06/04/10 05:51:07 zv2alniz0
>>375-379より。
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額に多量の汗を浮かべ、肩を上下させて荒く呼吸を続けるリーブに肩を貸し、
彼を支え起こしながらシドは問う。
「おい、何があった!?」
「……ろ、が。……」
俯きながら答えたリーブの言葉に主語はなく、それどころか言葉にすらなって
いない。事情を聞こうと声をかけたまではよかったが、シドはますます訳が分から
なくなった。
「どうしたんだ!? おい、リーブ!」
気絶するほどの衝撃ではないにしろ、ケット・シーがもたらす影響というのは
少なからずリーブの身体にも及んでいた。シドや、まして何も知らないシェルクが
戸惑うのは仕方のないことだった。
そもそもリーブがこの能力について、これまで―神羅時代の同僚や上司は
もちろん、3年前ともに戦った仲間達にさえ―詳しい話をしたことは無かった。
何も知らない彼らから見れば、特に外傷を負ったようにも見えない男が、なんの
前触れもなく突然苦しみだしたのだ。そんな状況を目の当たりにして、驚くなという
方が無理だろう。
リーブの“能力”とは、ある特定の条件を満たした無機物に命を吹き込むことが
できると言うもので、つまりケット・シーは完全な遠隔操作ロボットではなく、リーブが
命を吹き込んだ文字通り“分身”なのである。だから分身が受けた衝撃の一部を、
本体であるリーブも感覚として捉えることができた。零番魔晄炉の最深部でケット・シーが
見た光景をリーブが知り得たのもこのためだ。