FFの恋する小説スレPart5at FF
FFの恋する小説スレPart5 - 暇つぶし2ch300:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 12:31:24 NB5hjEe70
保守

301:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 15:09:08 NgVpYGwg0
保守

302:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 18:05:50 WmaNWmdL0
保守

303:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 20:15:13 bMMNTuRa0
保守

304:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 23:02:13 5qEsDWkxO
さらに保守

305:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 23:56:03 ruTbWxAd0
保守

306:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 03:53:22 SpXOU87kO
保守

307:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 08:30:03 51VRXC5k0


308:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 08:42:21 5k+407Xg0
保守

309:The Kids Aren't Alright 1/4
06/03/17 11:22:44 r7K9eQEr0
保守ついでに故ダインスレの作品改訂版

「よぉダイン、エレノア!見舞いにきたぜ!」
筋肉質な腕に瑞々しい果物の乗った籠を抱えた男、バレットが病室に入る。
「おいおい……もう少し静かにドア開けろって、娘が起きちまう」
「おお、すまねぇな」
「バレット、いつもありがとうね」
「良いってことよ」
「そういえば、ミーナは?」
「ああ、ちょっと急な仕事が入っちまって、来れなくなっちまった」
「そっか……残念ね、ダイン」
「ん、何がだよ?」
バレットが不思議そうに尋ねると、エレノアは俺と目を合わせクスクスと笑い出した。
「おいおい何だよ、気になるじゃねぇか!」
「いや、てっきり手でも繋いで入ってくるんじゃねぇかと思ってさ」
「幸せそうな新婚さんの、微笑ましい姿を見たかったな~、って」
「な!……う、うるせぇよ!」
「ハハ、照れんなって」
バレットは真っ赤な顔でひとつ咳払いをして、エレノアのベッドの横の、小さなベッドを覗きこむ。
「可愛らしい子だな……名前、決まったのか?」
「ええ……マリンっていうの」
「マリン、か……良い名前じゃねぇか」
「ダインが、昨日の晩までずーーっと悩んで考えてた名前よ」
「ガハハ、お前らしいな!」
「うるせぇよ、お前だってずーーっと悩むに決まってらぁ!」
「ぬ……言い返せねぇじゃねぇか」
ダインが大声で笑うと、マリンが起きて泣き出した。
「ああ!もう、ダイン!何やってるのよ!」

陽だまりの様な日々だった。エレノアが、バレットが、ミーナが、マリンが居て。
こんな毎日が、ずっと続いて欲しいと願ってた。心の底から、そう願っていた。

310:The Kids Aren't Alright 2/4
06/03/17 11:43:02 r7K9eQEr0
「……胸糞悪い夢だな、畜生」
うな垂れるような暑さの中で、ダインは目を覚ます。
首を鳴らし、不自由な片足を引き摺りコンテナから外に出る。
途端に、サルの様なモンスター……バンディットが、彼に襲いかかる。
ダインは左腕の銃で、それをいとも容易く撃ち落とす。
バンディットは悲鳴と嗚咽を上げ、地面に伏している。
ダインはそれを撃つ。悲鳴が止んでも撃つ。それが、ピクリとも動かなくても撃つ。撃ち続ける。
カシュッ カシュッ
弾が切れ、ダインが興味を無くすまで撃たれたそれは、もはや原型も留めてなかった。
「壊れてしまえ……こんな世界も、何もかも」
虚無な狂気が、晴れすぎた空に一筋の線を引いた。

「……ダイン。……お前なのか?」
バレットは、闇雲に銃を撃ち放つ男に声を掛ける。
「懐かしい声だな……忘れようにも忘れられない声だ……」
間違いなく、それはダインだった。あちこち傷だらけになり、目は死んだ魚の様ではあったが。
「いつか会えると信じていた……。オレと同じ手術を受け、何処かで生きていると……」
バレットは、半ば泣きそうになりながら歩み寄る。その足元を、銃弾が掠めていった。
「俺はな、壊してしまいたいんだよ。この街の人間を、この街のすべてを、この世界のすべてを!」
「マリンは……マリンは生きている。ミッドガルにいるんだ。一緒に会いに行こう、な?」
ダインは幾分驚いた顔をした。少しの沈黙の後、口を開いた。
「そうか……生きているのか……わかったよ、バレット」
バレットは、安堵した。ようやく、俺達は元に戻れる
「やはりお前とは戦わなくてはならないな。」
安堵は、一瞬で砕け散った。
「エレノアがひとりで寂しがっている。マリンも連れていってやらないとな」
そして、陽の傾きかけたコレルに2つの銃声が響き渡った。

311:The Kids Aren't Alright 3/4
06/03/17 11:59:26 r7K9eQEr0
勝負が決まったのは、一瞬だった。
たった一発だけ放ったバレットの弾丸が、ダインの左肩を撃ち抜いた。
「ダイン!!」
「来るな!」
バレットはダインに駆け寄る。しかし、ダインの一喝がそれを止めた。
「……俺はあの時片腕と……一緒に、かけがえのない物を失った……。
 何処で……食い違っちまったのかな……」
「……わからねえよ。オレ達……こういうやり方でしか決着をつけられなかったのか?」
「言った筈だ…… 俺は……壊してしまいたかったんだよ……何もかも。
 この狂った世界も……俺自身も……」
「マリンは! マリンはどうなるんだ!」
「……考えてみろ……バレット……あの時マリンは幾つだった……?
今更俺が出ていったところであの子には……わかる筈もない……」
「けど……けどよぉ!!」
「それにな、バレット……。マリンを抱いてやるには俺の手は……少々汚れ過ぎちまったのさ……」
絶句し立ち尽くすバレットに、ダインはペンダントを投げ渡す。それは、見覚えのあるペンダントだった。
「そのペンダントをマリンに……エレノアの……形見……」
「わかった……」
「バレット……マリンを…………泣かせる……な……よ……」
ダインは崖の方へと歩み寄った。
「ダイン……やめろ!死ぬな、ダイン!!」
バレットは傷だらけの足でダインの元へと駆け寄る。しかし、ダインは一瞬だけ、笑顔を見せて
……そして、崖の底へと落ちていった。
「ダイーーーーーン!!」
バレットは絶叫し、その場に跪き、嗚咽を上げる。
「……ダイン。お前と同じなんだ……オレだって……オレの手だって……汚れちまってる……」
バレットは右腕の銃を見つめる。何人もの命を奪った、血まみれの右腕だ。
「うぉおおおおおおおおおーーーーーーー!!」
バレットの叫び声だけが、燃える様な赤に染まったコレルの空に響き渡った。

312:The Kids Aren't Alright 4/4
06/03/17 12:11:50 r7K9eQEr0
身体は、重力のままにひたすらに落ちていく。
もうじき俺の身体は砕けたハンバーグになってしまい、コレルの土に返るだろう。
俺のこころは、星へと還れるかな?

エレノア。どうかお前だけは、俺の事、温かく出迎えてくれよ。
ミーナ。お前の愛した男は、今も生きている。どうか、護ってやってくれ。
マリン。強く生きろよ、それと、悪い男にだまされるなよ。……優しい娘に、育ってくれよ。

遠い崖の上から、バレットの叫び声が聞こえた気がする。

思えば、本当にこいつとは喧嘩ばかりしていたな。ガキの頃から、今の今まで。
けれど、その後はまた、笑い合えていた。……今回ばかりは、無しだけどな。
そういえば、エレノアとの結婚を後押ししてくれたのも、お前だったよな。
お前には、世話になりっぱなしだったよな、バレット……。
けど、もう少しだけ世話になるぜ。マリンが大人になって、ひとりで生きて行けるまで
絶対死ぬな。そして、あのペンダントを渡してやってくれ。あと、あんまり心配かけさすな。
それと……最後にこれだけ言わせてくれよ。

…………ありがとう。お前は俺の、一番誇れる親友だったぜ。

313:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 12:29:43 D6iAyYur0
ダインキタ━━━(゜∀゜)━━━ !!!!!テラセツナス。
幸せな前半と切ない独白のコントラストがGJ!

314:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 16:34:32 N7DDJ4190
>>309-312
ダイン! とにかくGJだ、GJを贈らせてほしい!!
ダインが何よりも壊したかったのは、自分自身なのかな。プレイ当時はそんなこと
思いませんでしたが、これ読んでいたらそう思った。バレットの前で自決したのも
そういう意図が? と。

そして保守。

315:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 21:02:18 9Is6GtwNO
>>309
乙です!


316:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 01:22:09 BTfnD1Fo0
>>313-315
ありがとうございます(つд`)続編も投下させていただきます。

ジェノバ戦役から10年、かつてコレルプリズンと呼ばれた荒野に1組の父娘が訪れていた。
そこには、風化してしまったような2本の十字架と、それよりは新しい十字架が1本立っていた。
「これが、母さんと、父さんの奥さんと……」
マリンが言葉を選べずに視線を彷徨わせていると、バレットはその大きな掌をマリンの頭に乗せた。
「お前の、本当の父ちゃんの墓だ」

ダインとの約束を果たすのは、随分遅くなってしまった。幼い頃のマリンには厳しい話であったが
それでも、少し先延ばしにし過ぎてしまったのかもしれない。
しかし、マリンは事実をしっかりと受け止めてくれた。そして、バレットにこう言ったのだ。
「母さんと、父さんに会いに行きたい」

「ねえ父さん……私の母さんって、どんな人だった?」
バレットが朽ちてしまった十字架を、ちゃんとした物と取り替える作業をしているとマリンが尋ねた。
「そうだな……エレノアは、本ッ当に綺麗な人だった。もちろん、見た目だけじゃねぇぞ。
 気立ても良くて、明るくって……本当はな、父ちゃんの初恋の相手だったんだぞ」
「そうなんだ……。じゃあ、父さんの奥さんは?」
「ミーナは、とにっかく気の強い女だったな。結婚してからも、よく怒られたよ。
 けど、笑顔がすごく可愛かった。その笑顔に、やられちまったのさ」
「じゃあ……ダイン……さんは?」
「ダインは……村一番の悪ガキだったな。けど、誰よりも人を思いやれるヤツだった。
 俺とは、赤ん坊の頃からの仲だったけどよ……毎日毎日、馬鹿ばっかやってたなぁ」
バレットは、14年前に造られたワインのコルクを抜き、十字架に注いだ。
最後に3つの墓それぞれに花束を添えると、2人は目を瞑り手を合わせた。

― ダイン、随分時間がかかっちまったが、これで約束は果たしたぜ。
   エレノア、お前の自慢の娘は、こんなに綺麗な子になったんだ。お前そっくりさ。
   ミーナ、今はまだ無理だけどよ、いつか俺が星に還ったら、また手を繋いで歩こうぜ。
   ……俺は、お前等と会えて本当に良かった― 

317:題 :いつかの空の下2/2
06/03/18 01:43:45 BTfnD1Fo0
sage忘れスマソ_| ̄|○ >>316の続きです。

2人はゴールドソーサーのホテルに戻り、夕食を取ることにした。
「ねぇ、父さん」
「ん?」
「母さんも、父さんも、ミーナさんも、きっと幸せだったと思うよ。
 何でかはわかんないけど……父さんの嬉しそうな顔見てると、そう思った」
「……そうか」
バレットは涙が溢れそうになるのを、ウイスキーを一気に飲み干す事で無理矢理抑えた。
「私も、父さん達みたいになりたいな。大切な友達がいて、大切な人がいて……」
「お前にも大切な友達がいるだろう?デンゼルに、シェルクに……。ああ、でもあれだぞ。
 付き合うなら、ちゃーんとした男と付き合うんだぞ?悪いヤツに騙されるなよ」
「もう、子ども扱いしないでくださーい!」
「お前は、まだまだ子どもだっての!」
「……ねぇ父ちゃん。私も、お酒飲んでいい?」
「だーかーら、お前は子どもなんだから、ダメだ!」
「父ちゃんは、子どもの頃から飲んでたんでしょ?」
「う……そりゃあまあ、そうだけどよ……」
「なら、いいでしょ」
マリンはバレットのグラスを掠め取り、一気に煽った。
「あ、コラ馬鹿!」
「うぅ……美味しくなぁい……」
バレットは、日に日にミーナにもエレノアにも似ていく娘に、ため息をついた。

「結局、酔い潰れちまって……」
マリンを背負い、客室へと戻る。思えば、こうしておんぶするのは随分と久しぶりだ。
「……父ちゃん、何があっても、私の父ちゃんは、父ちゃんだけだよ……」
背中のマリンがそう呟くと、バレットはもう涙を止めることが出来なかった。

318:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 02:34:57 1H6BepRU0
>>316-317
DCFF7-2があったら、その中で描かれるダインの墓参りイベントってこんな感じで
ありそうだな、と(ふくらむ妄想)。
人が死んで肉体は滅んでも、ライフストリームに還るっていうFF7の世界観の中で、
それでもバレットは「けど会える訳じゃない」って、ハイウィンドの中で言ってるぐらい
死に対して真摯に向き合ってる姿が、ここでも良く描かれてるなと思いました。
>>316の下4行)



とりあえずFF12関連の勢いが凄いので、分割投下を試みてみます。
圧縮の頻度はどのぐらいなんだろう…。

319:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(1)
06/03/18 02:47:09 1H6BepRU0
前話:>>289-293
舞台:DCFF7第9章@シエラ号艇内(回想はFF7/DCFF7第7章~8章)
備考:DCFF7本編で描かれるシーンが前提で進みます、未プレイの方すみません。
    シエラ号の構造に多少のねつ造があるのはご愛敬と言うことで。
----------




 ―「がんばって、ケット・シー」

 そう言って微笑んでくれた彼女の笑顔を、今でも鮮明に覚えている。
 彼女はスパイだった自分を信じてくれただけではなく、励まそうと微笑んでくれた。
(忘れへんで……絶対。忘れへん)
 だから今度は、わいが頑張らなアカン。先に壊れてしもた1号機のことも、わいの
事も。たまにでええ、思い出してくれたら嬉しい。
 ケット・シーは来た道を振り返り、閑散としたフロアに向けて勢いよく手を振った。
見ている者もなければ、振り返してくれる者もいない。少しだけ淋しくなって振っていた
手をゆっくりと下ろした。
 誰にも見送られることなく、ケット・シーはエンジンルームへと続く扉を静かに開けた。

                    ***


320:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(2)
06/03/18 02:51:06 1H6BepRU0
 それはつい数分前の出来事である。
『アカン! アカンで~。戻るんや、戻らんかい!! コラ、聞いとるんか!?
……も・ど・ら・ん・か・い!!』
 幅の狭い通路の先から、いまいち深刻さに欠ける叫び声が聞こえて来た。
巡回中だった隊員があわてて駆けつけてみれば。
「こらこら、離しなさい」
 WRO局長が、珍しく困った顔で後ろを振り返り、視線を足下へ向けている。
つられて隊員も視線を下げてみれば。
『アカン、行ったらアカンのや!』
 猫がいた。
「…………」
 小さな猫―型の人形? ぬいぐるみ? ロボット?―が、必死に裾に
しがみついて、リーブの歩行を阻害している。深刻さに欠けるどころか、滑稽。
いや、それはいっそ微笑ましい光景だった。
 WRO<世界再生機構>の人間であれば、その猫を知らない者はいないだろう。
ケット・シー―それはジェノバ戦役の英雄のひとり、正確に言えば分身だった。
 なぜこんな狭い通路で押し問答を繰り広げているのかと言えば、出力低下の
警報音を聞き駆けつけたリーブが、自分が操っているはずのケット・シーに進路を
阻まれ立ち往生していたのだ。考えてみれば奇妙な現象である。

321:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(3)
06/03/18 03:00:01 1H6BepRU0
『そこの兄ちゃん、ちょっと頼まれてくれへんか?』
 ケット・シーは裾を引っ張る手を離さずに振り返ると、この光景を呆然と見つめて
いる隊員に向けてこう言ったのだ。
『異常事態なんや。急いで助っ人……いや、シドはん呼んで来てくれへんか? 
……このまま、このおっさん行かせるわけにはイカンのや』
 地上部隊のクラウド達はもちろん、ユフィやヴィンセント、他の隊員達もミッドガルに
向けて降下している。先の本部戦で受けた被害もあり、今この飛空艇には最低限
必要な人数しか残っていない。ケット・シーが言わんとしている事の重大さは、彼にも
分かっている。
「はっ!」
 律儀に敬礼する隊員に、ケット・シーは相変わらずおどけた口調で返した。
『……すんませんけど、頼んます』
 隊員は背を向け、来た道を全速力で駆け出していった。

                    ***

 ミッドガル総攻撃開始を目前に控えたシエラ号艇内は、各所で隊員がせわしなく
行き来し、来るべき出撃に備えてに活気づいていた。
 そんな飛空艇内で唯一、上層部の一番奥に設けられたメディカルルームだけは
その喧噪から隔絶されていた。少女はここへ戻ってくることをほんの少しだけ、ためらって
いた。しかしつい今し方、SNDを実装したばかりの専用端末はこの部屋にしかない。
だから戻って来ないわけには行かなかった。
 今やめる訳にはいかない。自分の身に託された"彼女"の思いを……願いを、知って
しまったから。
 それに。

 ―「それでは、シェルクさん。頼みましたよ。」

 そう言って目の前を去っていったリーブ=トゥエスティは、笑顔だった。シェルク自身が
動く理由はないはずなのに、彼の申し出を拒めなかった。まんまとあの男の言いなりに
なっている様で、そんな自分が腹立たしく思えた。

322:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(4)
06/03/18 03:13:27 1H6BepRU0
『シェルクはん』
 扉の前で名前を呼ばれた時、我に返った。通路脇に備え付けられた小型
ディスプレイに表示された数字は刻々と減少を続けている。ミッドガル総攻撃
開始までのカウントダウンは既に始まっていた。WROの侵攻部隊降下と
合わせて、シェルクもSNDで援護する手はずになっている。それは彼女自身の
提案により、急きょ決まったことだった。そのための最終調整をしていたはず
なのだが、どうやら別のところに気をとられていたようだ。気を取り直してパネルを
操作すると、室内へ通じる1つ目の扉を開いた。
 考えてみればケット・シーはリーブが操縦しているロボットのはずなのに、なぜか
これには腹立たしさを感じない。なぜだろう? 考えても答えは出て来そうにも
なかった。2つ目の扉の前で立ち止まったシェルクは、ちらりと視線だけを動かして
足元を見た。
「なにか?」
 ケット・シーはじっとこちらを見つめている。シェルクは視界の隅でその姿を確認
すると、視線を前方の扉へと戻した。
『さっきは……すんません』
 2つ目の扉はすでに自動で開いていたが中へは入らずに、シェルク横についた
小型ディスプレイを見つめていた。画面の中ではカウントダウンが続いている。一方で
耳ではケット・シーの話す言葉を正確にとらえていた。
 しかし唐突に謝られたのはいいが、何に対して謝られているのか心当たりがまるでない。
「なぜ謝るのですか?」
 画面に触れ、何度か表示を切り替えながら、シェルクは短く言葉を発した。別に見なくても
いいはずの飛行航路表示を呼び出して、すぐその画面を閉じる。
『……その。えらそうな事、言ってしもて』
「気にしていません」
 シェルクにしてみれば、ケット・シーに偉そうな事を言われた覚えがなかった。だから
そう返答したのだ。

323:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(5)
06/03/18 03:16:43 1H6BepRU0
 ここで会話が途切れた。画面上で確認できる情報には一通り目を通してしまった
シェルクは、仕方なしにメディカルルームへと足を踏み入れた。相変わらず整然と
並んだ機械類は、呼吸でもするように僅かなノイズ音を規則的に発していた。
 姉が横たえられているカプセルに視線を向けることはせずに、そのまま奥の席に
座ろうとしたシェルクは、いつもは自動で閉まるはずの扉が閉まらないのを不審に
思って振り返った。
 だが、異常は見られない。
 視線を下へ向けると、ケット・シーが入り口で立ったまま俯いている事にはじめて
気がついた。
「…………」
 落ち込んでいるような姿に、なんと声をかければ良いのかが分からずシェルクは
戸惑う。そのまま放っておけば良いような気はするのだが、そこにも妥当性を見い
だせずにまた戸惑った。とりあえず、ケット・シーの傍まで歩み寄る。
 しかし、けっきょく見下ろすだけで何もできなかった。
『3年前の、話なんやけど……』
 そんなシェルクに助け船でも出すように、ケット・シーがおずおずと顔を上げて
語り始める。

324:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(6)
06/03/18 03:23:34 1H6BepRU0
『わいな、最初はスパイやったんや。知っての通り神羅の人間やったから……。
せやけど、みんなと一緒におったら考え方、変わってしもたんや』
 最初は戸惑ったと言う。自分が派遣された本来の目的は監視、内偵、そして
ある物を神羅に渡す事だったから。しかし、それを決定的に覆したのが彼女の
言葉だった。
『……“がんばって”ってな……そう言って、わいの名前呼んでくれたんや。なんや、
アホくさい思うかもしれへんけど、ホンマに嬉しかったんや……』
 誰かに頼ってもらえること。
 誰かが必要としてくれること。
 それは、自分と同じボディの1号機の記憶だったけれど。
『せやから……“言葉で伝える”っちゅーことも大切なんやて……思うんや』
 照れたように頭に手をやって、いつものように戯けて見せようとした。けれど
上手くいかなかったのか、またすぐに俯いてしまう。
 一方それを聞いてシェルクは、出ないと思っていた答えの一部分が見えた様な
気がしたのだった。
 ―「それでは、シェルクさん。頼みましたよ。」
 なぜ、あの男の申し出を拒めなかったのか。その答えが。
「私も、同じ……ような気がします」
 そう言って、シェルクはひとつ息を吐き出した。「呆れました」とでも言いたげな
表情で。
「よく……分かりませんが、誰かに何かを依頼されるという行為には……慣れて
いません」
 シェルクはぎこちない動作で膝を少しだけ曲げると、前屈みになってケット・シーに
顔を近づけようとした。

325:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(7)
06/03/18 03:26:12 1H6BepRU0
 するとケット・シーは突然、シェルクの視線の高さまで高く飛び上がると、こう言い
放った。驚いたシェルクは呆然とその様子を眺めていた。
『よっしゃ! そんじゃもう一踏ん張りや! わいもサポートさせてもらいまっせ~。
一緒にがんばりましょ』
 ぴょんぴょんと、やけに嬉しそうに飛び上がるケット・シーを見ていると、シェルクは
これまでに見せたことのない表情を浮かべた。戸惑っているような困ったよな、そんな
小さな笑顔。

「……そうですね」

 そう言って、彼女は再び扉の横に設置された小型ディスプレイに視線を落とした。
画面端の表示は、残り3分を切っていた。
 シェルクはキーボードをたたいて画面を操作し、SNDの態勢へと移行する。

 かつての都ミッドガル―地上と空とを舞台にしたディープグラウンドとの激戦が幕を開ける前、
それはつかの間の平穏であった。



----------
分割もクソも行数規制で結局同じでした…orz

326:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 07:25:57 ZBtSm+5+0
hosyu

327:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 12:34:06 zUSs+YUHO
ほしゅ

328:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 18:24:44 zUSs+YUHO
保守

329:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 21:49:47 htKGFiBF0
>>316
>>319
乙です!
7って魅力的な人多いなーって読んでたら思いました。

みんな12プレイ中かな?

330:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 21:56:24 Uevt/GX60
>>319->>325
GJ!(n’∀’)η毎度毎度、楽しませてもらってます!
昨日に続き、もういっちょ妄想投下です。


331:Butterfly 1/2
06/03/18 22:29:49 Uevt/GX60
「お邪魔しま~す♪」
シャワーを浴び、ストレッチを済ませて眠りにつこうとしていたクラウドの部屋に
訪れたのは、顔を赤くし、酒の甘い匂いを漂わせたエアリスだった。
「……何のようだ」
「ねぇクラウド、一緒にお酒のも?」
「断る」
「え~、だって、まだ出発はしないんでしょ~?」
クラウド達は、ミッドガルを脱出して、東大陸を出るまでぶっ通しで旅をしていた。
メンバーの疲労も相当なものだったので、ここコスタ・デル・ソルでしばしの休息を
取る事にしていたのだ。みなそれぞれ、気ままに休暇を楽しんでいた。
しかし、クラウドは今ひとつ休めていなかったのだ。
今日の日中は、ずっと女性陣の買い物に付き合わされていたからだ。
何処にあれほどの体力が残っていたのか、不思議であった。
「……ティファやユフィと飲んだらどうだ?」
「ティファ、ジョニーさんの所に行ってるの。ユフィはもう寝ちゃったの。
 大体、ユフィ、未成年でしょ!」
「バレットは?」
「バーで飲んでたみたいで、もうイビキかいて寝ちゃってる」
「レッドは?」
「お酒飲めないの、知ってるでしょ!?ねぇクラウド、そんなにわたしと、お酒飲むの嫌?」
「そういう訳じゃないが、今日は疲れたんだ。早く寝たい」
「へぇ~、そうですか。クラウドは、女の子よりも疲れちゃって、お酒も飲めないんだ」
「……わかった。上がれよ」
「やった~!改めて、お邪魔しま~す!」
エアリスは、ここ数週間の旅の間でクラウドに関するひとつの法則を発見していた。
ちょっと喧嘩を売ると、必ず買ってしまうのだ。おかげで、バレットとの口喧嘩も絶えない。
まんまとエアリスの策略に嵌ってしまったクラウド。夜はまだ、これからだ。

332:Butterfly 2/3
06/03/18 23:01:19 Uevt/GX60
「へぇ~、ここがクラウドの部屋か~。もっと、散らかしてると思った」
「……悪かったな」
「も~、すぐ拗ねちゃ、ダメ!」
「拗ねてない。それより、勝手に人の部屋の冷蔵庫を開けるな」
「だって、お酒、ぬるくなっちゃうもの。……クラウド、ビールで良いよね?」
「ん、ああ」
「はい、かんぱ~い!」
エアリスは、クラウドの缶ビールに自分の缶カクテルを打ちつけた。
「さっきまで、一人で飲んでたのか?」
「ううん、ティファと一緒に、ジョニーさんの所で飲んでたの」
「ならそこで飲み続けていれば良かったじゃないか」
「うーん、わたし、ちょっとお邪魔だったみたいだったから」
クラウドには、ジョニーとティファの関係なんてわからない。親友なのかもしれないし
それ以上の関係だったのかもしれない。ティファは、子どもの頃から誰にでも好かれたから。
どちらにしても、何故かクラウドは、少しだけ寂しくなった。
(……馬鹿馬鹿しい)
「クラウド、どうしたの?」
「ん、なんでもない」
「へ~。ねぇ、クラウド。クラウドって子どもの頃どんな子だったの?」
「どんなって……別にいいだろ」
「気になる~!」
エアリスの質問攻めは延々と続いた。好きな食べ物は?好きな動物は?趣味とかあるの?
クラウドは濁らすこともままならず、答え続けた。その内、時計の針も2時を回った。


333:Butterfly 3/3
06/03/18 23:12:55 Uevt/GX60
「なぁエアリス。もう時間も時間だ。そろそろ部屋に戻らないか?」
「え~!もっと、クラウドと一緒にいたいな~」
クラウドはもう、ため息をつくしか無かった。ビールはもう、5本目に達していた。
ふと、エアリスがクラウドの隣に座り、上半身を預けてきた。
「おい、何してるんだ」
「クラウドって、好きな人とかいないの?」
一体この女は何を言っているのだろう。そう思った刹那、クラウドは彼女の異変に気付いた。
「……寝てる?」
質問するだけ質問して、エアリスは眠ってしまった。クラウドは何度目かわからないため息をつき
エアリスをベッドに運んでやった。クラウド自身も、そうとう酔ってしまっていた。
すっかりペースを崩されたクラウドは、ソファーに横たわり、眠りに落ちて行った。

翌朝は、やはり散々だった。2人揃って、二日酔いだ。
「う~……色々ごめんね、クラウド」
「別にかまわないさ」
「それじゃ、また、ね」
エアリスを見送ると、背後に気配を感じた。
「昨夜は随分とお楽しみのようでしたね」
思わず振り返ると、ニヤケっ面のユフィが立っていた。
「マテリア6個でどう?」
「おい、どういうことだ」
「あーあ、昨夜の事を赤裸々に話しちゃおうかな~」
やられた。ユフィは、クラウドの隣の部屋だったのだ。仮にもニンジャである彼女なら、隣室の会話くらい
筒抜けだ。更に都合が悪いことに、昨夜の記憶はいまいち曖昧だ。
もし何かの間違いがあったとしたら、それを話されるのはまずい。
「わかったよ……」
「イェ~イ!ティファには内緒にしておいてあげるね!」
二日酔いの頭を抑え、クラウドは部屋に戻り不貞寝を決め込む事にした。
ビーチで宝条と出会ったのは、その日の午後の事だった。

ひたすら振り回されるクラウドを書きたかっただけだった。今は反省しているor2

334:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 02:01:06 M9P+X8wh0


335:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 09:35:08 rBez1kqn0
保守

336:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 14:52:43 JQ80SPFu0


337:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 20:05:02 aOnhNo/L0


338:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 01:05:31 RpF7qpsX0


339:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 02:32:17 VtOLUHaK0
ぬぉ

340:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 08:28:39 c9Cwo/Ys0


341:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 11:01:06 P4efolaf0
保守

342:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 19:32:32 ODk6WueU0
保全

343:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 01:57:01 Ge9wXlkG0
>>331-333
> 「昨夜は随分とお楽しみのようでしたね」

宿屋の名言(@DQ)をさらっと言ってのけるユフィにワロタw

344:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 10:29:18 0JpfcKP30
ho

345:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 19:26:26 yUsJ6CZZO
保守

346:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 23:32:56 Mylcw6oq0
保守

347: ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:51:34 gK9d8eMC0
DC後、ヴィンセントが戻って来るまでの仲間達のお話です。

プレイされてない方はネタバレになるのでご注意願います。

カップリング要素はありませんがシェルクがオリジナルメンバーに
どういう風に受け入れられていったかという話なので、彼女が苦手だったり、
オリジナルメンバーと絡むのがお嫌いな方はご遠慮下さい。

348:DC後 【1】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:52:17 gK9d8eMC0
「さてと、奴を迎えに行くか。おい、リーブ!」
タバコの吸い殻を放り投げようとして、
慌ててポケットから携帯用の吸い殻を取り出したシドが言う。
「なんでしょう?」
「あの野郎は俺達で探す。お前は残りの後始末を頼まぁ。」
「分かりました。…と、シェルクさん。」
呆然と空を見上げ、どこか遠くで男達の話を
聞いていたシェルクは驚いてリーブを見上げる。
「あなたはしばらくはゆっくり休まれた方がいいかと思います。」
休むと言っても帰る場所のない自分にどうしろと言うのだろう。
それに、シド艦長はヴィンセントを探しに行くと言っていた。
出来ればそれに加わりたい。
「エッジにWROの宿舎があります。とりあえずそこに…」
「待って!」
「なんでしょう、ティファさん?」
「そんな味気のない所より、家に来ない?ヴィンセントが
お世話になったお礼がしたいわ。ね、クラウド、いいでしょう?」
「あぁ、大歓迎だ。」
「なるほど…それは名案ですね。」
「でしょ?」
そう言われても、初対面、しかも日常と隔絶された地下の住人だった自分に、
いきなり他人との共同生活が可能なのだろうか?

349:DC後 【2】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:52:53 gK9d8eMC0
「俺と、バレットとユフィは残ってヴィンセントを探す。先に戻っていてくれ。」
クラウドの言葉にティファは頷いて、優しくシェルクの肩に手を置く。
「え~!?アタシもぉ~?」
「探すのは得意だろ?」
不満の悲鳴を上げるユフィの頭に、シドの親父拳骨が落ちて来る。
「アタシだって女の子なのにぃ!差別!さべーつ!」
「ティファは子ども達が待ってんだよ。」
と、シドはにべもない。

シェルクは困惑を隠しきれない。
この中で自分の生い立ちを一番よく知るリーブを縋るように見上げる。
だが、リーブはにこにこと笑うだけだ。
「ご心配な気持ちは分かります。でも、あなたが滞在されるのに、
7th Heavenより最適な場所を思い付きませんよ。」

なんたろう、この人達は。

ヴィンセントが行方不明なのに心配する素振りも見せず、
かつての敵だった自分の心配ばかりしている。
「あなた方は彼の事が心配ではないのですか?」
不躾な質問にティファは小首を傾げてじっとシェルクを見つめる。
「あなた方はおかしいです。私のことよりも、彼の心配を…」
言いかけて、シェルクはハッと口を噤んだ。


350:DC後 【3】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:53:26 gK9d8eMC0
『なぜか私の周りには、理屈抜きで飛び出して、誰かを助けるお人好しばかりだ。』

彼の言葉を思い出し、目の前にいるこの連中こそがその“お人好し”なのだ。
困惑の次に湧いて来たのは好奇心だった。
一緒に行動していたら彼らの行動の根源にある物が見つかるだろうか?

考え込んでしまったシェルクをリーブは穏やかに見つめている。
この人は曲者だとシェルクは思う。
柔らかな物腰で、そのくせ嫌とは言わせないのだから。
「…分かりました。」
リーブは大きく頷き、バレットとシドも満足げだ。
「よろしくね、シェルク…私はティファ。
シドは…もう知っているのよね。こちらがクラウドとバレット。
みんな…仲間なの。ヴィンセントのね。」
クラウドは軽く頭を下げ、バレットはシェルクに握手を求める。
「バレットだ!ヴィンセントが世話になったみたいだな。」
大きな身体に大きな声だが、アスールの様に冷たい感じはしない。
シェルクがおずおずと手を出すと、バレットはその小さな手をそっと握る。
(暖かい…)
誰かの手を握るなんて久しぶりだった。
「ティファの所には俺の娘も居るんだ。
マリンっていってな。仲良くしてやってくれ。」
「男の子も居る。」
クラウドが短く言葉を挟む。
「デンゼルというんだ。」
子供の存在が再びシェルクを困惑させる。
「二人ともいい子よ。大丈夫。」
まるでシェルクの心配を察したかの様にティファの手が優しく肩を抱く

351:DC後 【4】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:55:19 gK9d8eMC0
「ところで、シェルクさん。」
「なんでしょう?」
「落ち着かれたら…WROに来ませんか?」
「え?」
「今回の戦いのせいもあるのですが…うちは慢性的に人手不足です。
あなたはネットワークのスペシャリストだ。是非、お手伝い願いたい。」
シェルクがどう返事しようか頭を巡らせていると、シドが割り込んで来た。
「待てよ!リーブ、何もこんな時に言わなくったっていいじゃねぇか。」
「それもそうですね、失礼しました、シェルクさん。」
リーブは大仰に両手を上げて、冗談めかして答える。
「大体シェルクはなぁ、俺んとこに来て、飛空艇団員になるんだよ。」
シドの言葉に一同が、そして誰よりもシェルクが目を丸くする。
「シ…シドぉ?」
呆れたユフィが肘で彼を突いても、シドは気にする風でもない。
「うっせぇな!俺だってちゃんと考えあってのことなんだよ!
あんたは大した力の持ち主だ。俺と一緒に飛空艇の謎を解き明かしてみねぇか?」
最後の言葉に、ちゃんと理由があったことに驚きつつも、
シェルクを除く一同はなんとなく納得した気分になる。
「物探しが得意ならなら油脈探しはどうだ?」
どういう対抗意識か、バレットまでそんな事を言い出す。
「バレット、彼女はネットワークのスペシャリストで、
ダウンジングが得意というわけではないのですよ。」
呆れたリーブが横やりを入れる。
「なんだ、その…ダウ…なんとかは?」
「ダウンジング…な。」
「クラウドぉ!てめぇはまた俺の間違いを小声で訂正したな。」
ティファがくすくす笑っているが、シェルクは笑うどころではない。
自分の行き先を巡って、親父三人が言い争うのを呆然と見ているだけだ。


352:DC後 【5】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:56:36 gK9d8eMC0
「だーっ!もぉ!親父ども、うるさあああい!」
ユフィが叫んで、親父三人が黙る。
「シェルクはね!アタシと一緒にウータイに行くの!
あそこならのんびり出来るし、最近温泉も湧いたの!
そこでゆっくり身体を癒すの。」
そして、シェルクの前に立つと、気まずそうに、
「あん時は…ひっぱたいたりして悪かったよ。」
シェルクの目が驚きで見開かれる。
別に気にしてません。そう言えばいいだけなのに、
胸の中にくすぐったい何かがわき上がって来て、言葉が出ないのだ。
「みんな…もういいでしょ?」
笑っていたティファが助け舟を出し、シド、バレット、リーブ、ユフィが黙る。
「私をシェルクは店で連絡を待っているわ。早くヴィンセントを見つけて来てね。」
「いけね!そうだった!」
「リーブ、お前が余計な事を言い出すからだぞ。」
「私のせいなんですか?」
親父連中がワイワイ言いながらそれぞれの持ち場に向う。
特に打ち合わせをする風でもないのがシェルクにはまた不思議だった。
「気を付けてね、クラウド。」
「あぁ。子ども達を頼む。」
クラウドは軽く手を振ると、バレットの後に続く。
「あ~あ、もう、ヴィンセントのヤツぅ~面倒かけるんだから…」
ブツブツ言いながら、更にユフィが従う。
「頼んだわよ、ユフィ!」
ティファの言葉に、ユフィは思い切り顔をしかめて見せたのだった。


353:DC後 【6】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:59:07 gK9d8eMC0
「ごめんなさい、びっくりしたでしょう?」
事実なので、素直にはい、と答える。
ティファとシェルクはエッジに怪我人を運ぶ車に便乗させてもらっている。
黙って座っているシェルクに、ティファも余計な事は言わない。
ただ、一言だけ、
「大丈夫。きっと彼は生きてるわ。彼が特別な身体だっていうことを別にしてもね。」
「どういう意味ですか?」
「ヴィンセントはね、私達には想像もつかない重荷を背負ってるけど、
そのことで弱音を吐いたり、愚痴を言ってるのをを聞いたことがないの。
そんな人があれくらいの事で死んでしまうわけないわ。」
分かったような、分からないような。
「彼のことも、私たちのことも、外の世界も、ゆっくり知っていけばいいわ。」
そう言って微笑むティファに、姉の顔が重なる。
「あなたは…リーブ・トゥエスティに何を聞いたのですか?」
「何をって…あなたのこと?」
「はい。」
ティファはシェルクをじっと見つめる。
さっき、“はい”と答えても、顔が動かなかった。
(普通、返事をすると自然に頷いたりするのに…)
まるで昔のクラウドのようだとティファは思う。
「あなたが閉ざされた世界の住人だったこと。
それと、ヴィンセントを助けてくれたこと。それだけよ。」

354:DC後 【7】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:59:40 gK9d8eMC0
「私が滞在するのに、あなたの所より最適な場所を
思い付かないと彼は言いました。その理由は?」
「ティファでいいのよ、シェルク…」
「答えて下さい。」
「あなたが”ティファ”って呼んでくれたらね。」
「問題をすり替えないで下さい。」
機械的な返事を返すシェルクが痛々しい。
急いではいけない…とティファは思い直し、
「そんなつもりはないわ。気に障ったらごめんなさい。
家が最適なのは、おいしくて栄養のある食事が摂れること。」
そんな理由で…と呆れるシェルクにティファは笑って答える。
「あら、大事なことよ。もう一つは…そうね、やっぱり
”ティファ”って呼んでくれるまでは秘密にしておくわ。」
これ以上の会話は無意味と判断し、シェルクは黙り込んだ。
ティファも何も言わない。
車の揺れに身を任せている内に頭がとろんとして来て、
いつの間にか眠ってしまった。

つづく。

355: ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 02:01:07 gK9d8eMC0
お久しぶりのエッジ前哨戦です。
書きかけの物(>>285>>286)を放り出して、こちらを始めてしまいました。
あちらも書きたいのですが、話は出来上がってるのものの
飛空艇内の資料がなくて、うまく話が進みません。
いいかげんな事をしてごめんなさいですが、
>>288さんをはじめ、皆様どうかお待ち下さい。
(誰も待ってないかもですがort)

遅レスですが、>>267さん。
投稿人同士のなれ合いになってしまうかと思って
お返事迷ってましたが、ドリルさん…ですよね?
>「帰ってくる場所が分からない」って方を強調した方が良かったかも知れない
のご指摘、仰る通りです。
クラウドもティファも、子供達がいるからこそ
“家”という場所に帰って来られるんですよね。
気付かず、書き損じてすごく悔しい…ort
いつも、的確な感想とアドバイスありがとございます。

お話も、推敲された丁寧な文章と深い洞察で
うっとりしながら読んでいます。新作お待ちしております。

356:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 06:55:13 DaIqr8Gh0
GJ!

357:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 12:46:25 9GBGR8Qf0
保守あげ。

358:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 18:55:00 2cPRCJs2O
>>355
GJ!読みやすかった。

359:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 03:12:01 pGpRCrJM0
>>348-354
呼び名についてはDC本編同様に、この先にあるイベントの伏線になってるのかな? とか。
最終的に私服で登場したシェルクとのいきさつが描かれると楽しそうだな、とか。
色々想像するとこの先の展開が楽しみです。
リーブとシェルクのやり取り(349-350)が個人的に萌えた。くせ者とか言いながら
不安からちょっと頼りにしちゃったりする辺り、戦闘に離れていても日常生活初心者
っていうか…反抗期?みたいでw

360:DC後 【8】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/23 10:47:16 QwiSbOEP0
>>348-354 の続きです。

「…ク…シェルク…」
何か、夢を見ていたような気がする。切ない夢だったと思う。
胸の辺りがざわざわと落ち着かない。
人間の感情を司るのは心臓ではなくて頭のはずなのに、
彼らと出会って以来、なんだか自分がおかしい。
「起こしちゃってごめんなさい。」
シェルクはぼんやりと間近にあるティファの顔をぼんやりと見つめる。
いつの間にかティファにもたれかかって眠ってしまっていたのだ。
状況に気付くと、シェルクは跳ね起きた。
「す…すみません…」
「疲れていたのね。」
ティファは先に立ってトレーラーから降りると、大きく伸びをした。
「いいお天気よ。」
振り返って、シェルクを手招く。
後に続いたシェルクも空を見上げる。
確かにいい天気だ。
(でも…なんだか落ちて来そう。)
吸い込まれそうな青空が、シェルクには不安だった。

361:DC後 【9】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/23 10:48:02 QwiSbOEP0
「ここから20分ほど歩くの。大丈夫?」
シェルクは空を見るのを止め、ティファを見て頷く。
「そう。じゃあこれを。」
ティファは毛布をシェルクを包み込む様にしてかける。
「寒くありません。」
「そうね…でも、家に着くまではこうしててね。」
「理由を説明して下さい。」
ティファは少し首を傾げ困った表情をする。
小首を傾げるのが彼女の癖らしい。
「…この街は、ディープグラウンド・ソルジャー達に襲われたの。」
それだけで十分だった。シェルクは目を伏せてしまう。
ティファは彼女がこれから向き合わなければいけない現実を思うと胸が痛んだ。
しかし、甘やかしても解決しない。答えは自分で見つけなければいけないのだ。
その一方で、彼女も被害者なのだ。
彼女だけでなく、長い間地下に閉じ込められていた人達が
この社会に戻る事が出来るのだろうか。それは途方もなく長い道のりだ

362:DC後 【10】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/23 10:48:32 QwiSbOEP0
「こっちよ。」
ティファは自分自身を奮い立たせるつもりで元気良く声を掛ける。
先に立って歩き出したティファの後に続く。
まだ煙が燻っていたり、あちこち壊れた家が目立つが、
金槌の音が響き、街は活気に溢れていて、
シェルクは物珍しげにその様子を眺めていた。
が、不意に泣き声がして、そちらに目をやる。
見ると、縦長の木の棺が家の中から出て来た所だった。
家を直していた人々が手を止め、帽子を取って黙礼して見送る。
棺に、小さな男の子が取りすがって泣いている。
「息子を庇って撃たれたらしい…」
「ちくしょう…ひでぇことしやがる。」
そんな会話が耳に入って来て、シェルクは途端に身体から血の気が一気に引くのを感じた。
身体が震えて、この陽気に毛布まで被っているのに寒くてたまらない。
黙礼していたティファはシェルクの様子に気付くと、
背中にそっと手を回し、その場を立ち去った

363:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 14:05:32 liSqfbcF0
保守

364:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 00:21:21 r98jSmFF0
hoshu

365:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 01:29:05 JD8UWBew0
>>360-362
毛布の件はしばらく考えないと回答が出てきませんでしたw
そうだ、そう言えばEDも最初はあのソルジャー衣装(?)の
ままでしたよね。細かいところまで行き届いてるなと。
続き期待sage

366:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(8)
06/03/24 01:37:25 JD8UWBew0
>>319-325より。
----------

                    ***

 言葉で……伝える。
 これは誰の“記憶”で、誰の“思い”……?

 身の内に渦巻く断片化されたデータ群。その中のどれが“彼女”のもので、どれが
自分の物か―シェルク自身にも分からなかった。
 自分の物だとはっきり分かるのは、地の底で暮らしていた10年間と、ほんの少し前の
記憶だけ。ケット・シーの言葉が脳裏によみがえる。

 ―『……言葉で伝えるっちゅーことも大切なんやて……思うんや』

 自分と、自分の中に埋め込まれた彼女の持つ記憶。
 どちらのものかも分からない思い。
 けれど確かに今、シェルクの中にそれはあった。
 だから……。

 ―だからお願い……私は……あなたに……
「……だからお願い……私は……あなたに……」

 ―生きて。

 最後の言葉が伝え終わらないうちに、回線は強制的に切断された。SNDから復帰した
シェルクを出迎えたのは、異常事態を知らせるアラートとやかましい警報音だった。
室内に並べられたディスプレイの全てに、警告画面が点滅していた。

367:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(9)
06/03/24 01:38:57 JD8UWBew0
 画面上に表示された情報から、おおまかな現状を把握する。飛空艇の、特に出力低下を
知らせるアラートが目に飛び込んできた。現在、航行維持に必要なシステム以外は強制的に
シャットダウンされていた。先程の回線切断もこのためだと知る。しかしメインエンジンに
被弾した様子はない。
「……!?」
 それから周囲を見回す。ケット・シーの姿はどこにもなかった。
 ―胸騒ぎがする。
 シェルク自身に“胸騒ぎ”というはっきりとした自覚はなかったが、何かに背中を押されたように
して部屋を飛び出しコントロールルームに向かった。しかしそこにも、ケット・シーの姿はなかった。
操縦者リーブ=トゥエスティの姿もない。操縦桿を握る男に向けて、シェルクは自ら進言する。
「……私が、様子を見てきます」
「悪ぃな、頼む!」
 シェルクは夢中だった。だからコントロールルームを出るとき、伝令を仰せつかったWRO隊員と
すれ違った事など気に留める余裕はなかった。


368:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(10)
06/03/24 01:45:15 JD8UWBew0

                    ***

 伝令から事のあらましを聞いたシドは、少しのあいだ無言で空を見上げていた。
それからおもむろに、操縦席から延びる階段のすぐ下に座っている一人のクルーを
呼んだ。
 舵を取る艦長自らが、目の前の操縦桿を手放すという事が一体なにを意味している
のか? 飛空艇乗りであれば誰もが知っている。シエラ号のコントロールルームにいる
彼ほどの人間であれば、尚のこと。
 彼は階段を上りきったところで、シドから無言で操縦桿を託された。いくら訓練を受けて
いても、驚きや戸惑いは隠せなかった。
「……艦長」
「ちぃと頼むぜ」
「しかし!」
「3年前のあの飛行に耐えたんだ、おめぇになら任せられる。頼んだぜ」
 シドに対して彼はそれ以上なにも言えなかった。
 3年前のあの日。飛空艇ハイウィンドで北の大空洞を発ってからミッドガル領空までの
飛行を経験したのは、シエラ号の中でもシドを含めて数人しかおらず、彼はそのうちの1人
だった。だからこそシドの言葉を誰よりも重く受け止めていたのだ。

369:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(11)
06/03/24 01:52:30 JD8UWBew0
 ―3年前。
 崩れ去る大空洞から辛くも飛び立った飛空艇ハイウィンド号は、天空より迫り来る
メテオと地上を覆うホーリーの狭間を縫って飛び続けた。日常で通用するはずの
物理法則など跡形もなく消し飛んでしまった世界、そんな中を飛行するのは無謀以外の
何物でもない。地上も、海も、空気さえも―この惑星上に存在するすべてが翻弄されて
いたのだ。
 そんな操縦もままならない状況でも、シドは操縦桿を離そうとはなかった。空から迫る
メテオの恐怖、墜落どころか空中分解してもおかしくはない危機的状況の中、それでも
ハイウィンドの航行を維持するために操縦桿を握り続けた。シドとはそう言う男なのだ。
 そんなシドが今、操縦桿を自分に託したのだ。そこまで自分が信頼されているというのは
純粋に嬉しかった。だが、シドが操縦桿を手放すというのは、それ以上の事態なのだ。
 当然、彼の頭によぎったのは最悪の事態である。
「エンジンルームの奴らからは未だに応答がない、……あの娘ひとりじゃ心許ないだろ?」
 万が一の時のためにと、操縦席の後ろにしまってあった槍を取り出す。しかしもし仮に
シエラ号艇内で戦闘が起きたとすれば、槍使いのシドには分が悪い。それでもシドは槍を
手にした。
 それから、まるで彼の内心を見透かしたかのように、シドは豪快な笑い声を上げる。
「安心しな。操縦桿を放り出すなんてマネはしねぇ。必ず戻ってくる。それまで……頼んだぜ」
 背中を強くたたかれて、息が詰まりそうになった。そんな彼をよそに、シドは階段など
使わずにそのまま操縦席から下へと飛び降りた。
「お気を付けて!」
 その声と、コントロールルームの扉が閉まる音がしたのはほぼ同時だった。
 それから彼は目の前の操縦桿を握ると、横にあるパネルも操作し始めた。3年前、
ハイウィンドに搭乗していた頃からの経験が、彼にその操作を促す。
 来るべき時に備えて。

----------
・「操縦士、シド=ハイウィンド」ってタイトルでも良かったかも知れません。
 今回はまだもう少し続きますです。。。

370:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 10:48:36 5SOLMzgj0
ついにシド、出撃!?
続き期待age

371:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 01:12:31 Im5IyfQz0
保守

372:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 11:14:17 PSGiJIUjO
保守に来ました

373:sage
06/03/25 12:54:58 5MxPQUfw0
>>366-369
続きが気になる!期待保守。

>>351
小声で訂正するクラウドワロタwww
プロローグにそんな場面があったな。


374:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 12:55:56 5MxPQUfw0
上げちまった、すまんort

375:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(12)
06/03/26 02:08:54 FoqZTKie0
>>366-369より。
----------

                    ***

 シエラ号内部の各エリアは、狭い通路で結ばれている。いくら全速力で走っても
進路をふさがれてしまえば、どうにもならなかった。
 上層部と下層部をつなぐ通路の真ん中で、シェルクは足を止めた。通行を妨害する
彼らの姿に、思わず呆れたような、一方では安堵したような声を零す。
「……なにをしているのですか?」
「!?」
『……あぁ、シェルクはん! 助かりますわ~』
 リーブとケット・シーは同時にシェルクに顔を向ける。会話の主導権を握ったのは、
未だにコートの裾を掴んだままの格好でいたケット・シーだった。
『エンジンルームからの応答があれへんから、わいが見に行こうと思とったんですわ』
「それで?」
 こんな場所で何をしているのかと尋ねた。
『おっさんには操縦室に向かって欲しいんですわ。通信設備が使えないんじゃ、わいの
能力つこた方が効率ええと思うんですわ』
「…………」
 確かにその通りだと頷いて、シェルクはリーブを見上げた。
「……先程シド=ハイウィンドも同じ話をしていました。現在、シエラ号の出力は正常時の
40%まで低下中、このため航行維持に必要な最低限のシステムしか稼働していない
状態です。詳しい原因は分かりませんが、出力低下の影響から通信設備が機能せず、
コントロールルームからはエンジンルームの状況が全く把握できていません」

376:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(13)
06/03/26 02:14:25 FoqZTKie0
 操縦席から離れられないシド=ハイウィンドに代わってここへ来たのだと、シェルクは
淡々と語った。その姿をじっと見つめていたリーブはシェルクに向き直ると、コートの
裾を掴んでいたケット・シーはその反動で床の上を転がった。
 リーブが何かを言う前に、シェルクが口を開く。
「これではSNDも使えません。ですからリーブ=トゥエスティ、あなたは今すぐコントロール
ルームへ向かって下さい」
「しかし“まったく応答が無い”のです、システムトラブルとは限らない……もしかすると……」
「もし万が一の場合でも問題ありません。……私の強さはあなたも見ていたはず。
そうでしたね」
 笑顔になることもなく、まっすぐに視線を向けられた。そんな少女の姿が、彼女と重なる。
こちらが中途半端な理論を展開すれば容赦なく封じてしまう、そんなところもそっくりだ。
そんなことを考えていたら、なぜだかシェルクを直視できなくて、リーブは思わず目をそらした。
(……姉妹、ですね)
『シェルクはんの勝ちやで』
 床を転がっていたケット・シーは身軽な動作で跳ね起きると、羽織っていたマントを整え
ながら言葉を発した。
 それでようやく諦めたのか、リーブはシェルクを改めて見た。そして観念したように告げた。
「分かりました」
 次にリーブは膝をついてケット・シーと向き合った。
(……それにしても何故……?)
 自分の感情を吹き込み、自身が操作しているはずのケット・シーがなぜ今回、操縦者の
意志を無視するような行動に出たのだろう? その原因を突き止めたいとも思ったのだが、
残念ながら今はそうするだけの時間がない。
「それでは、エンジンルームの様子を見てきてください」
 手短に用件だけを告げると、ケット・シーは頷いた。そうしてリーブの脇から顔をのぞかせ
ると。
『……シェルクはん、戻ったらSNDのお手伝い、させてもらいまっせ』
 そんな言葉を残して、エンジンルームへ向けて走り出したのである。扉をくぐり最後に
もう一度振り返ると、ふたりに向けて大きく手を振る。下層部へと続く扉が閉まるまで、
ケット・シーは手を振り続けた。

377:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(14)
06/03/26 02:19:11 FoqZTKie0

                    ***

 ケット・シーと別れたふたりは来た道を無言で戻った。やがてコントロールルームへ
続くドアが見えてきたところで、リーブの身に異変が起きた。
 一瞬、視界が大きくゆがんだ。何の前触れもなく襲った目眩にも似た症状をやり過ご
そうと、とっさに右手を壁につけバランスを崩しそうになる身体を支えた。同時にリーブの
脳裏に投影されたのは、ケット・シーを通して見えたエンジンルームの様子だった。
驚きのあまり思わず声をあげそうになるのを、すんでの所で堪える。
「……っ!?」
(―漆、黒の……闇。ネロ……!)
 零番魔晄炉で見た、あの男の影。それがシエラ号のエンジンルームにあった。
ケット・シーの前で駆けつけてきた隊員達が次々と闇の中に消えていった。生理的な
嫌悪感だけではないだろう、リーブはこみ上げてくる物を抑えようと左手で口元を覆い、
俯いた。
 しばらくすると後頭部に鈍い痛みが走り、もはや平衡感覚はほとんど失われ、支えなしに
姿勢を維持することが困難になっていた。
(……これは……)
 その様子に気づいて振り返ったシェルクの前で、リーブは右手だけでなく右半身を壁に
凭せかけてようやく姿勢を維持していた。
「!? ……」
 こういうときにどう行動すればいいのか、どんな言葉をかけてやればいいのか、とっさに
シェルクは分からなくなって助けを求めるように周囲を見回した。
 コントロールルームから飛び出してきたシドの姿が見えたのは、ちょうどその時だった。

378:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(15)
06/03/26 02:26:16 FoqZTKie0

                    ***

 シエラ号に降り立ったネロにとってケット・シーなど初めから視界には入っていな
かった。なぜなら彼が欲しているのは“生命”だからである。ケット・シーは感情を
吹き込まれているとは言え、人形あるいはロボット―つまり人工物である事に
変わりはなく、取り込んだところで生命エネルギーとしては何の足しにもならない
からだ。
 もっとも、ケット・シーを通して操縦者の生命を回収できるのならば話は違ってくる
のだろうが。残念ながらネロにはそこまでの知識もなければ、興味もなかった。
 しかし一方のケット・シーにとっては死活問題である。ネロの意図する、しないに
関わらず、ここで闇に取り込まれてしまえばそれで終わりだからだ。とはいえ目の
前で次々に消えていくWROの隊員達を放っておく訳にはいかない。
 武器を持たない彼にとって、戦える手段は皆無だった。

379:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(16)
06/03/26 02:36:04 FoqZTKie0
『……すまんな、おっさん』
 呟いてから、ケット・シーはネロに向かった。武器になるのは―この作りモンの
体しかない。高く飛び上がり、両腕を力一杯振り回した。零番魔晄炉でDGソルジャーを
気絶させることはできたのだ.ダメージは与えられなくても、隙を作ることはできるかも
知れない。
 そんな僅かな可能性は、ネロが浮かべた薄ら笑いによってあっけなく否定された。
「先程から……目障りですね」
 手に持った拳銃を発射することなく、それをケット・シーめがけて振り下ろした。弾など
消費せずとも充分だ、と言うのがネロの判断であり、残念ながらそれは正しかった。まともに
抵抗することすらできず、ケット・シーの体はネロが振り上げた腕に捕捉された。
 死、あるいは壊れることへの恐怖はなかった。ただ、ケット・シーは必死に伝えようとした。
まとまらない思考を制御しようとしたが、上手くいかなかった。そのうえ“本体”に届くか
どうかの確証もなかった。それでも、最期まで諦めようとはしなかった。

 ―わい直接、クラウドはん達には会えんかったけど。
    WROの兄ちゃんや姉ちゃん、シャルアはんや、シェルクはんに会えて
    ……楽しかったで。
    大変やと思うけどみんな気ィつけてな。

    それからシェルクはん、手伝えのうなってしまってすんません。
    それからヴィンセントはん、今度こそメールの返事返してぇな。
    それからユフィはん、『あやつる』のマテリア、アレわいのやねんで?
    それからシドはん、また飛空艇乗っけてほしな。
    それからシャルアはん、みんな待っとるんやから寝坊したらアカンで?
    それから……それから……
    ホンマはもっと伝えなアカン事、たくさんあるねんけど……。

    おっさん。オモチャのわいに命をくれて、おおきに。
    また……
    …………。

 ネロの手によって叩き落とされたケット・シーは、そこで機能を停止した。

380:↑
06/03/26 02:42:11 FoqZTKie0
・実際のゲーム中のシーンでは、明らかに1秒も経ってないだろう
 という場面に無理矢理お話を挟み込んでます。
・いろいろ暴走しました。ケット・シーとか作者の脳内とか。
・もう少し続きます。

381:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/26 19:17:49 gn8jOJcd0
ネロキタ!…ケットがー!!緊迫した場面の続きが気になります。GJ!

382:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 08:33:59 cm02d+m10
イイヨイイヨー
保守

383:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 12:06:27 QcLSA/3Z0
ううううううううううううううううううううううううう
ううううううううううううううううううううううううう
ううううううううううううううううううううううううう

384:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 12:09:26 wt/YVeIr0
池沼の発作が始まりました

385:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 01:36:04 1h6WyHBS0
ho

386:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 12:54:45 6ojV75RcO
ほしゅ

387:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 14:30:02 ubDg2zij0
ここって恋話無しの単なる二次創作はNG?

388:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 16:24:39 6ojV75RcO
FFで全年齢対象(エロとかは専用板・スレへ)なら良いとオモ

389:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 22:58:34 GY0+gQNW0
>>387
OKならwktkして投下待ってる

390:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 23:14:32 ubDg2zij0
387です、ありがとうございます。なんか大丈夫そうなのかな。
こういうスレがあってよかった。いずれ投下致します。FF12の超脇役ですw

391:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 23:47:55 1p2C8rTM0
テカテカしながらお待ちしてます。

392:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/29 00:42:26 BudTuRPj0
できればFF12作品なら冒頭にネタバレ具合は表記してもらえると有り難い。
期待sage!

393:387
06/03/29 13:24:20 DFMHNivk0
お、またせしました^^

今僕は私立中学校に通っている。
どこの学校にもいじめというものは存在しているみたいで俺の学校にもいじめ
られてるやつがいる。
自分で言うのもなんだがおれはひとつ気合がうまいほうだ。(友から言われた)
そいつは俺の席の右隣にいるのだがそのいじめられてるやつの右側にいるやつ
この前そいつの机に「死ね、消えろ、キモイ」などとコンパスでほっているのを
おれはみた。おれはなにもいえなかった・・・・。
みてみぬふりをした。自分が悔しく自分をうらんだ。
誰かのためにおれは拳をふるったことがない。
自分をかえるしかない・・・。心に決めた。
その日おれは本屋によってボクシングの本を買って家ですぶりをした。
1日にジャブ(左)は1000回くらい素振りをしロー(右)も1000回
ほどふった。腕立て伏せも20回×3くらいした。
最初のほうはうまく腕立て伏せもできなかったが2ヶ月ほどたってこなせるように
なった。
半年の間おれはずっと自分の部屋でまいにち1時間くらいトレーニングをした。
おれは・・・・変わった! やつらをつぶせる・・・。
俺が鍛えている半年の間にいじめはひどくなった。いじめてるやつが6~8人いた。
放課後俺はそいつらを呼んだ。腕にプロテクターとバンテージをまいて・・・。
10分でけりはついた。

俺が勝った。
次の日校長室によばれ事情を聞かれた・・・。俺はすべてを告白した
その後いじめはなくなった。
その後いじめられてたやつにボクシングジムに通うように説得した。
そいつは見る見るうちに強くなりジャブ・ローを完全にマスターしとても強くなった。
俺があいつをかえた。

人は誰かを変えられる。それを忘れないでほしい。

394:激しくネタバレ
06/03/29 13:31:54 Rei2fi8t0
















アーシェ「バルフレアー!愛してるわーーーーーーー!」

バルフレア「うわああああああああああああああ!!!!!俺はフランを愛してるんだー!」

フラン「二枚目はつらいわね( ´,_ゝ`)プッ」

ヴァン「オイヨイヨ!(やめろよ、いやがってるだろ!)」

アーシェ「うるせー!貧民!」

ヴァン「ォィョィョー(アーシェがいじめるー)」

バッシュ「泣くな!男だろ!」

パンネロ「耐えぬいて大きくなるのよ(´;ω;`)」

395:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/29 14:36:22 NMVe6/RDO
>>394
ヤバスWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWW

396:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/30 07:04:17 26bN5gGD0
保守

397:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/30 20:05:36 QP1gM4dpO
保守

398:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/31 01:08:45 DmIF3iHx0
年度末保守。

>>387
恋話要素の有無というよりも
作品への愛が重要。
などと言ってみる。

399:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/31 13:21:05 eM72GfiOO
保全

400:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/31 21:22:27 eM72GfiOO
ほー

401:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 08:56:00 sbb+ll7b0
hosyu

402:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 20:19:00 Cy65iTQu0
保守

403:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 22:20:33 VRh9RmmG0
ほしゅ

404:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 22:52:55 V3vZKUu9O
あげ

405:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 09:08:25 kDvs3jUqO
保守

406:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 19:51:50 lv8mnb3T0
保全

407:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 20:59:31 0NeN/jN4O
ヴィンユフィを書こうと思うんですが、何かリクエストとかありますかね?

408:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 23:34:17 s3+2CQsY0
ユフィがヴィンを振り回すのが好きなんだけど、定番過ぎ?

409:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 12:10:45 gUEjTXjPO
個人的にはDC内でもオープニングとか5、6章とかいいなと思う。
保守

410:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 19:00:51 Rntb+Xh+0
>>407
wktkして待ってる。

411:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 20:54:42 ldfguP2MO
>>408-410
本編・AC・DCでいつの話が良いですかね?

412:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 22:22:54 +dP3SPiD0
>>411
本当に降臨してくれるならACかDC時間軸キボンヌ
でも自分が一番書きやすいのでいいよー
お待ちしておりますwktk

413:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 23:58:52 ldfguP2MO
>>412
ありがとうございました。
じゃあAC直後でいかせて貰います。


414:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/04 18:44:25 vW9j/WwM0
期待ほしゅ

415:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/05 01:06:51 wFL6TlzgO
保守

416:DC後 【11】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:20:37 9CpoUkTs0
>>384-385 >>360-362の続きです。

『7th Heaven』という看板の店でティファが足を止めた。
扉は壊れていて、店の中は銃痕だらけだった。
ティファは足下に気を付ける様にとだけ言って、先に立って店に入ると、
陽当たりの良い窓際の席にシェルクを座らせた。
シェルクは毛布をしっかりと握りしめ歯をガチガチと鳴らして震えていた。
「ちょっと待っててね。」
ティファはシェルクの肩に手を置くと、そう言い残して店を出て行った。
自分が座っている一画は無事だが、割れた食器や酒瓶が床に散乱している。
カウンターの椅子は倒され、壁に掛けられた額はだらしなくぶら下がり…
ここで何があったかは容易に想像が付いた。

ティファは両手一杯に何かを抱えて来てすぐに戻って来た。
それを、空いたテーブルの上に置くと、今度は扉を開けて、
家の奥に消え、またたくさんの物を抱えて戻って来た。
何度かそれを繰り返し、最後には自分の身長程あるプロパンガスのボンベを
抱えて地下室から上がって来たのにはさすがに驚いてしまった。
ティファは楽々とそれを床に置くと、コンロに繋いだ。
無事に火が点いたのを確認すると、小さなミルクパンに牛乳を注ぎ、温めた。
それを、2つのマグカップに容れると、砂糖と、小瓶から茶色の液体を少し足す。
「はい!」
シェルクは自分の目の前に置かれた湯気の立つマグカップをじっと見つめた。

417:DC後 【12】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:21:10 9CpoUkTs0
「ホットミルクよ。ブランデーの瓶が割れちゃったから、
お菓子作り用のお酒で代用したんだけど…」
そう言いながらティファはシェルクの向かい側に座ると、
試しに自分の分を一口飲んでみる。
「うん、おいしい。」
シェルクもおずおずとカップにカップに手を伸ばす。
湯気からは甘いミルクの香りに混ざって、ほのかに洋酒の香りがする。
一口飲んでみると、優しい味が口の中に広がった。
「お砂糖、もう少しいる?」
シェルクは首を横に振って、ゆっくりとミルクを飲み干した。
「私もね…」
不意にティファが口を開いた。
「空が…嫌いだったことがあるわ。なんだか自分だけ正しいって感じがして、
空が、私を責めてる様な気がしたの…」
「…どういう意味ですか?」
ティファはカップを持ったまま、また小首を傾げる。
「ごめんなさい。ただ…なんとなくよ。」
そう言うと、飲み終えた二つのカップを持って立ち上がった。
「さっき、連絡があったの。子ども達は夕方に帰って来るわ。
安全な所に避難させてたんだけど、仲間が連れて来てくれるって。」
「それは…また、あなた方の仲間ですか?」
「そうよ。あなたにとても会いたがってるの。」
「私に…?」
「ええ。」
シェルクは会った事のない人物が何故自分に興味を持つのか不思議だった。
「それは…ヴィンセント・バレンタインが私の“世話になった”からですか?」
「多分、ね。」
やはり、よく分からない。


418:DC後 【13】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:22:25 9CpoUkTs0
ティファはカップをシンクに置いて、軽く伸びをする。
「さてと、私はお店と家を片付けなくちゃ。あなたはどうする?少し休む?
それとも…もし、元気があるのなら手伝ってもらえるかしら?」
ホットミルクのお陰だろうか?さっきまでの震えはいつの間にか収まっている。
「大丈夫です。お世話になるのだから、手伝いくらいなんでもありません。」
「ありがとう。」
ティファは店の奥にある戸棚を開け、ほうきとちり取りを持って来た。
「これで、床を掃いていてくれる?割れた食器があるから、
必ずこの手袋をしてね。集めたガラスはここ、ゴミはこっちに捨てて。それから…」
ティファは細かく指示を出すと、
「じゃあ、私は今夜あなたが寝るベッドの用意をしてくるから、お願いね。」
バタンと扉が閉まって、店に一人残されたシェルクはまじまじとほうきを見つめる。
昨日までの激しい戦いと、10年に及ぶ地下での生活とのギャップが一度に押し寄せて来て、
思わず天を仰いだ。が、見えるのは鉄骨とコンクリートがむき出しになった天井だけだ。
(静かだ…)
表には人通りがあり、車の音も聞こえてくるが、どこか遠くから聞こえてくるようだった。
そして、改めて手に持ったほうきに目をやる。
昔、まだ姉と暮らしていた時に使った事があったので、
どういう風にすればいいのか、大体分かる。
とにかく、やると言ったのだから…とシェルクはほうきで床を掃き始めた。


419:DC後 【14】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:31:07 9CpoUkTs0
ティファは自分の部屋のベッドからシーツを剥いで、新しいのに変えていた。
(デンゼルと同じ事を言ってたわ…)
ここに来た当初、デンゼルは“世話になっている”という態度を崩そうとしなかった。
(いつか打ち解けてくれるといいけど…)
ティファは小さく溜め息を吐いた。
踵を返して、部屋を出ようとして、足を止める。
(いけない…忘れる所だった…)
ティファは携帯を取り出すと、クラウドに電話をかける。
「クラウド…?ごめんなさい、ちょっといい?」
電話からは瓦礫を取り除く作業音がして、クラウドの声が聞き取りにくい。
「そう…まだ見つからないのね。うん…うん…」
ティファは、シェルクと無事に店に着いたこと。
子ども達は夕方帰って来る事を伝えた。
クラウドも作業の進み具合を話す。ヴィンセントはまだ見つからない。
シドも手伝っていたが、飛空艇団の方にも顔を出さなくてはならないので、
自分とバレットとユフィで作業を進めている。そんな事を言葉少なく伝える。
そして、ティファに電話をして来た理由を聞いて来た。
「実はね、運んで貰いたい物があるの。」


420:DC後 【15】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:36:51 9CpoUkTs0
ベッドメイキングが終えると、ティファはシェルクの様子を見に、下へと降りて行った。
店と、住居部分を仕切る扉を開けると、もうもうとホコリが立ちこめ、
ティファは思わずくしゃん、とくしゃみをしてしまった。
見ると、シェルクが一心不乱にほうきで床を掃いている。
しかし、それは掃いているというよりや、ほうきを床に擦り付けて、
ほこりを舞い上げていると言った方が正しい。
「シェルク…?」
振り返ったシェルクは困った様に眉を寄せ、ホコリで目を真っ赤にしている。
ティファは思わず吹き出してしまった。
「何が…おかしいんですか?」
ムッとしたシェルクが聞き返す。
「ごめんなさい…」
ティファは尚もくすくす笑いながら、窓と扉を開け放った。
「私の教え方が悪かったのね。これじゃあ、ホコリが立つばっかりだわ。」
「だったら、笑うのは止めて下さい。」
「だって、今のシェルクの顔…」
少し唇を尖らせて、拗ねた様な顔がとても可愛らしかったのだ。
ティファがそう言うと、シェルクはぷい、と横を向いてしまう。
「ごめんなさい。もう笑わないわ。私も手伝うから、床を掃いてしまいましょ?」
シェルクはしぶしぶ頷くと、ティファに教わりながら掃き掃除を再開させる。
まず、必ず窓を開ける。ほうきはほこりが立たない様にそっと動かす。
ティファは辛抱強くシェルクに掃除を教え、陽がかげる頃にはなんとか店を片付ける事が出来た。

421: ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:41:27 9CpoUkTs0
>>359
呼び名に関してはバッチリ伏線です。でも、そんな大掛かりな物ではないですが…

>くせ者とか言いながら 不安からちょっと頼りにしちゃったりする辺り
DC内でも、この二人のやり取りがとても好きでした。
今後、シェルクがどうなるかは分かりませんが、
なんだかんだでリーブが保護者っぽくなるのかな~
なればいいな~♪と思いつつ。

これを書くためにDC再プレイしました。
あれやこれやと批判はありますが、ヴィンセントの設定なんかは後付けは後付けでも、
良く出来た後付けだなぁ…と思えて来ました。
ここの所、毎日ここの小説を読みふけってるせいでしょうか?

>>413
自分もヴィンユフィ好きです。 光臨お待ちしております…



422: ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:47:31 9CpoUkTs0
>>416アンカーミスです。

>>384-385
>>348-354

です。
ごめんなさい。アンカーに刺されて逝って来ます…
どうしてスマートに投稿出来ないんだ自分ort

423:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/06 02:47:48 GjEZmErt0
>>416
乙です。ひき続き楽しみにしてます

424:ぽう
06/04/06 12:50:25 s89A6xFf0
ここはスカトロネタ書いてもいいんか?


425:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/06 23:36:00 iKSlf23K0


426:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/07 10:13:55 k7nqxKj9O


427:DC後 【16】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/07 15:52:02 02jJsHrA0
>>348-354 >>360-362 >>416420の続きです。

今回、また夢見がちなクラティ入ります。
お嫌いな方は後半クラウドの“あの子は…シェルクはどうだ?”
というセリフ以降を飛ばして下さいませ。

シェルクの戦闘服の記述は投稿人の勝手な解釈です。間違ってたらごめんなさいよ。

===========================================================

仕上げの拭き掃除をしていると、表でバイクが停まる音がした。
テーブルを拭いていたティファが顔を上げた途端、ばん!と乱暴に扉が開き、
口元を押さえたユフィが飛び込んで来た。
「うええええぇぇぇ~っ!」
そして、ティファの顔を見もせず、バスルームに飛び込んだ。
それをティファとシェルクの二人が呆然と見送る。
その後から大きな段ボールを抱えたクラウドが入って来た。
「ご苦労様。」
段ボールをテーブルの上に置いたクラウドに、ティファが労りの言葉を掛ける。
「頼まれた物は揃った。同じ事をリーブも心配していた。」
「そう、ありがとう。ところでユフィがどうして?」
クラウドは、はぁ…と溜め息を吐いた。

428:DC後 【17】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/07 15:53:22 02jJsHrA0
「なぁに?ユフィがどうかした?」
「ヴィンセントの事が心配らしくて…気を紛らわそうといつも以上に喋るんだ。」
あぁ、とティファは頷く。
「見かねたシドがそう言ったら、逆に俺たちが心配してるだろうから、
喋ってあげるんだと言って聞かない。」
ティファは思わずユフィが飛び込んだバスルームの方を見る。
クラウドも釣られて同じ所を見る。
「それで…」
「うるさいから、連れて行けってバレットが言ったんだ。」
ティファはやれやれとクラウドを見上げる。
「私に押し付けるのね?」
「すまない。」
「いいのよ。賑やかなのは大歓迎。」
ティファはくすくす笑いながら段ボールを開けた。
「助かったわ。早くに届けてくれて。」
ティファが取り出した物を見て、遠巻きに様子を眺めていたシェルクが歩み寄る。
「それは…」
シェルクの服の背中と胸の部分についている拳ほどの大きさのカプセルだった。
「あんた達にはそれが必要なんだろ?」
シェルクは思わずクラウドを見上げた。

429:DC後 【18】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/07 15:54:03 02jJsHrA0
(…なんだろう?この感じ…)
確かに、これには魔晄エネルギーが入っている。
ここから戦闘服の青いラインを通って、魔晄エネルギーを吸収する事が出来るのだ。
ただし、シェルクの場合、これだけでは十分ではない。
一日に一度はカプセルに入らなければならないのだが。
どうやらティファが心配して手配を頼み、彼がそれを届けてくれたらしい。
感謝するべきなのだろうが、どうしてだか、彼の物言いに何故か腹が立った。
「他の兵士にも配らなくてはいけないから、あまり数がない。」
「そうね…魔晄炉も、もうないし…」
言いかけてティファは、はっとなってシェルクを見る。
「大丈夫よ。私たちに任せて。」
シェルクが頷く。
「じゃあ、俺はミッドガルに戻る。」
クラウドは扉を開けて、さっさと外に出てしまう。
慌ててティファが後を追う。
大きな黒いバイクに跨がるクラウドにティファが何か話しかけてるのを、
店の中から窓越しに眺めながら、シェルクは自分の中に
沸き上がった苛立ちの素は何かと考えていた。

430:DC後 【19】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/07 15:55:23 02jJsHrA0
「あの子は…シェルクはどうだ?」
「まだ…分からないけど…」
「けど…なんだ?」
「シェルクは…あなたに似てるの。あなたにも似てるし…
ここに来た時のデンゼルにも…あと…」
ティファは言葉を切って、目を伏せた。
口ごもるティファを、クラウドはじっと見つめる。
「私にも。」
「…そうか。」
「ね、クラウド?シェルクが居たいって思う間は、
ずっと家に居てもらってもいいよね?」
「もちろんだ。」
「あ…でも…ベッドが足りないよね!」
さっきの暗い表情でクラウドに心配を掛けてはいけないと、
ティファが努めて明るい声で言う。
「もう一つ買えばいい。」
さらりと言うクラウドに、ティファの顔に笑顔が戻る。
「クラウドったら…簡単に言うけど、そのベッドはどこに置くの?」
「俺の部屋に置けばいい。」
「え…?」
一瞬、意味が分からずにティファはきょとんとクラウドを見る。

431:DC後 【20】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/07 15:56:08 02jJsHrA0
「えっと…それは…シェルクのベッドをクラウドの部屋に置くの?
だったら、クラウドのベッドはどこに置くの?」
「俺のベッドはそのままだ。ティファのベッドを俺の部屋に置けばいい。」
ティファの顔が見る見る赤くなる。
「今まで別々だったのがおかしいんだ。」
「ど…どうしたの?クラウド?」
「そうすれば、朝こっそり自分の部屋に戻る
なんて面倒なマネはもうしなくていい。」
耳まで赤くなったティファを見て、クラウドが笑う。
その笑顔に、ティファは少しホッとする。
「もう…からかったのね、クラウド?」
「いや、本気だ。」
再び固りかけたティファだが、クラウドの計画を
なんとか阻止しようと必死になる。
「だ…だめよ!私…!そう!イビキとか、かくかも!」
「今まで聞いた事はない。」
一歩踏み込むと逃げようとする。
ティファのそういう所は相変わらずのようだ。
「ベッドは頼んでおく。」
「クラウド…!」

432:DC後 【21】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/07 15:56:49 02jJsHrA0
我に返った時、フェンリルはもう走り去った後だった。
ティファは途方に暮れてクラウドの姿が見えなくなるまで見送ったが、諦めて店に戻る。
(そうよ…ユフィだって居るんだもの…必要なのよ)
自分に言い聞かせても、何故か言い訳がましく聞こえる。
「ティファ。」
呼ばれて、いつの間にか目の前に居たシェルクに慌てて目をやる。
「彼は…ティファの配偶者なのですか?」
「え…えぇ、そうよ。…いえ、みたいな者かしら…」
しどろもどろに答えながら、ティファはハッとなる。
「うれしいわ、ティファって呼んでくれて。」
シェルクは相変わらず無表情のままだ。
「別に…敬称で呼ばれるのは、場合によっては不愉快だという事に気付いただけです。」
彼女の言葉が自分の亭主のあんた呼ばわりを指しているとは、
少々逆上せ(のぼせ)気味の今のティファが気付くはずもなかった。

つづく。

433:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/07 20:00:30 UCvvQp33O
>>427
乙です。シェルクが魔コウを浴びなくても大丈夫な理由を補完させてもらいますた。
ティファの名前を呼ぶシェルクがよかった。あと真っ赤になるティファが可愛いいっすw
こういうほのぼのした雰囲気のも読みやすくてイイ。

434:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/07 21:04:54 ADVKEbNVO
夢見がちクラティGJ!!w
ティファテラカワイスwww
これからも期待してるぜ!!頑張れ!!
ヴィンセント心配してるユフィ…たまんねぇww

435:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/07 21:55:09 AUCR/6ne0
ヴィンセントが自分庇ってライフストリームに捕まって
魔コウ炉→オメガに引きずり込まれるの目の前で見てるしなあ。
そりゃ心配するよなー。メンバー中一番そういう情深そうだし、ユフィ。

436:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/08 11:28:19 /QTLITqR0
>◆BLWP4Wh4Oo氏
乙華麗です
一生懸命ホウキで掃こうとするシェルクタソとクラティに萌えた

437: ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/08 19:56:20 c+B62ajG0
がちゃぽんクラウドの首から下だけ落として、
凹んで帰って来たら皆様の暖かいお言葉!ありがとうございます(つд`)・゚・
まだまだ続きますが、どうかお付き合い下さいませ。



438:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/09 01:07:57 gBvHIEJCO
がんばれ

439:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/09 02:09:03 RNVXJWc10
DC後良い!乙です。
続き待ってます(´ω`)

440: ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/09 12:03:08 QVPcUnlB0
>>435
昨日再プレイしていて丁度そのシーンを見ました。
一度目の時はストーリーを追うのに精一杯で、あまり印象に残りませんでしたが、
二度目でヴィンセントが真っ先にユフィを庇って突き飛ばしてるのに気付きました。
オリジナルでは分からなかったヴィンセントの魅力が再認識されて、
そう言った意味では自分内ではDCはネ申ゲームになりつつあります。

>>438
頑張ります・゜(つД∩)゜・。

>>439
ありがとうございます。

では、少しですが保守がてらの投下です。

441:DC後 【22】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/09 12:03:48 QVPcUnlB0
>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432の続きです。

「私はちゃんと名前で呼びました。だからどうして…」
シェルクが言い終えない内に、弱々しくバスルームの扉が開く。
「あ~死ぬかと思った…」
まだ青い顔でフラフラとユフィが出て来た。
ティファは、ちょっと待ってね、と言い残し、ユフィに歩み寄る。
「あれ?クラウドは?」
「ミッドガルに戻ったわよ。」
「ちぇーっ!なんか言ってから戻れよな~!」
ユフィはいつもの右手でシュシュッとやる、が、すぐにへたり込んでしまう。
「無理しないで。」
ティファが屈んで、ユフィを助け起こし、
さっきまでシェルクの指定席だった窓際の席に座らせてやる。
「アタシも戻る!アタシが居ないと、ヴィンセントの奴、見つけられないじゃん!
なのに、シドもバレットもさ!アタシを邪魔者扱いして~!」
「それは違うわ、ユフィ。」
ティファの言葉に、ユフィは唇を噛んで、肩をすくめる。
「分かってるんでしょ?みんなあなたを心配してたの。」
「アタシは平気だよ!?」
「バイクに酔っただけじゃないでしょ?足下、フラフラだったわよ。」
ヴィンセントと一緒にカオスの中心部まで行き、人知外の物を見聞きしてきた
ユフィは自分で気付かない内にダメージを蓄積していたようだ。
「ヴィンセントなら大丈夫だから、ここで一緒に連絡を待ちましょ?」
「いーやーだっ!」
ダダをこねるが、いつもの子供っぽい表情ではない。
「だってさ、アイツ…アタシのこと、何度も庇ってさ…」

442:DC後 【23】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/09 12:05:37 QVPcUnlB0
シェルクにはユフィの言動が意外だった。
だが、姉がアスールのせいで植物状態に陥った時の彼女の反応を思い出し、
悲しい事は悲しいと素直に表現する人物なのだと思い直す。
(表現…?違う…もっと自然な…)
あれは感情をアウトプットするというより、
勝手にわき出して来ているとでも言う方が正しい気がする。
さっきクラウドに対して腹が立ったこと、ティファにからかわれて恥ずかしかったこと。
ほんの一日の間に色々な感情が思い出された。

“それが、人、なのだろう”

ここに居ない彼の言葉が浮かぶ。
「そうね、ヴィンセントはそういう人だもんね。」
ティファの相槌に、ユフィはスン、と鼻を鳴らす。
「大体さ、アイツ…アタシよりジジィのくせして…無理しんなっつーの!」
「ユフィ。」
ティファが優しく諌める。
「ゴメン。」
「彼が無茶ばかりする所を見てたから、心配なのね?」
ユフィは答えない。
頷きもせず、何かを堪えている様にテーブルの上をじっと睨んでいる。
「ティファ。」
「ん?」
「シャワー借りていい?…もう、ホコリと汗でぐっちゃぐちゃ。」
「いいけど、お湯は出ないわよ?」
「平気。」
ユフィはえい!と勢いをつけて立ち上がる。
「真冬でも、滝に打たれて修行してるからね!」
「本当かしら?」
本当だよ~と、ユフィはおどけて顔をしかめてみせる。
「んじゃ、一風呂浴びて来ますか!」
ユフィはヒラヒラと手を振り、再びバスルームに消えて行った。

443:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/09 16:11:28 kQ02CKGZ0
ユフィ萌えw

444:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/09 20:34:39 NKIq9mAM0
どうでもいいが「それが、人、なのだろう」という台詞を見て
某ゲームでエンディングに敵役が吐いて行く台詞を思い出したのは俺だけですか。

「優しいのだな、ラカン。きっと、それが人であることの意義なのだろう」

445:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/09 21:08:01 ho+L9GPU0
突っ込んだらいかんのかもしれんが
カオス内部ってのはオメガ内部の間違いだろうけど
ユフィはオメガ内部にも入ってないよな?
零番魔コウ炉行ってネロの闇にとっ捕まって精神攻撃喰らってダウン、
ヴィンvsヴァイスの時にやってきてオメガ覚醒時に
ヴィンセントに突き飛ばされてそのまま魔コウ炉から脱出、だよな。
オメガが復活したときには外にいたし、オメガの周りにはバリア張られてたし。

446:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/09 21:16:23 d6sIHsJd0
>>445
思ってたけど言わないでおいたのに!!

447: ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/10 00:42:13 aToOPwCv0
>>445
ご指摘ありがとうございます。
読み返したらカオスとオメガと間違ってるし、誤字多いし…ort
仕事が忙しくなるので、今の内少しでも進めようと焦ってしまいました。
急ぐよりも、質を落とさない方が大事ですよね。もっと落ち着きます。

>>446
皆さん、気付かれてますよね。あぁ、恥ずかしい…ort

恥ずかしいけど、誰にも言われないより、指摘して頂いた方が救われます。
何か気付いた事がありましたらよろしくお願い致します。

明日、書き溜めた物をまた投下に参ります。訂正分も合わせて投下し直しますね。


448:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/10 05:45:06 zv2alniz0
>>DC後 ◆BLWP4Wh4Oo
ユフィがエエ娘だー!
6章終盤の出来事をシェルク視点で思い出しているところがナイスです。
FF7プレイ当時のユフィの印象を、うまくDCのイベント(特にビンタの動機として)
描いてくれているのが嬉しかった。

>>444
横レス(そして板違いw)ですが。
自ら進んで人の道を外れて歩む事を選んだ者と、
「生きてほしい」という願いから、結果的に人の道から外れた存在にされたヴィンセント。
彼らの背負っているテーマって似てると思います。どっちも最後は飛んでいくところとかw


そういやネロの闇の中からユフィとシェルクを救出したんだから、ついでにケット・シーも
救出してやってくれないものかと思…わないかw

449:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(17)
06/04/10 05:51:07 zv2alniz0
>>375-379より。
----------

                    ***

 額に多量の汗を浮かべ、肩を上下させて荒く呼吸を続けるリーブに肩を貸し、
彼を支え起こしながらシドは問う。
「おい、何があった!?」
「……ろ、が。……」
 俯きながら答えたリーブの言葉に主語はなく、それどころか言葉にすらなって
いない。事情を聞こうと声をかけたまではよかったが、シドはますます訳が分から
なくなった。
「どうしたんだ!? おい、リーブ!」
 気絶するほどの衝撃ではないにしろ、ケット・シーがもたらす影響というのは
少なからずリーブの身体にも及んでいた。シドや、まして何も知らないシェルクが
戸惑うのは仕方のないことだった。
 そもそもリーブがこの能力について、これまで―神羅時代の同僚や上司は
もちろん、3年前ともに戦った仲間達にさえ―詳しい話をしたことは無かった。
何も知らない彼らから見れば、特に外傷を負ったようにも見えない男が、なんの
前触れもなく突然苦しみだしたのだ。そんな状況を目の当たりにして、驚くなという
方が無理だろう。
 リーブの“能力”とは、ある特定の条件を満たした無機物に命を吹き込むことが
できると言うもので、つまりケット・シーは完全な遠隔操作ロボットではなく、リーブが
命を吹き込んだ文字通り“分身”なのである。だから分身が受けた衝撃の一部を、
本体であるリーブも感覚として捉えることができた。零番魔晄炉の最深部でケット・シーが
見た光景をリーブが知り得たのもこのためだ。

450:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(18)
06/04/10 05:55:47 zv2alniz0
 しかしこの能力自体、リーブ自身も完全には理解できていない部分が多くあった。
だから語らないのではなく、語れないのだ。
 皮肉にも結果的にはこのことが、リーブの身に及んだかも知れない危険を回避する
ことにもつながった。下手をすれば都市開発部門統括責任者という立場ではなく、
ヴィンセントやレッド13のように宝条の被験体として神羅ビルに身を置く運命が待って
いただろう。あるいはシェルクのように、適性者としてディープグラウンドへ送られていた
かも知れない。もしそうなっていれば、この能力を目覚めさせることもなく、命を落とした
可能性だってある。
 いずれにせよ、今こうしてこの場所にいることは無かっただろう。
「す……みま……、せ」
 口を開けば出てくるのは言葉を成さない掠れた声だけで、シドからの問いかけにも
まともな返答をできずにいた。頭の中には明確なビジョンとして答えが見えているというのに。
 迫っている危険を知りながらも、それを伝えられないもどかしさは、まるでそれ自体が
気道を塞ぎ呼吸を妨げている様だった。
「だーっ、もういい分かった! 分かったからとりあえず黙ってろ!!」
 リーブの姿を見かねてそう言ってしまったのはいいが、シド自身なにが分かったのかは
分からない。強いて言えば、こんな状態のリーブから何かを聞き出そうというのは間違って
いる、という事は分かった。

451:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(19)
06/04/10 05:56:56 zv2alniz0


「…………」
 シェルクは黙ってふたりに背を向けた。彼らの姿を目の当たりにしていると、なぜか
居ても立ってもいられなかった。一刻も早くこの場を立ち去りたい、そんな衝動に駆られた。
 ―なぜだろう?
    人間の死
    そんなものには、これまで数え切れないほど立ち会って来たはずなのに。
    今さら……。
(……今さら……?)
 ―今さら、何だと言うのだろうか。目の前で苦しんでいる男が死んでも良いとでも?
    それでどうなりますか? 何が得られるのですか?
(…………)
 当初、エンジンルームへ行くのは自分だった。それを阻止し代わりにケット・シーが
エンジンルームに向かった。その結果として今、目の前に広がる光景がある。
 「ケット・シーは、ふつうのロボットには搭載されていない"感情"を積んでいます」
 「彼らのデータは、私の記憶を介して蓄積されています」―先ほど、リーブ=トゥエスティの
語っていた言葉をシェルクは思い出していた。
 やがてシェルクの中で、点在するデータが関連付けされていく。こうして導き出された仮説が
事実だとすれば、恐らくケット・シーとリーブ=トゥエスティは同期していると考えることができた。
残念ながらその構造やシステムまでは皆目見当もつかないが。ネットワークに意識のみを
潜行させるシェルクの能力と似ているか、とても近い存在の様にも思える。あるいは、まったく
逆なのかも知れない。
(それは、つまり……)
 とにかく今は急がなければ。そんな使命感にも似た思いが、シェルクの足をエンジンルームへと
向かわせた。

452:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(20)
06/04/10 06:02:07 zv2alniz0


 無言で立ち去ろうとする少女の背中を、シドは何も言わずに見送ろうとした。
しかし、リーブはそうする訳にはいかなかった。整わない呼吸、たとえ肺の中に
残った空気が尽きるとしても、声を絞り出そうとした。
 エンジンルームにはネロがいる。いくらシェルクがツヴィエートの一角を成す程の
力の持ち主だとしても、ネロには―彼の持つ闇の力には敵わない。彼女を行かせる
のは危険すぎる。
「い、けま……せ、ん……シェルクさん!!」
 たとえここで自分が向かったとしても何の戦力にもならないだろう。かと言ってシドを
行かせるわけにはいかない。ここで軸となる戦力を失えば、魔晄炉破壊の任務を遂行
する人間がいなくなってしまう。先に降下している地上部隊は苦戦を強いられている、
もはや戦況はとても楽観視できる状態ではない。
 となれば、なおさら今ここで彼らを失うわけにはいかなかった。
 考えるまでもない、答えは1つだ。
 自分の身を支えていたシドの肩を退けて、リーブは通路の壁を支えにして立ち上がる。
視線はまっすぐ前方に向け、足下は決して見なかった。まるで何かに取り憑かれたように、
エンジンルームへ向けて身体が動く。
 そんな憔悴しきったリーブの姿を目の当たりにしたシドだったが、目の前で何が起きて
いるのかは未だ理解できずにいた。彼がなぜ苦しんでいるのか、どうしてそこまで必死に
エンジンルームを目指そうとしているのか。
 しかし考えても埒があかない、理解しようとする前にシドは立ち上がると背負っていた槍の
柄をリーブの眼前に突き出した。狭い飛空艇内の通路で、今のリーブの前進を妨げるには
それだけで充分だ。

453:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(21)
06/04/10 06:07:58 zv2alniz0
 突き出された槍に手をかけて退けようとするリーブに、シドは言い放った。
「おいてめぇ、……出撃前のオレ様の話を聞いてなかったのか!?」
 その問いにリーブは答えなかった。もちろんシドの戦声を聞いていなかった訳では
ない、むしろ思いはシドと同じだった。

 ―これは、生き残るための戦い。

 だからこそ、シェルクを連れ戻さなければならなかった。
 しかしこの男―シド=ハイウィンドに言葉だけで説明しようとしてもムダなのだ。
それは3年前の旅でリーブも心得ている。シドにとって重要なのは言葉ではなく、
思いなのだ。
「彼女を、行かせる訳には……いきません」
 思いを伝えるには、それだけで充分だった。
 その言葉に、シドは「……そうか」と言ってゆっくり頷いた。しかしそれは、同意を示す
ものではなかった。
「だがオレ様もなぁ、お前を行かせるわけにはいかねぇんだよ」
 そう言って乱暴に胸ぐらにつかみかかると、怒鳴るようにしてシドは続ける。
「いいかリーブ、よぉーっく聞いとけ。
 確かに飛空艇師団への出資者はてめぇだ。だがな……飛空艇の中ではオレ様の
指示に従ってもらうぜ。できねぇなら今すぐ、この艇から降りろ!」
 旧ミッドガル領空付近を飛行中の艇から、ホバーやパラシュートもなしでどうやって
降りろというのか。しかも地上は現在交戦の真っ最中だ。それはどう考えても明らかに
自殺行為だ。
 無論シドとて飛空艇のパイロットとしての知識と経験は豊富にある、自分が言っている
ことが無茶苦茶なのは百も承知だった。だが、リーブに向けられた彼の目は真剣その
ものだった。
「離……」
 その手をどけてくれと言おうとしたが、声は続かなかった。
「大体なぁ、これから地上に降りて魔晄炉爆破するんだろうが?! 部隊を誰が先導すんだよ? 
……空ならともかく、オレ様はミッドガルの構造なんざ知らねぇぞ」
「し、かし」

454:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(22)
06/04/10 06:13:29 zv2alniz0
 なおも反論しようとするリーブを一瞥して、シドはため息を吐いた。胸ぐらを掴んでいた
手の力が緩められ、解放されるものだと安堵した。
 しかし次の瞬間、腹部に強烈な痛みが走る。
 その一瞬、リーブの目に見える世界がまぶしく輝いた。直接的なこの痛みは、恐らく。
「……、シ……ド?」
 全身から力が抜けていく。両足と壁、ふたつの支えを失ったリーブは、物理法則に従い
床へと倒れ臥した。どさりという音だけがやけに大きく聞こえた気がする。
 倒れた後、痛みよりも強く感じたのは頬全体に広がる冷たい感覚だった。白光した視覚から
得られる情報はなかったものの、腹部を殴られそのまま意識を失うまでの間、リーブは驚く
ほど冷静に自身の状態を捉えていた。
 気絶する。そう認識した頃には視界を覆い尽くしていた白光は収まり、今度は一転して闇が
広がっていく。
 徐々に視界を浸食していく闇の中で、彼の内に流れ込んで来たのはケット・シーからの声。
たくさんの思い。
 この時になってようやく、リーブは自身の持つ能力の本質に気づいたのかも知れない。
(……ケット・シー、は……)

 ―おっさん。オモチャのわいに命をくれて、おおきに。
    また……
    …………。

 しかし最後までその声を聞くことなく、リーブの意識は途切れた。
----------

455:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/10 13:48:27 5fgW9QZKO
保守

456:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/10 17:05:33 75RVQt4P0
鼓吹士続き、待ってましたっ!!
インスパイアの実態、興味深いです。
ケット・シーは……??
更に続きを待ってますー!!

457:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/10 17:40:13 aToOPwCv0
>>449-454
シドの、乱暴だけど、リーブを心配して止める所がすごくいい!
ギリギリな所でのこの二人のやり取りがすごく好きです。
ケットの最後の言葉も泣ける…続きを楽しみにしてます!

458:DC後 【22・23の訂正】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/10 17:43:44 aToOPwCv0
>>441 の訂正です。
書き直したのを全部貼ろうかと思いましたが、長くなるので訂正箇所だけで失礼します。

×ユフィはいつもの右手でシュシュッとやる、が、すぐにへたり込んでしまう。
○ユフィはいつもの右手でシュシュッをやるが、すぐにへたり込んでしまう。

×ヴィンセントと一緒にカオスの中心部まで行き、人知外の物を見聞きしてきた
ユフィは自分で気付かない内にダメージを蓄積していたようだ。
○敵地中枢まで行き、人知外の物を見聞きしてきたユフィは
自分で気付かない内にダメージを蓄積していたようだ。

>>442
×「大体さ、アイツ…アタシよりジジィのくせして…無理しんなっつーの!」
○「大体さ、アイツ…アタシよりジジィのくせして…無理すんなっつーの!」

>>448
DC内でのユフィはおちゃらけ担当にされてしまって、物足りなくて。
素直でストレートに怒ったり心配したり…そんなユフィのが書きたかったんですよ。

459:DC後 【24】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/10 17:47:27 aToOPwCv0
>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432 >441-442の続きです。

「心配…してたんですね。」
ユフィがバスルームに消えた後、シェルクがぽつりと呟く。
「そうね。信じてるけど、心配なの。矛盾してるようだけど。」
「私も心配しています。」
「私もよ。」
ティファが微笑む。
「さてと…ユフィの着替えを出してあげなくちゃ。」
ティファはそう言って、階段を上りかけ、足を止める。
「あ…シェルク、さっき何か言いかけなかった?」
「いえ…別に。」
ティファはそう?と訝しげな顔をしたが、
後でゆっくり聞こうと思い直し、部屋に着替えを取りに入る。
残されたシェルクは、クラウドの持って来た段ボールからカプセルを一つ取り出す。
胸の部分のを外し、付け替える。
背中のもそうしようとして、思い留まった。
もう魔晄エネルギーはないのだ。
仮に調達出来たとしても、次に手に入るのはいつになるか分からない。
これだけの量でどれだけ活動出来るかは分からないが、
(少しでも長く保たせなければ…)
残りのカプセルを戻そうとして、箱の底に別の物を見つけた。

460:DC後 【25】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/10 17:48:40 aToOPwCv0
(何…?)
手に取ろうとした途端、バスルームの扉が開く。
「ティファーっ!着替えー!」
バスタオルだけを纏った(まとった)だけのユフィがガチガチと歯を鳴らしながら出て来た。
「うっひゃ~!寒い!氷水でも使ってんじゃないの?」
身体を縮込ませ、足をバタバタと踏みならす。
さっき言っていた事と、現在の行動には大きな矛盾が感じられたのと、
ユフィの様子がおかしくもあり、シェルクが思わず吹き出す。
「あーっ!笑ったな!」
目敏く気付いたユフィが拗ねる。
その顔を見て、シェルクはさっきティファが自分を笑った理由が分かった気がした。
ここに来る時に纏っていた毛布が椅子に掛けてあったのを思い出し、
それをユフィに手渡してやる。
「あ…ありがと。」
少し赤くなりながら、ユフィがそれを受け取る。
階段を下りて来たティファがユフィの様子を見て吹き出す。
「なぁに?冷たい水は平気じゃなかったの?」
「だってさ~、雪ん中で滝に打たれるのって意味あると思えないもん。」
「やっぱり、サボってたのね?」
シェルクも声には出さないが、やはりそうなのかと納得してしまう。
「もぉ、いーじゃん!ねぇ、着替え貸してよ。」
「私の部屋の、ベッドの上に出してあるわ。」
ユフィはやかましく階段を上って行ってしまう。
ティファはやれやれとそれを見送ると、例の段ボールを抱えてその後に続く。
箱の中身を確認しようと思っていたシェルクは、
なんとなくそれが言い出せなくてそれを見送った。

461:DC後 【26】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/10 17:51:07 aToOPwCv0
部屋に入ると、早々に着替えたユフィが何やらブツブツ言っている。
「なぁに?」
「大きいよ。」
「そのパンツ、ウエストの内側に紐が付いてるの。それで絞って…」
ティファは、色が気に入らない、胸が余る、等等、
やかましいユフィの世話をあれこれと焼いてやり、
最終的にグレイのコットンのパンツに淡いイエローのタンクトップ、
それに白いパーカーを羽織る…という格好に落ち着いた。
「ねぇ、ユフィ。ミッドガルに戻りたかったら、今度クラウドが来た時に
また連れて行ってもらえばいいわ。それまでここで少し休んで行きなさい。」
「それまでに…見つかるかな。」
「きっと見つかるわ。」
ユフィはくるりとティファに背を向ける。
「しょーがないなぁ。それまで居てやるか。」
泣いてる顔を見られたくないんだろう、ティファはそう思い、
「少しこの部屋で休んでらっしゃい。私、夕飯の支度をしてくるから。」
そう言って、部屋を出て、ドアを閉めた。

つづく。

462:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/11 11:20:46 m/NGidVeO
イイヨイイヨー
続き楽しみにしてる!

463:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/11 16:40:22 o41VMW0u0
超GJ、楽しみにしてるよ

464:DC後 【27】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/11 21:42:03 uW3vrKUq0
>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432 >>441-442 >>459-461の続きです。

一人で降りて来たティファは、ユフィは少し休んでるからとシェルクに伝え、
カウンターに入ると夕食の支度を始めた。
「今夜はね、シチューとサラダとマッシュポテトよ。」
そう言って、大量のジャガイモの入った籠をでん!とシェルクの前に置く。
「全部剥かなくていいの。これくらいかな?」
ティファは適度な大きさの物を5つくらい選び、少し考え直して、更に3個加える。
「パンもお米も手に入らなかったの。マッシュポテトはライス替わりね。」
シェルクに皮剥器を手渡し、掃除のときと同じ様に、作業を細かく教える。
「こうやって、ジャガイモの皮の上で滑らすの。芽があったらここの爪でえぐり取って…」
手袋を取り、ぎこちない手で皮むきを始めたシェルクの向いに座って、ティフは人参の皮を剥く。
作業をしながら、商店は開いていたが流通が滞っており、商品がなかった事を話した。
「だから保存試食総動員のメニューなの。レタスがちょっと萎れ(しおれ)かけね。」
ティファはふと手を止め、シェルクの手元を見る。
「大丈夫?」
シェルクは皮剥き器に苦戦しているようだ。
ふぅ、と小さく息を吐き、皮剥き器をテーブルに置くと、
「あの…ナイフはありますか?」
ティファは小ぶりの包丁を持って来て渡してやる。
するとシェルクはそれを使って器用にするすると皮を剥き始めた。
目を丸くするティファに、シェルクは頬を少し赤くする。

465:DC後 【28】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/11 21:43:25 uW3vrKUq0
「昔…母の手伝いをした時に覚えました。」
その頃と同じ様に包丁が使える事に自分で驚いてしまう。
(もう10年以上前なのに…)
ぼんやりと覚えている台所の風景と母の後ろ姿。
包丁を持たせてもらえたのがうれしくて、
姉と二人で競う様にして野菜の皮剥きをした事を思い出した。
「お家のこと、思い出したのね?」
シェルクは頷いた。
「どんなお家だった?」
首を横に振る。
「そっか…」
黙々とジャガイモの皮を剥くシェルクに、ティファはそれ以上話しかけなかった。
野菜の皮を全部剥いてしまうと、ティファは手際良く料理を作る。
横から眺めていると、簡単な手伝いを次々と言いつけられた。
シェルクがポテトマッシャージャガイモと格闘していると、表で賑やかな子供の声がした。
「帰って来たようね。」
ティファは料理を中断し、手を拭いて出迎える。
「ティファ!」
「ただいま!」
「おかえりなさい。」
ティファは屈んで両手を広げると、二人を抱きしめる。
二人はティファと会えなかった間に起こった出来事を口々に喋ろうとする。
「ストップ!お話は食事の時にゆっくり聞くわ。まずはお客様にご挨拶して。」
言われて、二人は初めてカウンターに居るシェルクの方を見た。
挨拶と言われ、シェルクもカウンターから出て来る。


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