨大な人影が近づいてくる。横たわった彼の亡骸を前に
呆然と立ちつくす幼い彼女に、武器を持たない方の手を伸ばす。
 それでも彼女の視線は、床に転がる幼馴染みに向けられたままだった。さんざん身体に
触れられたあげく、上着を脱がされかけても彼女は動じなかった。
 ただ、男が自分の前に立ちはだかって床に転がった彼の姿が見えなくなった事だけが
腹立たしかった。
「どいて」
 それだけを口にした。だが巨大な人影が退くことはなかった。

570:朱の夢2 (DCFF7/シングルプレイモード)
06/05/04 04:39:33 owYEGRiq0
 次にどうしたのかは覚えていない。ただ、巨大な人影が腰に着けていた銃を持ち、
転がったそれを見下ろしていた。
 床に転がる顔は2つになった。だけど片方だけが朱に染まっている。
「どうしたの?」
 呼んでみても返事がない。
「いたいの?」
 頬に触れてみた、あたたかい。彼の顔を染める朱も、あたたかかった。
 自分の頬を伝うものに気づき、手に触れてみる。
 透明なしずく。それはとてもあたたかかった。

                    ***

 倉庫の割れた天窓から見上げた空の色を、彼女は好きになれなかった。
 白なのか黒なのか、はっきりしない曖昧な色。
 降り注ぐ飛沫が身体を濡らす。それはあたたかくも冷たくもなかった。
 斬り殺した―手応えすらなく死んでいった連中が、周囲に散らばっている。
あの日と同じように、彼らの身体は朱に染まっている。
 それを見下ろす彼女の頬を伝うのは、透明な滴。
 だがそれに、温度はなかった。

「私ねぇ、生まれて初めて雨に濡れたわ」

 彼女の頬を涙が伝うことは、二度となかった。

571:朱の夢3 (DCFF7/シングルプレイモード)
06/05/04 04:44:17 owYEGRiq0

                    ***


 死とは制圧。
 死とは安息。
 脳裏に焼き付いた彼の表情が忘れられなくて。
 あの時と同じ思いを二度としたくなくて。
 人間であることを捨ててでも、彼女はその夢を抱き、武器を取り頭上に広がる空を見上げた。

「終わりが、始まるわ」



                                   ―朱の夢<終>―


----------
・ロッソが好きでやった。今は(ry。
・DCFF7中、一番好きなんだけど文章で表現すると印象と真逆になるのはなぜだろう。
 (こんな人じゃない!!)
・ゆがんだ人間の手によって作られた、人間ではない存在を演じる(=中央螺旋の塔)
 という解釈はシカトしましたすみません。この辺なんとかしたいです。

572:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/05 03:06:36 l9vcXo0h0
>>569-570
ロッソ姐さん(*´Д`)ハアハア
エキセントリックで、色っぽくて強い(実際に居たらコワいですが)彼女が(・∀・)イイ!!
ミッドガル大侵攻ではクラウドと切り結んでいましたが、勝敗はどうだったんでしょうね。

573:DC後 【57】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/05 03:07:24 l9vcXo0h0
【お詫び】レスアンカー(>>)を入れ過ぎると書き込みが規制される為
500以前の引用は省かせて頂きます。
お手数ですが>>508から、500以前の引用を辿って下さい。ご迷惑かけて申し訳ありません。
前回の投稿で>にしたら、IE等のノーマルなブラウザではリンクが
貼られない様で、見辛いと思われた方がおられたらごめんなさい。

>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538の続きです。

シェルクが快方に向かうにつれて、クラウドが7th Heavenに立ち寄る回数も減った。
食欲が出て来てきた為栄養剤に頼る必要がなくなったからだ。
ヴィンセントはまだ見つからない。
時間が許す限りシドが手伝ってくれたが、クラウドが居ない時は
バレットがほとんど一人で探しているのだ。
「頼みたい物が出来たらまた連絡するわ。」
ティファにそう言われて、ヴィンセント探索に戻ったのだ。
生命反応を調べる携帯型の端末を持って、ミッドガルの廃墟を歩き回る。
バレットにシェルクの様子を聞かれ、それに答えている時にふと思い出したことがあった。
「なぁ…バレット。」
「なんだ?」
捜索を終えた地点に赤いサインペンでバツ印を付けながらバレットが答える。
「家に届けたい物がある。」
「なんだ?ティファから連絡でもあったのか?」
「いや、そうじゃない。」
バレットが顔を上げてクラウドを見る。
「その…俺が、勝手に思っただけだ。これがあればティファ達が助かるんじゃないかって。」
「何を持ってくつもりだ?」

574:DC後 【58】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/05 03:09:05 l9vcXo0h0
クラウドの答えにバレットは感心した風で、快く許してくれた。
「お前にしちゃあ、珍しく気が利くことを言うじゃねぇか。いいぜ、行ってこいよ!
その代わり…頼むから早く戻って来てくれよ。ここは一人だと気が滅入るからな。」
毎日廃墟を歩き回って楽しい気分になれるはずもない。
それにここは色々と思い出す事が多い。出来ればクラウドも長居したくはない場所だ。
バレットはそんな場所で一人で長時間過ごして来たのだ。
「悪いな。」
「いいってことよ!」
バレットは笑い飛ばし、マリンへの言伝(ことづて)を頼み、クラウドを送り出してくれた。
手近に居たWROの隊員を捕まえ、目当ての物の調達を頼む。
ここに運ばせると言う隊員の申し出を自分で行くからと断り、
クラウドは病院にフェンリルを走らせた。
目当ての物を受け取ると、フェンリルの後部座席に積み、通い慣れた道を我が家に向う。
家に着くと、入り口には鍵がかかっていないのに、店には誰も居ない。
おかしいと思っていると、フェンリルのエンジン音を聞きつけたデンゼルが飛び出して来た。
「おかえり、クラウド!」
クラウドはただいま、と答えると、
「デンゼル…ティファは上か?」
「ユフィ姉ちゃんと二人で出かけたよ。すぐに帰るって。」
「そうか…」
クラウドは二人が戻るのを待とうかと思ったが、ここへ来る時のバレットの言葉を思い出し、
「デンゼル…これをティファに渡しておいてくれ。」
「何…?これ。」
クラウドが持って来たのは折りたたみ式の車椅子だった。
足下のバーを軽く踏んで広げるだけで組み立てられるタイプだ。
実際にやって見せると、デンゼルは大喜びだった。
「うわ~!すっげーや、これ!シェルクの?」
クラウドが頷く。
「シェルク、きっと喜ぶよ!俺、知らせて来る!」
デンゼルはクラウドの返事も待たずに階段を駆け上ってしまった。

575:DC後 【58】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/05 03:12:14 l9vcXo0h0
(…参ったな…)
このまま帰る訳にも行かず、クラウドは仕方なくデンゼルの後を追う。
「シェルク!」
デンゼルはシェルクの傍に息を切らせて駆け寄る。
「クラウドがいい物を持って来てくれたよ!」
ベッドに座っていたシェルクと、傍でシェルクに絵本を
読んであげていたマリンが驚いて顔を向ける。
「なぁに?デンゼル!今ご本を読んであげてるのよ。」
「違うんだよ、マリン!クラウドが来たんだ。」
マリンは開けっ放しになっているドアに佇んでいる
クラウドに気が付くと、驚いて椅子を降り、駆け寄る。
「クラウド!どうしたの?お遣い?」
「いや…」
マリンの頭に手を置き、クラウドはどう答えた物かと必死で考える。
「シェルクの為に車椅子を持って来てくれたんだよ、な?クラウド!」
「私の…?」
シェルクに見つめられ、クラウドはますます言葉に詰まってしまう。
口下手で人見知りのクラウドは、まだ数回しかシェルクと言葉を交わした事がない。
頼りのティファも勝手に騒いでくれるユフィも居ない。
「…ずっとベッドに居ると、良くないからな。」
考えに考え抜いて、やっと出た言葉がこれだった。
シェルクが目を丸くして自分を見ているのがいたたまれない。
クラウドはそのまま踵を返して部屋を出ようとしたが、マリンがそうはさせない。
「もう!クラウドったら!ちゃんとシェルクに言ってあげてよ。」
クラウドの手を引くと、強引にベッドの傍まで引っ張って来る。
そして、ませた口調でシェルクに、
「ごめんなさい。クラウドは恥ずかしがり屋さんなの。」
「マリン…!」
(恥ずかし…がり…?)
シェルクはまじまじとクラウドを見つめる。
クラウドの顔が心なしか赤い。

576:DC後 【60】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/05 03:16:19 l9vcXo0h0
「シェルクの為に持って来てくれたんでしょ?」
クラウドはマリンには敵わないな…と小さく呟くと、
「俺も…長い間寝たきりだった事がある…治ったら身体中ガタが来ていた…
だから、具合がいい時は少しでも外に出た方がいい。」
「そうだったんですか…」
シェルクの返事はは車椅子の事を指しているのではない。
“クラウドは恥ずかしがり屋さんなの”
(じゃあ、あの時の…)
ここに初めて来た時の“クラウドの失礼な物言いに腹が立ったが、
あれはどうやら、彼なりに心配してくれた故の言葉らしい。
車椅子も、ベッドから起きられない自分を心配してわざわざ探して来てくれたようだ。
得心がいくと、今までのわだかまりが消えていく気がした。
また、胸の中がほんわりと温かくなる。
「…ありがとう…ございます…」
「…いや…たいしたことじゃない…」
「とても…うれしいです。」
微笑むシェルクに、クラウドは俯いてしまう。
ふと横を見るとマリンがいたずらっぽく笑っている。
デンゼルは状況が良く飲み込めない様でぽかんとクラウドを見ている。
「…バレットが待ってる…ミッドガルに戻る。」
クラウドはやっとそれだけ言うと、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


577:DC後 【61】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/05 03:20:19 l9vcXo0h0
デンゼルが慌てて追いかける。
その後ろ姿を見送って、マリンとシェルクは思わず顔を見合わせた。
「クラウドはね、仲良しになるのにすごく時間がかかるの。」
一緒に住み始めた頃は大変だったのよと、マリンがこぼす。
「…でも…優しいんですね。」
マリンは腕組みをして、やれやれ、という顔をシェルクに見せ、
「まあ…ね!」
シェルクは思わず吹き出してしまった。
父親代わりより娘の方がよっぽどしっかりしているではないか。
そして、慌てたせいで、マリンへの伝言を忘れていたクラウドは、
ミッドガルに戻ってからバレットに呆れられたのだった。

つづく。
===========================================================

>>574 ×DC後 【58】→○DC後 【59】
もう、本当にね、ごめんなさい_| ̄|(((○

>>572の『生命反応を調べる携帯型の端末』は、DCオープニングムービーで
ユフィが持っていた物だと思って下さい。(正式名、あるのかな?)

>>568
ゲーム内ではちゃんと書かれてませんが、シェルクが人らしさを取り戻していくと、
絶対にぶつかる問題ですよね。
彼女は被害者でもあるのですが、シエラ号での奮戦ぶりを見てると、
きっと思い悩むんだろうなぁ…と。


578:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/06 01:30:34 whFYJ4Pg0
>>573-577
今回はクラウドとバレットの描写から主に感じましたが、
シェルクを取り囲む周囲の、FF7オリジナルメンバーの
優しさが滲み出ているお話で、読んでいるとホッとします。
子どもに背中を押される図というのも、なかなか良いですねw。
続き期待sage

579:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/07 01:04:38 WsU6Ny6b0
保守

580:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/07 17:53:42 StxNlN0/0


581:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/08 00:30:17 hn38PsZy0
ぼ   ?

582:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/08 20:22:14 M0eioXRb0
RPG最萌トーナメントのお知らせ
●5月8日 月曜日
H-09 <<ティナ@ファイナルファンタジー6>> vs ファルナ@エメドラ vs マナ@FE聖戦

本日は<<ティナ@ファイナルファンタジー6>>の投票日です

支援と投票の方よろしくお願いします

ここでティナが負けるわけにはいかない。応援よろしくお願いします。
リルムの分まで頑張れ、ティナ!!
●ルールとトーナメント表(本部サイト)
URLリンク(www.geocities.jp)

●コード発行所(PCは予約制で発行まで通常60分かかります。携帯電話は即時発行)
URLリンク(saimoecode.sakura.ne.jp)

●支援用張り板
URLリンク(mig380.chez-alice.fr) (汎用あぷろだ)

現在の投票スレ(投票所板)スレリンク(vote板)l50
投票の仕方
1.上記のコード発行所で投票コードをもらう(発行は23:30~)
2.投票スレに発行された投票コードと<<>>囲みの名前(↓をコピペ)を貼る
<<ティナ@ファイナルファンタジー6>>


※投票は5月8日(月曜)の23:00までに!

対戦相手はどちらもかなりの強敵です。
今日投票しておかないと、もう二度と投票できない可能性も大いにあります・・・
ティナへの愛や萌えなどを、ぜひこの機会に投入しましょう!!


583:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/08 23:25:16 2dDvUj1I0
もう本戦始まってたんか、ありがとう。
ってリルムも出てたのかーーーーーーーー!!!!!!orz
ちくちくちく(ry

コメント読んでると6やりたくなって来たw

584:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(9)
06/05/09 00:06:29 DmvxAsk30
>>554-558より。
----------

                    ***

 その日の午後、彼らは朝と同じフロアで再び顔を合わせることになる。
「……すると、あなたが?」
「そう。都市開発部門管理課の主任として、あなたをここへ呼んだ張本人、
というわけ。『よくもこんな地味な部署に回してくれたものだ』と私を恨んで
くれるのは自由だけど、仕事はしっかりこなしてね」
 部内でも大きなセクションである『管理課』の主任を務めるのが女性だった
のは、正直意外だった。ただ、この口調と言葉を聞けばそれも納得がいく。
「改めてよろしく、リーブ君。それから、分からないことがあったら遠慮なく
聞いて」
 そう言って彼女は特に笑顔になるわけでもなく右手を差し出した。つられる
ようにしてリーブも手を差し出し、握手を交わす。まさか彼女が自分の上司に
なろうとは。
 今朝ここで顔を合わせた時と同じく黒いパンツスーツに身を包み、黒く長い
髪はバレッタでひとまとめに束ねている。元々が整った顔立ちではあるのだが、
女性的な美しさはまったく感じられず、どちらかと言えば隙のない―まるで
総務部に所属するタークスのような―印象すら与える。
「それではお言葉に甘えて1つお尋ねします。なぜ今回の配置転換を?」
「理由のない結果はないわ。当然……あなたの能力を見込んでの人事よ」
 リーブは配置転換が決定した当初から疑問に思っていた事を思い切って尋ねて
みたが、あっさりと返されてしまう。言っていることはその通りなのだろうが、
求めていたのはそんな回答ではない。

585:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(10)
06/05/09 00:12:13 DmvxAsk30
「具体的に私はどういった能力を見込まれてここへ招かれたのでしょうか? 
差し支えなければお聞かせ頂きたいのですが」
 管理維持と言うのは退屈なものだと思っていた。彼は都市開発に従事する者
として、常に生み出す側である事を望んでいた。魔晄炉誘致や設計から建設。
時には内部のシステムにも関与した事がある。だから管理とは、都市開発の中で
自分には一番縁遠いセクションだと思っていた。
 しかし、彼女はその考えを真っ向から否定した。だからこそ聞きたかった。なぜ
自分がここへ呼ばれたのか? 返答次第では元のセクションへ戻してもらう事を
進言するつもりでいたのだが、どうやら彼女の方が一枚上手だったようだ。
「差し支えるので現時点であなたの質問には答えられないわ。不服かしら?」
「……いえ」
 言葉こそ疑問形ではあるが、それ以上の問いには応じないという彼女の姿
勢ははっきり現れている。それ以上の抵抗は無意味だと、リーブは諦め声で
答えた。
「そう、なら持ち場に戻ってちょうだい」
 彼女はそう言って会話を切り上げると、ふたりは別々の方向からそれぞれ
名前を呼ばれ、忙しない日常業務へと引き戻されたのだった。

(とんでもない上司の下に回されてしもたな……)

 誰にも聞かれないよう、リーブは心の中でだけ呟いたのだった。

----------
・短いですが一区切りです。

586:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/09 16:42:58 Eho5PFu+0
保守

587:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/09 22:42:33 6gmQd3an0
>584-585
GJ!上司の人カッコいいです。どんな目的があるんだろう?

588:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/10 11:07:22 enBtP7ijO
一日一保守

589:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/10 21:57:19 lQhmHSKX0


590:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/11 08:43:32 FdD5WaIj0


591:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/11 12:31:08 65BuTDTBO


592:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/12 00:06:50 y5YBChJ40


593:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/12 00:37:06 JfmH+GuG0
サンガリア

594:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(11)
06/05/12 00:58:57 a48LehO80
>>584-585より
----------

                    ***

 晴れ渡った空には白い飛行機雲が一筋、くっきり浮かび上がっていた。まるで
絵に描いたような空の下、ミッドガルの外れにある更地にふたりの男の姿があった。
 飛行機雲の行方でも追っているのか、空を見上げているリーブの横顔を見ながら、
彼は込み上げてくる笑いをどうにか堪えながら尋ねた。
「もしかして今『とんでもない人が上司になった』……なんて思ってらっしゃいますか?」
 リーブが都市開発の管理課に異動になったことを聞いた彼は、確信をもって
その問いを向けていた。もちろん、これに対する返答が否定であることも予測済みだ。
 問いかけられたリーブは慌てて視線を下げ顔を質問者に向けると、ふるふると首を
振りながら早口になって答えた。
「……い、いえ。とんでもない」
(読心術かいな!?)
 リーブからしてみればあまりにも的確な指摘だったものだから、内心かなり動揺した
のだった。無論、態度に出ていることなど本人は気づいていない。
 彼はリーブが以前に関わった魔晄炉建設予定地での折衝の際、世話になった男
だった。総務部調査課に所属しており、件の都市開発管理課主任の彼女とも旧知の
間柄にあった。
 リーブは知る由もないことだが、あの日の朝、彼女を社長室へ呼び出したのも彼である。
「……まあ、お気持ちは分かります。彼女はとても厳しい人ですからね」
「あなたが言う程ですから、相当なんですね……」
 ああ、とため息をついて見せるリーブに、男は今度こそ笑うのだった。
「そんなに悲観しないで下さい、現に彼女は素晴らしい人なんですよ。そうでなければ
主任になんてなれませんよ。……ついでに、私が保証しておきます」

595:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(12)
06/05/12 01:08:12 a48LehO80
 そんな保証なら、ないのと同じね―と、きっと彼女がこの場にいたらそう
切り返すに違いない。ふと、リーブの脳裏にそんな考えがよぎった。
 それにしても、妙にリアルな再現映像が頭の中には流れている。知り合って
まだ間もないというのに、よほど強く印象に残っているのだろう。
「私の保証なんて意味もないでしょうし、きっと彼女ならすぐさま断るでしょうが」
そう言って笑う男の反応から見ても、リーブの考えはあながち的外れではなさ
そうだ。
 そう考えるとなんだか可笑しくなって、リーブも笑った。その姿を見て、彼は
少し安堵したような表情を向ける。
「立場上、さまざまな部署から依頼を受けますが……あなた方と一緒に仕事を……」
 言いかけて、不意に男は言葉を切った。先ほどまでの笑顔が一瞬で消える。
「すみません。本来、私の口からこのようなことは……」
 話すべき事ではない、男はそう言った。まるで沈黙を嫌うようにしてリーブは
すぐさま反論した。
「人間ですから、何かを思い、感じるのは仕方のない事だと思います」
「ですが、それを仕事に持ち込むのはプロのやることではありません」
 彼の持つ高いプロ意識には敬服する。しかし、感情を全て否定してしまっては
身も蓋もないのではないか? リーブはそう思った。
「私たちは確かにプロです。しかし、プロである前にひとりの人間でしょう? 
それを否定してしまっては……」
「あなたのおっしゃる通りです。ですが、それを大切にするあまり、任務の遂行に
支障を来すようなら……それは我々にとって、無用の長物でしかありません」
 彼の言葉を聞いて、リーブは返す言葉を見失った。人の持つ、人であるが故に
持つ感情を否定されたことを受け入れるまでに、些か時間がかかった。
「……それが、あなた方タークスだと?」
「ええ」
 彼は真っ直ぐにリーブを見て頷いた。揺るぎない自信、確固たる信念。そんな
物を身に纏っているような、強さを感じた。
 都市開発などよりも厳しい現場に直面する総務部調査課・タークスの一員たる
誇りが、彼にそれを与えているのか。それとも、数々の任務を経て身につけた
ものなのか。

596:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(13)
06/05/12 01:13:30 a48LehO80
 いずれにしても、自分にはない物だとリーブは思った。
「……私はまだまだ甘いんでしょうね。本音を言えば、あなた方の様になれる
自信がありません。タークスの協力がなければ、先の魔晄炉建設計画は頓挫して
いたでしょう。本来ならば私たちの力で完遂すべき計画だった、……筈なんですが」
 それは配置転換が行われる直前、リーブが関わっていた都市計画の1つだった。
計画の前に立ちはだかった最大の障害は、住民達だった。魔晄炉建設予定地の
一部はすでに居住区として機能していたのである。
 そこでリーブ達は住民達の説得に乗り出した。可能な限りの時間を割いてリーブは
住民達との交渉に当たった。その後、これに応じなかった者達への対応を都市開発
部門は総務部調査課へ依頼した。ここでふたりは知り合うことになる。
 総務部調査課の働きもあって予定通り着工を迎えることができた。しかしこの際、
彼らがどのような手段を使ったのかは、神羅内ですら正式には公表されていない。
 仮にどれほど強く現地住民が反発したとしても、神羅が魔晄炉建設を諦めるはずが
ない。となれば大方の予想はつく。都市開発部門が提示した条件をのまない、あるいは
呑めない者達に対して残された手段は、強制排除しかない。
 たしかに全力は尽くした。決裂した交渉の前に行き詰まったリーブ達を救い、道を切り
開いてくれたのは総務部調査課だった。だが、このやり方が果たして最善の策だった
のだろうかと、今でも思い悩む事はある。
 魔晄エネルギーは神羅にとって重要な収益源になりうる。同時に、ミッドガルの住民
にも富と豊かさをもたらしてくれる。それ自体に嘘偽りはない。
 少なくともリーブはその信念の元に、都市開発事業に取り組んでいる。
 ―それを住民達に納得してもらう方法は、他に無かったのだろうか?
    力で排除する以外に、方法はあったのではないか?
    私たちの声を届ける方法が、他にも……。

597:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(14)
06/05/12 01:16:03 a48LehO80
 もう何度目になるか分からない自身への問いかけに、リーブは小さく頭を振った。
過ぎてしまったことを悔やんだって仕方がない。そして、彼らタークスがいなければ、
魔晄炉建設計画は間違いなく暗礁に乗り上げていた。彼らには、どれだけ言葉を尽く
しても感謝を伝えることはできないだろう。
 ただ、都市開発部門―もとい、自分の手を汚さずにいておいて、そんな風に思う
のは虫の良い話だと、同時に罪悪感を抱くのだ。
 魔晄炉建設はもう後には引けない、引くわけにはいかない。とすれば、自分が
最後まで携わることで結果を残そう。それが、ミッドガルの住民達に対する最低限の
責務であり、最高の仕事になるのだと―そう決意した矢先の配置転換だった。
 ―だから聞きたかった。管理課へ回された理由を。
    魔晄炉建設から離れてでも、ここへ来なければならなかった理由を。
 煮え切らない思いを、どこへぶつければいいのだろう? そんなリーブには感情を
「無用の長物」として否定できるはずがない。
 だが―いや、だからこそ。彼の言っている事が正しいのだとも思う。結果として
回答が得られなければ、思いになど何の意味もないのだ。

598:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(15)
06/05/12 01:22:37 a48LehO80
 出口の見えない迷路の中を思考が迷走する中で、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「リーブ。あなたが、我々の様になる必要はありません。……いいえ」
 その声はとても力強く、まるで迷路の出口へと導くように響いてくる。
「あなたのような人が、これからは必要なんです。もし、できれば覚えておいて下さい。
今回の配置転換は……彼女の賭でもあるのです」
 彼は話しながら腕時計を見て立ち上がる。そろそろ、時間だ。
「待ってください?! ……それは、どういう」
 顔を上げたと同時に、リーブの胸ポケットから彼を呼ぶ電子音が聞こえてきた。
それを見下ろして男はやれやれと言いたげに微笑んだ後。彼は表情を見せない
ようにとリーブに背を向けた。
「私は、……あなた方を信頼しています。あなた方には我々……いえ、私のようには
なってもらいたくない、……というのは私の勝手な思いです」
 そう言ってから振り返った彼の表情は、いつもと変わらないものだった。
「私が、あなたを信頼しているように。彼女もまた、あなたを信頼し期待しているのだと
思います」
 もちろん確証はないものの、おそらく間違いありませんと付け足して。

「どうか彼女を助けてあげてください。彼女を救えるのは……あなただけなんです、リーブ」


599:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(16)
06/05/12 01:30:40 a48LehO80
「ちょっ……!」
 問い返そうとしたリーブを遮ったのは、ずっと放っておかれている胸ポケットの
携帯電話の甲高い電子音だった。彼はリーブに向けて電話に出るよう促す。が、
そんな彼の胸ポケットからも同じような電子音が聞こえてきた。
 ふたりは互いに顔を見合わせ苦笑しながら、それぞれの携帯を取り上げて
通話を始めた。
『……リーブ君、あなた何やってるの?!』
『主任、大変です!』
 端末の向こうから、それぞれの持ち主の名を呼ぶ声がほぼ同時に告げる。

 ―『ミッドガル魔晄炉建設予定地付近に、軌道を外れたものと見られる
    試作ロケットが墜落。死傷者、被害状況等の詳細は今のところ不明。』

「なんですって?! 場所と状況を詳しく教えてください!」
「……分かった。今すぐ戻る」
 ふたりは携帯を手にしたまま、別々の方向へ走り出した。
 リーブが見上げていた青空に伸びる一筋の雲がたどり着く先と、彼らが目指す
地点は、同じだった。




----------
・大風呂敷広げて夢を見すぎた。後で反省しながら畳もうと思う。
・尚、ロケットの話はFF7本編Disc3ミッドガル上陸後(ウェポン襲来前?)のシドより拝借。
 設定資料とかにこの辺の年代記載があったら目も当てられないw。

600:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/13 01:04:19 /Np77KcU0
ロケット墜落ktkr!都市開発協力の内幕が面白いです

601:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/13 13:30:37 onyAmoyX0
>>584-599
女性上司がリーブを呼んだ理由が気になります。
最終的にミッドガルを守れるのは彼しか居ないと思ったんでしょうか。

ついでにロケット墜落でシドとシエラも出て来るのかな?
と、期待sage。

602:DC後 【62】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/13 14:26:38 onyAmoyX0
>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)

広大なミッドガルの瓦礫の山の中でヴィンセントを探す…という
不毛な作業を続けるクラウドとバレットの所にシドがやって来た。
「リーブが呼んでるんだとよ。」
クラウドとバレットは顔を見合わせた。
「おい、まさか探すの止めろって言うんじゃねぇだろうな。」
「いや…そんな事は言ってなかった。が、なんだか要領を得ねぇ…ってか…」
なんでも3人揃ったら話すとのことらしい。
だったら行って話を聞く事だとリーブの居るWRO本部に向う事にする。
道すがら、シェルクの話になった。
「あの娘はどうだ?倒れたって聞いたときはびっくりしたぜ。」
「今ではすっかり元気だ。時々寝込む事はあるが、大した事はないらしい。」
「マリンやデンゼルとも仲良くやってるそうだ。」
「そーか、そりゃ結構。」
シドは満足げに頷く。
「俺も忙しくて見舞いに行けなかったからよ、気になってたんだ。
時々ナナキのヤツがメールくれたんだが…俺も忙しくてな。」
「今、暇なヤツなんか居ねぇだろ。俺だってマリンに会いに行けねぇし。」
「ったく、ヴィンセントの野郎、どこに隠れてやがるんだぁ?シエラも心配してっしよ。」




襲撃の傷跡が生々しく残るWRO本部の巨大なビルの前に佇み、
3人は上空遥か彼方にある局長室を見上げた。
「随分やられているな。」
「…なんだか嫌な予感がするぜ。」
バレットは高層ビルを見ると、嫌な事を思い出さずにはいられないのだ。
中に入るとがらん、としていて誰も居ない。

603:DC後 【63】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/13 14:27:08 onyAmoyX0
電力が回復していないのか薄暗く、床や柱には銃痕があり、
かつての賑やかさを知るシドは思わず溜め息を吐き、そして煙草に火を点けた。
「ま、こんな調子じゃ、禁煙だなんだ言う奴はいねぇだろ。」
そして突き当たりにあるエレベーターを見ると、見事なまでに破壊されている。
「で、エスカレータも動かないってかぁ?」
回廊の上の方見て、シドとバレットはあんぐりと口を開け、
何も言わずに階段を上り始めたクラウドの後にしぶしぶ続く。
「リーブの野郎、毎日この階段を上ってんのか?」
「ケット・シーはともかく、アイツ、俺らより年上だよな?」
半分上った所で、真っ先に音を上げたのがシドだった。
「俺みたいにタバコ吸う奴にゃ、キツイぜ、この階段。」
階段にどっかと腰掛けて、首にかけていたタオルで汗を拭う。
「おい、行くぞシド。」
バレットは容赦ない。
「うっせぇなぁ、ちょっと休ませろよ。」
シドはうんざりした口調で言うと、また煙草に火を点けた。
これはなかなか動きそうにない。
「悪いが俺はもっと長い階段を上った事があるんだよ。これくらいなんともねぇさ。」
バレットが言っているのは、神羅ビルのあの長い階段の事らしい。
あの時、さんざゴネてティファを困らせた事は
ここでは黙っていた方ががいいな、とクラウドは思った。
かと言って先に行くと言うと、親父二人に文句を言われているのは目に見えてるし。
ポーカーフェイスのまま、うんざりとそんな事を考えていると、
書類の束を持った女性隊員が通りかかった。
3人の姿を見ると、直ちに敬礼すると、遠慮がちに、
「ところで…皆さんはこんな所で何をしておいでですか?」
「リーブの野郎にに呼ばれたんだ。」
「それで、この因果な階段を上ってる所だよ。」
女性隊員は言いにくそうに、
「あの…エレベーターが使えないので、局長室は2階に移ったのですが…」

604: ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/13 14:27:57 onyAmoyX0
短くてごめんなさい。
うまくいけば、今日明日には完結するかもです。


605:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/14 00:46:30 pScTXxYL0
> 「あの…エレベーターが使えないので、局長室は2階に移ったのですが…」

腹痛い、ホント腹痛いw
リーブ(DC1章)という人物像をここまで的確に表現し、かつオチを着けてくれる作品を
拝見できる日がくるなんて!!
おいリーブ早く言えよ!と、大クレーム勃発の予感!!に期待sage。
(しかもこの後2Fまで下ることも考えると、結局上まで行くのと同じ距離になるんだよな…w)

いやもうホント幸せです。ありがとうありがとう。

606:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(17)
06/05/14 00:56:27 pScTXxYL0
>>594-599より。
----------

                    ***

 依然として出力低下の続く飛空艇シエラ号は、コントロールルームで必死に
操縦桿を握るクルーの操縦技術と努力の甲斐あって、辛うじて航行を維持していた。
「チッ、……やりすぎちまったか?」
 目の前で倒れたリーブの身を起こしたが、気を失ったまま意識が戻ることは
なかった。シドとしてはそれほど強い力で殴っちゃいないのだが、などと言い
訳じみたことを考えながら、通路の壁にリーブの上半身を凭せかけてから、
腕組みをして吐き捨てた。
「まったく世話の焼ける野郎だぜ」
 さて、これからどうしてくれようか。ようやくシドが考え始めた。しかし彼が考えて
いるよりもシエラ号を取り巻く事態の進行スピードは早く、そして向かう方向は
悪かった。
 飛空艇全体に、けたたましい警告音が鳴り響いた。それから間もなく、艇(ふね)が
大きく傾きかける。シドはバランスを取るために壁に手をつき、なんとかその場に
踏みとどまる。幸い、飛空艇の方も体勢はすぐ持ち直したようだったが、警告音は
止まらなかった。
 艇に迫る危機と、操縦桿を握るクルーの焦る顔が思い浮かび、シドは勢いよく
立ち上がり呼びかけた。
「……おいリーブ、ちょっと待ってろ!!」
 意識のない彼から返答はないが、シドはリーブの身体を通路の隅に寄せた。完璧と
は言えないが、こうして2面の壁で彼の身体を支えていれば、急激な揺れにも少しは
耐えられるだろう。間違っても、艇が揺れるたびに通路を転げ回る、なんて事には
ならずに済むはずだ。
 それからシドはコントロールルームへと駆け込むと、扉が開くと同時に叫んだ。
「おい、どうした!?」

607:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(18)
06/05/14 00:59:36 pScTXxYL0
「艦長……!!」
 先ほどシドから操縦桿を託されたクルーが声をあげる。
「依然としてシエラ号の出力は低下中。それどころか、このままではじきに
……全てのコントロールを受け付けなくなります」
 シドが階段を駆け上がる間にも、彼の状況報告は続く。コントロールルームに
設置された、おそらくはシエラ号全艦に設置されたディスプレイで、同じ現象が
起きていた。
 “退避勧告”。画面には簡潔にその文字が表示されていた。階段を上りきって、
手近にあったディスプレイでそれを確認すると、シドは噛みしめるように呟いた。
「……オレ様に艇を捨てろってのか?」
 クルーは一度シドから視線を外すと、黙って頷いた。シドの顔を見て、それは
言えなかったのだ。
「出力低下に伴い、既に高度調節の機能は使えなくなっています。このままの
軌道で進めば……ミッドガル中央塔付近……あるいは、六から八番魔晄炉
付近に……」
「おい待て! それじゃあ地上部隊が巻き添えになっちまうじゃねぇか!!」
 シドはクルーが言い終える前に叫ぶと、今にも胸ぐらにつかみかかる勢いで
詰め寄る。無論、操縦桿を託されたクルーとてそれを望んで操縦している訳では
ない。
 しかし彼が口にしていたのは考えられる中で最悪の、同時に現段階で最も
起こりうる可能性の高いシナリオだった。確かにこのまま飛空艇が墜落すれば、
爆発の余波で魔晄炉のいくつかは破壊できるだろう。そうなれば当初の計画通り、
零番魔晄炉へのエネルギー供給を絶つことができる。
 しかし、地上にいるクラウド達はどうなる? 仮に魔晄炉ではなく中央塔にでも
接触してみろ、中で交戦中であろうヴィンセントやユフィ、WRO隊員達を一気に
失うことになりかねない。
 どこへ墜落したとしても、シエラ号に搭乗しているクルー全員が間違いなく……。
 それは、なんとしてでも避けなければならなかった。

608:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(19)
06/05/14 01:05:06 pScTXxYL0
「ミッドガルに墜落……か」
 口に出してから、さらに嫌なことを思い出した。
 かつて神羅宇宙開発部門が作った試作ロケットが、ミッドガルに墜落した
時の話だ。当時、シドはまだ宇宙ロケットの正式パイロットにはなっていな
かった頃の出来事で、あの当時ミッドガルスラム街付近に墜落したとされる
ロケットは幸いにも爆発しなかったため事なきを得たのだと聞かされ、安堵
したことを覚えている。しかしそれ以降、宇宙開発への風当たりが社内で強
くなったことは間違いない。
 宇宙開発事業からの撤退を最初に提言したのは、都市開発部門だった。シ
ドは上官からそう聞いている。もっとも、今となってはどうでもいい話だ。
「……艦長」
 再び操縦桿を受け取ったシドに、クルーは神妙な面持ちでこう告げた。
「既にプログラムの起動準備は整っています。あとは……」
 それ以上は口にすることができなかった。飛空艇を放棄する選択を、シド
に下せと言うのは、あまりにも酷なことだとクルーは思った。
 しかし、それができるのはシド以外にはいなかった。

「このまま……ミッドガルに落ちる訳には行かねぇ……!」

 操縦桿を握るシドの手に、力がこもった。


----------
・(場面が飛びまくって分かりづらいですが、一応)ネロ戦後のシエラ号。

609:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/14 04:20:19 kTYdcOO80
シエラ号の続きキタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
気を失ったリーブに声を掛けているシーンが(・∀・)カコイイ!!


610:DC後 【64】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/14 04:22:52 kTYdcOO80
>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)


「お呼びだてして申し訳ありません。」
局長室には書類が山積みになり、リーブの顔も疲労の色が濃い。
それでも仲間が訪ねて来てくれたのがうれしいのか、目を輝かせている。
が、すぐにシドとバレットが不機嫌そうなのに気付いた。
「…どうしました?」
「なんでもない。」
横からさらりと言ってのけたクラウドのせいで、リーブに文句を言う気満々だった
シドとバレとは気勢をそがれ、腹立ち紛れに、どかりと乱暴に来客用のソファに座った。
クラウドもリーブに勧められ、空いている一人掛けのソファに座る。
「どうしてもここから離れられないので、わざわざ来て頂きましたが…話とは、ヴィンセントの事です。」
「ま、そうだろうな。」
階段の事をまだ根に持っているのか、シドが不機嫌そうに答える。
「何か分かったのか?」
クラウドはそれを無視し、リーブに尋ねる。
「それが…」
言いにくそうに言葉を濁すリーブに嫌な予感を覚え、シドとバレットは身を乗り出した。
「なんだよ、ヤツの身になんかあったのか?」
「もったいぶらずに早く言えよ!」
「私…考えたんですよ。」
また話をはぐらかされて、シドとバレットはあっさりキレてしまう。
「勿体ぶんなっつってんだろ?」
「結論から話せ、結論から!」

611:DC後 【65】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/14 04:25:19 kTYdcOO80
二人の剣幕に目を丸くするリーブだが、簡単にペースを乱される彼ではない。
「順を追ってお話しますので…」
おだやかな口調で言われると、またもや二人のイライラのベクトルが乱されてしまう。
「わぁーったよ!」
「黙っててやるからさっさと話せ!」
「私…考えたんですよ。」
「そこからかよ!」
「クラウドさんとバレットさんが不眠不休で探しているのに、彼が見つからないのは何故かと。」
「その内の何日かは俺一人だったぜ。」
むすっとして、バレットが口を挟むが、リーブは無視して話を進める。
「私たちの誰もが彼の生存を信じています。なのに見つからないという事は、
彼はもうここには居ないのではないかと。」
3人は、ぽかん、とリーブを見つめる。
「じゃ…じゃあ、アレか?アイツは、無事なのにとっとと姿を眩ましやがったってのか?」
「おそらく。」
「俺たちが心配してるのを知ってか!?」
予想通りのリアクションに、リーブは考えに、考え抜いた返事をする。
「私が思うに…」
「おう、なんだ?」
「彼独特の奥ゆかしさではないかと。」
白けた空気が流れた。
シドとバレットは空いた口が塞がらず、クラウドは顔を手で覆ってしまう。
「随分と言葉を選んだな、リーブ。」
「皮肉ですか、クラウドさん?」リーブは肩を竦めた。「他に、どう言い様があるんです?」
口をぱくんと開いたまま呆然としていたシドとバレットだが、
すぐに目に光が戻り、ワナワナと震え始めた。
「二人とも、落ち着いて下さい。」
二人は同時に片足を応接セットの机の上にだん!と乗せると、
「落ち着けだとおおおおーっ!」
「これが落ち着いていられるかよ!」
「お二人とも、お願いですから座って下さい!」
リーブは必死で二人を宥める。

612:DC後 【66】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/14 04:27:36 kTYdcOO80
クラウドは、なんだか子どもの頃に見たサーカスの猛獣と猛獣使いの様だな、と
傍観していたが、さすがにリーブが気の毒になり、
「それで、ヴィンセントはどこに居るんだ?」
リーブに飛びかからんばかりの二人と、そしてリーブがクラウドを見る。
「リーブの事だ。もう居場所は分かっているんだろ?」
さすがに気恥ずかしくなったのか、親父3人はいそいそとソファに座り直した。
「おう、で、奴はどこに居るんだ?」
「私…考えたんですよ。」
「またそこからかよ!」
「だから結論から言え、結論から!」
「シド、バレット。」
クラウドは少し声を荒げる。
「とにかく、今はリーブの話を聞こう。ヴィンセントが無事ならいいじゃないか。」
「ったく、おめぇはどうしてこんな時でも冷静なんだよ。」
ブツブツ言いながらも、二人はとりあえず黙るが、
それでも眼光でリーブを威圧するのは忘れない。
それをさらりと受け流し、漸く話を続けられる状況にリーブは満足げだ。
「まず、命がけの戦いを終えた後、皆さんならどうします?」
この質問は効果的だった。
途端に二人は大人しくなり、誰かの顔を思い浮かべている様子だ。
「ま、仲間ん所に戻るかな。」
「そうだな。俺ならそれからマリンの所に駆けつけるな。」
そうでしょう、とリーブも大きく頷く。
「当然、皆さんを待っていてくれる人の所ですよね。でも…私の質問に真っ先に浮かんだのは、
それぞれの奥方だったり、恋人だったり、娘さんだったのではないですか?」
これはクラウドを含めて、3人とも図星だったので誰も言い返せない。
「待てよ、リーブ。けどヴィンセントにゃそんな相手は…」
言いかけたシドがあっ!と叫んだ。
「…あんの野郎!まさか!!」
「おい、シド、どういうことだ?」
まだ分からないバレットがシドに尋ねる。

613:DC後 【67】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/14 04:30:55 kTYdcOO80
「ヴィンセントはんは“ルクレツィアの祠”に居はります。」
ぽてん、ぽてん、とまたもや不思議な足音をさせてケット・シーが部屋に入って来た。
「わいがこの目で見て来ましたから、間違いないですわ。」
ケット・シーはよいしょ、と飛び上がってリーブの隣に座る。
「じゃあ、あの野郎…!俺らの事を放っておいて思い出の場所に駆けつけたのか…?」
バレットが再びわなわなと震え始める。
「皆さんもご存知の通り、彼はああいった性格ですから。」
「単に照れくさくて、みんなの前によう顔出されへんだけでっせ~。」
今度は1人と1匹での説得だ。
「あの野郎!俺等が心配しないとでも思ってるのかよ?」
「今すぐ洞窟から首根っこ引っ掴んで引きずり出してやる!」
ケット・シーが慌てて両手を振りながら、
「ま…待って下さい、バレットはん!ヴィンセントはんは悪気があったんとちゃいまっせ!
きっと皆さんやったら分かってくれる、そう思うて…」
「いくら俺達だからって、分かんねーよ!」
「悪気があったらもっと許せるかよ!」
バレットとシドにコワい顔を突きつけられ、ケットシーは毛を逆立てて飛び上がった。
「俺は…少し分かるな。」
クラウドがボソッと呟く。それを聞き逃す親父二人ではない。
「どういう事だ?」
「みんなが待っているのは分かってる…1年前、俺はそれが分かって救われた。でも…」
その活躍のせいか、配達先の街で知らない人にいきなり
握手を求められたりして大変だったとクラウドは説明した。
「だから…出て来ないんだと思う。」
「せやから言うたでしょう?ヴィンセントはんは奥ゆかしいおヒトやって!」
我が意を得たり、とケットシーとリーブが同じタイミングで頷いている。
確かに、いくら気心の知れた仲間とは言え、ヴィンセントは仲間内でも特殊である。
常人とは違う身体の持ち主だ。
彼が出来るだけ人とは関わらない様に細心の注意を払って生きて来た事を思うと、
(さすがのお二人も、これで納得するでしょう…)


614:DC後 【68】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/14 04:36:29 kTYdcOO80
リーブにとって、口下手クラウドがヴィンセントの立場で発言してくれるかどうかは、賭けだったのだが、
(やはり、3人一緒に呼んでおいて良かったようですね。)
作戦成功に、リーブはまたもや満足気に頷いた。
「ですから…今は彼をそっとしておいてあげましょう。大丈夫ですよ。
落ち着いたらひょっこり顔を出してくれまよ。
その時は何事もなかったかの様に、彼を受け入れてあげればいいだけのことです。」
穏やかなリーブの声が、静まり返った局長室に響く。
「…まぁなぁ…」
「アイツの性格を考えるとなぁ…」
説得成功!リーブがそう確信した瞬間、
「でもよ。ちょっとおかしいんじゃねぇか?」
「電話だろうが、メールだろうが、なんでも知らせられたんじゃねーのか?」
「そ…それは…」
情に脆い二人のこと、このセリフで決まりだと確信していたリーブは
思いがけない反応のすっかり狼狽えてしまっている。
「なぁ、リーブ、俺たちはな…」
「飛空艇団員に頭下げて抜け出して何日もミッドガルを歩き回って。」
「マリンにも会えずで、おまけに足が棒になっちまったぜ。」
「シェルクの見舞いにも行けなかったなぁ…」
強面2人に詰め寄られ、リーブは縋る様にクラウドを見るが、黙って首を横に振るだけだ。
ケットシーはとっくに姿を眩ませている。逃げ場はない。
「お前の言い分はもっともだぜ、リーブ。」
「それにヤツの気持ちも分からないでもねぇしよ。」
「そ…そうでしょう?」
リーブは引きつった笑みを浮かべる。
シドもバレットも同じ様に笑っているが、目が笑っていない。
「そこでだ。俺様にいい考えがあるんだ。」
にやりとシドが笑う。
「もちろん、お前も協力してくれるよなぁ?」

つづく。

615: ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/14 04:37:22 kTYdcOO80
すいません、やっぱ、もー少しかかっちゃいます。
もーしばらくお付き合い下さいませ。

>>605

>リーブ(DC1章)という人物像

普段はダンディで上司にしたい男性No.1の局長も、
旅の仲間にはお茶目な所を見せるところがうれしくって、
DC1章のあのシーンは何度も繰り返して見てしまいます。
それとも、普段からあんな感じなんでしょうかね。
神羅時代の都市管理課としての重責、そして、WRO局長としての責務で大変だけど、
心から許し合える仲間と一緒の時はリラックスして欲しいなぁ…と思って書きました。

616:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/14 15:51:43 1q0JoqH+0
「彼独特の奥ゆかしさではないかと。いいww
おっさんらワロタw

保守。


617:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/15 02:44:08 1+1dlJ4e0
どちらの話も楽しんで読ませてもらってます。

618:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/16 11:48:38 I3ob+UGgO
イイヨイイヨー
このスレのリーブいい味出しすぎ

619:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/16 21:10:52 4/ci2G760
age

620:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/17 22:05:01 DyE+ffRk0


621:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/17 22:25:43 4fHRqUoxO
しゅ

622:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/18 10:55:08 mMqiugnQ0
しま

623:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/18 22:55:00 fZXkTGs/0
>>610-614
DC内のリーブ像が忠実に再現されているというか、微妙なお茶目さorおかしなオッサン
という姿が上手く描かれているので読んでて楽しいです。(激しく個人的な趣味ですがw)
ところで階段の件、シドならジャンプで一発解決できると思うのは自分だけだろうか?w
みんなに合わせて歩いたシドの優しさにちょっと切なくなった。

しかしシドとバレットを窘めるリーブの姿は、重役会議から変わらない役回りなんだなと
ちょっと思うw。小指ぐらい日常的に噛まれてそうな猛獣使いGJ!!

624:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(20)
06/05/18 23:29:19 fZXkTGs/0
>>606-608より。
----------

                    ***

 ロケット墜落現場へ向かう車内でも、本社と携帯での通話が続いていた。
都市開発部門管理課には、ロケット墜落についての詳細なデータや各所の
被害状況等がリアルタイムに入る。それを、彼女が電話を通じてリーブに
伝えていた。
『こちらから総務部調査課へ救援要請も出しておいたわ。正式に受理されるかは
分からないけれど……』
 つい先ほどまで一緒だった彼と別れる間際、あちらの携帯に入った連絡が
それだったのだろうとリーブは思った。
 しかし、そうなると不自然な事がある。
「主任、なぜ軍ではなくタークスなんですか? 万が一居住区画に影響が出ていれば、
救助活動には人手が……」
 墜落したのが試作ロケットである事を考えても、現場の惨状は察するにあまりある。
救助活動の規模ももちろんだが、救助する側もそれなりの装備を整えて臨まなければ、
二次被害拡大のおそれがある。
 それらの観点からも、救援要請を出すなら軍が妥当だとリーブは考えた。
なのになぜ、彼女がタークスに出動要請をしたのかが解らない。当然の疑問だった。
『…………』
「主任?」
 呼びかけた声に、ようやく彼女が口を開いた。
『……スラム街に被害が及んだとしても、救助はないでしょう。その代わり
ロケットの撤去作業が優先されるわ。被害状況の調査と報告までが私達の仕事。
軍の出動は、その後よ』
「なんですって!? なぜ……!」

『私たち都市開発部門としても、魔晄炉建設の工期を遅らせるわけにはいかないわ』

 携帯電話を通して聞こえてくる彼女の声が、ひどく機械的な音に聞こえた。

625:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(21)
06/05/18 23:37:31 fZXkTGs/0
 ―「……それは我々にとって、無用の長物でしかありません。」
 任務遂行のためには感情を切り捨てると言った、先ほどの男の言葉が脳
裏によぎる。彼の言葉もろとも否定するように、リーブは首を横に振った。
 違う、これは感情の問題ではない。
「主任。……それは間違ってます」
『…………』
「都市開発は……都市はそこに住む人あっての都市でしょう?! なぜ、
そんな風に住民を軽んじる事ができるんです!?」
『…………』
 返答はなかった。携帯から僅かなノイズは聞こえてくることから、通信が
途絶えたわけではなく、彼女からの返答がないのだと分かる。それでも
リーブはさらに言い募った。
「確かに私は……魔晄炉建設計画で力に頼りました。しかし、それが正しかった
とは思いません。利益を……豊かさを、住民に還元するのが、私の務めです。
ですから……」
『ご託は充分よ、リーブ君』
 先を続けようとしたリーブの言葉を、彼女はいとも簡単に遮った。たった一言で、
全てを否定し、拒絶する。
『可能・不可能……結果は2つしかないわ。そして我々は“可能”を実現する以外の
選択肢はない。できもしない理屈だけなら、聞く価値も意味もないわ。……切ります』
 そして事実、彼女は一方的に否定して通話を終えたのである。
「待ってください!」
 叫んだところで返ってくるのは、通信切断を示すノイズだけだった。
 リーブはやり場のない思いを携帯にぶつけるようにして叩きつけた。助手席に転がった
携帯のディスプレイに、リーブの顔が映し出される。
「みんな、間違っとるで」
 視線を前に向け、ハンドルを握り直す。
「……なんや、間違っとるんは自分だけかいな?」
 呟きながらリーブはアクセルを踏み込んだ。地上に真っ直ぐ延びた道路を、ひたすら進んだ。
 この時、見上げることのなかった頭上の空は、とても穏やかだった。

----------

626:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(21)[訂正]
06/05/18 23:42:22 fZXkTGs/0
>>625
そして我々は“可能”を実現する以外の 選択肢はない。
   ↓
そして我々には
----------
…気をつけます。

・未プレイですが、きっとシムシティをやらせてもコマンド1つ1つに対してSS書くんだと思います。
・念のため、現在投下中のSSはFF7です、…一応w

627:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/19 21:27:07 Es47DFMR0
保守

628:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(22)
06/05/20 01:51:23 acV9jEae0
>>624-625より。
----------

                    ***

 受話器を左手に持ったまま、彼女はデスクの前で呆然としていた。自ら
切ると言って右手で通話を切断した、その体勢のままで。
 それは機敏に動き回り部下に指示を飛ばす、ふだんの活発な彼女からは
考えられない姿だった。周囲の視線を気にしたのか、俯いてから自分の耳に
すら、ようやく聞こえる程の小さな声を、絞り出すようにして呟いた。
「……分かってる……間違ってることは、分かってる……」
 その言葉を最後に、ずるずると崩れ落ちるようにして机に突っ伏した。
震える手で受話器を置く。遠くの方でがちゃがちゃと騒がしい音を立てていた。
「……でも……!」
 泣くことはしなかった。涙は出て来ない、この道を選んだのは自分自身
だったから。後悔もしていない、正しいと信じて選択したことだから。
 ただ、ただ。
 苦しかった。
「……主任」
 呼ばれる声で顔を上げる。バレッタで束ねられた髪が表情を覆い隠して
くれることはない。だから部下に向ける顔を、とっさに整えた。
「総務部調査課から、主任宛にお電話です」
「ありがとう」
 そう言って彼女は再び受話器を取り上げた。左手に持った受話器がひどく
重たく感じた。ボタンを押した後、耳に当てたスピーカーから聞こえてきたのは、
聞き慣れた男の声だった。彼の声が聞こえてくることを期待していた。その通り
かけて来てくれた男に、心の底で感謝した。
『……用件から簡潔に言うと、君の出してくれた要請は却下された。我々
タークスが、“救援活動”について出動することはない』
「そう……やっぱり」
 それも予想はしていた。しかし、彼の口からその言葉を聞きたくなかったという
思いも、どこかにあったのだろう。隠しきれなかった落胆が声に現れている。

629:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(23)
06/05/20 02:04:27 acV9jEae0
『ただ』
 だが彼女の予測を裏切るように、受話器から聞こえてくる声は続けた。
『個人的に、という条件付きですが協力はできます。あなた方の力になりたい』
「……珍しいこともあるのね」
 彼からの申し出は嬉しかった。それでも、皮肉るような言葉しか出て来ない
のは、仕事で染みついた習慣のせいなのか。そんなことを考えた。
 少し間を置いてから、彼はこう答えた。
『……先ほど、あなたの部下に言われましてね。彼はいい人材ですよ』
 その言葉に思い当たる顔が浮かんで、彼女は額に手を当てて苦笑した。
「そう。……実は私もね……叱られたばかりよ」
『良い部下を持ちましたね』
「ええ」
 そう言って彼女は頷いた。相手に姿が見えないと分かっていても、深々と。
その姿は頷くと言うよりも、頭を下げているように見えた。
 彼女は忙しなく社員の行き交うフロアに背を向け、窓から外を眺めながら
切り出した。
「……ねえ、あなたは知っているんでしょう? “例の計画”の事」
 窓の中に広がる空の中に、受話器を持つ自身の姿が映っている。まるで
自分に語りかけているようで、少し不思議な心地がした。
『住民監視システム……』
「ええ」
 僅かだが、答える彼女の声が震えている。

630:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(24)
06/05/20 02:08:25 acV9jEae0
『どうしたんですか? 貴女らしくないですね』
「……わたし……」
『待って下さい。お分かり思いますが、我々社員は常に監視されています』
 男の言葉に分かっていると言って彼女は頷いた。監視とはもちろん、今この
瞬間も含まれているのだと。それを聞いた以上、男に発言を妨げる理由はなかった。
「……この計画を最後に、彼にすべてを引き継ごうと考えているの」
『今回の配置転換は、やはり?』
「彼には悪いことをしたと思っているわ。だけどこれが、結果的には彼にとって
最善の道だと思うの……私のわがままかしらね?」
『彼なら……リーブならきっと理解してくれます。そして貴女の期待にも応えてくれる
でしょう。それについては私からも保証しておきます。ただ……』
「ただ?」
『まだまだ甘さが抜けません。仕方がないことだとは思いますが……』
 そう言って受話器の向こうで男が小さく笑ったのが分かった。
 その声を聞きながら彼女はふと目を細めて、振り返るとフロアを眺めやった。
(らしくない、か。確かにそうね……)
 ひとつの結論にたどり着いて、口元に小さな笑みを浮かべると、彼女はこう言った。
「あなたに部下を褒めてもらうのは、上司として嬉しいわ。でもね……。
 そんな保証なら、ないのと同じ」

631:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(25)
06/05/20 02:13:33 acV9jEae0
 その言葉を聞いて、受話器の向こうで男が堪えきれずに吹き出した。
『やっといつもの調子が戻ってきましたね。安心しましたよ』
「あなたに心配される様ならお終いね。……ありがとう」
 言いながら立ち上がると、机上の書類を手早く片付けて身支度を調える。
手前の引き出しに入れてあった茶封筒と、ふだんは鍵を掛けてある袖机を
開けて、さらにその奥にしまわれたディスクを何枚か取り出す。ラベルの
貼られていないそれらのディスクを確認して、ひとつ息を吐いた。
「これから私も現地へ向かうわ」
『分かりました。何かあればまた連絡を』
「ええ」
 そう言って通話を終えると、彼女は鞄の中に茶封筒を投げ入れた。
 フロアを去る際、先ほど自分に電話を取り次いでくれた社員に声を掛けられた。
「主任、どちらへ?」
「……ロケットの墜落現場よ。このまま戻らないと思うわ。後はお願いね」
「分かりました」
 しかしその言葉が示す本当の意味を、彼女以外に知る者はいなかった。


----------

632:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/20 12:15:45 1IKlcKb40
GJ!ロケットが刺さった教会、心配ですね。現場はどうなってるのかな。

633:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/21 02:04:19 6/FYzwLt0
一日一保守

634:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/22 01:04:01 nTwcWFeA0
>>628-631
女性上司はもう戻られないのでしょうか・゚・(ノД`)・゚・。
2人ともとても辛い立場で読んでいる方も胸が痛いです。
続きが気になります…

635:DC後 【69】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/22 01:08:05 nTwcWFeA0
>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603 >.610-614の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)

二人の迫力に押されていたリーブだが、ここで諦めるようでは今の彼はなかっただろう。
「ちょっと待って下さい、艦長。」
「んだよ?」
「確かに私は彼を庇ってはいますが、別に彼の失踪に手を貸した訳ではありません。」
気丈に言い放つと、シドをぐい、と押しやる。
「あなたが何を考えているかは分かりませんが、手を貸す理由はありませんよ。」
「おい、シド、気付かれたぜ。」
「当たり前です。」
リーブはぴしゃりと言うと、改めて二人に向き合う。
「まぁ、そう言わずによぉ、協力しろよ。」
シドは脅しが効かないと分かると、今度は懐柔策に出た。
「別に俺だって本気で怒ってるワケじゃねぇよ。それっくらい分かるだろぉ?」
「さっきと言う事が随分変わってますが。」
懐柔されてなるものかと、リーブは冷たくそっぽを向く。
「そこでだ!」
「私の話を聞いてますか、艦長?」
「もちろん聞いてるぜ!」
「では改めてお願いします。どうか彼をそっとしておいてあげて下さい。」
「星を救った英雄を出迎えるパーティと行こうぜ!」
「ですから、私の話を聞いてますか?」
「もちろん聞いてるぜ。んで、場所はティファの店な。」
「勝手に決めるないでもらいたいな。」
クラウドが呟く。
どうせ聞いてはいないのは百も承知だが、一応言ってみる。

636:DC後 【70】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/22 01:12:06 nTwcWFeA0
「俺の作戦はこうだ。まず、ヤツを迎えに行くのはシェルクに頼む。」
「どうしてここで彼女の名前が出るんですか?」
「そりゃあ…」
「彼を油断させる為でしょう。」
「お前ってどうしてこう…もっと言い方ってもんがあるだろぉ?」
シドはは顔を、やれやれと頭を振る。
「いいか、よく聞けよ。俺たちが行くより、シェルクが行く方が
ヴィンセントの野郎がびっくりして、おもしれぇじゃねぇか。」
「おもしろいとか、おもしろくないとかの問題ではないと思いますが。」
「ど~せ俺たちが行ってもよ、“あぁ、久しぶりだな”で終わっちまうじゃねーかよ。」
2人の会話は平行線で一向に終わる気配がない。
いつまでこの不毛な会話が続くのだろうと
クラウドが天井を仰ぎ見た時、シドが決然として言い放った。
「分かった!おめぇがそこまで言うなら俺にも考えがある!」

つづく。
===========================================================

保守がてらです。短くてごめんなさい。
リーブとケット・シーでもう一度本編をプレイしたくて、
ついに5周目を始めてしまい、しかもついやりこんでしまいますたorz
もうすぐ古代種の神殿。いつもの倍以上号泣しそうです。

637:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/22 22:41:06 V6FMiC8r0
乙!

638:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/23 09:42:00 moUfoB5tO
>>635-636
なんかもう飽きた

639:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/23 15:40:46 1QBjM2EQO
乙。楽しみにしてるから頑張ってくれ

640:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/23 21:37:53 zC8be+Dn0
>>635-636
いつも乙です。
読み手としてできる限り保守はするから
書く事に専念してくれて大丈夫ですよー
今回はちょっと展開を急いでる感じがしました。

641: ◆BLWP4Wh4Oo
06/05/24 00:17:47 /ysmsu5q0
>>637 >>639 >>640
うれしいお言葉ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・。

640さんの仰る通り、今回はかなりバタバタと投下しました。
また誤字あって、読み手さんに失礼でしたね、ごめんなさい。

>>639
だらだら続けてしまってごめんなさい。まだ少し続いちゃうんですよ。
でも、やっぱり完結させたいので、もし専ブラを
お使いでしたら作品名やトリでスルーよろしこです。

【訂正】>>636
×シドはは顔を、やれやれと頭を振る。
○シドはやれやれと頭を振る。

きっちりお話練って、また週末に参りますノシ

642:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/24 23:09:23 bKlMhxnr0
保守

643:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/25 12:26:50 rIlKLfq+0
1日1回保守すればいいの?
保守

644:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/26 08:44:10 V/cra6+80


645:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/26 20:50:25 jJwWSq7x0
しゅ

646:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/27 13:51:02 Zie0B69RO
する

647:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/27 14:02:40 DwqnfsvZ0
くあ

648:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/28 08:42:18 Sq26fkd30


649:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/28 22:27:49 sqkZlGc10


650:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/29 03:23:45 i8ygeqPX0
>>635-636
やっぱりリーブの姿がうまいなと思います。一見すると周囲に流されているようなんだ
けど、折れることはない。最終的には元の位置に戻ってきてる、柳の枝みたいな。
上手く言えないけどそう言う面があるような気がする。一連の会話の中から、彼の
そんな魅力がよく出てると…
すいません、感想がリーブに偏ってるのは彼が良い味出し過ぎてて(ry。

651:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(26)
06/05/29 03:42:39 i8ygeqPX0
>>628-631より。
----------

                    ***

 墜落現場とされる地点はミッドガルの南西に位置する場所で、ちょうど
プレート建設中の現場近くにあった。しかし、ここまで来てリーブは進む
べき道を見失っていた。
「……どないしたんや?」
 車を止めて、初めて気がつく。
 空が、青いのだ。
 運転席から降りて周囲を見回した。風は強かったが空は青く、建設現場
にも何ら異常は見られなかった。
「方向、間違えとるんか?」
 自分で言っておきながら、即座にそんなはずはないと首を振って否定した。
 試作ロケット墜落の一報を受けてから、ナビゲートに従ってここまでやって
来た。都市開発に関わる以上、ミッドガルの地理情報には相当程度の知識が
あると自負しているリーブが、道を間違えるとは考えにくかった。さらに自分
以上の長年にわたってミッドガル都市開発に携わってきた彼女の案内が間違って
いるとも思えない。
 となれば、宇宙開発部門の軌道計算が間違っているか、そもそもロケットなど
墜落していない。というどちらかの可能性しか思いつかなかった。
 もう一度本社へ確認を取ろうとして、リーブは胸ポケットを探った。
「んっ?」
 そうして思い出した。携帯電話は助手席に投げ置いたままだったのだ。
 「しもたなぁ」と呟きながら助手席のドアを開け、携帯電話を取り出す。
 ところが携帯電話を取り上げた勢いで、助手席からある物が転げ落ちた。
履歴から本社を呼び出し通話ボタンを押そうとしたリーブは、視界の端に
車から投げ出されたそれの姿を捉えた。

652:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(27)
06/05/29 03:53:35 i8ygeqPX0
「……ああ、すまんな。痛ないか?」
 屈んで地面に転がった猫のぬいぐるみを拾い上げると、そう声を掛けた。
 別にぬいぐるみを集める趣味があるわけではないし、こんな可愛らしい
物を欲しがるような年齢の子どもが身近にいる訳でもない。
 それでもリーブは、そのぬいぐるみを大事に持ち歩いていた。

 ―それはミッドガルのある住民が、リーブに託したものだったからだ。


 それは今回の配置転換から遡ること半年ほど前の出来事だった。
 当時、魔晄炉建設予定地の住民達に向けて彼らは幾度も説明会を開いて
いた。
 それでも尚リーブは業務の合間を縫って、あるいは休日などの空き時間を
利用して、とにかく時間の許す限り該当地域にある一軒一軒を訪問し、彼らの
話に耳を傾け、時には頭を下げながらミッドガル中を歩いた。
 そんな中で訪れた一軒の家。そこには初老の夫婦が住んでおり、生活水準も
決して高いとは言えない。このぬいぐるみは、彼らの家に置いてあったものだった。
 子どもはいたが、既にミッドガルを出て各地を旅しているのだという。
「空が狭くなった」
 最初にこの家を訪れた時、夫は突っ慳貪に言っていた。神羅がこの街の
再開発を初めてからというもの、年々空は狭くなり、空気は汚れて行った。
彼らの子どもはそれを嫌がり、この都市を離れたのだと言う。

 ―自分とは逆だ。話を聞いた後でリーブはそう思った。

 彼は故郷を出て、このミッドガルへやって来た。
 住み慣れた地を離れ、親しんだ言葉を捨てたのは、彼の持つ理想を実現させる
ために他ならない。

653:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(28)
06/05/29 04:01:46 i8ygeqPX0

 その後もこの家には足繁く何度も通った。説得ももちろんだったが、そ
れだけが理由ではないような気がしていた。通い続けている間に色んな話
をした。ミッドガルの昔の様子や、彼らの子どもの事。時にはリーブ自身
の家族や幼少の頃にまで話が及ぶこともあった。
 やがて数週間が経った頃、リーブの熱意と誠実さに心を動かされ、夫妻
はこの土地を明け渡すことを承諾した。しかし彼らは、神羅の用意した場
所ではなく、ミッドガルから離れることを選んだ。
 仕事とはいえ慣れ親しんだ人々と別れるのは、少し淋しい。リーブはそう
思っていた。願わくば、自分達の作った新しい都市で暮らして欲しいと、
そんなことさえ真剣に考えた。だが、最後まで口に出すことはしなかった。
 退去の日、妻から渡されたのがこの人形だった。
 無口な夫よりも、社交性のある妻が、それを差し出してこう言った。
「むかし、子どもが好んで読んでいた童話に出てくる妖精が、アンタとそっくりでねぇ……。
こんな老いぼれに付き合ってくれた、せめてものお礼だよ。今までどうもありがとう」
 たくさんのしわを作りながら、彼女は微笑んだ。家財を積み終えたトラックに
乗り込む間際、最後に彼女はリーブを見上げながら語った。

「本当に、アンタもこの妖精もよう似とったよ……。
 アンタはこの都市にとってケットシーと同じ存在なんだよ、きっと」

 彼女の笑顔の裏にある、その思いが何であったのかをリーブが知るのは、
それからまだ先の事になる。

654:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(29)
06/05/29 04:19:14 i8ygeqPX0
 彼女の言っていた童話はこうだった。
 かつて世界を滅ぼそうとした狂者を倒すべく、世界各地に14人の英雄が
顕れた。しかし古の禁忌を破り“神”をよみがえらせた狂者は、引き替え
に自らの心と世界を贄として差し出した。神のもたらす圧倒的な力の前に
一度は離散するものの、彼らは再び集い、“神”の復活によって蘇った古
の力を用いて、力に囚われた狂者を倒した。後の世で「14英雄」と呼ばれ
る彼らは、同時に古の力を失った。
 この童話に登場する妖精ケットシーは、自らの生命が失われる代わりに、
石に力を託した猫として描かれ、その姿は人々を惑わせる存在であったの
だと言う。
 その時になってようやく、彼女が口に出さなかった思いの一端に、初め
て触れた様な気がした。
 けれどリーブの手に握られた人形は、ただ愛くるしい笑顔を向けるだけで
何も語ってはくれなかった。

 夫婦は、神羅都市開発部門の説得に応じ退去した、最後の住民となった。




----------
・魔石の頃から好きだったんだよケット・シーが!
・長い回想編もこれでようやく終わりに向かえます。今しばらくお付き合いいただければ幸いです。
>>632…しまった! 重大なこと見落としてたかも…。ありがとうございます。

655:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/30 02:53:05 0XQthXi20
ぬこぐるみキタ!童話と老夫婦のつなげ方が良いですね。GJ!

656:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/05/31 07:51:20 DPcWCuxqO
GJ!

657:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/01 00:13:10 6XvBxKtT0
保守

658:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/01 00:14:00 xv7tA3fIO
ほーしゅー

659:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/02 01:12:45 7Ln4SDWt0
ほっしゅ

660:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/03 01:19:10 773PlVzP0
よし保守だ。

661:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/04 04:09:52 TEYE1tsO0
保全

662:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/04 18:15:39 X5ehdxokO
そろそろ俺の出番か

663:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/05 00:01:51 pc5G+YAN0
>>662
who are you?

664:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/06 04:40:33 AyC2XNeb0
ほしゅほ

665:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/06 13:56:52 4gK/FQ8cO
>>663
いや、なんか書いてみようかと思って

666:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/06 17:35:25 TWHHBHJK0
DGDGDGDGDGDGDGDGGDGDGDGDGDGDGDGDGGDGDDG

667:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/06 17:36:52 TWHHBHJK0
まちがいさがしー                                                                        ごめん

668:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/06 20:36:58 sf7+urMfO
>>662に期待age

669:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/07 00:22:25 JtOHu/8wO
>>668
ありがとう
だが何書けばいいかわからん
もう7は職人がいらっしゃるしなあ

670:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/07 00:51:55 phUzYnzk0
>>669
月並みだけど
自分が好きなものを好きなように書けば良いと思う。
7ばっかりになるからって憚る事はないぞ。あ、でも
エログロネタはここじゃムリなんで該当スレになるけど。
期待sageそして保守。

>>666
スレリンク(gline板)

671:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/07 02:28:08 rc0zO92i0
669氏にワクテカ保守。
某スレに投下しようとして参加しそこねた、そんなネタを今更こっそり投下します。

672:友達 1/10 白 ◆SIRO/4.i8M
06/06/07 02:31:17 rc0zO92i0
 朝靄の遺跡に、雲間から光の帯が伝う。
若者は遺跡の前でカメラを構え、そのフレームに小さなモンスターが入った。
「あれー?」

  おはよう。おにいちゃんたち、なにしてるの?

「これは人懐こいな、ラグナ」
「子供なんだよー。一緒に撮るか?」

  これ、なあに? ぶきじゃないの?

「カメラが珍しーんだな。うむ。セクシーショット」
「……」
「そうともウォード君。我々は取材真っ最中だ」

  おにいちゃんたち、おもしろい。

「ん? ついて来るのか。よし、俺のとっておきのギャグ、見せてやるぜー!」
 若者達の横で、小さなモンスターが楽しげに遊ぶ。
むしろ若者達が遊ばれている。それもかなり。
 彼等は後に、狩られたエルオーネを取り戻し、魔女アデルを封印した。
中心になったラグナは民に請われ、エスタを支えるようになる。

673:友達 2/10
06/06/07 02:33:20 rc0zO92i0
 偉丈夫が、勢い良くドアを押し開く。
「大統領閣下! 就任おめでとうございます! 
 強国ガルバディア元軍人とは、頼もしい限り。
 さあ、敵の屍を乗り越え、我が国に勝利を!」
「んー。そうだなあ。とりあえず大佐さん、戦況見してくれ」
「はっ!」

 入れ替わりに補佐官二人が、エスタ新大統領の顔を見る。
「やあ、ラグナ君。忙しそうだな」
「キロスー! これ罰ゲーム?! 全っ然帰れねえ!!
 大統領って何? ジャンケン負けるとなんの?」
 静かな補佐官が、ゆっくりと頷く。
新大統領は補佐官の肩を抱え、盛大なため息をつく。
「そーなんだウォード。まず停戦させねーとどーしよもねえだろ、これは。
 アデルいねーのに、まーだ戦う気満々だぜ!?」
「全くだ。これは金の……」
「そうそう、それだ。金の粒食べよう、だ。街が破壊され続けて、
 人手がガンガン減って、どーやって経済力つけよう、って話だろ」
「正しくは『金の卵を産む鶏を殺す』だな」

「帰りたいよー。レインに会いてーよー」
「巻き込まれてる我々も帰りたい」
「そう。エルも戻ったし、速攻ウィンヒルに帰りたいんだけどさ。
 俺達が今帰ったら、この国の人が大勢死ぬぞ? それは困るだろ」
新大統領は窓に噛り付き、大空を見上げた。


つづくよ

674:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/07 08:37:49 aKHYAyk60
なんか楽しげな話だ、つづき期待

675:遺跡 3/10 白 ◆SIRO/4.i8M
06/06/07 20:41:59 W7xp3TOi0
やっちまった…タイトル重複につき変更。もうホントにすいません。orz
前話は>672-673です。
-----------------------------------------------------------

 ふわり。ふわり。軽やかな羊の群れが、山羊の先導で戻ってゆく。
モンスターの子供は、羊に囲まれながら家路を急ぐ。
「モンスターじゃねえか」
「まあ見ておけ。このルートなら面白いものが見られるぜ」
兵士達がモンスターを嘲笑する。

 かちり。

 仔に乳をやろうと、急いでいた山羊。その足元で、轟音。

  やぎさん? なに? なにがあったの?!

「おーし、踏んだ」
「地雷か。なあ、餓鬼も倒しちまおうぜ」
「経験値の足しにはなるか」

  どうして撃つの? こっちはなにもしてないよ!

 逃げ惑うモンスター。けたたましく笑う兵士。その先に―
「きゃあ?!」
震える女性。夕日に照らされ、長く伸びた影。
「民間人か。どこから入りこんだんだ」
「遺跡に行こうとしていたんです」
「観光地じゃねーぞ? まあ、遺跡は向こうだ」
走り去るジープ。山羊の血が、大地に吸い込まれる。

676:遺跡 4/10
06/06/07 20:43:40 W7xp3TOi0
 そろりと、女性の影から小さな影が出てきた。
「もう大丈夫よ。出ておいで」

  おねえちゃん、ありがとう。

「ねえ、小さなトンベリさん。セントラ遺跡を知ってる?」

  しってるよ。じぶんのおうちだよ。

「私はレインよ。ラグナを探しているの。
 ティンバーマニアックスに、セントラ遺跡の記事があったから。
 もうラグナが居る筈はないんだけど、手がかりが欲しくてね」

  こっちだよ。レインおねえちゃん、ついてきて。
  ラグナはやさしかったよ。

「知らないか。そうよね」

  どうしたの? レインおねえちゃん。
  きこえないの? この声が。

「ごめんね。あなたの仕草しか分からない」
小さなモンスターはレインと手を繋ぎ、遺跡に向かう。
宵闇の中、柔らかい潮風に吹かれながら。

677:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/07 22:25:11 UPSDUnx+0
新人さんキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!

元ネタは分からんが、子供モンスターとの交流が
ほのぼのしてて(・∀・)イイ
続きがんがれ!

>>669も期待sage
>>670に禿同だ。投下待ってる。

678:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/07 22:58:39 kb9lUqm80
>>675
ほのぼのしたストーリーなのでもしやと思ったら
やっぱり白さんでしたかw

679:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/08 04:02:16 FWviigEY0
>>672-673,675-676
小さなトンベリのゆっくりとした、拙くも見える歩みに誘われるように
不思議と引き込まれる文章です。しかもほのぼのした中にも彼らを
取り巻く残酷な現実が垣間見えて、ちょっと哀愁を帯びてます。
そんな背景で「みんなのうらみ」だったらと思うと切なすぎる…。
続き待ってます。

680:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(30)
06/06/08 04:15:06 FWviigEY0
>>651-654より。
----------

                    ***

 回想を打ち切ったのは、無粋で無機質な携帯電話の呼び出し音だった。
我に返ったリーブは思わず携帯電話を取り落としそうになり、慌ててボタンを
押した。だから発信元にまで注意がいかなかった。
『リーブ君、今どこに?』
 聞こえてきた声に一瞬ためらう。しかし通話を始めてしまった以上、無下に
切る訳にもいかない。同時に発信元を確認しなかった自分をひどく後悔したが、
後の祭りだ。
 声の主は都市開発部門主任だった。回線を通して聞く彼女の声は、今や
当たり前の日常である様な気がするほど自然と耳に入ってくる。考えてみれば
彼女とはつい数日前、初めてまともに会話をしたばかりの筈だったのに、不思議
だと思った。
 いずれにしても、リーブが今いちばん聞きたくない声だった事は間違いない。
「……第6建設現場、エリアF5-268付近です」
 つとめて平静を装って、リーブは答えた。これは仕事なのだと、自分に言い
聞かせながら。そんな事情を知ってか知らずか、彼女は淡々と話を進める。
『ナビゲート通りね。……実はあの後、宇宙開発部門から修正データが送られて
来たの。それによると墜落現場と目される地点が当初と少しずれているわ。
場所はE3-282……』
「第5プレートですか?」
 紙面に出力するなどとうてい不可能と言えるような膨大な量のミッドガルプレート
建設計画書のデータは、本社のコンピュータに記録されている。厳重なセキュリティ下で
管理されているそれは、むろん社外秘で持ち出しも複製もできない代物だ。しかし
完璧に複製したものが、彼らの頭の中には入っている。
 このデータを元に、ふたりの会話は成り立っていた。おそらくは神羅都市開発部門内の
人間でも、参照なしに彼らの会話を理解することはできなかっただろう。
 ところが彼らはそれを平然とやってのけている。あまりにも自然すぎるために、
本人達ですら指摘されない限りは異常さに気づかなかったのかも知れない。

681:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(31)
06/06/08 04:18:38 FWviigEY0
『そう』
「ではそちらに向かいます」
『……ちょっと待ってくれる? 今、ちょうど現地にいるの……プレートの下よ』
 プレート下と聞いてリーブの脳裏にはある予測が立った。―ロケットが、
プレートを突き破ったのだと―立ってしまった予測から導き出された現場の
惨状を思うだけで、眉間に寄るしわの数が一気に増した。
『リーブ君、あなたはそのまま本社に向かってくれるかしら?』
「なぜです?」
『やってもらいたい事があるわ』
「何ですか?」
『まずは軍への出動要請。それから被害状況報告書の作成、破損部分の再建
工事の費用概算と計画書の提出……』
 言葉を交わし聞く毎に、眉間のしわが深まっていくのを感じていた。
 彼女が言っていることは分かる。言葉の中で省略されている宛先や方法まで
含めて、その一連の手続をリーブは理解した。が、一点だけどうしても理解でき
ないことがある。
「ち、ちょっと待ってください! それは主任の仕事のはずで……」
『ええ、そうよ』
「だったら……」
 言うよりも早く、彼女の声が耳に届いた。

『たった今から、主任はあなたよ。
 ―都市開発部門管理課の主任に、リーブ。あなたを指名します』

 自分の耳を疑うよりも先に、恐らくは開いたままだったであろう口を閉じようとした。
何か言わなければならないのだろうが、唐突で、しかも全く予想外の出来事に、
リーブは文字通り言葉を失った。

682:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(32)
06/06/08 04:25:45 FWviigEY0
 電話からは何の応答もない。リーブからの返答を無言で待っているのだろう。
膠着状態を脱するためには、こちらが先に発言する必要があった。それは充分
すぎるほど分かっているのだが。
「……んなアホな」
 情けないことに、口をついて出た言葉がこれだった。
 開いた口をようやくふさぎ、次に込み上げてきたのは怒りにも似た感情だった。
「悪い冗談だ」と思うのと同時に、そんな冗談をためらいなく口にした相手に対する
怒り―心中で渦を巻く感情に、言葉が追いつかなかった。
 しかし彼女は口調を変えないまま、リーブの言葉を肯定した。
『そうね、アホかも知れないわ』
 沈黙が流れたのは一瞬だけだった。電話を通して聞く彼女の声からは、その心の
動きを読み取ることはできない。
『管理課内の人事権は私にあるわ。その権限を行使して、あなたに全権を委譲するわ。
すでに手続はこちらで進めてあるから心配しないで』
「ちょ……言うてる事おかしいで?」
『そうかしら?』
 おかしいも何もない。リーブは電話を左手に持ち替えて、言い放った。これ以上黙って
聞いているのはごめんだ。
「……おたくさんがそう出るなら、こっちにも考えがある」
 口元に笑みを浮かべ、思うままに言葉を並べた。ふだんは抑えているはずの訛りも、
この時ばかりは気にならなかった。

683:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ(33)
06/06/08 04:35:34 FWviigEY0
「主任。人事異動に対して拒否権があんのは知っとるやろ?」
『ええ。だけど拒否権発動は依願退職と同義よ』
「そんなん百も承知や。喜んで辞めたるで、こんな会……」
『そう、投げ出すのね。あなたを信頼した人達を裏切って』
 回線の向こうで彼女は溜め息を吐いた。それを聞いて、誰もいない建設現場で
思わずリーブは声を張り上げて叫んでいた。
「投げ出す?! 投げ出すんはどっちや! 電話一本で全権委譲って……
そんなん無責任な話やで」
『盛大に授与式でもやってもらいたいの? お望みなら手配してもいいわ。
 ……そうねリーブ君、さっき私に言った言葉、あなたにお返しするわ』
 しかし彼女の声に皮肉や侮蔑の類は含まれていない。ただある事実を、ありの
ままに指摘していた。いっそ事務的にも思えるその口調は、一方で彼女の怒りと
落胆の表れだったのかも知れない。
『あなた、間違ってる』
 電気信号として送られてきた声が、衝撃を伴って伝わる。リーブの肩を大きく
揺らす程の衝撃は、手にしていたぬいぐるみが足下に落ちるには充分な震度だった。


----------
・口論書くのが楽しくて仕方ない。突っ走ってすんません。
・ミッドガルの地番(?)はテキトーです、見逃してください。

684:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/08 19:47:22 ewZd9pi30
関西弁キタ━━━(゜∀゜)━━━ !!!!!
リーブ都市開発部門管理課主任さんがんがれ、超がんがれ。

685:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/06/09 00:42:24 4LW+5PdS0
>鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅥ
場所を聞いただけで、破壊状況を把握する都市開発部門の人々がかっこいい!
真摯な会話の合間に顔をのぞかせる、ぬこぐるみが素敵です。

レス下さった方、ありがとうございます。次回で終了予定です。
そして>669さん期待sage。

686:遺跡 5/10  ◆SIRO/4.i8M
06/06/09 00:45:29 4LW+5PdS0
前話は>675-676です。
----------------------------------------------------------------

 澄み渡る空。セントラ遺跡がそびえる。
レインは遺跡の入り口で、モンスターの子供と羊を見ている。

  ちょっとまっててね。
  オーディンに入れるよう、おねがいしてくる。

 トンベリの子供が魔方陣を描くと、するりと遺跡にレインが入った。
星霜を重ねた遺跡が、人間を迎え入れる。
「凄い。あなた、こんな事が出来るんだ」

  おねえちゃんはお客さんだから。たすけてくれたでしょ?
  みんなもレインは刺さないよ。あんしんしていいよ。

「素晴らしいわ。ここにラグナがいたのね。ん?」

  おなかがおおきいね。おかあさんになるんだね。

「撫でてくれるの? そう、ここに赤ちゃんがいるのよ。
 だから父親に、ラグナに見せたいの。勝手に行っちゃって、本当にもう!」

  ぷっ。しかられそうだね、ラグナおにいちゃん。
  こっちだよ。とってもきれいなの。

「わあ……!」
 遺跡の合間を埋め尽くす、色とりどりの花々。
雨季と乾季の合間に出ずる、束の間の花園。

  今だけ、ここはお花でいっぱいになるんだよ。

687:遺跡 6/10
06/06/09 00:47:24 4LW+5PdS0
「はい、これ。綺麗だから、作っちゃった。
 これは、ウィンヒルのお祭りで使うのよ」

  花かんむり? いいの?
  きれいだね。かわいいね。

「これは? 近くに海があるのね」

  ―おねえちゃん、そっちは駄目。行かないで!


 エスタの大佐が、僧侶と酌み交わす。
「新大統領は傀儡にならない」
「停戦などど。小賢しい」
僧侶が口の端を上げ、ぼそりと続ける。
「大統領には妻がいるようですぞ」
「ほう?」
「これは、使えます。我々の人質にすれば……」
 と思ったら、レインはウィンヒルに居なかった訳で。
それはもう、何や知らん悪そうっぽい人達が大騒ぎしたのはさておき。

 海辺の基地に、通信が入った。
「大統領夫人、ですか? そうです。遺跡に向かった女です」
「捕らえよ。手荒な手段を使って構わぬ。生きてさえいれば良い」
 肩で息をつく大佐の極秘指令を、紆余曲折して取り次いだ
そんな密偵の人が、僻地の兵士共に連絡中。
荒地しかないセントラに飛ばされてる時点で、頼りにならない部下の予感。
それでいいのか、大佐と坊さん。

688:遺跡 7/10  ◆SIRO/4.i8M
06/06/10 02:17:52 piZWgfBE0
 山羊の時と同じ鈍い音が、レインの足元で鳴った。
「あ!」

  おねえちゃん。うごかないで。
  そう。そうだよ。じっとして。
  それで、この岩をそーっと、上に。
  ゆっくり、足をはなして。ゆっくりとね。
  これでだいじょうぶ。

「ありがとう……トンベリさん」

  おぼえたの。
  にんげんが、ばくだんをいっぱいうめたから。
  ここはオーディンがまもってるけど、そとはあぶないの。
  おもちゃの形をしてたりするんだよ。
  それで、おおぜいの仲間がひろったんだ。
  山羊をね。先に歩かせるんだよ。
  そうすれば、仲間はふまないから。

 銃弾の音。撃ち抜かれる地雷。そして炸裂音。
レインは声を上げることも出来ずに、倒れる。

  どうして?! おねえちゃん、おきて。
  血をとめなきゃ。あかちゃんがしんじゃうよ!
  ねえ。おねえちゃんの足は……どこ?


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